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「コミュニケーション型ハードウェア/サービスは今後どう進化するのか?」7回シリーズ(その5)は、群雄割拠するスマートスピーカーについて。一体何の課題を解決するものなのか、またはプラットフォームに過ぎないのか?登壇者たちが作るハードウェアとの住み分けは? 興味深いトピックが目白押しの討論です。ぜひご覧ください!
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ICCカンファレンス KYOTO 2017のプラチナ・スポンサーとして、レノボ・ジャパン株式会社様に本セッションをサポート頂きました。
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2019は2019年2月18日〜21日 福岡市での開催を予定しております。
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【登壇者情報】
2017年9月5〜7日開催
ICCサミット KYOTO 2017
Session 1D
コミュニケーション型ハードウェア/サービスは今後どう進化するのか?
Supported by レノボ・ジャパン
(スピーカー)
青木 俊介
ユカイ工学株式会社
代表
小野 直紀
株式会社 博報堂
クリエイティブディレクター / プロダクトデザイナー
梶原 健司
株式会社チカク
代表取締役 兼 共同創業者
吉藤 健太朗
株式会社オリィ研究所
代表取締役CEO
(モデレーター)
尾原 和啓
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最初の記事
1. 注目の「OriHime」「BOCCO」「まごチャンネル」「Pechat」などの創り手が一挙登壇!
1つ前の記事
4. 生身の人には心を閉ざし、分身ロボット「OriHime」には心を開く高齢者
本編
尾原 登壇者の皆さんから見て、Amazon Echoが来ました、Google Homeが来ました、LINEもLINE Clovaを始めました、というところで、実際どう考えているのでしょうか?
あれはやはり世界を変えるんですか?
日本でも全部の家庭に普及するんですか?
で、そのとき「BOCCO」は負けるんですか?
(会場笑)
どうなんですか?
青木 それ一番大きい問題ですね(苦笑)。
尾原 やはりこれをね、切り込まないとICCじゃないと思うんですよ。
青木 そうですよね、僕は前から、コミュニケーション・デバイスはリビングに必要になると思っていました。
「BOCCO」と同じようなカテゴリーのAmazon Echoが実際に市場を作りつつあるというのは、僕たちにも追い風にはなっています。
尾原 あ、「追い風」なんですね。
青木 はい。
無機質なEchoもいいけど、「何か可愛らしいものも置いておきたいな」という、そういうお声掛けは確実に増えているので、この子(BOCCO)がAmazon Echoのようなことができたらもっといいんだけど、というようなご相談はすごく増えています。
そこで面白いと思ったのは、可愛いものを欲しいというのは、皆の共通の意識としてあるんだなということです。
「ねぇ、BOCCO」機能というものを実験的にリリースしていまして、「ねぇ、BOCCO」と話しかけるとエアコンをつけたり消したりできるのですが、これは大和ハウスと一緒に実証実験をやっています。
スマートスピーカーに“気配り・おもてなし”はない?
青木 音声コントロールという機能を実際に作るのですが、実感としては「そんなに嬉しくない」のですよね。
何かこう、自分でもあまり嬉しくないから、多分ユーザーさんも嬉しくないんじゃないかな、というのが正直あります。
尾原 その「嬉しくない」というのは、「便利じゃない」ということですか?
それとも、「そっけない」とかそういうことですか?
青木 便利じゃない、というのがまず大きいですね、まどろっこしいし。
何かすぐやってほしいことを、かつそれ単体としてお願いするというよりは、周りの環境のセンサーも使って上手いことやってくれる、という方がありがたいだろうなというのは思います。
尾原 いわゆるアンビエント・コンピューティング(※)というような、環境型で、日本語で言えば、気配りとかおもてなしというようなものですね。
▶編集注:アンビエント・コンピューティングとは、電子機器が周囲のあらゆる場面にちりばめられており、いつでも必要なときに利用できる状態を示す表現。「ユビキタス」や「ユビキタスコンピューティング」、「アンビエント・エレクトロニクス」などが同様の概念。
青木 そうですね、おもてなしというか、空気を読むというか。
尾原 そこまでやはりAmazon Echoがそこまで到達していっていないから、いちいち指示するのも面倒くさいし、ということなんですかね。
その辺どうですか、梶原さんとか?
やはりGoogle Photosにも何十億枚という写真があり、YouTubeにもアップロードされた動画があるというところで、どちらかというとAmazon EchoよりもGoogle Homeの方でしょうか。
何というか、写真や映像のコミュニケーションという観点では、Google Homeがドカッと来たような感じがありますけれど。
そもそも「コミュニケーション」はGoogleのミッションではない
梶原 そうですね。写真と動画の共有サービスという観点だけで考えればもちろんGoogle Photosという話になってきますし、彼らの方がいろいろなアドバンテージを持っています。
ただ競合するということは僕はあまり思っていなくて、どちらかというとスマートスピーカーとかとは上手く連動していけるのではないかと思っています。
いろいろな議論があると思うのですが、要は「プラットフォームになるかどうか」というのは、たとえばスマートフォンにいろいろなアプリがあるのと同じような感じで、いろいろな連動があるというのと同じです。
そういったデバイスと連動してより付加価値を出していくということをやろうと思っているところです。
実際、Googleにとっても「コミュニケーション」が彼らのミッションではないと思いますので。
尾原 そうですよね、「organize the world’s information and make it universally accessible and useful(世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにする)」ですね。
梶原 そういう意味では、僕らがやろうとしている方向性とは大分違うのかなと思っています。
あまり気にしていないというか「上手く組んでやっていければいいんじゃないかな」という感じです。
尾原 つまりそもそも、目的というものが違うんですね。
Googleはどちらかというと情報を整理していかに役立つか、という方向性で事業をやっています。
対して、先ほど梶原さんがおっしゃったように「まごチャンネル」はあくまで、そばに孫がいてくれているというような感情価値である。
「機能価値」ではなくて「感情価値」だから、目的がずれるし、最適化の方向が違うよねと。
梶原 そうですね。
僕らとしては、隣にいるかのような、そういうライフスタイルに繋げていけばいいのかなという感じですかね。
尾原 実際問題、Googleに関して言うとたぶんAPIを閉ざして、他のスマートスピーカーとかホームデバイスに繋げなくするという選択肢を、彼らは取りませんよね。
後は、やはりアメリカもだんだん群雄割拠になってきたら、MicrosoftのCortana(同社のAIアシスタント)とAlexaがお互いやり取りできるようにしようね、みたいな話だったりとか、結局スマートホーム・ポータルから接続先の部分というのは、どんどんAPI化して、基本的にはオープン化するだろうと。
その辺どうですか、何かありますか?
小野 音声コマンドは興味本位で試しにというくらいでしか使っていないので、まだ実感が湧かないのですが、インターフェースの1つになっていった時に、それを通して何をやっていくかというところは考えています。
僕はこれからもいろいろ作っていくので、もしかしたらAlexaで何かするソフトウェアを作ったり、今作っているものと連動させたりというのを、前向きに捉えて作っていきたいなとは思っています。
ただ音声コマンドというのは、機能としてはまだまだそこまで行っていない、「あ~便利だな、これ」というところまで行っていないと思います。
多分どこかでそうなるタイミングがあるとは思うので、様子を見ながら何か開発を進めていければなとは思っています。
尾原 逆に多分、僕も正直今まだ早いと思っていますが、ただいくつか怖いなというのがあって、その皆さんの感覚を聞いておきたいです。
結局、たとえば今、Amazon Echoにこういうことをさせたいというパーツを提供する、「スキルマーケット」と呼ばれるマーケットプレイスがアマゾンの中にあります。
そのスキルセットがもう1万を超えていて「これは凄い」というものもあるのですが、実際に見てみると「今日の格言」とか、「今日のTED Talk」とか、基本的に、ありていに言えば何かをしゃべるだけのものがほとんどなんですね。
おもてなしは、機能の掛け算でこそ実現する
尾原 結局これは何かというと、僕は、家庭で本当に求められるファンクション(機能)というのは、「掛け算」で達成されると思っているんですよ。
突き詰めれば、結局「おもてなし」というのは「先回り」の話です。
先ほどおっしゃったように、足音の振動を聞いたら、多分何かこの振動の歩数からお父さんが帰ってきた、だから、息子や娘の部屋に、「パパが帰ってきたよ」というようなメッセージを送る、というようみたいに、いくつかの機能の掛け算なんですよね。
でも今のAmazon Echoって、掛け算1つしかないんですよ。
青木 単発ですからね。
尾原 そう、だから価値が感じにくい。
それが何で起きにくいかというと、残念ながらまだ全部の家庭に足音センサーがあるわけではないし、ましてや、その足音を「お父さん」と認識できるデータが学習されていないんです。
そしてアクチュエイション、出力として息子の部屋に何かお知らせするものもない。
結局掛け算というのは、どこか1つがなかったら積はゼロになってしまうんですよね。
もっと言うと、たとえ全部繋がったとしても、それぞれのレベルが低かったら掛け算の答えは小さくなります。
0.9を5回、6回、7回と掛けていったら、半分以下になってしまうじゃないですか。
でも僕、気を付けなくてはいけないなと思うのは、0.9だと思っていたら、実は1.1になっている瞬間というのがあって、そうすると、1.1というのはを7回掛けると逆に2倍近くになってしまうんですよね。
この瞬間がいつ来るんだろうか、というのがあります。
最近、Microsoft FlowやIFTTTの辺りはやはりAPI的にどんどんパーツ化が進んでいます。
少なくともクラウド側は、掛け算がブロックしやすいようになっています。
後は、その先ほどの鍵センサーのような話だったりとか、部屋センサーみたいなものだったりとか、そうした入力の部分が揃ってくると突然掛け算が動き出すタイミングというのが来るのではないかなと思っているんですよね。
ある意味、そこら辺を単機能に絞ってギュッと作られているのが、登壇者の皆さんで、その汎用性の波がどのタイミングで来るのだろうという見立てをすることが大事なんじゃないかなと思います。
すいません、また暴走してしまっているんですが。
青木 音声認識の技術が、ここ(襟元)に搭載できるとか、どんどん小型化されてたくさんの場所に付くようになると、会話もそうですし、会話だけじゃなくて足音だけで、お父さんが帰ってきた、とかが分かるようになります。
「お父さんは今日機嫌悪い」というのが分かったりとか、「お父さんはお腹が空いている」とか、そういうところまで分かったりとか、人間だったら割とその辺が察しがつくものって結構たくさんあると思うので、結構そういうセンサーがもうすぐ出てくるのかなと。
そうすると、先ほど1.1の掛け算でとおっしゃっていたように、今までわざわざ入力してお願いするまでもなかったようなことが自動でできるようになって、結果的にすごく便利になるという世界が来そうだなと思いますね。
尾原 そうですね。
今おっしゃった「察する」というところをきちんと牛耳ることが大事だと思っていて、今までは音声コマンドだから音にのみ頼っているわけですよね。
でも結局、日本人的なおもてなしの世界というのは「察する」というところなので、何を察するかという部分をどう取るか。
たとえば、青木さんのところでいえば、足音から「これはパパかな」というようなことを察する。
センサーとそこからの学習データが先に取れれば、その後が掛け算できるという話だし、多分ELIの場合でいうと、その人が話す英語のパターンをこのデバイスに学習させると「この人はこういう英語をしゃべるんだ」ということを察することができるので、その先の学習に対してのエデュケーション・プログラムが組めるようになりますみたいな。
そういうところの効果は、結構大きいのではないかと思うんですよね。
すいません、放っておくとずっとこのまましゃべって、モデレーターでじゃなくなっていきます(笑)。
何がどうスマートで、何の課題を解決できるのか
梶原 では少しだけ混ぜ返すと、もともと僕は前職でAppleにいたというのもあるのですが、スマートフォンとスマートホームを考えたときに、スマートホームというのは一体何がスマートになったのか?という定義があまりないのです。
スマートフォンの場合はGPSがあって、カメラがついていて、モビリティがあって、常時接続のネットがありますと。
これらが揃った時に、それこそFacebookのようなものが生まれてきたりだとか、Uber、メルカリが生まれてきて、人と繋がりたい・移動したいという問題をスマートに解決しました。
では、スマートホームやとかスマートハウス、スマートスピーカーもそうなのですが、何がどうスマートで、何の課題を解決できるのかということが、スマートフォンに比べると曖昧で、ものすごく供給者目線の話です。
というのも、多分先ほど話に出ていたセンサー、つまりスマホで言うGPSのようなものが伸びてきた時に、何を解決できるようになるのかということが見えてくるんですね
見えている人はもう見えていると思うのですが、何かそういう対比というのがあるかなと思いますね。
尾原 そうですね。おっしゃるとおりですね。
だから多分、AmazonやGoogleは汎用型なので、ユーザーが何をしたいんだろうかというユースケースが実は置き去りになっているところがあるのではないかと。
ある意味、まごチャンネルというのは一番分かりやすいじゃないですか。
先ほどの衝撃的な「敬老の日に何が欲しいんですか?」「孫に会いたい」というところのギャップの解決。
これは熱量ですよね。
そこをどう突き刺すかという話で、先ほどのLyric speakerとかも、歌がもつ感情の広がりや盛り上がりを、それを聴く人たちが共有したいという前提があるわけですよね。
小野 だからこそ、その音声技術、音声コマンドとかAlexaというのも、プラットフォームもしくは技術の1つと捉えています。
僕としては多分そういうプラットフォームを作っていくことを自分ができるわけではないので、それはGoogle、Amazon、Facebook、Microsoftなどに委ねているという立場かなと思っています。
そして、そういった技術とかプラットフォームが出来てきたのを見て、何を世の中に提供して、世の中の生活を具体的にどう良くしていくかを実行していきたいと思っています。
Lyric speakerであれば、今おっしゃっていただいたことであったり、新しくAlexaがオープンAPI化されて勝手に使えるとなった時に、それとELIを繋げて何か別のことができるんじゃないか、というようなことももちろん考えています。
そんな視点で僕は捉えていて、あれが来るから困るとか、あれはきっと広がらないだろうということよりも、「どうすれば、良い世の中を作る時に使えるものになるのか」、という視点です。
それを考えるのはすごく楽しいなと思っていますね。
(続)
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編集チーム:小林 雅/横井 一隆/尾形 佳靖/浅郷 浩子/戸田 秀成/鈴木ファストアーベント 理恵
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