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6. 中国で進む「信用スコア社会」の実際とは

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「AI/量子コンピューター/IoT/ブロックチェーンを徹底議論!」9回シリーズ(その6)は、個人IDとデータ通信が紐づくIoT時代の象徴とも言える「信用スコア社会」について。中国アリババ「芝麻(ジーマ)信用」が進める信用のスコアリングとは? ぜひご覧ください!

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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2019は2019年9月2日〜5日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをご覧ください。

ICCサミット FUKUOKA 2018のゴールド・スポンサーとして、日本マイクロソフト株式会社様に本セッションをサポート頂きました。


【登壇者情報】
2018年2月20-22日開催
ICCサミット FUKUOKA 2018
Session 7A
AI/量子コンピューターなど最新注目分野を議論
Supported by 日本マイクロソフト株式会社

(スピーカー)

小笠原 治
株式会社ABBALab 代表取締役 /
さくらインターネット株式会社 フェロー /
京都造形芸術大学 教授

小野寺 民也
日本アイ・ビー・エム株式会社
東京基礎研究所 副所長 技術理事

國光 宏尚
株式会社gumi
代表取締役会長

中村 洋基
PARTY クリエイティブディレクター /
VALU 取締役

(モデレーター)

尾原 和啓

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最初の記事
1. メルカリの研究開発組織「mercari R4D」とは? スタートアップ企業が研究所を持つ意義を考える

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5. IBMが開発する「花粉サイズ」の世界最小コンピューターが、あらゆるデータのリアルタイム計測を実現する

「ID」と「通信」で信用が可視化される時代に?

尾原 せっかく中村さん(PARTY クリエイティブディレクター / VALU 取締役)も登壇してくださっているので、IDと信用についての話を伺いたいです。

たとえば先ほど話題に出たメルチャリの本質とは何かというと「IDがあればどこでも自転車のロックが開く環境ができる」ということです。

アパマンさんが仲介する部屋のドアに通信機能を付与することで、内見の際に鍵が不要になるという話も出ました。

これを更にダイナミックに進めてていくと、「荷物の配達人は最初のドアだけは開けられるけど、奥のドアは全部開けられなくて、入ったところに荷物を置いていってね」という世界も生まれそうです。

IDに信用が集積している場合は、ベビーシッターや部屋を掃除する人は「この1時間だけは部屋の中に入れる」という設定をすることが可能になりそうです。

「僕の大切なオタク道具が入っている部屋だけはロックがかかっていて入れなくて、それ以外の部屋だけ掃除してください」ということができますね。

「ここまでの信用がある人はここまで入っていいよ、ここから先は入れないよ」というような世界がどんどん広がっていくと思います。

國光 そのIDの話は、別にメルカリだけでなくて、ヤフーでも楽天でも似たようなことはできるということですよね。

尾原 その人が持っている価値のIDによる可視化は、そのようなサービスの利用に繋がっていくと思います。

中国アリババ「芝麻信用」が進める信用のスコア化

中村 芝麻(ジーマ)信用みたいなことですよね。

PARTY クリエイティブディレクター/VALU 取締役 中村 洋基 氏

尾原 そうです。中国のアリババグループがやっている芝麻クレジットの芝麻信用というスコアがあります。

國光 芝麻信用は支払いデータ以外にもデータを集めているのですか?

尾原 いろいろなデータを取っています。

もともとアリババというのは、淘宝網(タオバオ)というCtoCのダイレクト販売に近いものだったので、販売の信用データがありました。

そしてそれに加えて、アリペイのデータが集まっています。

上海などへ行くと、現金の決済率がもう5%しかないので、「誰がいくら支払っているか」「割勘で誰が誰にいくら支払っているのか」というお金のやり取りのデータもあります。

そのやり取りがスコアリングされて、「この人はお金のやり取りがきれいな人だ」というデータが溜まると何が起こるかというと、たとえばメルチャリの利用に必要な最初のデポジットが、「信用スコアが650ある人はデポジットなしでいいです」ということができたりします。

國光 現状の信頼スコアは、支払いや売った買ったという時のデータ程度ということですよね。

尾原 いえ、芝麻信用に関してはリンクドインのような機能が付き始めていて、たとえば「小野寺さんと友達だからジーマクレジット少しスコア上げてあげるよ」「でも國光さんと繋がっているからちょっとマイナスかな」みたいになります。

國光 えぇー!?そんなことでスコアが下げられるのですか?

尾原 だから中国に行くと、今やジーマクレジットのスコアが650以上ある人が、合コンでとてもモテます。

國光 そうなんですね!スコアが650あるとすごいのですね。

尾原 「繋がらせてください!」みたいな感じになっています。

中村 それができるんだったら、1つ思い付いたのですが、「メル傘」というのもできますね。

皆、天気予報を見て傘を持っていっていますが、本当は「借りパク」みたいな形にしたらいいのではないかなと思いました。

ビニール傘は誰でも使えるようにしたら僕はいいのではないかなと勝手に思っています。

尾原 実際そうですね。

中村 しかし、傘のクラウドシェアリングというのは返却率が非常に悪いです。

なので、小さな善行を積むと借りられるようにすればいいですね。

國光 きちんと返すと、少しずつポイントが貯まるみたいな仕組みですね。

尾原 おっしゃる通りで、深圳にもシェア傘があります。深圳の主要なバス停には、置き傘が置いてあります。

写真左から、尾原氏、小笠原氏

それをメルチャリのようにQRコードを使って持っていけるのですが、面白いのが、スコアに影響するところです。

結局、「借りパク」したところで、傘というのはたかだか1,000円ぐらいのものです。

罰金という形でやると、「まあいいや」と言ってお金を払ってしまいます。

なので、「返却を怠ったら、信用スコアをマイナスにします」という仕組みになっています。

罰金だとお金を払って終わりですが、自分のスコアやレビューは後々まで残るので、「スコアを汚されたくない」という気持ちが働き、犯罪をしなくなるということです。

國光 テンセント(騰訊)にも同じようなサービスがありますか?

尾原 テンセントは先日、WeChatPay(微信支付)で同様のサービスを発表しました。

ほぼパクリですが。

中村 パクリ問題は難しいですよね。

上手くいっているものなら、やればいいのではと思ったりします。

國光 それがイノベーションですよね。

尾原 まずは徹底的に模倣する。

それではこの辺で、小笠原さんからプレゼンテーションをお願いしましょうか。

コネクティッド・ロック「TiNK」が実現する未来の安全とは?

株式会社ABBALab代表取締役/さくらインターネット株式会社フェロー 小笠原 治 氏

小笠原 これは2017年11月に発表した、コネクティッド・ロックと僕たちが呼んでいる通信する鍵です。

出典:「TiNK」ウェブサイトより

Wi-Fiではないので、ドアに付いているだけで設定が必要ありません。

入居した時には、既に付いています。

アパマン、シャープ、メルカリ、さくらインターネットがそれぞれ出資して、各々の分野で役割を担っています。

國光 (モニターに映ったスライドを指して)スライド下のロゴは何ですか?

小笠原 これは、家賃と一緒にIoTのサービスの利用料金を回収する会社です。

たぶん皆さん、IoT製品を買っていないですよね?

尾原 結局そうですね。

小笠原 今の時点ではスマートロックなんて売れているわけがありません。

日本国内でたぶん5万台も売れていないと思っています。

August Homeという、2017年に年ASSA ABLOYに買収された会社がありますが、そこでもおそらく30万台~40万台くらいしか売れていないはずです。

尾原 そのくらいなのですね。

小笠原 それで数百億円のバリュエーションが付いている状態です。

▶参考記事:スマートロック分野を狙っているのはAmazonだけではない | TechCrunch Japan

これはもともと、この事業に携わっている牧田という女性が、元カレに勝手に鍵をコピーされていたことが発端となり始まりました。

國光 真面目に危ないですよね。

小笠原 別れた後に不法侵入されていたことが分かり、「物理鍵をなくしてやる!」と言い出しました。

尾原 すごいですね、仕事が自分のミッションと重なっているわけですね。

小笠原 重なっていますね。

國光 (動画を見て)びっくりした、中に入ったらストーカーがいて襲われるのかと思いました。

尾原 いやいやいや、入られませんから!

小笠原 入られたら宣伝になりませんからね(笑)。

この次の動画もご覧ください。

國光 これも、よくあるシーンですよね。

尾原 振られたら入られないようになるんですね、うわ~辛いですね。

でも仲直りしたら入れるようになるんですよね?

小笠原 本人がもう1回鍵をシェアすれば入れます。

國光 なるほど。

小笠原 でも、スマートロックというのは、単体でスマートなことはありません。

それだと単にスマホロックなだけです。

「いろいろなサービスと組み合わせてスマートにしていきたいな」という意味で、これを「コネクティッド・ロック」と呼んでいます。

IoT/M2M向けSIMが月額基本料金12円から利用できる!

左から順に、小笠原氏、小野寺氏、國光氏

國光 月額通信代とかはどれくらいかかるのですか?

小笠原 月額通信代など、全部合わせて500円で、端末代はなしです。

國光 通信代だけだと?

小笠原 これはsakura.ioを積んでいるので、通信代だけだと月60円です。

國光 60円だけですか?

尾原 通信量が少ないからですね。

SIMのコストはどんどん安くなっています。

テキストで飛ばす量が少ないため、月額の通信代自体は本当に100円ないしは、それ以下です。

最近だとソフトバンクがスマート体組成計にSIMを入れて配っていますし、いろいろなところで取り組んでいます。

國光 こういった通信はソラコムもやっているのですか?

小笠原 ソラコムもやっていますね。

國光 ソフトバンクも?皆やってるのですか?

小笠原 皆やっています。それぞれ値段と使えるデータ量が少しずつ違います。

國光 やはりその中ではさくらが一番いいのですか?

小笠原 さくらは、1番安いはずです。

SIMは1枚あたり12円/月というものを出しました。

國光 これはもう今にもすぐ使えるわけですよね。

月60円ぐらいでこういうチップもあって、あわせて500円ぐらいですよね。

小笠原 これはたぶん、5Gの時代へ向けての前哨戦をやっているだけだと思います。

まず100万室に取り付けるというのは遠い先の話ですし、まだ産業になってもないですし、小さい市場の一部にすぎません。

國光 これが5Gなったら何が変わるんですか?通信量が安くなるのですか?

小笠原 いきなりは安くなりませんが、結果的にもっと大きなデータのやり取りが、今ぐらいの値段でできるようになると思います。

尾原 スマートロックについているカメラで顔写真を映して、「誰か来ていますよ」という情報がスマホに届いて、相手毎に許可するということができるようになるかもしれません。

IDとセンサーがどこにでも置けるようになって、「この人にはこれをやっていいよ」と許可を与えたり、状況が変わったから「この人は中に入れない、使わせない」というようなことができるようになると思います。

更にブロックチェーンのようなものが加わると、「この人にはこの料金で貸すけど、この人にはただで使ってもらう」ということもできるようになると思います。

國光 5Gの時代になるとこれはどのくらいの価格になると想定していますか?

今は月額500円取らないと成立しないですよね。

小笠原 今は、500円ぐらいだったら利益が出る水準です。

國光 そうですよね。これがいくらくらいになるのですか?

小笠原 現在さくらインターネットで試験的にやって値付けしたのが、LTEのSIMが1枚当たりの月額基本料金が12円です。

國光 12円ですか??

小笠原 そういうものを出しました。

▶参照:さくらインターネット、月額基本料金12円のIoT/M2M向けSIMサービス「さくらのセキュアモバイルコネクト」を提供開始

1MBを6円くらいで送れるようにするので、この鍵のコントロールだったら20円以下ぐらいまでにはなると思います。

加えてネットワーク側のコストがかかりますが、それでも40~45円くらいです。

國光 SIM代はどれくらいですか?

小笠原 SIM代は最初に2,000円ぐらいかかります。

MMF2(Machine to Machine Form Factor)という、いわゆるeSIM(embedded SIM:nano SIMよりさらに小型な埋め込み型の次世代SIM規格)の一種です。

國光 これも値段は半分ぐらいになりそうですか?

小笠原 なるだろうと考えています。

中村 段々、スタートアップの新しいソリューションとそれに質問している投資家という画になってきましたね。

でも月500円は、ずっと使うことを考えると少しと高いと思うかもしれませんが、いかがでしょう。

小笠原 今は引っ越すと賃貸の場合、皆シリンダー交換代を2万円ぐらい払っています。

そして大体3年以内に引っ越します。

尾原 そうすると年間7,000円ぐらい払っている計算になりますね。

小笠原 払っています。なのでそれほど変わりませんね。

話が飛び飛びになってしまったのですが、「いろいろな技術がありますよね」「研究していることもありますよね」とサービス側から少し寄っていって、上手く新しい技術を使っていくという関係をしっかりスタートアップ界隈でも作れたらいいなと思います。

今はどうしても、使えるものを使っているだけの状態です。

スマホだと、アプリを作りやすいから作るという感じですよね。

昔だと「サーバーが使いやすくなったからサーバーを使うようになる」という関係だったところを、もう少しサービス側から研究側ないしは技術側に寄っていかないといけないと思っています。

(続)

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編集チーム:小林 雅/本田 隼輝/尾形 佳靖/戸田 秀成/鈴木ファストアーベント 理恵

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