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7.変態美食家が提案する飲食店のマーケティングファネルとは

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ICC KYOTO 2022のセッション「大人の教養シリーズ「美食」について語りつくす(シーズン5)」、全7回の最終回は、小規模な名店が多数存在する日本だからこそ、飲食店に実践してもらいたいマーケティングを変態美食家ハセマコが熱く語ります。人気店がファンを抱えたあとに考えるべきこととは? ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット FUKUOKA 2023は、2023年2月13日〜2月16日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット KYOTO 2022 ダイヤモンド・スポンサーの ノバセル にサポート頂きました。

「大人の教養シリーズ「美食」について語りつくす(シーズン5)」の配信済み記事一覧


「守破離」と「ハイプサイクル」の関係性

長谷川 次に、「守破離」で店を分類するのですが、教えを守って乗り越えた後、どこまでオリジナリティを追求できるかというのが、守破離のフレームワークです。

守っているうちは、シェフの修行する元に似ています。

破っているところは、修行元よりも美味しいのでは?という感想を持ちます。

そして離れているところだと、そもそもどこで修行したの!?という感覚になります。

これを話した時、会場はバカ受けでしたが、実はきちんと理解されていなかったと思うので、ハイプサイクルも含めた解説のスライドを用意しました。

守っているうちは、ハイプサイクルで言う新店・話題店と同じく、有名店出身だから同じ味を提供していれば、すぐ人気店に近づくのです。

「◯◯出身の若手が独立したらしい」というだけで、食べログの点数がとにかく跳ね上がるのです。

しかし、同じことをするだけでは破ってはいけないのです。

「師匠の方が美味しい」「師匠の味を真似し続けているだけだね」と思われて点数が下がってきた時に、自分の殻を破り始め、その結果、師匠を超えていく人も出てきます。

このように、ハイプサイクルと守破離は、グラフのような時系列、関係になっていると考えています。

さらに、実践編として、具体例を持ってきました。

話題の新店は、基本的にまだ守っているため、修行元と同じ仕事をして同じ味を出そうとしているパターンが多いです。

その結果、「あの若手が独立するので応援したい」や「師匠の店は予約が取れないので、弟子の店に初期から通って常連になろう」という客によって、独立直後に話題になり、オープン前から予約の取れない店になっているということが起きています。

そしてここには、師匠の料理の値段を超えるか超えないかという、値付け問題があります。

弟子の店では、師匠の店よりも安い値段をつけるというのが、流儀というか昔からの伝統です。

ただ、弟子が独立する際はパトロンがついていて、銀座の一等地に店を構えるので、値段を上げざるを得ないというケースも、ポロポロ出てきています。

ですから、どう値段設定するかは、非常に問題になると思います。

破っている例では、金沢・蛤坂の「蛤坂まえかわ」という焼き鳥屋です。

ここは「鳥しき」出身の方が、北陸なので新鮮なものが豊富な地元の食材と、鳥しきグループで伝統的に使われる福島の伊達鶏に加えて、高坂鶏という無菌鶏を、新しいチャレンジとして使っています。

つまり、既に師匠を超えにかかっているというか、師匠とは違う道を歩み始めているということなので、破りつつあるのではないかと思いますので、例に挙げました。

最後に、離れている例で「柚木元」を挙げています。

「柚木元」は若手の、先ほど(前Part参照)の和食の店にも出てきましたが、「招福樓」という滋賀の名料亭出身の方のお店です。

ただ、修行元をあまり売りにはしていない、完全に独自のスタイルを貫いており、もはや「柚木元」が「招福樓」出身とは食べても分からないくらいのクオリティを実現しています。

これら守破離のフレームワークとハイプサイクルを組み合わせ、自分が食べた際、どういうお店でどういう調理法で料理が作られているのかを見て、破っている、離れているなどを感じ取ることができるという考え方です。以上が、守破離のフレームワークです。

人気店がファンを抱えたあとに考えるべきビジネス

長谷川 「守」のところで触れたように、美味しいものを作ることとビジネスのバランスの問題は、どうしても出てきます。

お金を稼ぐのはビジネスとして当たり前ですが、金を稼ぐことありきになってしまうと、料理人としての心が失われてしまいます。

そこで、料理人とビジネスの話を最後にしたいと思います。

まさに、ICCっぽい話ですね!

(会場笑)

急にマーケティングファネルの話になりますが(笑)。

ICCサミットに来ている方ならご存知だと思いますが、未認知の状態から、認知をしてもらい、選んでもらい、一度転換した後に、ファンになっていかに発信してもらうかが大事になるという、ファネルです。

なぜ僕が、ファネルの説明をしているのかよく分かりませんが(笑)、これを軸に、普通のお店と人気のお店がどう違うのかをまとめています。

人気がなくて、何とか売らなくてはいけない店は、ファンを獲得できないのに何とか売ろうとするため、広告を出稿したり、クーポンをばらまいたり、スタンプカードを作ったり、SNSで集客したり、というアクションをするようになります。

1回の食事で、例えば高いシャンパンを飲んでもらうなど、いかにお客様からお金を取るか、単価をどうやって上げるか、と考えるわけです。

しかし人気店になればなるほど、広告やクーポン、割引には頼らずに、ファンを大事にし、いかに一度の食事で感動してもらうかに全てを懸けるのです。

それだけだと、昔ながらの職人が頑張っていても儲からないということになるのですが、最先端の飲食業ビジネスモデルがファンマーケティングという考え方になった後は、ECやイベントなどで、“外貨”を稼ぐことが非常に重要です。

そのお店で食事をした後、めちゃくちゃ感動してリピートしたいと思った人たちを抱え込んだ状態で、料理店の売上以外の外貨をいかに稼ぐかが、まさに最先端のビジネスモデルだと思っています。

ですから、値付けで悩んでいる料理人にはぜひ、このファネルの理論を広げていきたいです。

(会場笑)

まずは1回の食事で感動してもらい、次また来てもらえるお店を作ってこそ、飲食業が続いていくということを、全国で布教していきたいと思っています。

飲食店のブランド化で“外貨”が稼げる

山本 これはすごく興味深いポイントだと思っており、これについては、シーズン2でも少し話した記憶があります。

7.シェフの技術が直接味わえる、特殊で贅沢な日本のレストランシーン(シーズン2)

飲食店のマーケティングファネルというより、高級人気店のファネルという側面がすごく強いです。

我々が恵まれていると思うのは、日本の飲食店の最高峰は、ジョエル・ロブションアラン・デュカスのようにビジネスとして成功する以上に、8席しかないカウンターを客単価5万円の客で満席にするということに重きを置いています。

みんながそこを目指しているから、決して安くはないけれど、高いクオリティのものを食べられるオプションがこんなにたくさんあるというこの状況は、結構、異常事態です。

ICCサミットに来ている皆さんの立場からしたら、それほど小さなキャパシティでビジネスをしろと言われたら、何を言っているの?と感じるくらいのビジネスサイズですが、それが最高峰であるというコンテクストがこの国にはあります。

だからこそ、僕らは体験できるわけで、その環境があることはすごくありがたいと思いますね。

長谷川 まさにそうですね。

ハコを大きくするか小さくするかという話と似ていますが、飲食店だけで稼ごうとすると、ヨーロッパ型のハコを大きくしてクオリティを下げてでも100席の店にするしかなくなります。

逆に、日本のコンテクストの中で重要なのは、飲食店がブランド化されれば、コラボやイベント、ECで“外貨”を稼げるようになるということです。

菅原 「日本料理 たかむら」は、巨匠なのに上手いですよね。

長谷川 そうですね、まさにあのモデルです。

1食の値段を下げることで、クオリティを担保した上で、別に儲けたくないというわけではなくて、外から稼いでくるというのが最先端だと思います。

御料理 まつ山」も、アイスや明太子を売っていますね。

ミシュラン1ツ星「御料理 まつ山」松山照三プロデュースのアイスクリーム専門店「氷菓子屋KOMARU 薬院店」福岡市中央区オープン(西日本walker)

菅原 そうですね。

 もうそろそろ…。

恒例ハセマコさんによるまとめ

長谷川 はい、ではいつも通り、最後のまとめです。

今日話したのは、「体」を食材、状態、選別に分類すること、ハイプサイクルと守破離を使いこなすこと、そしてファネルを理解して人気店のビジネスモデルについて学ぶことでした。

今回の内容を一言でサマリーすると、「マーケティング5.0」です。

つまり、テクノロジーと人間らしさの両立による価値提供という、まさにシーズン5にふさわしいマーケティング理論として、締めたいと思います。

飲食店も、ハイプサイクルや守破離など色々な考え方のもと、食事1回で稼ぐのではなく、“外貨”を稼ぐことも含めてお客様との関係を築いて、人間らしさとの両立によってビジネスをすることが大事です。

これを、今回のまとめとしたいと思います。

 ありがとうございました。

時間が押してしまいましたが、こちらで終了とさせていただきます。

皆さん、改めて拍手をお願いします、ありがとうございました。

(終)

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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成/大塚 幸

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