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ICC KYOTO 2022のセッション「Well-being産業の今後」、全6回の③は、そのWell-beingとは一体何なんだ? という問いから議論がスタート。その要因は比較的万人に共通するものなのに、人それぞれに異なるWell-beingについて、さまざまな論点から話し合います。あなたがWell-beingを感じるのは、どんな状態ですか? ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット FUKUOKA 2023は、2023年2月13日〜2月16日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションは、ICCサミット KYOTO 2022 プレミアム・スポンサーの住友生命保険にサポート頂きました。
Well-beingは数値で測れないもの
藤本 スライドに「データ」と書いていますが、Well-beingのデータを集めるのは厳しいですよね。
定義が明確ではないという理由もありますが、主観で、一人一人が違うデータを持っているので、最終的にデータから色々なサービスを作ってWell-beingの度合いを上げようとしたとき、何でWell-being度を測るかがすごく難しいと感じています。
どう思いますか?
丸 測らないことですね。
藤本 測らない?
丸 何か、絵になるのです。数字で出そうとしても出ないので。
藤本 絵で見ろ、と?
丸 はい、絵や色の方がいいですよ。
「データにします、数字にします、50点だとWell-beingではない」という、その考え方が古いのです。
藤本 オレンジとか?
丸 オレンジがピンクっぽくなったとか…。
藤本 オーラみたいなものですね。
丸 そうそう。そこも、まだみんな分かっていないのです。
例えば、焚き火の色も、木の種類によって違いますよね。
石川 そうですね。
丸 あれ、音も違うんですよ。
石川 それこそGoogleのイメージ検索で「Well-being」を検索すると、出てくる絵が各国で全然違います。
▶「Well-being」の画像検索結果(Google)
藤本 へー!
丸 面白いですよね。
石川 例えば、そういうやり方もありますし…。
丸 最近、言葉を入力すると自動で絵が生成される、画像生成AIなども出てきていますよね。
萩原 そうすると、Well-being or notは人によって違うということですか?
丸 そう、全然違います。
たとえば、タバコを吸ってお酒を飲んでいる時がすごく幸せ、という人がいるとします。周りから見たら「全然Well-beingじゃない」と言われますよね。
ほっといてくれよ、という話ですが。
健康であることがWell-beingであるとすれば、これは絶対にWell-beingではないですよね。
藤本 うちのVitalityは健康増進型保険なんですが(笑)。
丸 そうでしょ? でも、健康増進= Well-beingなのか?と、僕は思うわけです。
藤本 それは違う、と。
丸 違います。
選択肢があり自己決定できることがWell-beingの最大の要因
丸 ごめんなさい、ここを、すごく議論したかったんですよ。
健康であることをWell-beingであると言っている方がいらっしゃって…。
僕はお肉もワインも好きですが、そればかりでは健康を保てませんよと言われても、多分食べると思います。
それで幸せを感じ、「ああ、いいなあ」と、よりよく生きていると思えるからです。
人によって違いますよね。
未来を見過ぎると、Well-beingではなくなります。
例えば、未来を見たら、タバコを吸うと早く死ぬよと脅されるわけです。
でもそうではなく、今を見て、その時点での感覚や感性、直感がつながる…例えば、選べることですね。
今日はタバコを吸ったけど明日は吸わないなど、選択できるということが、まず、Well-beingの一番根本的な考え方です。
チョイスができなければ、だめなんです。
石川 おっしゃる通りです。
選択肢の中から自己決定できるというのが、Well-beingの最大の要因です。
丸 その通りです。
そういう、Well-beingの基本原理原則を見ないから、表面だけ見たアンケート調査データをデータと捉えてしまい、本質を見失ってしまうのです。
だから、データの見方も変えていかなければいけないのではと思いますね。
石川 結局、データは白黒つけるものではないのです。
丸 そう。
石川 健康に良いか悪いかではなくて、確率でしかないのです。
それこそタバコも、3人スモーカーがいたら、3人中1人が、早死にしたり色々な病気にかかったりするわけで、2人はピンピンしているのです。
だから、タバコを吸うという行為は、6発分の弾丸が入る銃があったとして、そこに2発分の弾丸が入っていて、それでロシアンルーレットができるかどうかということなのです。
丸 まさにそうですね。
石川 ですから、確率的なものでしかないのです。
Well-beingは、哲学や宗教の対象だと収束しませんが、なぜ帰納的アプローチで科学になり得たかと言うと…、藤本さんがおっしゃる通り、Well-beingは一人一人定義が違って多様です。
よく分からない、ということも含めて多様です。
けれども、Well-beingの要因を聞くと、ものすごく収束します。
例えば、一番分かりやすい要因は経済的安定で、世帯収入は非常に重要な要因です。
ただ、お金を使ってどういうWell-beingを実現したいかが、人によって違うのです。
酒タバコの人もいれば、山登りの人もいるし…。
丸 貯蓄の人もいるし(笑)。
石川 そう(笑)、でも要因は同じですよね。
つまり、Well-beingは多様だけれど、Well-beingの要因にはめちゃくちゃ共通項があるのです。
丸 そうそう、結構単純なのですよね。
石川 選択肢と自己決定の話もそうです。
丸 おっしゃる通りです。
石川 だからWell-beingは科学になり得るし、サービス開発や政策の対象になっているのです。
正確に言うと、Well-beingは、Well-beingの要因に働きかけることであり、決してWell-beingを定義しようとしているのではないということですね。
点数が高い人生は良い人生なのか?
藤本 Well-being産業の今後を考えていく上で、Well-beingの定義自体から考えるのはあまり意味がないということですか?
石川 意味がないことはないと思いますが、結局、哲学者や文化人が、「Well-beingとはこうである、幸せとはこうである」「孔子やブッダが…」と持論を述べる時代が、これまでに数千年あったわけです。
数千年間、持論を述べ合ってきて、これだという結論は出ていません(笑)。
そう考えると、僕は、定義は諦めた方がいいのではないかと思っています。
藤本 なるほど。
石川 定義については、誰かが持論を述べるのではなく、各自に任せていく方がいいと思います。
丸 未来と今、この時間軸をどう捉えるかで、「データに意味があるかどうか」は大きく変わると思います。
時間軸の残りの長さ、今の行動パターン、未来の選択肢のチョイスがしっかり計算できると、数値化できる可能性はあります。
ただ、三次元、いや時間軸を入れるので四次元、つまり4D志向になるかもしれないので、色で表現した方が早い可能性がありますね。
藤本 なるほど、色ね。
丸 そうです。
藤本 考えたことなかったです。
丸 色って、すごいんですよ。
萩原 一点お伺いしたいのですが、サービスや政策の領域でWell-beingが対象になるのが良いという話がありました。
サービスや政策を比較した際、「これは、よりWell-beingである、これはWell-being度で劣る」のような比較はできるのでしょうか?
先ほど、量的には考えられないということもおっしゃっていましたが…。
石川 エビデンスベースで行うと、できると思います。
例えば、医学には同じ病気に対して、色々な治療方法があります。
Well-beingには、客観的Well-beingと主観的Well-beingがあります。
ある病気に対する治療方法が3つあるとして、どれも客観的にはそんなに治療成績は変わらないのだとしても、それぞれの治療に対する患者の主観的な体験は全然違うということはありえます。
つまり、医療の世界においても、客観データだけだけで判断するのではなく、主観データを含めて判断しようと変わってきていることから、医療界など厳密な領域から比較が始まっていくのではないかと思いますね。
萩原 ありがとうございます。
藤本 なるほど。
色の話に戻ると、赤、黄、青で、「青がハッピー、黄色が黄信号」を表すということではなくて…。
丸 そういう意味ではなくて、性格を表すのです。
藤本 性格を表す色?
緑のオーラの人が、どれだけ緑になれるかということですか?
丸 基本的には、グラデーションになります。
グラデーションの中で、その人がどういう色になっているかを把握すると、正しく状態を理解できる可能性があるということです。
人間は、常に揺らいでいるものです。
例えば、「今日はここに行こうかな、やめようかな」「今起きようかな、やめようかな」「告白しようかな、やめようかな」など、ずっと揺らいでいるのです。
人間の揺らぎに関する研究もありますね。
だからこそ、ピタッとした数字は、実は真実ではないのです。
瞬間ごとに変わるからです。
だから、ずっと動いている色の方が、本来の指標となるのです。
色などで表現すると、オリジナリティが出ると思いますね。
石川 そういうケースは、よくありますね。
例えば、10点満点で7点をつけたとしても、それは6点寄りの7点なのか、つまり、7.1点と7.9点はかなり違いますよね。
でも、どちらも7点になってしまう。
丸 そうそう。
石川 その揺らぎをうまく捉えられないのが、数字で表現することの弱点ですね。
藤本 数字で表すなら、三次元なので、座標軸のようなもので表現した方がいいのでしょうか?
丸 そうですね、座標を動かすと色を変えられますから。
混ざれば良いだけですし、色々な色がつけられます。
石川 例えば、10点満点で自分の生活を毎年評価するとして、死ぬまで毎年10点がついたとします。
ずっと10点だった人生を振り返った時、それは良い人生だったと言えるのか?という問いが生まれます。
つまり、「点数が高い人生が良い人生なのか?」という視点が、常に疑問としてあるのです。
藤本 なるほど。
石川 丸さんが言っていることはそれに近くて、数字で表現すると、良い=数字が高いになってしまうのです。
丸 10を目指して10をずっととっていれば幸せかと言うと、それは違いますよね。
石川 良い=多様という考え方もあります。
例えば、10点満点で、10点の年もあれば2点の年もあるなど、色々な点数をとった方が、振り返った時に良い人生だったと思いやすいということもあります。
藤本 振れ幅が大きい方が、高め安定であるよりも良いということですね。
石川 ただ、10点満点にすると、10項目しかないので多様性がなくなりますが、色だともっとたくさんの項目になりますよね。
色々な色をとった方が、振り返った時に良い人生だったと言えるのではないでしょうか。
丸 今日は何色の洋服を着ようかとか、毎日、違う色を見ているのです。
例えば、おしっこやうんちの色もそうです。
皆さんは見ないかもしれませんが、僕は毎日うんちの色を見ていて、直感的にちょっといつもと違うなどの微妙なニュアンスで、その日の健康状態を何となく理解します。
そういうことを調べていくと、自分はより豊かに生きるための一つの指標になるのではないかと思います。
色はすごく大切な指標の一つなので、Well-beingという文脈で、指標開発されれば面白いと思っています。
(続)
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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成/大塚 幸