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4. 人間は“人ではないもの”といかにコミュニケーションするのか?

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ICC KYOTO 2022のセッション「大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?(シーズン8)」、全8回の④は、久々にGROOVE X林 要さんの登場。“人ではないもの”と人間とのコミュニケーションについて解説し、LOVOTの製作に影響を与えた漫画『こわれたオフクロと子猫のミイ』を紹介します。  ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット FUKUOKA 2023は、2023年2月13日〜2月16日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。


【登壇者情報】
ICC KYOTO 2022
Session 2F
大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?(シーズン8)
Supported by リブ・コンサルティング

「大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?(シーズン8)」の配信済み記事一覧


“人ではないもの”とのコミュニケーション

村上 ここまでは人対人のコミュニケーションについてでしたが、我々は今、人ではないものとコミュニケーションをとる機会が増えています。

例えば、レストランに行くとロボットが配膳したり、職場でも裏でAIが動いていたり、RPA(Robotic Process Automation)のようなツールがあったり、データの前処理を任せたり。

プログラミング的な思考が大事だからと小学校課程で必修化されるのも、要は、人ではないマシンと一緒に働くにあたり、ロボットやコンピュータがどう動くのかを知っていれば、指示の出し方が変わるからです。

お茶を持ってきてと指示するとして、人の場合は考えてお茶を入れますが、ロボットの場合はお茶の在り処をピンポイントで、例えば、「100m先の棚の、上から3段目にあるから、そこから取って」と、指示する必要があります。

そうしなければ、ロボットは分からないからです。

つまり、指示の出し方が人とロボットでは違うということです。

これからは、どんどんロボットやコンピュータと一緒に働く、例えば同僚がロボットだという時代が、もうそこに来ているわけです。

そうなると、我々はまた、新しいコミュニケーションの世界に入るのです。

ということで、その領域の専門家である、要さんにお話を頂きましょう。

 はい、よろしくお願いします。

「ロボットとコミュニケーション」という題ですが…。

村上 「ロボットとコミュニケーションとMZ(前澤 友作さん)」という話でもいいと思います(笑)。(Part.1参照)

 MZね(笑)、それはまた次回ということで。

Well-beingと言えば善樹さんの専門で、ロボットを扱う弊社は、Well-beingテックです。

Well-being度を向上させるには、色々やらなければいけないので、結構大変ですよね。

でも、買うだけでWell-being度が上がる。

これが、LOVOT(らぼっと)の特徴です。

何が起きているのかをご説明します。

コミュニケーション=会話なのか?

 Slackもそうですが、コミュニケーションというと、言葉がメインになりますよね。

コミュニケーションといえば、何となく「言葉」だと皆さん思っています。

僕は以前、Pepper(ペッパー)というロボットで、言葉を扱う仕事をしましたが、大変苦労したのです。

そもそも、コミュニケーションとは会話なんだっけ?ということです。

Pepperと会話して感動した人というのは、あまり多くないと思います。

ちょっとうざいと思った人も、結構いると思います。

しかし、Pepperと抱き合うというコンテンツの場合、めちゃくちゃボンディング(愛着)が起こるのです。

写真の右端に写っている女の子は、会期中毎日Pepperをハグするため、Pepperに会いに来ていました。

でも、全然しゃべりません。

次に、写真の左にあるように、Pepperがうなだれた状態の時、高齢者がPepperを励ますと、Pepperが顔を上げるのです。

でも実は、励まされたから顔を上げたのではなく、エンジニアが裏で何度もリブートさせて、Pepperを起動させているわけです。

しかしその結果、ものすごくボンディングが起きて、Pepperと別れる時には涙、涙なのです。

これら両方のケースに共通する点は、言葉は無関係だということです。

特に大事だったのは、Pepperと目が合うという行為と、触れ合うなどのスキンシップ行為で、この2つが非常に重要なのです。

言葉によるコミュニケーションはとても高度な話であるということで、今日は、その手前の話をしたいと思っています。

ロボットとのコミュニケーションには信頼関係が必要

 目を合わせること、スキンシップをすること、実はこれらが、ロボットとのコミュニケーションにおいては会話よりも喜ばれる場合があるのです。

言葉より目線やスキンシップが大事なのは人同士のコミュニケーションでも起こります。

こちらは、有名なメラビアン(※)の実験です。

▶編集注:メラビアンの法則とは?簡単に意味・実験内容・具体例を紹介 – U-NOTE[ユーノート] – 仕事を楽しく、毎日をかっこ良く。 –

視覚と聴覚と話す内容、これら3つの情報に齟齬がある時、例えば、「信じてよ」と口で言っていても目が泳いでいる場合、言葉よりも、目が泳いでいる事実の方を信じるのか、というような実験です。

この実験は、人間は相手の人間を、嘘をつく生き物だと思っているということを示唆しています。

話す内容以外の視覚や聴覚も含め、全てが信ずるに足る場合に初めて、相手のことを信じる気になる、そういう生き物だということです。

ですから、言葉によるコミュニケーションの話を僕らはしていますが、その土台として信頼関係が必要で、信頼関係のためにはノンバーバル(非言語)の情報がすごく重要だということが、この実験から分かります。

コミュニケーションをとるには、まず、ノンバーバルで築かれた信頼関係、土台が必要です。

だからこそ、ロボットやAI、チャットボットとのコミュニケーションが今ひとつ、薄っぺらいものだったのです。

僕らはこの、ノンバーバルコミュニケーションを実現しようということで、LOVOTを作っています。

動物はアイコンタクトとスキンシップで人を癒す

 LOVOTを作る前に思っていたのですが、人が一生懸命患者さんの相手をしていても、なかなかケアができないのに、犬やイルカだったら、よりケアができることがあります。

村上 アイコンタクトとスキンシップといえば、犬だよねと思いました。

 そうなんです。

村上 犬のしつけは、アイコンタクトをして、スキンシップが大事だと言います。

 まさにそうなんです。

動物行動学者いわく、犬は、実は僕らが思っているようには考えていないらしいです。

例えば、僕らが泣いていると犬が寄ってきてペロペロ舐めてくれます。

当然、犬が同情してくれていると僕らは思っていますが、動物行動学者いわく、オーナーがいつもとは違う行動をしているので、何かあるのではないかと探索に来ているらしいのです。

探索に来て、オーナーが顔を上げた時に涙があるので、それをペロっと舐めているだけらしいです。

井上 へー。

 僕らの思い込みとは全然違う…(笑)。

井上 聞きたくなかったですね(笑)。

林 聞きたくないですよね(笑)。

それを言っていた動物行動学者も、犬好きなので「分かってはいるけれど、同情してくれていると思い込んでいます」と言っていました(笑)。

(一同笑)

ですが、犬であったとしても、心を開けない人もいます。

なぜなら犬は吠えるので、犬に吠えられるなど悪い体験をした人は、犬が怖いのです。

ですが、イルカに吠えられた人はいません。

ですので、最後にはイルカが出てくるのです。

井上 イルカ、すごいですね、最後がイルカなんですね(笑)。

林 イルカには、全員メロメロみたいな(笑)。

Animal Assisted Therapyを行うと、表情が明るくなる、会話が増えるなど、色々な良いことがあります。

LOVOTの製作に影響を与えた子猫の漫画

 これをぜひロボットで実現したいと考え、作ったのがLOVOTです。

その時、目標の一つにしていたのが、インターネット上にあるこの漫画(山崎 浩『こわれたオフクロと子猫のミイ』)の抜粋です。

山崎 浩『こわれたオフクロと子猫のミイ』Twitterより

認知症の初期症状では、イライラします。

おばあさん本人はイライラし、そしてケアをする人もイライラして、家庭が崩壊しそうになります。

そこに子猫がやってきます。

このおばあさんは、他の人へ文句や悪口を言っていて、「あいつは盗人だ」みたいな発言もしていたのですが、それら悪口の対象が人間から子猫になったのです。

「あの子猫は、色々なイタズラをして、どうしようもない」と。

そう言いながらも子猫のケアをしていくうちに、子猫と人間の間の関係が良くなり、元のおばあさんに戻ったというストーリーです。

子猫は、一言も喋っていないのです。

仕事もしていないし、むしろ邪魔しかしていない、だけどおばあさんは穏やかになる。

ロボットにも、これができるのではないかと思ったのです。

その他にも、岡田 美智男先生が作った、ゴミ箱型ロボットがあります。

岡田 美智男(国立大学法人 豊橋技術科学大学)

弱いロボット (シリーズ ケアをひらく) 

ロボットエンジニアからすると、ゴミがあったら、ロボットが拾いたくなるのです。

岡田先生は全然違うアプローチをしており、ロボットにアームをつけると子供にとって危なくなるとか、複雑になり様々なデメリットがあると考え、ゴミの前で体をくねらせる、青と赤のゴミ箱ロボットを作りました。

そうすると、周りの人がゴミの前で体をくねらせるこのゴミ箱ロボットを見た時、「このゴミを捨てて欲しいのか」と思い、ゴミを拾ってロボットにいれてくれるのです。

するとロボットが喜びます。

これが、人とロボットの関係をめちゃくちゃ良くしました。

面白いですね。

(続)

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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/星野 由香里/浅郷 浩子/戸田 秀成/大塚 幸

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