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3. 生き様3.0とは? 本物のリーダーに出会うと、人は「自分」を好きになる

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「最高の成果を生み出すリーダーシップとチームマネジメントとは何か?(シーズン2)」7回シリーズ(その3)は、「生き様」がテーマです。三浦梅園、内村鑑三、盛田昭夫、ジャック・マーといった時代を超えたリーダーのエピソードとともに、リーダーに求められる資質とは何かを議論します。ぜひご覧ください。

▶ICCパートナーズではコンテンツ編集チームメンバー(インターン)の募集をすることになりました。もし興味がございましたら採用ページをご覧ください。

ICCサミット KYOTO 2018 第一回プレイベント・スポンサーとして、日本アイ・ビー・エム株式会社様に本セッションをサポート頂きました。

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット FUKUOKA 2019は2019年2月18-21日 福岡市での開催を予定しております。


【登壇者情報】
2018年6月26日開催
ICCサミット KYOTO 2018 第一回プレ・イベント
パネルディスカッション
最高の成果を生み出すリーダーシップとチームマネジメントとは何か?(シーズン2)
Supported by 日本アイ・ビー・エム

(スピーカー)
石川 善樹
株式会社Campus for H
共同創業者

岡島 悦子
株式会社プロノバ
代表取締役社長

中竹 竜二
(公財)日本ラグビーフットボール協会 コーチングディレクター /
株式会社TEAMBOX 代表取締役

渡邉 康太郎
Takram
マネージングパートナー / コンテクストデザイナー

(モデレーター)
琴坂 将広
慶應義塾大学
准教授(SFC・総合政策学部)

「最高の成果を生み出すリーダーシップとチームマネジメントとは何か?(シーズン2)」の配信済み記事一覧

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最初の記事
1.「ドラえもん」にリーダーはいるのか? 多様性が求められる時代のリーダーシップを考える

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2. これからの企業経営には「シチュエーショナル・リーダーシップ」が必要

本編


石川 「自分が一番好きなリーダーを1人挙げよ」と言われたら、皆さん誰を挙げますか?

岡島 どうしたの、急に?(笑)

(会場爆笑)

渡邉 好みのリーダーですか? うーん……。

石川 今いらっしゃる方でも、歴史上の人物でも、漫画や小説の中の架空の人物でもいいです。

「このリーダーシップ、好きだなー!」と思えるような人、琴坂さん、いますか?

琴坂 それぞれのリーダーシップを見て、相対的に自分自身のリーダーシップの型を考えるための「リファレンスモデル」であれば、たくさんいるのですが……。

しかし1人と言われると、思いつかないですね。

石川 理屈と言うよりも、感情として「好きで好きでたまらない!」と思える人はいますか?

渡邉 僕は、江戸時代の医者であり哲学者でもあった三浦梅園ですね。

石川 どんな人だったのですか?

渡邉 彼は私塾を運営していて、自分の家に弟子を呼んで一緒に蘭学を勉強していました。

Takram マネージングパートナー / コンテクストデザイナー 渡邉 康太郎 氏 (右から2人目)

出島に何度か旅行はしたことがあるものの、ほとんど自宅の庭にいて梅を育てていたので、梅園と呼ばれているわけです。

彼の名言はたくさんあるのですが、僕が一番好きなのは、彼の「世の中を見る目」です。

「地震が起こる時、『なぜ地面が揺れるのか?』という視点ではいけない。『なぜ普段は地面が揺れていないのか?』と考えなければいけない」と彼は言ったのです。

それを聞いて、ガーン!と頭を打たれたような感覚でした(笑)。

石川 なるほど、深い!!

渡邉 どちらかと言うと彼は、リーダーシップを発揮したというよりも、「哲学によって、人に道を示す人」ですね。

その生き様や目線には、かなり惹かれるものがあります。

岡島 「石川さんは誰が好きなんですか?」と聞いてあげた方がいいですよね(笑)?

(会場笑)

石川 話していいですか(笑)?

(左)株式会社Campus for H 共同創業者 石川 善樹 氏/(右)株式会社プロノバ 代表取締役社長 岡島 悦子 氏

琴坂 聞いてほしかったんですね(笑)。

内村鑑三に学ぶ「優れたリーダーが後世に残す4つのこと」

石川 まず、「優れたリーダーとは、後世に何を残すのか」というところからお話ししたいと思います。

僕がそれを学んだのは、内村鑑三さんが書いた『後世への最大遺物』という講演録を読んだ時でした。

キリスト教徒であった内村鑑三が、若いキリスト教徒たちに向けて行った講演です。

青空文庫から公開されており、20分くらいで読めるので、もし読んだことがなければぜひ読んでください。

要点を言うと、「人としてこの世に生まれたからには、後世に貢献するべき」であり、残すべきものとして彼が第一に挙げたのが、「お金」でした。

お金を残すほど素晴らしいことはない、と言うのです。

家族への遺産相続ではなく、「後世に」残すというのがポイントです。

そして若いキリスト教徒を見て、「君たち、お金が稼げそうにないね」という話をするわけです(笑)。

琴坂 すごい講演録ですね。

石川 明治時代の講演録なのに、『(満場大笑)』と書いてるんですよ!

岡島 その時代にも、そういう表現があったんですね(笑)。

石川 めちゃくちゃ面白いんですよ!

内村鑑三自身も「自分はお金を残せない」と言って、じゃあ二番目に残すべきものは?というと、それは「事業」だと言うのです。

例えば土木事業、「橋や道路を作ることは素晴らしい」というわけです。

そしてまた、「君たち、事業も残せなさそうだね」という話をして(笑)、三番目に挙げたものが「思想」でした。

人がつらい時や悲しい時に、前を向いて生きていこうと思えるような思想を残すのは素晴らしいことであり、文学者は素晴らしいというわけです。

しかし内村鑑三は言うのです。

「俺はお金も事業も思想も残せそうにない」と。

そこで「四番目に挙げるものを残そうと思う」と言って挙げたのが、「生き様」だったのです。

「いかに生き、死んでいったか」という生き様を残すことは、後世の人々に勇気や希望を与えるだろう、と内村鑑三は考えたわけです。

「お金、事業、思想、生き様」、これら4つがおそらく、偉大なるリーダーの条件だと僕は思いました。

▶編集注:上記の『後世への最大遺物』では、4つめの“生き様”は、“勇ましい高尚なる生涯”と表現されています。

そして、ここからが大事なんですけれども!

琴坂 何と、ここからが肝心なのですね(笑)。

岡島 期待をふくらませすぎだよ(笑)。

石川 いいですか? 話していいですか?

岡島 いいよいいよ、はい、話して(笑)。

石川 この4つを!全部残しそうな人がいるんですよ、この地球上に!

その名は……ジャック・マーです!

ジャック・マーは「後世に残すべきもの」全てを持っている

石川 皆さん、ジャック・マーという男をご存知でしょうか!?

中国の、アリババ(阿里巴巴集団)という会社を創業した方です。

本セッションのシーズン1で、セプテーニの佐藤さん(同社代表取締役・佐藤 光紀氏)が、「プロダクトに魂を込める」という話をされていました。

サービスや事業に魂を込める、という概念があるのかと感じ、すごく印象に残りました。

僕は前回のイベントに出てから、「魂が込められているもの、何かないかな」と探していたのです。

少し前に、平昌オリンピックがありましたよね。

オリンピックで流れる企業CMを見ていた時、「これ、めちゃくちゃ良いCMだな」と思ったCMがあったのです。

それは「To the Greatness of Small」、つまり「小さい人たちでも偉大な力を持っている」というメッセージが込められた、とても感動するCMでした。

そして最後に、「Alibaba Group」という文字が出てきたのです。

そこで僕は、「こんな素晴らしいCMを作れるということは、めちゃくちゃ魂が込められたサービスに違いない」と思ったわけです。

そしてアリババの創業者を調べたら、ジャック・マーだったのです!

岡島 調べなきゃいけなかったんですね(笑)。

石川 そう、知らなかったんです。

最近知りました、ジャック・マー(笑)!

琴坂 ちなみに石川さん、先ほどの4つの概念(お金、事業、思想、生き様)は全て「結果」ですよね。

私は、リーダーシップを発揮したとしても結果につながらない人もいると思っています。

結果が出なければリーダーではないのでしょうか?

渡邉 だから、「生き様」なのでは?

石川 うーん、生き様もそうだと思いますが……。

例えば、誰もいない無人島でめちゃくちゃリーダーシップを発揮するとします。

(一同、首をかしげる)

岡島 リードする対象の人がいないよね(笑)?

(会場笑)

石川 とりあえず(笑)、「後世に伝わらなければリーダーとは呼べないと思う」ということです。

琴坂 「社会において、我々が認知するリーダーの条件」としては正しいと思いますね。

岡島 その「生き様」とは、どういうことを指していますか?

石川 …どう思います?

岡島 …その質問返し、やめなよ(笑)。

石川 じゃあ…ジャック・マーの話をしていいですか(笑)!?

(会場爆笑)

では、「生き様とは何か」という話をしましょう!

「生き様がすごい人」に出会うと、人はどうなるのか?という話をします。

生き様がすごい人に会うと、人は自分を好きになる

石川 僕はそのCMを見た後すぐ、ジャック・マーをYouTubeで調べました。

すると、2年前に米国のクリントン元大統領とジャック・マーがアメリカで行った対談イベントが出てきたのです。

そもそもクリントン元大統領はアメリカで一番人気があった大統領で、話が上手く、会うと好きになってしまうという、日本で言うと田中角栄のような人物だったわけです。

そのクリントン元大統領を凌駕していたのが、ジャック・マーでした。

ジャック・マーが話していると、みんな彼を好きになるのです。

これは「生き様1.0」です。

岡島 なるほど(笑)。

石川 「生き様が素晴らしい人は、話していると、好きになってもらえる!」、これが生き様1.0です。

ジャック・マーは、生き様3.0まであるんですよ!

琴坂 すごいですね(笑)。

石川 次に、「生き様2.0」があります。

クリントン元大統領は、「色々話は分かったけれど、とは言え、中国はアメリカにとって脅威だ」という話をするわけです。

そこで、ジャック・マーは見事な返しをするわけです。

すると、聴いているアメリカ人たちが「あ、私、中国好きかも」という気持ちになるのです。

つまり、国を好きにさせているのです!

(会場、感嘆の声)

琴坂 自分以上の存在を好きにさせてしまう、と。

石川 ジャック・マーという個人、そしてアリババという会社を超えて、中国を好きにさせているわけです。

これが生き様2.0です!

岡島&琴坂 なるほど…。

渡邉 あまり他の場所では使えなさそうな…(笑)。

(会場笑)

石川 皆さんの場合だと、話すと「日本、好きかも」と思わせられるということですね。

その後、僕は、「生き様3.0」を目撃するわけです。

ジャック・マーは、飛び出すエピソードの一つひとつが無茶苦茶なのです。

例えば、「中国にケンタッキーフライドチキンが出店した際、200人アルバイトに応募して、選ばれなかったのは自分1人だけだった」とか。

(会場爆笑)

そんな話が、次々出てくるわけです!

そうすると観客はどう思うか?

「あんなジャック・マーにもできたのなら、私にもできるかも?」と思うわけです。

つまり観客は、「自分のことが好きになって帰る」のです。

(会場、感嘆の声)

岡島 すごい。

琴坂 それはすごいですね。

その話を聞いて今思い出したのが、ソニーの盛田さん(ソニー共同創業者・盛田昭夫氏)です。

慶應義塾大学 准教授(SFC・総合政策学部)琴坂 将広 氏

映像が結構残っているので、盛田さんが当時アメリカでどういう風にソニーを売り込んだのかを見ていたのです。

とあるテレビ番組で、アメリカの弁の立つ人が、ソニーが急成長している要因について、盛田さんに問い詰めていたのです。

盛田さんは英語が得意なわけではないのですが、「Because our product is great!」と商品を持ち出して機能について語り出し、経済番組が商品紹介番組に変わってしまったのです。

そこでナレーターが、「なぜ、そういう素晴らしい商品が生み出せるソニーを作れたのか?」と聞くと、盛田さんは「Because…we can make another one!」と別の商品を持ち出したのです(笑)。

(会場笑)

これはすごいなと思いました(笑)。

彼にはやはり信念があり、誰が見ても「ものづくり」の人です。

「Made in Japan」という言葉を広めたのは彼なのです。

そして創業者である彼は、ネットワークも言語スキルもない状態でニューヨークに転籍しました。

その姿を見て、日本の他の中小企業や電機メーカーが、どんどん進出し始めたわけです。

これは1960年代に起こったことですが、同じような現象かなと思いました。

米国の人気作家のクリエイティブとリーダーシップ

渡邉 今の「生き様3.0」の話と、石川さんの言った「後世に残らなければリーダーではない」に、思うところがあります。

Takram マネージングパートナー / コンテクストデザイナー 渡邉 康太郎 氏

アメリカに、ポール・オースターという国民的作家がいて、彼の作品に『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』というものがあります。

ある日彼のもとに、ラジオ番組でお話を語ってほしいと、プロデューサーから電話がかかってきます。

彼は、書くことはできても語ることは自信がないので断ろうと思っている、と夕食の場で妻に話します。

しかし妻は、「あなたは自分のストーリーを話す必要はない。全米からストーリーを集めて、それを朗読すればいい」という提案をする。

彼は「それならできるかも」と感じ、実際そのままヒット番組となったので、本まで出版されたわけです。

日本でも新潮文庫から出版されていますが、この作品には、「家族」「友情」「旅」など、いくつかの章があります。

収録されているストーリーは、長くても短くてもいいけれど、「必ず本当の話でなければならない」というルールだけあります。

つまり、「アメリカの誰かがどこかで体験した、ちょっと不思議な本当の話」がたくさん掲載されているわけです。

事実は小説よりも奇なりと言いますが、実話であることへの感動と、小さなストーリーに対する大きな感動を含んでいます。

僕は、この作品は2つのことを物語っていると思っています。

まず、ポール・オースター自身はクリエイティビティを発揮していません。

書いているのは彼ではなく、名の知れないどこかの誰かですが、彼は、無名の人々のクリエイティビティを信じたわけです。

つまり力を譲渡する勇気が、彼にはあったということです。

先ほどの「リーダーシップ不在の状態におけるリーダーシップ」ですね、もっと言えば、オーケストレーションのような形だと思います。

岡島 すごく面白いですね。

今ここで話しているのは、自己効力感、セルフ・エフィカシーと呼ばれるものについてだと思います。

つまり「未来の自分に対する自信」です。

自己肯定感とは、過去の自分に対する自信ですよね。

石川さんが言っていた、「自分にもできるかも」と思うのは代理体験と言いますが、身近な人の成功事例でそう思わせるのは、セルフ・エフィカシーの一例です。

企業ではよく「ロールモデルがいない」という声が、特に女性から聞かれます。

男性の場合、例えば織田信長や、会ったことがない人物をロールモデルとして挙げることが多いのですが、女性の場合は身近な人を求める傾向がありますね。

しかし徐々に、性別関係なく、「あの身近な人でもできたのだから…」と思えるようになってきていると思います。

これはとても大事なメッセージです。

私たちがスタートアップで行うことは、これまで誰もチャレンジしたことがないことですから、フロントで動く人も含め、「自分を信じられる環境」を作ることができるリーダーの存在がとても重要になってきます。

ですからリーダーは、「あなたたちならできるから、バイアスをなくすチャレンジをやってみよう」というメッセージを発信し、「自分でもやれそうかも」と思わせられるような生き様を見せることが大事だと思います。

琴坂 それすごく重要ですね。

リーダーシップという概念が、「引き上げていく」ところから「エンパワーする」ところに進化してきている気がします。

それぞれのメンバーが持っているものを引き出す、という役割ですね。

前回も、「こうやって議論をする」ことを教えるセンス・メイキングという話をしましたが、一方、センス・ギビングという要素も生まれてきています。

つまり、「ある視点や肯定感を与える」ということですね。

これからのリーダーシップは、そう変わっていくのかもしれません。

(続)

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編集チーム:小林 雅/戸田 秀成/本田 隼輝/吉名 あらた/尾形 佳靖/大塚 幸

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