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「最高の成果を生み出すリーダーシップとチームマネジメントとは何か?(シーズン3)」8回シリーズ(その2)は、リーダーに求められる重要スキル「目標設定力」が、組織のマンネリ化にどう寄与するのかを探ります。キーワードは「10倍成長」です。ぜひご覧ください!
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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2019は2019年9月2日〜5日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
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【登壇者情報】
2019年1月30日開催
ICCサミット FUKUOKA 2019
プレ・オープニングイベント
最高の成果を生み出すリーダーシップとチームマネジメントとは何か?(シーズン3)
(スピーカー)
石川 善樹
株式会社Campus for H
共同創業者
岡島 悦子
株式会社プロノバ
代表取締役社長
小林 正忠
楽天株式会社
Co-Founder and Chief People Officer
永田 暁彦
株式会社ユーグレナ 取締役副社長 /
リアルテックファンド 代表
村上 臣
リンクトイン・ジャパン株式会社
日本代表
(モデレーター)
琴坂 将広
慶應義塾大学
准教授(SFC・総合政策学部)
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1つ前の記事
1.「組織のマンネリ化」をどう解決する? 6人の論客が徹底議論!
本編
琴坂 事件あるいは起爆点を作るのは、マンネリを防ぐための分かりやすい解決法だと思います。
しかし最初の3~5年間、特にIPOの前は、なかなかそういう起爆点は作りにくいものです。
まさに、定常飛行状態でマンネリ化するということですが、そういう場合はどうしたらいいのでしょうか?
「達成できそうもない目標」が組織を活性化させる
正忠 我々(楽天)の場合、ずっと高い目標を掲げていました。
少し背伸びをしたら届く目標ではなく、ジャンプしても絶対に届かない目標です。
楽天株式会社 Co-Founder and Chief People Officer 小林 正忠 氏
そうなると、みんなで悩んでウルトラCを考え出そうとするのです。
三木谷(三木谷浩史社長)は達成できないものを掲げることで、組織を活性化させていました。
琴坂 ルーティンワークでは達成できない目標を設定する、ということですね。
正忠 三木谷は「目標とは、達成できないものを言うんだ」と言っていました。
(会場笑)
でも達成しろと言うんです(笑)。結果的に、達成するのですが。
現状の延長線ではない目標を追うことで改善するクセが組織に身に付いていきました。
岡島 通常だと萎えてしまったり“諦め癖”がついてしまったりしますから、達成できるというのはすごいことです。
社内の人間だけでは達成できない場合は外部から人を入れることもしますが、今のチームで何とかするというのはすごいですね。
正忠 私は(組織のマネジメントにおいて)目標設定能力は非常に重要だと考えているのですが、その点、三木谷浩史という男は目標設定能力には長けていますね。
琴坂 届かなさそうで届く、そうした絶妙な目標はどうすれば立てられるのでしょうか?
正忠 いやぁ……彼は完全に右脳で思いついているので(笑)。
岡島 楽天さんの場合は、創業者でもある三木谷社長が「これをやりたい!」と言うから進めるわけですよね。
でも、そうではない人、つまり権力を持っていない人がおかしな目標を設定しても、誰もついてこないですよね。
正忠 三木谷だからこそできるという側面はあると思います。
しかし、「他社がやっていない面白いことをやりたい」という人が集まっていると、トップが言い出したこともそうでないことも、自発的に進めていく組織になるのではと思います。
「10倍成長すること」から逆算してなすべきことを考える
村上 ソフトバンクの場合、まず「10倍にするぞ!」という大きな目標があって、手段として企業を買収するという選択肢が生まれ、チームが大きくなっていくという形です。
私は今はシリコンバレー企業にいますが、それと同じようなことが起こっています。
オーナー社長ではないしガバナンスもきっちりしていますが、「目標は10倍だ」から始まって、「目標から逆算してどうするべきかを考えるのがシン、お前の仕事」だと言われます。
そのため、前年比で40~50%アップを続けて3倍に成長しますという目標を出したら「これはよくできた“プラン”だよね」と言われて、どうも3倍くらいまでは「目標」ではなく「プラン」ということになってるんですよね。
(会場笑)
正忠 それは楽天も全く同じで、基本的には「10倍」で物事を考えます。
弊社が提供する楽天市場では「ショップ・オブ・ザ・イヤー」という賞があるのですが、それを何年も獲り続けている店舗さんが、マンネリ化する恐れがありました。
そこで「原点回帰」をテーマに2006年から、トップ店舗さんだけを集めてアメリカ西海岸に旅行にお連れして、非日常空間で「え、そんな小さなカテゴリーで1位を獲りたかっただけでしたっけ?」と言います。
琴坂 まさかの洗脳(笑)。
正忠 表現は乱暴ですが「天狗になっているけど、大丈夫?」というメッセージですね。
各カテゴリーの天狗たちを集めると、それぞれが刺激し合い、それぞれから学べることが多々あります。
そこで「売上10倍にするためには?」という問いを立てると、皆さん「原点回帰」しつつ、既存にとらわれずにまったく新しいことを考え始めるんですよ。
結果的にさらに業績が伸びるというわけです。
岡島 ルーティンの延長線だと、10倍は無理だからですよね。
何かしら違うことを考えないと、10倍を達成するのは難しいと。
村上 従来のフレームワークとは違うことを考えないと難しいです。
だから、M&Aを考えてみたり…
岡島 …ビジネスモデルを変えたりするということですね。
村上 思考の自由度を上げる、という意味では10倍の目標というのは効果的だと思います。
琴坂 トップの役割として「考えもしなかったことを考えさせる」のが1つですね。
そしてもう1つは、そのための材料を与える、つまり「それまで見ていなかったものを見せて、新しい天井があることを教える」ということです。
石川 ところで琴坂さん、経営学の世界では「良い目標」とはどういうものだと考えられているのでしょうか?
単純に、目標の高い・低いだけではない気がしています。
例えば10倍の目標だったとしても、確実に達成できる方法が分かっていたとしたら村上さんのように「それはプランだ」と言われてしまいますよね。
先が見えすぎると退屈になるし、先が見えなさすぎると不安になります。
良い目標とは「集団のベクトルが揃うこと」
琴坂 集団のベクトルを揃えることができるものが良い目標ですよね。
ですから、10倍であっても、それによってベクトルが揃うのであれば問題ありません。
組織によっても違いますね。
例えば「10倍」でメンバーが挫折してしまうような組織であれば、堅実な目標を掲げるべきです。
スタートアップであれば、10倍目標の方がマンネリ化しないと思います。
石川 「ベクトルが揃うかどうか」って名言ですね!
村上 揃えるということで言えば、ビジョン、ミッション、カルチャーみたいな話につながりますね。
True North、皆の夢やビッグビジョンを掲げて何かを達成しようとするとき、それに関するメトリクス(評価指標)はないですよね。ただ「この大きな山を登ってみせようぜ」と。
一方、ミッションは定量的に測れて、評価ができなければいけません。「おれたち今、何合目まで来てるんだっけ」と。
株式会社Campus for H 共同創業者 石川 善樹 氏
今まで話している「10倍の目標」というのはミッションに近いのかもしれませんが、石川さんの触れていた点はビジョンに近いのではないでしょうか。
定量化されていなくても、組織がそれに向かって「行くぜ南極!」みたいに揃って動いていけるのであれば、それはそれでよいのではと。
石川 なるほど、なるほど…。
岡島 それってつまり、定量化できないということは「目標」よりも「目的」に近いのかもしれませんね。
石川 そうね、なるほどね…。
あの…僕が敬愛する、ジャック・マー先生という人がいまして。
村上 来た!
岡島 来たよ!
(会場笑)
琴坂 毎回出てくるので、これ、マンネリ化してますからね(笑)。
▶参考:生き様3.0とは? 本物のリーダーに出会うと、人は「自分」を好きになる(ICC KYOTO 2018 第一回プレ・イベント)
岡島 今日はイーロン・マスクの話をするんじゃなかったの?
石川 いや、今日はジャック・マーを。最新のジャック・マー情報を昨日、得てきまして!
(会場笑)
岡島 シーズン3だもんね(笑)。
ジャック・マーが語る「リーダーが示すべき姿勢」
石川 ジャック・マーが若者に語る、1時間くらいの動画がYouTubeにあります。
そこで、「リーダーとは何ぞや」という質問がありました。
僕がなるほどと思ったのは、
「みんながハッピーであれば、リーダーはアンハッピーなことを見つけなければいけない。みんながアンハッピーであれば、リーダーはハッピーなことを見つけなければいけない」
という発言でした。
日本語にすると、会社の人々が楽観的であれば悲観的になり、悲観的であれば楽観的にならなければいけない、ということだと思います。
つまり「従業員とは違うことをせよ」ということですね。
▶参考(邦訳):ダボス会議でのジャック・マー対談内容(2/3) – kikuoopsのBlog
琴坂 従業員が一定の方向に振れすぎてしまったら、揺り戻すということですね。
石川 そうです。
もう1つ、皆さんは「アリペイ(Alipay)」って知っていますか?
村上 まあ、知ってますよね(笑)。
石川 僕は昨日まで知らなくてですね。調べたら、電子決済なんですね!
(会場笑)
村上 銀聯の「UnionPay」と並ぶ、中国の二大電子決済の1つですよね。
石川 ジャック・マーが、そのアリペイに関する意思決定についての話をしていました。
彼は2004年のダボス会議に出席した際、「アリペイをやろう」と決めたらしいのです。
当時の状況としては、(中国では)電子決済は違法で、銀行にお願いしてもノーと言われるような状況でした。
ただ、電子決済ができないと自分の会社に未来はないと思っていたようです。
そしてダボス会議で、色々な素晴らしいリーダーの話を聞くうちにやる気になって、「やる!1ヵ月以内に立ち上げる!」と決めたそうです。
そして、「もしも警察に捕まったら、俺は刑務所に行く。そしたらお前がやれ」、「もしもお前も捕まったら、次はお前がやれ」と、その場で社員たちに電話をかけたのです。
たとえ刑務所に入ることになったとしてもそれをやる、と決めたわけです。
そういうジャック・マーは素敵だな!!と昨日思ったわけです!
「やっぱり、ジャック・マーはすごい人だ!!」と。
(会場笑)
村上 ポイントは、「覚悟」ということでよいでしょうか?(笑)
石川 そう、覚悟です。それから「刑務所に行ってもいい」というところです。
皆さん、もちろん合法なことをやられていると思いますが、もしそれで飽きているのであれば、グレーゾーンに行くしかないわけですよね!
村上 上場企業の取締役が3人もいるこのテーブルで、それを言うとは(笑)。
琴坂 アリババは、合法の範囲内で考えうる全ての選択肢を検討し尽くしたからこそ、非合法にまで思考を広げられたわけですよね。
岡島 あとは、パラノイアしか生き残れないという話も聞きますよね。
ジャック・マーもそうかもしれないし、孫さんや三木谷さんもそうかもしれませんが、きっと彼らはそもそも、マンネリになるようなタイプではないんですよ。
彼らの辞書には「マンネリ」という言葉はなく、新しいことをどんどんやらないといけない性質を持っているのです。
一番の問題は、それらが陳腐化してきた時ですよね。
(続)
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続きは 3. 楽天CPO・小林正忠「トップがなぜその発言をしたのか、現場に伝える“翻訳者”が必要だ」 をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/本田 隼輝/尾形 佳靖/戸田 秀成/大塚 幸
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