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「最高の成果を生み出すリーダーシップとチームマネジメントとは何か?(シーズン3)」8回シリーズ(その7)は、トップが掲げた高い目標に対して最後まで“やり抜く”チームの作り方とそのマネジメント方法について。キーワードは「勝ちグセ」と「因数分解」です。ぜひご覧ください!
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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2019は2019年9月2日〜5日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
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【登壇者情報】
2019年1月30日開催
ICCサミット FUKUOKA 2019
プレ・オープニングイベント
最高の成果を生み出すリーダーシップとチームマネジメントとは何か?(シーズン3)
(スピーカー)
石川 善樹
株式会社Campus for H
共同創業者
岡島 悦子
株式会社プロノバ
代表取締役社長
小林 正忠
楽天株式会社
Co-Founder and Chief People Officer
永田 暁彦
株式会社ユーグレナ 取締役副社長 /
リアルテックファンド 代表
村上 臣
リンクトイン・ジャパン株式会社
日本代表
(モデレーター)
琴坂 将広
慶應義塾大学
准教授(SFC・総合政策学部)
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最初の記事
1.「組織のマンネリ化」をどう解決する? 6人の論客が徹底議論!
1つ前の記事
6. ジャック・マー&岡島悦子に学ぶ「1on1の効用」
本編
正忠 あと30分くらいしかありませんが、皆さんからの質問などはありますか?
石川 僕が最近すごく考えるのは…。
正忠 いや、会場に投げかけてるから(笑)!
石川 会場から出てくるまで、つなぎで話そうかなと。
村上 皆さん、石川さんのことは気にせずに挙手をお願いします。
石川 挙手がないようなので話しますね(笑)。
「これをやれば成功する」という組織施策はない
石川 「リーダーを務めること」や「組織を作ること」は、結婚と同じで何度も経験するものではないですよね。
皆さん、経験の少ない中で色々と話しているわけです。
そこで疑問なのは、例えば楽天のような大きな会社で10回、100回とリーダーシップをとることや組織作りの経験を重ねることができれば、いずれそれらは上手くなるものなのでしょうか?
正忠 楽天の外で試したことがないので、正直分からないですね。
岡島 上手くはなりますが、全ての会社で機能するリーダーシップというものなどない、ということは理解しないといけないと思います。
私は仕事柄、リーダーの皆さんの“カルテ”をたくさん見てきていますが、リーダーたちの屍もたくさん見てきました。
村上 まさに検死官(笑)。
岡島 誰一人として同じ“病気”で亡くなったリーダーはいませんが(笑)、ただ共通項はあります。
だから経験を重ねて失敗から学ぶことはできます。
しかし「これをやったから成功する」というものはありません。
よく「これをやればあなたの会社は大丈夫」という交通広告を見かけますが、そんなのは無理です。
石川 それは琴坂さんの『経営戦略原論』にも書いてありますよね。
それぞれの組織に固有のものがあるし、共通項があってもそれが特定の組織に適用できるかどうかは分からない。
琴坂 囲碁でもチェスでも「定石」がありますよね。定石というのは、最低限やりましょうということです。
ただ、それらをやった上で「何を話すか」「相手をきちんと見ているか」ということが重要です。
はい、では挙手があったようですので質問をお願いします。
高い目標を掲げて機能する組織と、そうでない組織
質問者1 アソビューの山野です。
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山野 智久
アソビュー株式会社
代表取締役社長
アクティビティ、体験、レジャーチケットなど「遊び」の予約ができる日本最大級マーケットプレイス「asoview!(アソビュー)」、思い出をプレゼントするギフトサービス「asoview! GIFT」などWEBサービスを運営。また、行政とベンチャー企業の垣根をなくし、共に地方創生を実現することを目的とした一般社団法人熱意ある地方創生ベンチャー連合を立上げ、共同代表理事に就任。観光庁・自治体の観光戦略のアドバイザーを歴任するなど多方面で活動。1983年千葉県生まれ。明治大学法学部法律学科卒。新卒にて株式会社リクルートに入社。2011年アソビュー株式会社を設立。
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「高い目標を掲げて、非連続的な組織の生産性を高める」という手法が挙がりましたが、これがうまくいくかは企業や事業のフェーズにもよるかなと思います。
「社長、それを今期にやっちゃうんですか?」ということもあると思うのですが、その時はどうすれば良いのでしょうか?
また、僕は前職がリクルートで、組織が大きいため配置転換は容易でした。
配置転換を行うと、それはその人にとっての“事件”(本セッショ「Part1」参照)になるので、労働生産性が上がることになります。
しかし現在経営している会社規模だと、人の配置によって大きく数字が変わってしまいます。
そうした「やり切る」ことが求められる組織においての、モチベーションや生産性の上げ方について教えてください。
正忠 私のいる楽天は「やり切る」人だらけの組織で、たとえ人がいなくなっても、その抜けた穴は残った人がやり切る文化があります。
楽天株式会社 Co-Founder and Chief People Officer 小林 正忠 氏
過去、どう頑張っても目標が高すぎて割り振りができなかったとき、営業スタッフの名前をホワイドボードに書き、1号、2号として数字を割り振りました。
もちろん1号さんも2号さんも同一人物なんですが、なんと、それぞれ目標を達成したのです。
実は「できない」と思っているのは経営陣や本人で、やれば「できる」ってことばかりな気がします。
琴坂 気合い、ということですか?。
正忠 気合いというか、人間というのは意外と出来てしまうものなのだと思います。
琴坂 なぜ達成できたのかは分からないのですか?
正忠 分かりません。
永田 山野さんの話に、深く頷いて同意していました。
株式会社ユーグレナ 取締役副社長 /リアルテックファンド 代表 永田 暁彦 氏
トップが「良い」と言っていることは、あくまである一定期間において良いと判断できることであって、実際の予実管理ではもっと短期間で物事をとらえます。
だから僕はいつも、社長の出雲と議論をしています。
重要なのは、それらのうち、どちらを良しとするかです。
ユーグレナは今期60億円の赤字を発表しました。
これらは「研究活動費」としての60億円で、僕らは7年先に利益が出ることが分かっているからこそ踏み込めるのです。
今期1億円の利益を出さないと会社が潰れる、または上場審査に落ちるなどのタイミング以外では、長期的に物事を考えることが非常に大切だと思いました。
琴坂 上場などのタイミング以外であれば、挑戦という意味で投資すべきである。また、たとえ予実で未達だったとしても、その先について合意できているかどうか、ということですね。
質問者1 そうした意識は、現場のメンバーまで浸透しているのでしょうか?
つまり経営陣が設定する高い目標や長期計画を、現場メンバーのKPIにまで落とし込めているということなのでしょうか?
目標を分解して「小さな成功体験」を積み重ねる
正忠 小さな成功体験、勝ちグセをつけるのが大事だと思います。
高い目標でも、因数分解をして細かくブレイクダウンすれば、意外と達成できるものです。
例えば、成約ができなかったとしても、100本の電話をするというプロセスKPI自体は達成できますよね。
ブレイクダウンした一つひとつのステップを達成していくのです。
永田 今日この場にはユーグレナの取締役が3人いるのですが(笑)、中期計画を琴坂さんと一緒に書いている時、まさに「『P/Lとは、結果でしかない』ということを大切にするようにしよう」という話になりました。
P/Lはゴールにたどり着くための変数の1つでしかないので、ゴールに明確につながっているKPIを設定し、チームがそれらを追うのが最重要だと話していました。
変化の過程にある重要な指標を、メンバーの成功体験のもとにしたいと考えています。
琴坂 もう1つ、「定量的管理」と「定性的管理」はセットで考えるべきです。
定量的なKPIが達成できなくても、1on1などで定性KPIについて合意できれば、たいていの場合は大丈夫なはずです。
両方を重視するのが大切で、数字の方だけではなく、定性管理についても科学的に設定する発想を持った方がいいと感じています。
石川 定性的なものとは、例えばどういうものがあるのでしょうか?
「定性的なKPI」のサイエンス
琴坂 その人のメンタル、キャラクターをきちんと把握し、陥りがちな部分を想像します。
それに合わせて、自分が伝えたいメッセージの表現を変えるということですね。
優秀な経営者は、それが同じメッセージであったとしても、一人ひとりに話すストーリーは少しずつ違うのです。
例えば、「生産現場向け」「経営陣向け」「IR」で変わってきますよね。
証券会社に話す時も、会社ごとに少しだけ変えてみたりする。これは重要なポイントだと思います。
村上 リンクトインの場合、マネージャーはEVS(Empolyee Viewpoint Satisfaction)を追いかけています。
つまり各拠点のカントリーヘッドは、上層部から「従業員の満足度」を見られます。
「働きがい」や「福利厚生」などそれぞれのスコアを四半期ごとにチェックし、下がっているポイントがあればアクションをとります。
スコアを維持することはカルチャーを維持することにつながるので、非常に重視されていますね。
上場会社であれば当然、予実管理があるでしょうが、その調査では「気持ちよく働けているか」「良い職場だから、と言って友達を誘えるか」といった質問をされます。
そして結果によっては1on1をしたり、理由を深堀りしたりするという具合です。
一点突破で勝ちグセをつける
村上 それから、勝ちグセと因数分解の話は、ソフトバンクグループでも言われていました。
ボーダフォンジャパンを買収したとき、携帯電話事業とはなんぞやという話になって、それは「良い端末があって、魅力的な料金体系で、きちんと電波が届いて、営業がよければうまくいく」、この4つのパラメーターしかないということでした。
ネットワークまわりは時間がかかりますよね。一方で「営業は強い」という自負があったので、全社的にまずは純減を食い止める、「純増させる」という一点に目標を絞ったのです。
それによって勝ちグセをつけようとしたわけです。
そしてあるとき、単月で純増を達成できた月がありました。
その時はみんな大喜びで、テレビCMでも純増をアピールするようにしました。
つまりCMは、社員のモチベーションアップのためでもあったのです。
「○ヵ月連続で純増」というメッセージを出すと、社内では競合からお客様を勝ち取っていると感じ、お客様もイケてるという印象を持つようになったわけです。
同時に、ネットワークの構築も追いついてきて、商品も良くなっていくという流れでした。
琴坂 関連する変数全てが上がらないと売上が上がらないなかで、他の変数を犠牲にしてでも1つの変数に集中した、ということですね。
村上 それこそ、アンテナを建ててみたいなところからやっているとあっという間に数年が経ってしまいます。
そうではなく、半年以内ですぐに目に見える成果が出るKPIを見つけて、そこにピンポイントで注力することで「勝ちグセ」をつけ、良い流れを作るということですね。
KPI設定や目標設定のキモはそこだと思います。
正忠 4つの指標どれも大事なのに、1つだけに絞れたというのは経営者の覚悟ですね。
この間、村上さんからOKRの話を聞きましたが、それも1つに絞れと言われたのですよね?
3つの目標を「たった1つ」に絞る経営者の覚悟
村上 僕はリンクトインに転職して1年しか経っていないのですが、既に上司が3人目でして(笑)。
今の上司はシリアルアントレプレナーで、IBMなどに会社を売った経験もあるすごい人です。
僕はこれまでOKR(※)は3つ設定していたのですが「3つ!? 多いよ!」と言われました(笑)。
▶編集中:OKR(Objectives and Key Results)とは、目標設定とその達成を実行・追跡するためのフレームワーク。FacebookやGoogleなどの企業が導入していることで知られる。ここでは、OKRで最初に設定する目標を指して「OKR」と言及している。
琴坂 多いんですか!?
村上 その中で一番重要なものを選べと言われて、「チームビルディングが大事だから『採用』かな」と言ってそれを選んだら、「今期お前は80%の時間をそれに使え!」と言われました。
琴坂 それだけに打ち込むと、全体の数字が下がるリスクがあるかと思います。
それはどう対処すれば良いのでしょうか?
村上 それが面白くて、僕は今プロダクトとビジネスの両方をレポートする必要があるのですが、それぞれ違う上司にレポートすることになっていて、その彼はプロダクト部門の上司なのです。
だから彼にとってビジネスは関係ないんですよ。超無責任ですよね!(笑)
(会場笑)
村上 一方、ビジネス部門の上司に「プロダクト部門の上司にこのように言われたけれど、どうしよう?」ってレポートしました(笑)。
そこでの学びは、「キーを1つにした方が、成果が出やすい」ということですね。
琴坂 軍事戦略でもそうですね。戦力を分散させるよりも、全軍で1つずつ潰す方が強いと言われます。
村上 『キングダム』を熟読すべきですね。
岡島 今の話は、どちらかというと「資源の配分をどうするか」ということですよね。
リンクトインがリモートで日本を任せるにあたり、村上臣という経営資源をどこに分配するか。
それまでの「勝ちグセ」の話とはちょっとレベル感が違うかもしれませんが、どちらの話も頷けます。
(続)
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続きは 8.「マンネリとは何か? どう打破するのか?」楽天CPO・小林正忠が掲げる“解決策”は……【終】 をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/本田 隼輝/尾形 佳靖/戸田 秀成/大塚 幸
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