【NEW】ICC サミット FUKUOKA 2025 開催情報詳しくはこちら

6.「良いエンジェル投資家」の見分け方とは?

平日 毎朝7時に公式LINE@で新着記事を配信しています。友達申請はこちらから!
ICCの動画コンテンツも充実! Youtubeチャネルの登録はこちらから!

「今さら聞けない! スタートアップ経営者のためのベンチャーファイナンスの基本(シーズン2)」7回シリーズ(その6)は、良いエンジェル投資家と悪いエンジェル投資家の見分け方について。あまり実績のないエンジェルからの投資をどう考えるべきか? 時には“介錯”してくれるのが本物のエンジェル!? ぜひご覧ください!

▶ICCパートナーズではコンテンツ編集チームメンバー(インターン)の募集をすることになりました。もし興味がございましたら採用ページをご覧ください。

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うためのエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2019は2019年9月2日〜5日 京都での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット KYOTO 2018 プラチナ・スポンサーのAGSコンサルティング様にサポート頂きました。


【登壇者情報】
2018年9月3〜6日開催
ICCサミット KYOTO 2018
Session 10C
LECTUREシリーズ
今さら聞けない! スタートアップ経営者のためのベンチャーファイナンスの基本(シーズン2)
Supported by AGSコンサルティング

(スピーカー)

久保田 雅也
株式会社WiL
パートナー

澤山 陽平
500 Startups Japan(現 Coral Capital)
マネージングパートナー(同 創業パートナー)

高宮 慎一
株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズ
代表パートナー

堀 新一郎
YJキャピタル株式会社
代表取締役

(モデレーター)

琴坂 将広
慶應義塾大学
准教授(SFC・総合政策)

「 スタートアップ経営者のためのベンチャーファイナンスの基本(シーズン2)」の配信済み記事一覧


連載を最初から読みたい方はこちら

最初の記事
1.「創業株主間契約」がなぜ重要なのか? スタートアップ経営者が知っておくべき、“共同創業者との株式の分け方”の原理原則

1つ前の記事
5. VCと事業会社からの資金調達は区別して考えよう

本編

琴坂 さて、3つの「いいね」がついている次の質問についても聞いてみたいと思います。

「エンジェル投資家(※)についてどう思いますか」という質問です。

▶︎編集注:エンジェル投資家とは、主にスタートアップに対し事業立ち上げのための資本を提供する個人投資家のこと。

“本当のエンジェル投資家”とは

株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナー 高宮 慎一氏

高宮 基本的に、エンジェルの生態系が盛り上がっているのは良いことだと思います。

先ほど話に出た「その場で投資可否を決めます」というようなこともエンジェルならではですよね。

業界全体として変えていった方がいいかなと思うことがあります。

出資してもらったタイミングから事業が変わってきているのに、縛られ続けながら永遠にピボット、ピボットして、もとの事業の原型もなくもはやトラベリングみたいになってしまっていて、少しずつ少しずつブリッジラウンドで繋いでいった結果、シリーズAに到達した時には外部比率が半分を超えてしまたみたいなケースもあります。

資本政策的にファイナンスでできる打ち手は制限されてしまいますし、起業家やチームは疲弊してしまいます。

シリコンバレーの世界では1企業1プロジェクトのように考えられていて、ピボットで片足をずらす=既存事業の延長線上、既存事情のアセット生きるなら事業をを続けるものの、トラベリング=全然関係ない事業になってしまったら、攻め手がなくなってしまったらもう解散、というのが一般的です。

そうすると起業家や優秀なメンバーの流動性も上がり、次のネクスト・ビッグシングに人が流れるようになり、スタートアップエコシステムにとって良いことです。

別に他に流出しなくてもよく、会社をリセットした後、同じメンバーで、同じ投資家からもう一度シードで投資してもらい、もう1回チャレンジするというのもありです。

琴坂 それを納得頂ける方は、本当のエンジェル投資家ですよね。

投資家が事業の衰退にとどめを刺すべき時も

高宮 澤山さんはシードでも投資していると思いますが、起業家は投資家に対して非常に責任感を持っており、おそらく「事業を辞める」とは言いづらいと思います。

お願いとしては、投資家から、武士の情けとして、「もう十分がんばったよ。ナイストライだったけど、運が悪かったね。もう1回一緒にやろうよ。」と“介錯”してあげて欲しいということです。

澤山 まさにおっしゃる通りです。

500 Startups Japan (現 Coral Capital)マネージングパートナー (同 創業パートナー)澤山 陽平氏(写真中央)

勝手にこっちから話を振ってしまうのですが、昔、Design for Ventures(D4V)の伊藤さんが「うまくいかなかった起業家の介錯をしてあげることも大事だよね」とおっしゃっていて、僕は非常に感銘を受けました。

その通りだ、と思った記憶があります。

伊藤 健吾氏(以下、伊藤) こんにちは、Design for Venturesの伊藤と申します。

昔、孫泰蔵さんと一緒に、当時Y Combinatorが行っていたものと似たような仕組みはできないかということで、起業家を増やすために勢いよく500万円ずつみんなにばらまく、というというプロジェクトを社会実験的に行いました。

ばらまくと申しましたが、コンバーティブル・ノート(※)の仕組みを日本型に持ち込み、投資するというスタイルです。

▶︎編集注:コンバーティブル・ノート(Convertible Note)とは転換社債の一種であり、「株式への転換価格」を明確に定めずに資金を貸し付け、その次の資金調達時にその貸付金を株式に転換するもの。

ボンド、要は債権ですので借金の形になっているわけです。

そして澤山さんと食事をしていた時に、「頑張っているけれどもうダメな事業には、俺がとどめを刺さないと」という話をしました。

債券だから返せという単純な話ではないですが、債権者集会を開いてとどめを刺せるというオプションを実は持っているというのは、1つの考え方だと当時も思っていました。

そのファンドはまだ続いていて50社投資していますが、何社かはそう意味で音信不通に近くなっている人達もいますし、事業を辞めるという話になった際の話し合いもその考え方によって健全なものになったかと思います。

琴坂 なるほど、ご解説ありがとうございます。

エンジェル投資を受ける際も「起業家主導」は原則

琴坂 この質問に関連して皆さんが聞きたいのではと思うこととして、「良いエンジェル投資家と悪いエンジェル投資家の見分け方」についてはどのようにお考えでしょうか。

慶應義塾大学 准教授(SFC・総合政策) 琴坂 将広氏

ある程度実績があるエンジェル投資家は分かりやすいですが、あまり実績がない場合は悩むと思います。

何を判断材料にしたら良いでしょうか?

久保田 目的次第だと思います。

何を頼って何を期待してというところと、その方が持っているスペックと言いますか、クオリフィケーションとのマッチングが上手くいかというところですね。

エンジェル投資家についての感想としては、たまに、この方がエンジェルとして入っています、とピッチの2ページ目などに強調されて出てくるケースがあります。

それは素晴らしいことだと思いますし、経験者の目に適ったということだと思います。

株式会社WiL パートナー 久保田 雅也氏(写真左)

一方、先程イトケンさんがおっしゃっていたように、エンジェル投資家はそもそも多く数を打つという考えを持っているはずなので、そういった意味では勘違いしない方が良いかなと思っています。

つまり、その人が入っているからどうこうと言うことでもないということです。

むしろ、自分にとってどのようなメリットがあるかということをしっかり説明できない限り、いちサイレント株主になってしまう可能性はあると思います。

幸いにして今はベンチャーの熱が盛り上がってきているので、最近、いわゆるこうしたコミュニティーの中にいない人も、エンジェル投資という枠に入ってこられるケースも多いと思っています。

悲しいかな、そういう人たちは今までお話ししたような資本政策のリテラシーがあまりないケースがあります。

リテラシーがないだけだとは思いますが、変に株のシェアを取りすぎているケースもたまに見かけます。

悪意があるケースはそもそも論外です。

本当に起業家を助けたいという投資家との株式出資のコミュニケーションについても、先ほどの堀さんのお話のように、起業家がどんどん主導しなければならないと思います。

 たまにTwitterにも書かれていますけれど、悪いエンジェルはシードの段階で30%、40%の持ち分を要求することがあるようですね。

経営陣であれば構いませんが、経営陣でもないのにそんな持ち分を持つことは不自然と言いますか、いやらしいと感じますね。

澤山 一方で、厳密にバリュエーションなどを考えると、本当に悩ましいですよね。

持ち分比率としては絶対に下げないといけないのですが、まだ何もないアイデアステージでまともにバリュエーションを計算すると(エンジェル投資家の持分比率が)高めになってしまい、その後シードで入ろうとした時に入りづらいとなることがあります。

そこのところは私自身もまだ試行錯誤段階だという気がしています。

高宮 久保田さんがおっしゃったように、エンジェルに依存しすぎないという話だと思います。

アイデア段階だとしても、昔同じ事業を行っていたエンジェルに頼ればどうにかなると思うのではなく、あくまでもその事業を実現するビジョンやケイパビリティは経営者側にあると考えるべきです。

エンジェルはあくまでもサブのサポートで、経営者側が主体だというような話だと思います。

起業家側ももちろん困った時にエンジェルにアドバイスをもらうし、本当に深刻な時には日曜日でも投資家に駆けつけてもらうかもしれませんが、日々の経営はあくまでも起業家がやるという気概を持つことが大事だと思います。

そう考えると、必然的にエンジェルが30〜40%も持つなんておかしいと思うはずです。

琴坂 全体のストーリーと言いますか、一貫性ということがキーワードとして言えそうですよね。

単純にアイコンやコンポーネントを揃えるというのではなく、それを一気通貫する思想、考え方がある、というお話だと思います。

(続)

次の記事を読みたい方はこちら

続きは 7.『スタートアップの資本政策は「点」ではない。未来から逆算した「線」で考えるべき』(グロービスCP高宮氏)【終】 をご覧ください。

平日 毎朝7時に公式LINE@で新着記事を配信しています。友達申請はこちらから!
ICCの動画コンテンツも充実! ICCのYoutubeチャネルの登録はこちらから!

編集チーム:小林 雅/上原 伊織/浅郷 浩子/尾形 佳靖/戸田 秀成/平井 優花

他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。

更新情報はFacebookページのフォローをお願い致します。

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!