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3. VCとスタートアップ、プロデューサーとアーティスト、ベテランと若手……その共通点とは?

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「人のつながり とは何か?」全10回シリーズの(その3)は、世界的音楽的プロデューサーMax Martinに学ぶ“人のつながり”の考察です。石川 善樹さんによると、イノベーションを生むには二者間での“Big Picture”と“Detail”の往復が必要とのこと。もしかするとこれは、VCとスタートアップの関係に近いのではないでしょうか? ぜひご覧ください!

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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回250名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2020は、2020年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録などは公式ページをご覧ください。


【登壇者情報】
2019年9月3〜5日
ICCサミット KYOTO 2019
Session 7C
人のつながり とは何か?(90分拡大版)
Sponsored by リンクトイン・ジャパン

(スピーカー)

石川 善樹
株式会社Campus for H
共同創業者

伊藤 羊一
ヤフー株式会社
コーポレートエバンジェリスト
Yahoo!アカデミア 学長

岡島 悦子
株式会社プロノバ
代表取締役社長

小林 正忠
楽天株式会社
Co-Founder and Chief Well-being Officer

(モデレーター)

村上 臣
リンクトイン・ジャパン株式会社
日本代表

「人のつながり とは何か?」の配信済み記事一覧


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最初の記事
1. 今こそ議論したい!“人のつながり”とは何か?

1つ前の記事
2. 世界的音楽プロデューサーMax Martinから学ぶ「イノベーションの法則」

本編

村上 正忠さんに先ほどの「チームの人数」について伺いたいのですが、正忠さんは楽天のCo-founderでいらっしゃいますよね。

楽天は最初何人で始められたのでしょうか?

正忠 会社を作ったときは、6人です。

村上 そのとき「カッティングエッジな若手とベテラン」という構図はあったのでしょうか?

▶編集注:前Partで、石川善樹さんが「イノベーションは、幅広い知識・経験を持つベテランとカッティングエッジな若手の組み合わせで起こる」という説を披露しました。

正忠 三木谷が私の7歳上で、6人中の最年少が私の1歳下になります。

なので三木谷と若手では8歳差、32歳と24歳で、最年少の彼は大学院生でした。

ですので、当時の三木谷はベテランではないですが、一橋大学を出て日本興業銀行に入行し、ハーバード大学に留学して色々経験した三木谷と単なる大学院生を比較すると、確かにその構図かもしれません。

村上 善樹さん、先ほど提唱された「ベテランと若手の組み合わせ」では、一体どういう化学反応が起こるのでしょうか?

単純に一緒に働いているだけでは、何も起こりませんよね。

例えばベテランの立場になったときに、若手がやっていることをどう応援すれば良いのか、研究からの示唆はあるのでしょうか。

イノベーションは「Big Picture」と「Detail」の往復から生まれる

株式会社Campus for H 共同創業者 石川 善樹さん

石川 これは別の言葉で表現すると、「Big Picture」と「Detail」ということなんですよ。

つまり、「イノベーションはBig pictureとDetailの往復から生まれてくる」と。

村上 なるほど〜。

石川 深い専門性、つまりDetailに富んだカッティングエッジ人材だけを集めても、よりDetailを掘ることにしかなりません。

反対に、Big Pictureを描けるベテランだけ集めても、そこからは何も生まれません。

ですので、そこを何往復出来るかが重要です。

1回集まってディスカッションするだけではイノベーションは生まれませんので、往復が大事であるということです。

岡島 SAPの再復活の話もそうですけど、23歳の若者(新入社員の若手)を取締役会に呼んで、その若者に好き勝手に言ってもらって年配の取締役がぽかーんとあっけにとられる、みたいなセッションを何回も何回も行って、それでスタンフォード大学のd.school(※)が出来たんですよね。

今の往復の話も、そういうことなのかなと思います。

▶編集注:d.school(Hasso Plattner Institute of Design)は、スタンフォード大学に拠点を置くデザイン思考の研究所。“Hasso Plattner”の名称は、研究所設立に際して3,500万ドルの寄付を行ったSAP共同創業者ハッソ・プラットナー氏に由来する。

村上 d.schoolが出来たストーリーも面白いですよね。

SAPのプラットナー会長が飛行機に乗っているときに、ちょうどスタンフォード大学のデザイン思考の記事を見て、「これはやばい!」と、飛行機を降りた瞬間に電話番号を探して即電話して「一緒にやりませんか、いくら必要ですか」と聞いたそうです。

それで数千万ドルを出資して、d.schoolが出来たんですよね。

その勢いもすごいですが、デザイン思考の研究所を創ることが自分に必要だと思ったこともすごいですよね。

岡島 しかもERPが世の中を席巻しているという時代に、ここに数千万ドル張るという先見の明ですよね。

VCとスタートアップも「Big Picture」と「Detail」の組み合わせ?

写真左から、岡島さん、正忠さん、村上さん

石川 今のBig PictureとDetailをさらに別の角度で見ると、Big Pictureを持つ人の口癖って「○○とは」なんです。

村上 このセッションも「人のつながり とは」と言っていますね。

石川 それに対し、カッティングエッジなDetailの人は「○○では」と表現します。

Detailを語るカッティングエッジな人たちは「○○では、こうなんです」ということをたくさんご存じで、一方のBig Pictureを持つベテランの人たちは、もっと本質的な「○○とは」という「そもそも」の問いかけをします。

岡島 これはICCでいうと、VCの人とスタートアップの人の構図にも近いですよね。

色々な領域を見てきて幅広い知識を持っているVCと、自分たちの領域について「AIでは」「ブロックチェーンでは」と言っているスタートアップの構図に似ているなと思いました。

石川 そう!そういうことなんです。

おそらく、自分の中で「とは」と「では」を同居させることが大事なんだと思います。

言われてみれば当たり前なのですが、この組み合わせを大人数ではなく少人数のチームで作るというのは、理にかなっています。

村上 「とは」と「では」以外には何があるのでしょうか?

グロースハックを語るときに、チームの中でハスラーがいるだとか、イノベーターがいるといった話がありますよね。

「だいたい3人くらいで役割分担をして、最小単位で始めるとうまく伸びる」のような話があると思いますし、先ほどのNature論文も「イノベーションを起こすのに最適な人数は3人」という話でした。

つまり「では」と「とは」の人がいるとして、もう1人、別の役割の人がいたらいいのでしょうか。

三国志もそうですが、世の中はトライアングルでバランスがとれたりします。

2人しかいないと、その2人が対立してしまったらそこで終了ですよね。

石川 だから3人目の人は、緩衝材にならねばならないのではないでしょうか。

伊藤 なるほどね。

石川 そう、今のように「なるほど」と言ってくださる方が必要なんです!

YesともNoとも言わずに、頷いてくれる役割が必要なんだと思います。

「Big Picture」と「Detail」をいかにコラボさせるか?

正忠 ちょっといいですか?

Big Pictureも見つつ、Detailも分かる、といったような人は存在しないんでしょうか。

存在するような気もします。

岡島 コラボレーションが前提なのは、今の話の論点が「イノベーションを生み出すためには」だからだと思うんですよね。

この後私が話しますが、イノベーションとは「新結合」のことで、つまり遠いものと遠いものの掛け算です。

「ベテランで幅広い」と「若くてカッティングエッジ」はかなり遠いので、その掛け算をすることで、今までのやり方とかバイアスが外れるという効果があります。

もしそれを1人でやることが出来る人がいるとすると、相当スーパーマンなのではないかと思います。

石川 こうした音楽の世界を見ていて思うのは、若手とコラボできるベテラン側の層が少ないということです。

マックス・マーティンは色々な若手と組んで次々にイノベーションを起こすのですが、逆に若手側からしてみれば、プロデューサーとなかなか出会えない現状があるのだと思います。

村上 そういう意味だと、秋元康さんはそれに近いのでしょうか。

まさにカッティングエッジの若者とやったりされていますよね。

石川 1人の中に同居させてしまうとそれだけで忙しくなってしまうと思いますが、ハブのような位置づけで色々な人とコラボすることで、イノベーションの数を増やしているという側面もありそうです。

岡島 しかも30年もそれをやり続けるというのが偉業ですよね。

たしかにマックス・マーティンのような人をイメージすると、1人では達成が難しいのかもしれません。

伊藤 力はあっても、若手と組んでやろうぜという感性が、ベテランになるにつれてなくなっていくのでしょうか。

石川 そうなのでしょうね。やはりどうしても「気が合う人」「過去にやったことがある人」とやりたがってしまいますので。

村上 その方がうまく行きそうだと想像がつきますもんね。

「組んだ後はこう進んで、こうやって」と定石のように先が見えるし、その通りにやった方が気持ちがよいので、カッティングエッジな若者とのコラボから遠のいてしまうのではと思いました。

矢沢永吉は、常に生きのいい若手を探している

石川 永ちゃん(矢沢永吉さん)は70歳ですが、未だ現役です。

ニューアルバムも出したばかりですが、「矢沢永吉はなぜずっと最前線でやっていけるのか?」を知っていますか?

永ちゃんは(椅子にのけぞりながら)だいたいこんな感じで、その口癖が「生きのいい若手いないの?」らしいんです。

そこに若手が来たら、一度全面的に任せてみるそうです。

「俺が書いた曲に詞をつけてみて」、そして来たものに対して「…いいね!」と。

(一同笑)

石川 そのようにしてできあがったのが、今回のアルバムだそうです。

矢沢永吉 ニューアルバム「いつか、その日が来る日まで…」(2019年9月4日発売)

伊藤 この間テレビを見ていたら、嵐が永ちゃんの真似をしてマイクパフォーマンスをしていました。

「これ、永ちゃん怒らないのかな」と心配しながら見ていたら、「うん、松本君…いいね!」と言っていました(笑)。

70歳になってもそういった感性を持ち続けているというのが、すごいんでしょうね。

(続)

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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/小林 弘美/道下 千帆/戸田 秀成

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