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5. 採用は事業そのもの。経営者が持っている一番の武器である【終】

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ICC KYOTO 2022のセッション「スタートアップがトップタレント人材を新卒採用する方法を徹底議論」、全5回の最終回は、スタートアップが立ち上げ期において新卒採用をするときのリスクや気をつけるべきこと、組織の若返りの必要性など、各社の意見をうかがいます。経験に基づいた具体的なアドバイスは、採用に関わる人なら必読の内容です。最後までぜひご覧ください!

iCCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2023は、2023年9月4日〜 9月7日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。

本セッションは、ICCサミット KYOTO 2022 プレミアム・スポンサーのスローガンにサポート頂きました。


【登壇者情報】
2022年9月5〜8日開催
ICC KYOTO 2022
Session 2E 
スタートアップがトップタレント人材を新卒採用する方法を徹底議論

Sponsored by スローガン

「スタートアップがトップタレント人材を新卒採用する方法を徹底議論」の配信済み記事一覧


他人をつぶさないタイプをマネジメント層に揃える

福田 優秀な人材はものすごく成果を出しますが、新卒社員は色々な物事を知らない、凸凹の状態ですので、中途入社の社員が彼らをつぶしにいくということが、起こる可能性があります。

新卒社員に対して、「仕事はできるけど、こういうことができないからダメだ」と言う社員が出てきた際は、一定彼らを防御してあげなければいけません。

新卒社員については、そういう手間がかかるのですが、お二人の会社ではそういうことは起こりませんか?

柴田 まさにそういうことがあり、僕と中途入社社員がケンカをしてきたという歴史があります。

ですから、今いる3割の中途入社社員には、若者の活躍を喜べるタイプの人を揃えています。

ネットプロテクションズにはマネージャー職はいませんが、カタリストというシニアメンバーがいて、彼らの役割は、「若者が踊る手助けする」ことです。

そこで起こることの責任だけは取る、という嫌な仕事ですので、そういう仕事を好んでする人材を集めていますね。

負けず嫌いで、上からマウンティングしたいタイプだと、絶対に新卒社員をつぶすと思います。

新卒社員も一定年数働くとマウンティングを始めます。

そういうときに「この会社のマネジメントは、そういうスタイルではない」ときちんと伝えていくことが重要です。

ですから人事制度としても、上のバンドに上がる際は、下を支えられるかどうかについての360度評価に基づいて判断します。

つまり、個としてどれだけ活躍していても、他人をつぶすようなタイプだと、マネジメントをする側にはならない仕組みになっているということです。

マネジメント層に、他人をつぶさない人を揃えるというのは、めちゃくちゃ重要だと思いますね。

伊藤 なるほど。

スタートアップが新卒採用のリスクを減らすには?

山敷 守さん(以下、山敷) リングサイドから、DROBEの山敷です。


山敷 守
株式会社DROBE
代表取締役CEO

1987年東京都生まれ。都立国立高校、東京大学経済学部卒業。大学在学中、学生向けSNS「LinNo」を立ち上げる。2010年、株式会社ディー・エヌ・エーに入社。提携事業「Yahoo!モバゲー」でプロダクトマネージャーを務めた後、アバター事業責任者、モバゲー事業責任者を歴任。2012年、メッセージング&無料通話アプリ「comm」をcomm戦略室室長としてリリース。リリース2ヶ月で500万ダウンロードを突破。その後、シンガポール、アメリカ等を対象とする海外新規サービスほか、複数の事業立ち上げに従事。2016年、ボストン・コンサルティング・グループ傘下の独立組織である、BCG Digital Venturesの日本拠点の立ち上げから参画し、Product Directorとして様々な大手企業との新規事業開発に取り組む。2019年4月、DROBEを設立し代表取締役CEOに就任。

私の会社はまだ30人くらいの組織で、初期フェーズですが、新卒採用を行おうと考えています。

採用時に彼らが優秀に育つかどうか分からないという話があったように、ダウンサイドのリスクがあると思います。

例えば、30人しかいない会社が5人の学生を採用したが、2年経っても育成できなかったという結果になると、現場でのマネジメント工数だけが増え、事業成長を停滞させてしまいます。

立ち上げ期において、そういったダウンサイドリスクを考えていたのでしょうか?

また、例えばインターンとして採用して、実力を評価した上で社員として採用したなど、どうリスク回避をしたのかも教えてください。

柴田 先ほど申し上げた通り、我々は、中途採用がうまくいかなかったから新卒採用を始めたので、そのリスクの有無にかかわらず、突っ走りましたね(笑)。

入社してもらったからには絶対にどうにか育てようと考えていたので、コミュニケーション量も多かったですし、失敗でしたが、MBA研修もしていました。

経営者がコミットして育成に取り組んでいれば、結果的にダウンサイドになることはそうそうないはずだと思うので、経営者のコミット次第ではないでしょうか。

あと、採用した社員が活躍するかどうかは採用時には分からないと言いましたが、とは言え、入社する新卒社員の全員が選考をくぐり抜けてきているので、最低ラインを下回っている人材はいないわけです。

だからこそ、誰が伸びてくるか分からないということです。

逆に、評価が悪すぎる場合は採用前に分かるので、そういう学生は採用しないようにし、経営者が育成にコミットすれば、どうとでもなるのではと思います。

大塚 僕の考えも、基本的には柴田さんの考え方に近いです。

将来、組織の中で若手の力を活用したいのであれば、新卒でも第二新卒でも、若い人たちにリーチしなければいけないので、常にリスクはつきまとうのではないかと思います。

勿論、会社の規模が大きくなればそのリスクを許容できる場合もありますが、許容できないフェーズにおいては、山敷さんご出身のDeNAがそうだったように、失敗したストーリーにレバレッジを効かせて文化を強固にすることが、唯一の道筋ではないかと思います。

DeNAの南場さんは20年以上、創業期にプロダクトがうまくローンチできなかった話を、何度も語り続けているように思います

それを機に、システムを内製する文化の重要性、当時その最前線に若手の活躍を信じた結果どうなったか、などのストーリーは、リクルーティングにおいてはものすごく強いパワーを持つと思います。

それほどにまでレバレッジを効かせることができれば、リスクではなく、むしろ大きなリターンにできるのではないでしょうか。

ですから、中長期で考えて、若手の力を借りたいと考えるのかどうかがポイントかなと思いました。

山敷 ありがとうございます。

柴田 僕の経験で言えば、最初は経営者がコミットすることで新卒社員との距離を縮められますが、その後、彼らはマネージャーの下に配属されるので、マネージャーが僕を嫌いだった場合、新卒社員はどんどん洗脳されていきます。

ですから、大事にしたい新卒社員を、自分が信頼しているマネージャーの下に配属することも大事かもしれません。

新卒社員は何も分からない状態で入社するので、みんな、自分の色に染めたがるのです。

新卒社員が入社後、どういうメッセージをたくさん聞くことになるかという点は、きちんと考えるべきだと思いましたね。

昔、悲しい思いをめちゃくちゃしました。

超優秀だった社員が、訳の分からないおじさんに影響を受けて、退職してしまったこともありました。

そこは、気をつけるべきですね。

山敷 ありがとうございます。

伊藤 新卒社員が入社した際のマネージャー次第で、副次的なダメージが生まれるということですね。

柴田 そうですね、人数が増えていくと、経営者が新卒社員と密なコミュニケーションを取り続けるのは無理なので、間にコミュニケーションハブが入ることになります。

そのハブとなる人がどのようなコミュニケーションを取るかによって、結果が全て変わります。

ハブになる人との日常的なコミュニケーションに対して、経営者がたまに会ってコミュニケーションを取ったとしても、太刀打ちできませんので、重要だと思います。

福田 人は結局、自分の経験からしか行動ができないと思います。

新卒社員として採用や育成をされていない人がマネージャーになると、自分の経験をもとに新卒社員に対応し、良くない結果になることが多いと思います。

ですから、新卒社員育成への意識を持つ経営陣と、育成を現場で担当するマネジメント層の意識をすり合わせる必要があります。

また、マネジメント層に対しては、そもそも彼らとは違う種類の人材を新卒社員として採用しているということを、認識させなければいけません。

これらを押さえた上で、根本的に邪悪な人を採用しなければ、組織がおかしくなることはないと思います。

一番良いのは、新卒社員として入社した社員が、新卒社員を育成することですね。

その文化を早めに構築すると、共通理解を形成しやすいです。

我々もそれには苦労しています、その文化の構築に至るまでが一番辛いですね。

文化ができるまでは、経営陣が徹底的にモニタリングをするのがとても重要だと思います。

組織の若返りはどのくらい重要視すべき?

 皆さんは、組織の若返りはどのくらい重要視されていますか?

特に柴田さんと福田さんは大手企業出身ですが、マネジメント層や経営陣は50~60代だったと思います。

ですが、IT業界では状況が全然違うはずで、20~40代の人たちが業界を牽引してきました。

ただ、IT業界も成長期から成熟期に差し掛かっていると言われており、業界にいる人材の年齢層も高くなってきている気がしています。

そんな中、自分たちも将来的には大手企業となり、硬直化の時代が来るのではないかと少し怖く感じています。

私の会社、FABRIC TOKYOはアパレル企業なので、将来的にも、社員の平均年齢は低い状態を保ちたいと思っており、それが今後、新卒採用を考えている理由の一つです。

皆さんがどういう見解を持たれているか、教えて頂きたいです。

福田 社長に聞くべき質問かもしれませんが(笑)、組織の若返りというのは、あくまで手段かなと思います。

要するに、若手でなくても事業ができるなら、社員は若くなくてもいいということです。

自分たちの会社がやるべきことを実現するにあたり、シニアメンバーで実現できるならシニアメンバーでいいですし、若いメンバーが必要なら若い人材を採用すればいい。

正直、あまりこだわらない方がいいのではと思います。

新卒社員の比率を定めることや組織の若返りはあくまで手段なので、目的化してはいけないことだと思います。

そもそも会社が目指していることや目的次第で、新卒社員を採用するとか組織を若返りさせるとかが、手段として出てくる話です。

極端な話、若手人材を採用できなければ、シニアメンバーで運営すればいいだけなので、それほど強く意識する必要はないと思います。

特に、若手至上主義というわけでもないですし。

柴田 まさに、会社によって考え方は違うと思いますが、僕は、人事担当の役員とは、キープヤングということを結構意識して話しています。

創業して21年ほどですが、今、社員の平均年齢が29歳なので、計算するとおかしいんですよね(笑)。

ネットプロテクションズには、30歳を超えると自分の道を見つけて卒業し、それを周りがお祝いする文化があります。

40代以上の社員の場合、会社を支えてもらいつつも、社外のことにも取り組んでいいと伝えて、徐々に軸足を外にもずらしていくみたいな。

30歳前後を、エースとして一番推進力を持つタイミングにしておくと、会社はパワーを持ちやすいと思っています。

無理に外に出すわけではないですが、社内と社外の壁を薄くしておいて、本人が成熟していくと段々外に意識が向いていくようには設計しています。

僕の前職の商社では社員の平均年齢が46歳ですが、46歳を超えて初めてマネジメントを始めるなんて絶対に無理です(笑)。

やはり、社員のどの層がパワーを持って事業を推進していくかという設計は重要だと思います。

最初はやりやすいかもしれませんが、自分自身も年を取っていくので、中心をどこに置くかは設定しないとうまくいかないと思いますね。

伊藤 ありがとうございます。

本日のまとめ

赤川 残り5分とのことなのでまとめに入るべきですが、全然時間が足りないので二次会をお願いしますとリクエストしておきます(笑)。

新卒採用を行うなら、覚悟を決めてコミットすれば、成功に導くことができるということでした。

会社によって方法は違うという前提で、今、皆さんが0→1で新卒採用を始めるとして、気をつけること、すべきことがあれば、最後に聞いておきたいです。

伊藤 ありがとうございます。

最後に、会場の皆さんに「今ならこうするだろう」というアドバイスを頂けきたいと、ちょうど思っていました。

大塚 ありがとうございます。

私が新卒採用を始めて創業2年目、リンクアンドモチベーション出身の人事担当に入社してもらった際に言われたことが、新卒採用に長くチャレンジすることになったきっかけとなりました。

「新卒採用をするなら、3年間はきちんと取り組んでくださいね」と釘を刺されたのです。

しかし、先ほど福田さんがおっしゃった通り、局地戦で頑張れば、1年目から、採用自体は成功させられます。

では、何を3年取り組むのかということですが、学生にとっては、1つ年上の先輩がどういう活躍をしているのかという情報の方が、質の高いコミュニケーションの鍵になるようで、つまり、連鎖する何かがあるのだと思っています。

振り返ってみると、成果が出るかどうかは分からなくても、1年目だけで判断せず、3年という時間軸を持って、腰を据えて取り組んだことが良かったと感じています。

ですから、もしゼロから新卒採用に取り組むなら3年だと思っており、その際、積み上がる価値やリターンも意識するとやりやすいのではないかと思います。

これは、実体験からのアドバイスですね。今日はありがとうございました。

伊藤 ありがとうございます。

柴田 置かれている状況はそれぞれだと思いますが、もし僕が今、10~30人規模の会社を経営していれば、真っ先に新卒採用を行うと思います。

ゲリラ戦で戦えるので、経営者が新卒採用にコミットをし、色々な場に顔を出して一生懸命にアナウンスをすれば、おそらく良い人材を獲得できます。

かつ、採用した後には、僕のような失敗はしないよう、新卒社員と経営者の間には信頼できる人材を配置すれば、3年後には新卒社員はエースになりますし、5、6年経つと経営企画室長のような、信頼できるパートナーになります。

そう考えると、なるべく早く採用を始めた方がいいと思いますし、経営者がコミットすれば、採用から育成まで何とかなると思います。

福田 ほぼ同じ話になりますが、新卒採用は戦略的に取り組めば、局地戦で絶対に勝てるマーケットです。

中途採用についても、同じことが言えると思います。

ただ、経営陣がそこにコミットできるかどうかが、圧倒的に重要なポイントな気がしています。

僕が20~30人規模の会社を経営していれば、真っ先に新卒採用を行いますね。

なぜなら、優秀な学生を採用できることを知っているからです。

逆に、採用方法が分からないのであれば、知っている人たちに聞くべきです。

ビジネスもそうですが、基本的に、経験のある人でなければ、うまくいきません。

ですから、経営陣のコミットは前提として、経験のある人をうまく見つけ、アドバイスをもらいながら取り組むプロセスをたどるが、一番早いと思います。

無策で行うと、失敗確率は高くなります。

柴田 事業におけるマーケティングやセールスと変わらないので……。

福田 そうですね(笑)。

柴田 狙う層を見つけて、ターゲティングして、どうすれば伝わるかを考えて、実行していくだけですよね。

福田 採用は本当に事業そのものですね、マーケティングセールス。

柴田 そうですよね。

大塚 あと、執着ですね。

福田 そうですね(笑)。

大塚 執念と執着。

福田 経営者が持っている一番の武器は、採用を決められることです。

人材が圧倒的に強いドライバーになるので、組織や経営陣が、どれだけ強くそれにコミットできるかが勝負の鍵かなと思います。

柴田 あと、個人でノウハウを一番お持ちなのはおそらく福田さんなので、新卒採用を始めたい方はまず、福田さんに聞きにいくのがいいのではないかと思います。

会場 (笑)。

福田 競合にならなければ(笑)。

伊藤 ありがとうございます。

話が尽きないなというところではありますが、お時間となりましたので、大塚さん、柴田さん、福田さん、リングサイドの赤川さん、森さん、山敷さん、本当にありがとうございました。

(終)

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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成/大塚 幸

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