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「ミッションをチームで共有する」Google徳生氏が考えるプロダクト開発に大切なこと【SP-DS2 #3】

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これまでに配信した、デザインに関する議論を総特集いたします。今回は、ICCカンファレンス TOKYO 2016 より「優れたプロダクトの生み出し方」の記事を再編集して9回シリーズでお届けします。

デザイン特集2(その3)は、グーグル徳生さんに自己紹介とプロダクト開発において重要だと思うことについてお話しいただきました。ぜひご覧ください。

ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。


登壇者情報
2016年3月24日開催
ICCカンファレンス TOKYO 2016
Session 4B
「優れたプロダクトの生み出し方」
 
(スピーカー)
佐々木 大輔
freee株式会社
代表取締役
 
鈴木 健
スマートニュース株式会社
代表取締役会長 共同CEO
 
徳生 裕人
グーグル株式会社
製品開発本部長
 
中村 洋基
PARTY
Creative Director / Founder
 
(モデレーター)
赤川 隼一
株式会社ディー・エヌ・エー
モバイルソーシャルインキュベーション事業部 シニアマネジャー

「優れたプロダクトの生み出し方」の配信済み記事一覧

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【本編】

赤川 では続いて、徳生さん、よろしくお願いします。

徳生 裕人氏(以下、徳生) グーグルの徳生と申します。


徳生 裕人
グーグル株式会社 製品開発本部長
 
日本における検索をはじめとする基幹製品の製品開発を統括。
2005 年にGoogle に入社。プロダクトマネージャーとしてGoogle ブックスや経路検索等の開発に携わり、2008 年からは、アジア太平洋地域における YouTube の製品開発責任者として米国 YouTube 本社に勤務。YouTubeモバイル等の日本向け製品や、音声認識技術による字幕機能等の開発を担当。その後、国内の複数のベンチャーに経営に携わり、製品開発を統括。2014 年より現職。東京大学工学部を卒業後、スタンフォード大学 経営大学院でMBA(経営学修士)及び MS (工学修士)を取得。

私は2005年くらいにグーグルに入って、その後一度辞めて、スタートアップ界隈にいました。最初にグーグルに所属していたときは YouTube とか Google マップ とか Google ブックス等の製品に携わり、3-4年して再度入社してからは検索の開発をしています。

赤川さんから生々しいお話をということだったんですが、なかなか「今の」検索の中で生々しい話というのは出来ないので、ちょっと前にさかのぼって話を出来ればな、と思っています。あと、グーグルでは多くのプロダクトが10億人以上の人に利用されているので、プロダクトをどうやって出来るだけ速く成長させていくかという観点から、お話が出来ればと思います。

ミッション(Mission/Why)をチームで共有する

徳生 冒頭の赤川さんからのお題として、月並みなんですけれども、「ミッション」という言葉を挙げさせて頂いております。

グーグルは世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにするというミッションがあり、大事なのはなぜこれをやっているかっていうことがチーム内で共有されている状態だと思っています。

プロダクトマネージャーの仕事というのは、プロダクトをどうやって育てていくかというプランを立案して、全員にそのプランが、なぜこれをやっているのかを含めて共有されている状態を作ることが一番大事だと思っています。

そうすると、優秀なスタッフのみんなの力を活かして、本当にいいものが創れるようになる。その意味で、なぜこれをやっているんだっていうことを、きちんと考え抜いて共有していくっていうことが一番大事だと思っています。

事例として、5-7年前に開発した機能なんですけれど、YouTube で音声認識を使って自動で字幕を付けるという開発がありました。YouTube では、どんどん動画がアップロードされるわけですが、それに対して音声認識で字幕を作って、それを機械翻訳で翻訳出来るようにしました。

私は当時、アジア全体でYouTubeを良くするプロダクト責任者みたいな仕事をしていたので、アジア市場でニーズの高いモバイル版の開発に携わったり、特に字幕については、英語圏でアップロードされた動画が非英語圏で楽しめなかったり、非英語圏のクリエイターが英語圏のファンにリーチできないのは非常に勿体無い、という問題意識がありました。今考えると当然やって当たり前の機能だと思っていますが、私は当時インターナショナルな立場から、こうした機能の必要性を提案する立場にありました。

今画面に映っているのは、一緒に開発をしていたエンジニアなのですが、彼の場合は自分自身が聴覚障害者でした。彼はインターナショナルという観点よりも、彼を含め障害のある人たちが YouTube を十分に楽しめない、どうしてなんだっていう観点で意気投合する部分があり、チームを組みました。

チームミーティングとかすると、みんな部屋には集まりますが、一言も話さずに IRC(※注:インターネット用のチャット方式)でチャットしながら会議している、というよく分からない開発をしながら作ってきた機能になります。

かなり目立つ機能でありながら、比較的対象ユーザーが限定される機能なので、やはり機能の追加に対して合意形成が難しい部分もありました。海外市場をあまり重要視していなかった製品開発の部隊などは、「クローズドキャプションは多くのユーザーにとっては目障りではないか?」とかですね。

今でこそ、ニューラルネットワークとかで軽くなっていますけど、当時は動画1分あたり音声認識処理が3分かかるみたいな、YouTubeにアップロードされる全動画に対してそれだけの計算リソースをどうやって確保するんだといった問題もありました。

しかしながら、この機能はどう考えてもグーグルのミッションに適っている、ということが後押しになり、最終的にデフォルトで字幕を出すかどうかという話はラリー・ペイジまで上がり、彼のサポートも受けて、無事世に出すことが出来ました。

その後実際の開発の中でも、どんどんフェーズを積んで出していくので、各フェーズで何がゴールなのか、何でこれやっているんだっけ?を明確にしていると自然にチームが物事を解決していってくれました。

一番振り返って良かったのは、僕が開発した機能の中でも、4-5年立てば時代も変わり消え去っているものも沢山ある中で、この機能がまだ残っていることだと思っています。残っているというのは、筋が良かったんだなと。

この中(参加者)で開発されている方にとってもは、やはり自分のチームはもちろん、会社で何故このイニシアチブに集中していて、それは何故なのか?というところを、会社の全員が分かっているような状態が出来ていると、非常にいい開発が出来るのかなという風に思います。あまりオチがなくて申し訳ないですけど…

赤川 いえいえ。後でと思ったんですけど気になっちゃったので、1点だけ…、グーグル全体の大きいミッションがある中で、それを自分のチームで咀嚼するプロセスにマネージャーの価値があるのかなと思うんですけど、このケースの場合において、徳生さんはどういう形で、そのミッションを自動翻訳というものに落とし込んでいかれたんですか?

徳生 自動で字幕が付いたら世界中の人が言語を問わずに動画を楽しめるし、さらに字幕にはタイムスタンプがあるので、字幕をインデックスすれば検索で動画の特定の部分が探せるようになる。

ただ字幕を作るのは非常に手間のかかる作業で、全ての動画クリエイターにそういった作業を期待することは出来ません。音声認識や自動翻訳を駆使した機能を開発するというゴールは自明だったのですが、それをいつ、どういったステップで進めるかという点が課題でした。

中村 質問です。「音声認識の精度があと数年したら発達するから、そこまでリリースを待っても良いのでは?」というような議論は出てきました?

徳生 出てきましたね。

中村 どのように突っぱねましたか?

徳生 昨日ちょっと自動字幕を当時出したときのブログを調べて見たら、5年前に出したプログに1 年前にコメントが付いていて、なんか付いていると思ってよく見たら、「音声認識いまだにクソじゃねーか、どうすんだ」みたいなコメントが付いていて(笑)。

(会場笑)

徳生 実際5、6年前の音声認識の精度は今とは比較にならないくらい低くて、しかも YouTube の動画の中には今の技術でも音声認識が困難なものも沢山あるわけで、今そんなに大々的に出していいのか?という話はありました。ただ一方で、技術が「かろうじて」アベイラブルになった瞬間だからこそ、今までに無かった価値を提供できるという側面もありました。

あとは細かい機能ですが、例え自動生成された字幕が間違っていても、ダウンロードして手直しして再アップロードできるようにしたり、あるいは、オートシンクと呼んでたのですが、タイムスタンプの入っていないスクリプトをアップロードするだけで、、音声認識技術の応用で音声とスクリプトのタイミングを完璧に合わせて、手間をかけずに簡単に字幕を作れるという機能とかも作ってですね。

例え全自動の音声認識の精度が悪くても、ユーザー自身が補完できる仕組みも用意することで、それは間違いなく字幕全体の普及の推進につながるだろう、試して見る価値はあるだろう、という説明ができました。

なのでゴールがミッションに合っていても、それを本当に今やるべきかどうかは、様々な手を売って、それをコミュニケートすることが重要になると思います。

赤川 なるほど。ありがとうございます。グーグルならではの話も、グーグル的だけどスタートアップに活かせるような話も、今日は両方聞かせてもらえたらと思います。よろしくお願いします。

(会場拍手)

(続)

続きは 衝撃のヒット!「イライラ」→「キラキラ」ポジティブ変換アプリ”しずかったー”の開発秘話 をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/藤田 温乃

【編集部コメント】

続編(その4)では、PARTY中村さんに自己紹介とプロダクト開発において重要だと思うことについてお話しいただきました。是非ご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。

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