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ICC FUKUOKA 2024のセッション「地方創生を実現する新しい「街づくり」とは?」、全6回の③は、前回のセッション「北海道ボールパークFビレッジから学ぶ これからの街づくり」で詳細を解説いただいた小林 兼さんが登場。ボールパークができてからの進捗、今後のコミュニティ作りについて語ります。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット KYOTO 2024は、2024年9月2日〜9月5日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターは プレイドです。
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【登壇者情報】
2024年2月19〜22日開催
ICC FUKUOKA 2024
Session 7E
地方創生を実現する新しい「街づくり」とは?
Supported by プレイド
(スピーカー)
飯尾 彰浩
飯尾醸造 五代目当主 / 江戸前シャリ研究所 所長
岡住 修兵
稲とアガベ
代表取締役
小林 兼
ファイターズ
スポーツ&エンターテイメント
執行役員 事業統轄本部 企画統括部長
和田 智行
小高ワーカーズベース
代表取締役
(モデレーター)
岩田 真吾
三星グループ
代表
各務 亮
電通
クリエイティブ プロジェクト ディレクター
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▶「地方創生を実現する新しい「街づくり」とは?」の配信済み記事一覧
各務 では、小林さん、お願いいたします。
銀行員から転職、ファイターズ スポーツ&エンターテイメント 小林 兼さん
小林 改めまして、小林でございます。
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小林 兼
株式会社ファイターズ スポーツ&エンターテイメント
執行役員 事業統轄本部 企画統括部長
プロ野球球団・北海道日本ハムファイターズが2023年3月に開業した「北海道ボールパークFビレッジ」の企画責任者。スポーツと北海道の価値融合、職住遊が近接した魅力ある街づくり、スポーツビジネスや地域課題の解決に取り組む。地方都市の価値形成に一石を投じる事を目指し2020年4月に中途入社。前職はメガバンクに所属、十数年間に及ぶ海外駐在を経験し東南アジア地域における事業基盤の拡大に従事。北海道旭川市出身の43歳。
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北海道日本ハムファイターズというプロ野球チームがあるのですが、その事業会社で企画の責任者を務めています。
私は北海道で生まれ育ちましたが、かなり長く北海道を離れており、ぐるっと回ってから北海道に戻りました。
街づくりとはそもそも何かという自問自答もしましたが、北海道に戻った背景には、街づくりをしてみたいという思いがありました。
いつか死ぬなら、地域や世界に何かを返したいと考えて転職をしました。
野球歴なしと書いていますが、ほとんどしたことがありません。
そんな人間を受け入れてくれた今の会社に、街づくりへの本気度を感じています。
▶【一挙公開】北海道ボールパークFビレッジから学ぶ これからの街づくり(90分拡大版)(全5回)
多様な楽しみ方ができるボールパークが誕生
小林 「世界がまだ見ぬボールパークをつくろう。」は、当初から掲げていた理念です。
このボールパークにあるものは、それまで世界になかったものではなく、あったものを色々と掛け合わせることで、ボールパークの中で価値を生んでいます。
プロ野球には、12の球団しかありません。
福岡はホークスのお膝元なので、あまり私が大きな顔はできませんが(笑)。
外から見ていて思うのは、プロ野球というスポーツには、間があるということです。
例えば、1回から2回に変わる時、ピッチャーが交代する時などです。
また、試合数がめちゃくちゃ多いです。
ホームの球場で72試合を開催できますので、恵まれたスポーツビジネスだと思います。
岩田 サッカーに携わっている人は、野球がうらやましいと言いますよね。
小林 おっしゃいますね。
サッカー、バスケ、バレーボールなど、色々なプロスポーツに関わる方に、ボールパークに視察に来ていただきましたが、皆さん、試合数の多さと、試合のない日もイベントなどで多くのお客様が来ていることに注目されていました。
岩田 飲食関連の売上が全然違うのですよね。
野球だと、回が終わった時に買いに行けるし、ずっと食べられるし……。
小林 そうなんです。
例えば、自分の応援しているチームが攻撃している時しか観ないという人もいます。
今回のボールパークでは、飲食店をかなり充実させたのですが、コンコースで食べながらモニターで野球を観ている人も多いです。
横丁エリアに焼肉屋がありますが、肉を焼きながらモニターでチラチラと試合を見ていて。
いつまで焼肉屋にいるのだろうと思ったら、試合の最後までそこにいらっしゃいました。
岩田 (笑)。
小林 つまり、そういう楽しみ方もできる球場ということです。
このボールパークを作った時、多様な観戦方法をしていただきたいと考えていましたが、そのような面白い例も生まれています。
岩田 打ち合わせ時に話していて、意外だと思ったのがボールパーク来場者の男女比率です。
どれくらいだと思いますか?
小林 今、男女比6:4だと発言された方がいましたが、女性のほうが多いというデータがあります。
岩田 プロ野球って、昭和のお父さん世代が好きなスポーツだと思いませんか?
それが変わってきているのもすごく面白いと思います。
小林 もともと北海道にファイターズが誕生した時から、女性にも来ていただけるような球場やエンターテインメント作りを意識していました。
しかしここに来て、女性のみならず、若い人の来場も増えているというデータがあり、それを実感しています。
飯尾 阪神タイガースの場合は、違いますよね?
小林 阪神タイガースにも、女性ファンは非常に多いと思います。
これは余談ですが、ファイターズとタイガースは、それぞれセ・リーグ、パ・リーグに所属しているので、交流戦の時だけ戦うことがあります。
去年たまたま、タイガースが北海道のエスコンフィールドに来て試合をする年でした。
その際に球場を見ると、タイガースの黄色と黒だらけで、我々ファイターズの青や白は見えないくらいでしたが、逆に、それくらいで良いと思ったのです。
ビジターのタイガースファン、もしくは北海道にいらっしゃったタイガースファンが待っていましたとばかりに球場に来てくれることはとても面白いですし、彼らにも「この球場はすごい」と言っていただいたので、嬉しかったですね。
岩田 交流戦のために北海道に行くのが楽しみという、他のチームのファンもいるということですよね。
小林 SNSを見ていても、「いつエスコンフィールドに行くか」という投稿がありますし、注目されているのは温泉やサウナ、クラフトビールなどの北海道らしい楽しみ方です。
ボールパークに来る目的は野球だけではない
各務 若い女性に来ていただくことが、街づくりのポイントになると思います。
ボールパークが捉えている彼女らのインサイトは、どのようなものがあるのでしょうか?
何を求めてボールパークに来ていると分析されていますか?
小林 試合日と非試合日、平日と休日で4つの象限に分けられ、それぞれ違います。
私が一番感じるのは、「2、3時間も座って野球観戦はしたくない」ということです。
色々な楽しみ方をする中の1つに野球応援があり、その時には推しの選手がいると。
野球だけではなく、色々な目的を大事にしている若い世代が多いのではと思います。
岩田 昔のマーケティングは、絞る、削ることをしていましたが、今は多様な遊び方を提示する方が良いということですよね。
小林 そうですね。
あと、ウォーカブル、つまり色々なところを歩いて散策して楽しみたいという傾向は、世界のトレンドではないかと思います。
北海道の32ヘクタールの広大な場所では、歩いて楽しみを見つけ、また、回遊できるので、この点が若い世代には刺さっているのではないかと思っていますね。
岩田 1つ注釈をつけると、このすごいボールパークがあるのは、札幌市ではなくて北広島市です。
人口は何万人でしたっけ?
小林 6万人弱です。
岩田 皆さんの地元とそんなに変わらない田舎です。
前回のセッションの記事を見てもらえればと思いますが、小林さんは前回、「都市は大きければ大きいほど良いというわけではなく、適切な規模というものがある」と話されていました。
札幌市だと、大きすぎてボールパークはできないのですよね。
小林 そうですね。
岩田 北広島市だからこそ、一緒に作れるという…。
小林 人口規模もそうですし、マーケティングの観点から言うと、アクセス人口、つまり、60分以内で来てもらえるお客様がどれくらいいるかを重視していました。
行政区としての、6万人と200万人の対比ではなく、1時間以内にアクセスしてもらえる人の数は、札幌ドームで興行していた時よりも増えています。
岩田 なるほど。
12球団しかないし、僕たちは野球を誘致できないですよね。
他のスポーツでは、長崎も今お金を使っているので成功してほしいと思っています。
街づくりにおいて、スポーツは1つの切り口だと思いますが、適切なサイズと良いパートナー選びが大事だという点で、ファイターズの事例には学べることがあると思います。
小林 ありがとうございます。
旭山動物園を超えて、北海道で一番人気の観光地に
小林 今、少し触れた通り、回遊性と多様な楽しみ方を重視しています。
ご覧の通り、アスレチック、グランピング、ドッグランなどのエンターテインメント施設がある一方、認定こども園やシニアレジデンスなど、住むという機能も入れているのがポイントです。
単純に遊ぶだけではなく、職、住、遊、学が近接する街づくりを意識しています。
これは、ボールパーク上空から撮影した写真です。
意識しているのはこの3つで、まず、スポーツと北海道の価値を融合することです。
スポーツや野球の価値よりも北海道の価値の方が大きいと仮定し、観光地化するにあたって北海道らしさを押し出しています。
また、野球と非野球のMIXとは、野球の観戦人口を増やすためにソフト・ハード両面で間口を広げているいることです。
そして最後に、球場を核とする街づくり事業を進めており、これら3つが大きな柱です。
総じて、北海道の自然を資源にしながら、野球への興味のあるなしにかかわらず、多様な方が集えるエリアとしてグローバルマーケットに切り込んでいくということを、我々は強く意識しています。
2023年3月から12月までの合計来場者数は約350万人でした。
もともと300万人を目標としていましたが、大きく上振れて着地しました。
北海道の有名な観光地の一つである旭山動物園の年間来場者数は140万人なので、北海道で最もお客様に来ていただける観光地になりつつあるということです。
ポイントは、野球の試合のない日でもお客様はたくさんいらっしゃっていて、平均1日1万人のお客様がこのエリアに来ているということです。
北海道外からの来場者数が100万人です。
札幌ドームの時はそれが全体の10%だったのですが、30%にグッと引き上がりました。
温泉サウナや限定ビール、各種イベントなど野球以外の楽しみも充実
小林 今あるものを掛け合わせて新しい価値を生むことを重視しています。
例えば、入りながら野球観戦ができる温泉サウナは、非常に良いものを作りました。
また、ヤッホーブルーイングと一緒に、ここでしか飲めない「そらとしば」という、飲みながら野球観戦ができる非常に美味しいクラフトビールを作っています。
自転車、子供の遊び場、農業、焚き火、乗馬など、既成概念にとらわれない様々な掛け合わせにチャレンジしています。
ハードだけではなくソフトとしても、色々なイベントを行っています。
試合がない日のエンターテインメントとして、親子キャンプや音楽ライブ、年末年始には神社、夏は盆踊り大会など、地域の方々にも参画いただけるよう、充実させています。
今後5年の街づくりワークショップをスタート
掛け合わせが大事だということを示したのがこのスライドです。
単純に野球観戦者を増やそうとするだけでは行き詰まってしまうので、他のコミュニティや業界の力を借りながら野球への興味を持っていただきたいと思っています。
また、プラットフォーム事業として我々が場所を提供し、サービス提供企業とお客様の掛け合わせも行っています。
ランコミュニティ、ガーデンボランティア、ワークショップなどの活動も行っているので、地域の方は今までなかった楽しみ方ができるようになりました。
観光客には、「あそこに行けば常に何かイベントをしている」と思ってもらえるようになってきたと思います。
街づくりにおいてはコミュニティを作ることが非常に重要だと昔から言われていると思いますが、これは先日、絵師でまちづくりコーディネーターの林匡宏さんという方に、ワークショップで出たアイデア全てを絵に落とし込んでもらったものです。
▶️北海道札幌市 絵師/まちづくりコーディネーター 林匡宏様【取組事例インタビュー】(North SDGs Media)
今後5年間で1つ1つのアイデアを実現させていくための街づくりワークショップが始まったということです。
岩田 ウォーカブルな範囲の外側でということですか?
小林 そうです。
球場エリアは、想定しているエリアの一部しかカバーしていません。
例えば、JR北広島駅や、2028年にできる新しい駅の周りの開発も意識した上で、アイデアを出しました。
次は、2028年に向けて一気に開発を進めていきます。
(続)
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編集チーム:小林 雅/星野 由香里/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成