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4. 避難指示区域でゼロになった街に25の事業を創出、小高ワーカーズベース和田さん

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ICC FUKUOKA 2024のセッション「地方創生を実現する新しい「街づくり」とは?」、全6回の④は、ソーシャルグッド・カタパルトで優勝した小高ワーカーズベース 和田 智行さんが登場。避難指示区域で一旦すべての産業が停止した、南相馬市小高区での事業創造について語ります。宿泊できるコワーキングスペースを拠点に、現在までに25の事業を創出したのだそうです。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット KYOTO 2024は、2024年9月2日〜9月5日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターは プレイドです。


【登壇者情報】
2024年2月19〜22日開催
ICC FUKUOKA 2024
Session 7E
地方創生を実現する新しい「街づくり」とは?
Supported by プレイド

(スピーカー)

飯尾 彰浩    
飯尾醸造 五代目当主 / 江戸前シャリ研究所 所長

岡住 修兵    
稲とアガベ
代表取締役

小林 兼    
ファイターズ 
スポーツ&エンターテイメント
執行役員 事業統轄本部 企画統括部長

和田 智行    
小高ワーカーズベース    
代表取締役

(モデレーター)

岩田 真吾    
三星グループ    
代表

各務 亮
電通    
クリエイティブ プロジェクト ディレクター

「地方創生を実現する新しい「街づくり」とは?」の配信済み記事一覧


各務 では、和田さん、お願いいたします。

ゼロから街おこし、小高ワーカーズベース 和田 智行さん

和田 智行さん(以下、和田) 改めまして、小高ワーカーズベースの和田と申します。

私は福島県南相馬市小高区という、原発の避難指示区域になった地域からまいりました。


和田 智行
株式会社小高ワーカーズベース
代表取締役

1977年福島県南相馬市生まれ、在住。中央大学卒。グロービス経営大学院修士課程修了。2005年より東京のベンチャーの役員にリモートワークで参画。2011年3月の原発事故により家族とともに約6年間の避難生活を余儀なくされる。2014年、居住が認められない避難指示区域にて創業し、一度は住民ゼロとなった町に20以上の事業を創出。2017年よりローカルベンチャー事業の誘致・支援を開始。2019年にはゲストハウス併設型コワーキングスペースを開設し、福島の課題解決や価値創造に取り組む次世代の育成にも取り組んでいる。2014年AERA「日本を突破する100人」、2017年復興庁『新しい東北』復興・創生顕彰「団体部門」、2018年地方再生大賞「北海道・東北ブロック賞」、第17回グロービス アルムナイ・アワード「ソーシャル部門」、ICC KYOTO 2022「ソーシャルグッド・カタパルト」優勝、第8回ふくしま産業賞「福島民報社奨励賞」など受賞。

原発事故でゼロになった町を、100の事業を創出する開拓者の町に変える「小高ワーカーズベース」(ICC KYOTO 2022)

もともとはシステムエンジニアで、福島に住みながら東京にあるスタートアップ2社のCTOを務めていました。

震災と原発事故が起き、自身も6年間の避難生活を送りながら、当時は誰も居住していなかった小高区で創業し、もう10年になります。

キラキラのスタートアップから一転、誰も住んでいない街で、1人で起業したということです。

岩田 夜の星はきれいだけど?

和田 そうですね…。

岩田 この間、小高に行ったのですが、めちゃくちゃ星がきれいだったので、皆さんもぜひ。

和田 当然ですが、街灯も消えていて家の灯りもないので、夏場は街中の虫が、コワーキングスペースを目がけて集まってくるという、大変な状態でした(笑)。

2年前のソーシャルグッド・カタパルトで……。

【速報】避難指示が解除された南相馬市で、自己実現のフィールドとしてゼロから街おこし「小高ワーカーズベース」がソーシャルグッド・カタパルト優勝!(ICC KYOTO 2022)

岩田 皆さん、拍手したいですよね。

(会場拍手)

岩田 おめでとうございます。

和田 僕らがいるのは、原発から北側20kmのところです。

2016年7月には避難指示が解除されています。

僕らのミッションは、「地域の100の課題から100のビジネスを創出する」です。

課題はたくさんありますし、原子力災害という誰も直面したことのない課題なわけですが、裏を返せば全部ビジネスの種になりうるし、ここにしかない課題からは、ここでしか生み出せないビジネスの可能性もあるのではないかと考えました。

ですから、課題が100あるなら、それを解決するビジネスを100作ってやろうというミッションです。

和田さんの街づくりへの取り組みをCanCamが紹介

和田 まずは小さなコワーキングスペースを始め、店がなくなったので地元の方と食堂やスーパーを作りました。

そして若者を帰還させるという課題がありますが、女性のライフスタイルに合う職場を作れば帰還するのではないかと考えました。

女性は中年男性が集まるところに行きませんが、女性の集まっているところには女性も中年男性も来るのではないかと考え、ハンドメイドガラス工房を始めました。

岩田 このセッションの事前準備として、お互いのことを理解するため、お互いが取り上げられた記事を読んでいました。

その時に和田さんは、『CanCam』を持ってきましたからね(笑)。

街づくりで『CanCam』に載っていますから(笑)。

和田 そうなんです(笑)。

自分たちだけで100のビジネスを作るのは大変だということが、身に沁みて理解したので、地域で事業を起こす仲間を増やすため、起業家の呼び込みと支援をするようになりました。

例えばhaccobaや、今回SAKE AWARDに出展しているぷくぷく醸造などが生まれています。

▶参考:福島県に新たに誕生した「ぷくぷく醸造」が、第1弾商品「ぷくぷく醸造の純米酒」を8/24(水)に発売 | 日本酒専門WEBメディア「SAKETIMES」 (sake-times.com)

あと、宿泊できるコワーキングスペースとして、小高パイオニアヴィレッジという場所を作りました。

ここが、コミュニティの拠点ともなっています。

登録は260人ですが、登記しているのは17社です。

スモールビジネスを行っている方から宇宙ビジネスのスタートアップまで、色々な方がいます。

そんな感じで、25の事業を創ってきました。

僕らは、100のビジネスを創ることで、この地域を自立させたいと考えています。

被災地であるかどうかにかかわらず、地域には色々な課題があります。

行政は企業誘致することで課題を解決しようとしますが、それだと企業の都合に地域が振り回されます。

その地域には住んでおらず東京本社にいる、たった数人の役員によって撤退すると意思決定されると、その地域も共倒れしてしまいます。

そんな街の状態に戻しても仕方ないので、社会の状況の変化に合わせて、新しい事業が生まれるのが当たり前の風土を作ろうと考え、そのきっかけとして100の事業を創ろうとしているのです。

以上です。

岩田 僕も去年、今の福島を見ておくべきだと思い、ICCサミットにも参加されている高橋 大就(だいじゅ)さんに、2泊3日の家族旅行にアテンドしてもらいました。

▶参考:福島の住民として生きていく。浪江町の起業家・高橋大就さんが挑む地域コミュニティの再生 (greenz.jp)

とても贅沢でした(笑)。

その際に小高も訪れたのですが、やはり最先端地域だと感じました。

皆さんの記憶にも新しいと思いますが、今は能登が大変な状況に陥っているので、東北の皆さんがどう役に立てるかと話されていますよね。

和田 そうですね。

僕らの経験からの学びは、そういったところに還元しなければいけないと思っていますので、僕も来週、能登の人たちとオンラインで話します。

当時被災したコワーキングスペースのメンバーも来るので、住人ゼロの状態からでも復興できたという話をするつもりです。

岩田 それは心強い励ましですね。

街づくりのキーワードをおさらい

各務 ここまで皆様から、自己紹介と街づくりのアイデアを共有いただきました。

さて、事前に頂いたキーワードはこんな感じです。

もしお互いに、もっと聞いてみたいこと、ちょっと納得できないことなどがあれば……。

岩田 「街づくりのアイデアは?」という質問に対して、「ウルトラニッチ」と答えたのは…?

飯尾 弱者なので、新しいサブカテゴリを作って、そこでトップを取るという考え方です。

岩田 ありがとうございます。「酒はメディア」というのは、岡住さんですよね。

岡住 そうですね、先ほど話したことですが、酒は地域の名刺代わりに、日本中、世界中に旅立ってくれます。

酒をきっかけに男鹿に来る人を増やし、彼らを楽しませるコンテンツを提供するということです。

岩田 街づくりといえば、人の良さや観光となりがちですが、あえてプロダクト起点ということですね。

岡住 そうですね。

岩田 では、小林さん。

小林 野球に興味のない人にも来ていただけるような、新しい掛け合わせです。

また、コミュニティを育てなければ街は自走していかないと思っているので、様々なコミュニティが生まれるようなことをエリア内外で行っているのがプロ野球の運営会社、というのも面白いと思っています。

岩田 なるほど。

圧倒的なビッグプレイヤーだけど、全部自分で行うわけではないということですね。

では、和田さん。

和田 今話したことそのままですが、どうしても地方には閉塞感がありますが、課題をビジネスの種と捉えることで、現実を歪曲させてワクワクするフィールドに変えていくのがポイントだと考えています。

「地域のため」「住民のため」では続かない

岩田 2つ目の質問、「ケガして学んだ、失敗する街づくりは?」も見てみましょうか。

では逆方向で、和田さんから一言ずつ解説をお願いします。

和田 「『地域のため』『住民のため』なんて続かない」です。

やはり被災地であるがゆえに、役立ちたいとか地域のために頑張りたいとかいう人がたくさん来ます。

でも、続かないのです。

なぜなら、自分がやりたいことがなくて、誰かの役に立ちたいというモチベーションだと、そのサービスが要らなくなった途端、その人ができることがなくなるからです。

補助金だけ使っていなくなるというケースがたくさんありました。

ですので、そういう人が来た時には「あなたは何がしたいのですか」と聞くようにしていますね。

エリア外にも目を向けて価値を高める

岩田 ありがとうございます、めちゃくちゃ納得です。

では、小林さん。

小林 「地域との互恵関係」ですが、我々は民間のプロジェクトと言いながら、自治体や道庁からサポートをもらっているので、どのような効果があったかを問われると思っています。

開業前には期待がありましたが、開業後は不便も発生しています。

例えば、渋滞が増えたとか不満を感じている方もいらっしゃる中で、経済的、社会的価値を可視化して説明することが重要だと思います。

「こもらない」というのは、たとえ北海道で実施するプロジェクトであっても、北海道の会社だけがスクラムを組んで取り組むのが正しいのかという投げかけです。

他の地域でも同じことが言えると思います。

我々は北海道の会社からもたくさんサポートを頂いていますが、道外や国外の会社とのパートナーシップによって、ここまで価値があるものができたと考えています。

こもらず外に目を向けて、様々な業界のトップ企業や面白い企業に参画していただくことが、エリアの価値を高めていくと思っています。

岩田 ICCサミットでは自然と、「ボールパークといえばヤッホーブルーイング」と思っているかもしれませんが、ヤッホーブルーイングは長野の会社であり、サッポロビールを差し置いているわけですからね。

小林 そうですね。

岩田 こもらないということは、前回のセッションの学びでしたよね。

小林 あ、でもサッポロさんにもお声掛けしました(笑)。

(一同笑)

徒歩圏内の街づくりを目指せ

岡住 僕の回答は、「車で10分は遠い、徒歩20分圏内の街づくりを目指せ。」です。

我々は3年目の企業なのでまだ大ケガはしておらず、この回答しか出てこなかったのですが……。

僕の買った家は、醸造所から車で10分なのです。

我々の企業で働きたいと思う人たちが、試しに住めるような家を買いたいと思ったので、大きい家を買いました。

つまり、定住に繋げるための拠点としたかったのです。

最初はそれで機能していたのですが、醸造所の周りにコンテンツが増えて住む人が増えたところ、急に「車で10分」が遠く感じるようになったのです。

それで、誰も僕の家を使わなくなりました。

ですので、1,000万円も使って古民家を買うなら、やはり徒歩圏内で行けるような近いところに買うべきだと思います。

岩田 なるほど。

岡住 コミュニティスペースや宿という機能を持たせるには、絶対に近い方がいいですね。

岩田 行政による街づくりの場合、駅前の再開発でコンパクトシティにすることが多いですが、そういう要素が考慮されているのでしょうかね。

飯尾さんは地元でニッチな存在!?

岩田 では、飯尾さん、お願いします。

飯尾 「地元である宮津市の施策」ですが、私は月に1日か半日時間をとって、宮津市の委員みたいになっていました。

そして、宮津市は「みんなが活躍する豊かな街、宮津」という10年間のスローガンを決めました。弱者にとって致命的な特長のない内容に・・・。

岩田 やばい(笑)。

飯尾 やばいです。宮津には、年間300万人ほどの観光客が来ます。

今年、市政70周年イベントを行おうとしており、観光客が一番多いタイミングである6月1日(※このセッションの後、開催は7月21日に決定)土曜に、ブルーインパルスを呼びます。

▶️宮津市での航空自衛隊ブルーインパルス展示飛行の実施が決定しました(宮津市)

ブルーインパルスが来れば通常の倍の観光客が来るらしいので、オーバーツーリズムの可能性があります。

大渋滞になると思います。

弱者の戦略というか……、お客様にどう長く滞在してもらうかを考えるのではなく、お客様一人ひとりを見るのではなく、1つ大きな施策を打ち出しているのです。

岩田 明確にオーバーツーリズムだと理解しているのに、飯尾さんの意見が通らないのでしょうか?

飯尾 私は、地元で嫌われているので(笑)。

つまり、私は地元においてもニッチというか、特殊な存在なのです。

外の人にとっては私がメインストリームを歩んでいるように見えるかもしれませんが、商工会議所や行政からも全然相手にされていません。人間性に問題があるようです(笑)。

岩田 なるほど(笑)。

(続)

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編集チーム:小林 雅/星野 由香里/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成

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