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3. 日本で効率的に作って世界で売る、「日本農業」のビジネス戦略

食関連のビジネスを展開する経営者が集結したICC FUKUOKA 2024のセッション「『食』のビジネスポテンシャル」、全7回の③は、日本農業 内藤 祥平さんが、日本の農産物を海外で売るための供給体制作りを紹介。日本農業の売上の8割を占めるりんごが持つ強みとは何か、日本の農作物の品種改良が優れている理由とは何かを解説します。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット KYOTO 2024は、2024年9月2日〜 9月5日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターは エッグフォワード です。


【登壇者情報】
2024年2月19〜22日開催
ICC FUKUOKA 2024
Session 4F
「食」のビジネスポテンシャル
Supported by エッグフォワード

(スピーカー)

友廣 裕一
シーベジタブル
共同代表

内藤 祥平
日本農業
代表取締役CEO

橋本 舜
ベースフード
CEO

古谷 知華
日本草木研究所(山伏)
代表

(モデレーター)

西井 敏恭
シンクロ
代表取締役

「「食」のビジネスポテンシャル」の配信済み記事一覧


農産物の生産効率向上でグローバル展開する日本農業

内藤 こんにちは、日本農業の内藤と申します。


内藤 祥平
株式会社日本農業
代表取締役CEO

神奈川・横浜市で育ち、慶應義塾大学法学部在学中に米国・イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校農業経営学部に留学。その後、鹿児島とブラジルで農業法人の修行を経験する。大学卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーの日本支社にて農業関連企業の経営戦略の立案・実行などの業務に従事。2016年11月に株式会社日本農業を設立し、代表取締役CEOに就任。農林水産省「食料・農業・農村政策審議会」委員

我々は名前の通り農業を行っていますが、バリューチェーンの川上から川下まで行っているので、シーベジタブルのりんご版みたいな感じです。

戦後、日本の農産業は基本的に国内で作って国内で売ってきましたが、国内マーケットは伸びていきません。

需要が増えないのに供給を増やすと単価が落ちるので、みんなでカルテルを作り、需要の減少と共に供給も減らしていこうというのが産業としての基本戦略で、これは減反という制度です。

最初のうちはそれでよかったのですが、今は歪みが出ており、耕作放棄地がとにかく増えています。

大前提にあった、日本で作って日本で売るということが、この数年で大きく変わっています。

日本は昔お金持ちでしたが、今は他のアジア諸国で人口が増えていて1人当たりの消費金額も増えています。

日本が競合しているアメリカやニュージーランド、オーストラリアは、集約農業はできてもインフレのせいで、時給3,000~4,000円払わないと人が集められないという状況です。

しゅうやくのうぎょう【集約農業】(キッズネット)

悲しいことに、日本では1時間1,000円もせずに人が雇えます。

日本産の農産物は美味しくて、本気を出せばそれほど高くなく出荷可能で、海の向こうのマーケットは大きいのです。

ですので、どんどん輸出して、輸出で増やせた需要に対応できる供給体制への投資を行い、もっと効率的に、良い農産物を作ろうとしている、そんな会社です。

売上の8割はりんご

内藤 我々の売上の8割は、りんごです。

りんご一つとっても、生産から販売までとにかく非効率なので、一つひとつ解決しようと思っています。

1反は1,000平米です。

例えば生産については、日本では皆さんが想像するように、太い木に枝がたくさん生えていて、ハシゴをかけて収穫するような丸葉栽培をしています。

たくさんの木を植えられないので、反当たり2トンしか収穫ができません。

グローバルでは、スライドの下段にある高密植栽培が主流です。

ぶどうの棚のように、枝を細くして伸ばすことで、3倍の6トンが収穫できるようになります。

収穫量が3倍ですが、当然、労働コストは3倍にはならないので、キロ当たり生産原価は何と半分です。

製造業ではこのようなイノベーションの余地はもうあまり残っていないと思いますが、農業には減反という仕組みがあるので、みんなが効率化することを排除していた歴史があるのです。

我々は、3倍収穫できるなら、余剰分は輸出すればいいと考え、効率化のための投資を行っています。

収穫したりんごを選別する選果というプロセスにおいても、日本の選果場では5~10億円の規模しかないので、それくらいのキャパシティだと投資できる金額も制限されます。

投資を増やせば増やすほど、例えばAIで傷が全て判別できれば、キロ当たりの選果コストが下がります。

先ほどの、韓国の海藻の話に近いですが、アメリカなどでは、ファンドが投資をして選果場に効率的な仕組みを導入しています。

日本はガラパゴス状態ですので、我々が、全て自動で選別できる機械の導入を進めています(※) 。

▶編集注:2024年夏に、1秒で8個の高速選別ができる大型選果機をオランダから導入予定。

▶参考:日本農業、約42億円の資金調達を実施。累計調達額は66億円に(PR TIMES)

このように効率的に美味しいものを作り、詰めて販売するわけですが、海藻と違って、青果は卸売市場を経由するのが主流です。

これもある意味で最適化されているというか…日本は細長い島国で、農家も小さく、売り先には東京、大阪、名古屋だけではなく、100万人規模の都市も含まれます。

小さい作り手と小さい買い手をマッチングさせるためには、仲介人がたくさん必要なので、中央卸売市場や各産地の市場がたくさんあるのです。

このように国内流通は最適化されていますが、輸出には向いていないです。

そこで我々は、まとめて40フィートコンテナを使って直接港に持って行き、アジア諸国に輸出をしています。

一部国内向けにも販売をしており、例えばりんごの中玉など、売りづらい収穫物をスーパーに直接売る経路も作っています。

日本のりんごが持つ強みとは

西井 アジアのマーケットに、かなり大きな規模で既に展開されていますが、日本の果物や農産物、特にりんごの一番のポテンシャルとは何なのでしょうか?

味なのか品種なのか、それとも生産方法や気候なのか…。

内藤 結局一番大きいのは品種で、品種×生産方法です。

例えばりんごは世界で一番有名なフルーツだと言って良いと思いますが、りんごの中で最も生産されている品種がふじりんごです。

そのくらい世界を席巻しています。

ふじりんごは1960年代に開発されたもので、その後にも、ふじより美味しくて甘くて育てやすい品種はたくさん開発されています。

それらは日本で生産していますが、世界ではまだ生産されていません。

最近テレビに王林(※ローカルアイドルグループのりんご娘出身)という方が出ていますが、あれはりんごの品種の名前です。

緑色で、梨のような香りがする品種ですが、海外にはない品種です。

明確に海外にはない、美味しい品種と、それをきちんと生産する栽培技術と気候が日本にはあるということです。

西井 流通の仕組みがきちんと整っていて、気候がマッチする場所で生産すれば、もっと効率的に収穫できるのでしょうか?

それとも、日本ならではの何か強みがあるのでしょうか。

内藤 正直、海外でも特定の品種を大規模展開すると、ある程度、生産はできます。

ただし、このビジネスの難しさであり参入障壁でもあるのが、時間がかかることです。

例えばアメリカで、どんなに頭の良い人がその品種を植えても、どれだけ投資しても、りんごの実がなるまで5年かかります。

西井 なるほど。

内藤 しかも、いきなり全ての木を植え替えるのは難しいです。

実際にまず植えてトライして、成功した後に量産しようとすると、その時点までに結構時間がかかります。

ですから、その期間中も品種開発をし続けている産地である日本には、強みがあります。

西井 なるほど、面白いですね。

品種改良に強みをもつ日本の農作物

橋本 生産の後のサプライチェーンについては日本が遅れているということだと思いますが、研究開発と品種改良について、日本が世界最先端なのはなぜなのでしょうか?

内藤 それは、たくさんの小さい農家がいるからだと思っています。

たいてい、良い品種を開発するのは、国の機関である農研機構です。

例えば、そういった国の研究機関の予算規模や博士号を持つ人の数を他の国と比べると、日本は大したことはありません。

中国は10倍ほどの予算を持っています。

そういう機関では、まず良い品種を開発した後、実際に機能するかどうかの実証実験をする時に、種を農家に配るのです。

中国の場合、配る相手は味にあまりこだわらない農家ですが、日本の場合、味にめちゃくちゃうるさい小規模農家が何千軒といるので、彼らがめちゃくちゃ真面目にフィードバックをしまくるのです。

橋本 料理人のような農家がたくさんいるから、かつ、開発は料理人ではなく特定の機関がまとめて行っているからということですね。

内藤 そうですね。

ですから、農家1軒あたりの規模が小さいことは、生産性の面ではディスアドバンテージですが、良い品種を開発し続ける点では大きな強みの源泉になっているのです。

それを維持しつつ、効率性アップのためのスパイスを入れていくという感じでしょうか。

西井 面白いですね。

2023年も、シャインマスカットが流行りすぎて、国内のぶどう農家がみんなシャインマスカットを生産したので値段が下がりましたが、とんでもない流通量を生み出したのは、品種が確立されていて、各農家が正しく生産できるからですね。

ということは、そういう場合、国内では真似がしやすいというか、生産されやすいということでしょうか。

内藤 そうですね。

農研機構が食味向上にフォーカスする理由

橋本 農研機構のモチベーションが分かりません。

国内マーケットしかなくて農家全員が小規模であれば、別にりんごが美味しくならなくても…。

西井 ふじでいい、となりそうですよね。

橋本 王林ができたからといって、国内市場が倍の規模になるわけではないです。

メリットがなければ、国も投資しなければいいと考えるはずだと思いますが、どうモチベーションを保っているのでしょうか?

内藤 何か工夫をしようとする時、基本的には、単価を上げるか生産量を増やすかを考えます。

でも日本の農業では、減反に代表されるように、生産量は増やせないので、単価を上げるしかありません。

単価を上げるには食味を向上させる必要があるというのが、モチベーションですかね。

橋本 なるほど。

フレームワークが変わらないからこそ、その部分が突き抜けているのですね。

内藤 そうですね。

例えば、巨峰は1キロ1,000円ですが、シャインマスカットだと1,800円です。

生産原価はあまり変わりませんが、シャインマスカットは美味しくてお客様が欲しがるので単価が上がるわけです。

単価が上がると農家がハッピーになるので、農研機構はそこにフォーカスしているということです。

西井 すごく面白いですね。

ふじが世界を席巻しているように、そのうちシャインマスカットも世界中で作られるようになると思います。

その点、日本は先行しているのが事実なので、面白いですね。

内藤 ただ、品種を活用してきちんと海外展開できているかと言うと、うまくいっていません。

せっかくの大発明品であるシャインマスカットは流出してしまって……。

西井 そうですね、しかも、劣化品が広まっていますよね。

損失100億、シャインマスカット「中国流出」の痛恨(東洋経済オンライン)

内藤 はい。

西井 僕も去年、東南アジアでシャインマスカットを結構食べたのですが、美味しくないものが出回っていました。

もったいないことだと思います。

(続)

編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成

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