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1. 世界で類を見ない海藻の海面栽培・消費の循環を目指す「シーベジタブル」

食関連のビジネスを展開する経営者が集結したICC FUKUOKA 2024のセッション「『食』のビジネスポテンシャル」、全7回の①は、海藻の研究・生産・料理開発までを行うシーベジタブル 友廣 裕一さんが、海藻食文化の先進国日本の現状を紹介。激減する海藻を海面栽培によって復活させようとする試みを解説します。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット KYOTO 2024は、2024年9月2日〜 9月5日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターは エッグフォワード です。


【登壇者情報】
2024年2月19〜22日開催
ICC FUKUOKA 2024
Session 4F
「食」のビジネスポテンシャル
Supported by エッグフォワード

(スピーカー)

友廣 裕一
シーベジタブル
共同代表

内藤 祥平
日本農業
代表取締役CEO

橋本 舜
ベースフード
CEO

古谷 知華
日本草木研究所(山伏)
代表

(モデレーター)

西井 敏恭
シンクロ
代表取締役

「「食」のビジネスポテンシャル」の配信済み記事一覧


「食」にビジネスポテンシャルを感じる起業家が集合!

西井 敏恭さん(以下、西井) よろしくお願いします。

このセッションは、「食」のビジネスポテンシャルというテーマでお話しさせていただきます。

モデレーターの西井と申します。

​▼
西井 敏恭
株式会社シンクロ 代表取締役社長
オイシックス・ラ・大地株式会社 専門役員CMT

2001年から世界一周の旅に出る。帰国後、旅の本を出版し、ECの世界へ。14年に2度目の世界一周の旅をしたのち、シンクロを設立。大手通販・スタートアップなど多くの企業のマーケティング支援やデジタル事業の協業・推進を行うほか、複数企業の取締役を兼任  著書:『デジタルマーケティングで売上の壁を超える方法』(翔泳社)、『サブスクリプションで売上の壁を超える方法』(翔泳社)、『マンガでわかるデジタルマーケティング』(池田書店)

僕はシンクロの代表ですが、オイシックス・ラ・大地という会社の専門役員も10年ほど務めています。

明日も、美食がテーマのセッションに登壇するのですが、食に関するセッションにしか登壇しないので、ついにマーケターとしてはクビになったのかなと思っています(笑)。

【一挙公開】大人の教養シリーズ「美食」について語りつくす(シーズン8)(全10回)

橋本 舜さん(以下、橋本) あれ?前回も食のセッションだけだったのでは?

西井 間違いないです(笑)。

(一同笑)

食の人だと思ってもらえれば。

今日登壇の4名はスタートアップの方々であり、もともとあった食の事業を行っているわけではなく、何かポテンシャルを感じてビジネスを始めた方だと思います。

僕もオイシックス・ラ・大地だからというわけではなく、もともと食が好きです。

寿司やラーメン、和食など日本の食事は世界でめちゃくちゃ人気です。

食にはすごく大きなビジネスポテンシャルがあるにもかかわらず、結構難しいです。

ここ数年を見ていても、オイシックス・ラ・大地以外の食品宅配の会社は、なかなか黒字化できていませんし、食のスタートアップもそんなに多くないと思います。

そんな中、色々大変なことはあるかもしれませんが、橋本さんのベースフードのように上場してうまく行っている会社もあります。

まずは4名のスピーカーに、自己紹介も兼ねて事業についてお話しいただきましょう。

食ビジネスと言っても、皆さんそれぞれ全く違う事業をしています。

そこで、皆さんはどこにポテンシャルを感じて起業をしたか、また、それぞれの分野で感じる壁や課題をシェアしていただき、どう乗り越えてきたか、失敗談も含めてみんなで話せればと思います。

では、友廣さんからお願いします。

海藻の基礎研究・生産・料理開発まで自社で行うシーベジタブル

友廣 裕一さん(以下、友廣) 皆さん、こんにちは。

シーベジタブルという会社を経営している、友廣と申します。

海藻の栽培から食の提案まで、海の生態系を育み循環をつくる「シーベジタブル」(ICC FUKUOKA 2024)


友廣 裕一
合同会社シーベジタブル
共同代表

大学卒業後、日本全国70以上の農山漁村を訪ねる旅へ。東日本大震災後は、宮城県石巻市・牡鹿半島の漁家の女性らとともに「ぼっぽら食堂」や「OCICA」などの事業を立ち上げる。 2016年に共同代表の蜂谷潤と共に合同会社シーベジタブルを創業。世界初となる地下海水を利用した青のりの陸上栽培を開始。障害のある方や高齢の方々と共に香り高い青のりを栽培。現在は海面での栽培にも力を入れており、30種類以上の海藻を手掛けている。 多様な専門性を持つ研究者に加え、料理人たちも仲間となり、今まで流通してこなかった美味しい海藻の陸上及び海面での生産から、新たな食文化づくりまで行っている。

フード & ドリンク アワードでひたすら説明をしていて、喉が……。

【速報】「フード & ドリンク アワード」グランプリは、海藻の食文化を世界に発信する「シーベジタブル」(ICC FUKUOKA 2024)

橋本 声が枯れていますね(笑)。

友廣 辛かったですが、楽しかったです(笑)。

我々の会社は、海藻の基礎研究、種苗生産、陸上と海面での栽培を行っています。

生産したものをどう加工すればいいか、どう保存すればいいか、そしてどう食べればいいかという料理開発まで行っているスタートアップです。

シーベジタブルには、研究者がたくさん所属しています。

これは最近色々なところでしている質問ですが、日本に海藻が何種類くらい生えているか、ご存知ですか?

西井 それ、分かったらすごいですよね。橋本さん、分かったりしますか?

橋本 この質問、6回くらい聞いています(笑)。

友廣 はい、ひたすら色々なところで話して、少しずつ広まればいいなと思っています(笑)。

西井 いえ、分からないです(笑)。

友廣 1,500種類、生えています。

西井 そんなに。

友廣 それらは全部毒がなくて、食べられると言われています。

西井 へー。

橋本 この話、今日の午前中に聞きました(笑)。

友廣 現在、日本では50種類ほどの海藻が食べられていると言われています。

つまり、約1,450種類は食べられるポテンシャルがあるのに、今まで食べられてこなかったということです。

もともと100種類ほどが食べられていたと言われているので、どんどん採れなくなっているということです。

ほとんどの海藻は天然採取されるので、天然で採れなくなったら食文化が終了するという危機に直面しています。

フィールド調査のレジェンドとINUA出身のシェフが参加

友廣 そこで、このスライドの左上に「海藻採取」とあるように、我々は親になる海藻を見つける専門チームを持っています。

45年以上、1年のうち200日以上は海に潜っている、フィールド調査のレジェンドのような人が社内にいます。

親になる海藻の種をどう手に入れるか……。

橋本 海藻を採る人とは、漁師なのでしょうか?

友廣 日本のほとんどの海は漁業権で私有化されているので、海藻を採るために勝手に海に潜るとすぐに怒られちゃいます。だから地元漁師さんに協力してもらって採ってもらいます。

橋本 でも、漁師は海に潜らないですよね?

友廣 潜る人もいますね。

西井 潜る専門の漁師もいます。

橋本 へー。

友廣 でもたいていは漁業権が設定されているので、自分が漁業権を持ってる地元の海に詳しくても、その他の海にも潜っていて詳しいという人はいないのです。

勝手によその海に潜っていると、保安庁に怒られるからです。

それが水産業の課題の一つですね。

先ほど話した方は新井 章吾さんといって、調査のために潜ってきた人なので、日本中の海に潜ってきた経験があります。

「この海藻はどこかに生えていますか?」と聞くと、「あの県で20年前に見たな」という感じで答えてくれます(笑)。

海藻が採れたとして、海藻の種を入手したくても、種苗培養の研究者も世界中を見渡してもほとんどいないのです。

これまで海藻の栽培技術が確立されてこなかったので、新しい海藻の種を手に入れ、栽培して量産できるという人は本当にいないのです。

そこで我々のところに研究者が集まってきて、ラボも数カ所あるので、あらゆる海藻から種を取れるというところまで体制ができてきました。

現在では30種ほど、種苗生産に成功しており、海と陸で海藻を栽培しています。

美味しいままで保存する方法にも、これまで誰も向き合ってきていません。

電気が普及する前、採ってきた海藻を干しておくという、漁師が使っていた方法が今も使われているだけです。

それについては、弊社のシェフたちテストキッチンチームが取り組んでいます。

そのシェフは、明日、西井さんが登壇される美食セッションにも参加します。

【一挙公開】大人の教養シリーズ「美食」について語りつくす(シーズン8)(全10回)

INUAという、nomaの姉妹店にあたるレストランで、料理開発のスーシェフだった石坂(秀威)です。

海の森を守るため“海藻の新しい食文化”をテストキッチンから発信(料理通信)

彼は、昨年(2023年)のnoma Kyotoにも出向という形で参加していました。

橋本 INUAのスーシェフがフード & ドリンク アワードに参加するって、ずるくないですか?

西井 それは本当にずるい(笑)。

友廣 INUA出身の3人が社員なので、都内のテストキッチンで保存方法の開発、そしてこれまで保守的な食べ方しかなかった海藻料理の開発をしています。

海外で同じ取り組みをするプレイヤーはいない

西井 海外にも、こういう取り組みをしている人はいないのでしょうか?

友廣 いないですね、スタートアップは増えていますが。

既に種苗生産方法が確立されたものを量産しているプレイヤーが多いですね。

例えば北欧のフィヨルドは、日本の面倒な漁業権の規制などもなくて養殖適地なので、日本の100倍くらいの規模でスタートできます。

でも、新しい海藻について栽培方法から取り組めるようなプレイヤーはほぼいないです。

西井 つまり、今までは勝手に生えてきていたものなので、取り組む必要がなかったということなのでしょうか?

友廣 日本に関してはそうですね。海外では、そもそも海藻を食べる食文化がなかったので…。

西井 食べないですよね。最近、食べられるようになりましたね。

友廣 本当に最近のことです。

橋本 ポッドキャストで知ったのですが、「人間を魚にする」というアメリカのスタートアップがいて……。

西井 意味が分からなさすぎる(笑)。

橋本 魚は海藻だけ食べて生きているから、人間もそうなれるはずだと。

かつ、SDGsの観点でも、日光は勝手に差し込んでくるし、海はあるから、農地より海藻の方がサステナブルであると語っていましたね。

結構有名なポッドキャストで、聞きました。

友廣 そうですね、SDGsの観点で、欧米ではこの分野にお金が流れ込んできているので、スタートアップが増えているようです。

その先に食利用しようと考えたときには、食文化がなかった国が多いので、みんな日本に注目しているのです。

50種類もの海藻を食べている国はないので、圧倒的に先進国なのです。

西井 海藻を食べている日本ですら、まだ50種類だけということでしたよね?

橋本 アメリカ人は、生海苔を消化できないのでしたっけ?

日本人だけが海苔を消化できるのは嘘?断定できない理由とは?(中川海苔店note)

西井 その話、聞いたことある。どうなんですか?

友廣 日本人13名、北米人18名が被験者の調査で、日本人の5名のみが腸内細菌から海藻の消化酵素を持っていたという結果だったそうです。


ただ、腸内細菌は、遺伝的なものと習慣的に食べたもので変化するものがあるので、断定するには情報が少ないという感じですでね。

世界初、地下海水による海藻陸上栽培

友廣 陸上での海藻栽培については、海沿いに井戸を掘って、海水を汲み上げてかけ流しにすることで通年栽培できる設備を確立しています。

食文化ごと消えつつある「海藻」を独自技術で栽培 シーベジタブルの挑戦(Forbes JAPAN)

一番大きい水槽は、直径20mです。

橋本 この拠点は、すごく大きいですよね?

友廣 3,000坪くらい、約1万平米ですね。これまで、すじ青のりを陸上栽培で作ってきました。

温暖化が原因の食害が増加

友廣 新井さんがジョインしてくれたので、年間100回くらい、北海道から沖縄まで、日本中の海に潜って調査をしてきたところ、すごい勢いで海藻がなくなっていることが分かりました。

これは磯焼けと呼ばれますが、こんな感じで何も生えていない海が、特に西の方にたくさんあるのです。

西井 僕はよく対馬に行くのですが、おっしゃる通り、海藻がなくなってしまっていました。

ここ5年くらいで、あっという間になくなってしまい、ウニもいなくなりました。

対馬沿岸の藻場の減少(対馬市)

友廣 あるときを境に、2年ほどで消滅したと言われています。

橋本 陸上では、5年で木が全くなくなって砂漠になる、なんてことはないですよね。

友廣 ないですね。

橋本 なぜ海はこんなに早いのでしょうか?

友廣 多くの海藻は、夏に葉がなくなって枯れて、冬に生えるサイクルを持っています。

これまで、海水温が下がっていた冬は、海藻を食べる生き物たちが冬眠のような感じで活動を止めていました。

海藻だけが伸びる時期があったということで、ある程度大きくなってから食べられても生態系は保てますよね。

でも今は、真冬でも生き物が活動しているのです。

芽生えた瞬間は資源量がすごく少ないので、一瞬で食べ尽くされてしまうのです。

橋本 ギリギリのラインがあって、それを超えてしまうと……。

友廣 そうですね。海水温が上がったことで海藻自体が生えなくなったのではなく、海藻は生えているけど食べられていることが大きな原因です。

そして、海藻がなくなると、 人間が食べられるものがなくなるということ以上に、生態系への影響が大きいのです。

例えば「山の木々が減って動物が減った」と聞くと、「それはそうだ」と皆さん理解できると思います。

でも海の中でそれ以上のことが起こっていても、それこそ対馬の沿岸海域の海藻が全てなくなっているというのはものすごく異常事態なのですが、海の中は見えないので知られていません。

その結果、魚が減っていることとつながっているのに、その因果については理解されていません。

西井 そうですね、正直、外から見ても全く分からないですし、潜ってみて初めて海藻がないと感じます。

橋本 海藻がなくなることでCO2の吸収量が減ったとしたら、それは日本国のCO2吸収量にカウントされているのでしょうか?

友廣 そうはなっていないと思います。

新たに増えた場合のCO2固定量はこれから換算して入れ込もうとしていますが。

海藻が海にある状態、つまり藻場を増やそうとみなさん取り組んでいるのですが、原因である食害を解決しない限り、基本的にはうまくいきません。

海藻の海面栽培・消費で作る循環モデル

友廣 日本中で対策は取られていますが、成果は出ていません。

そこで僕らが取り組んでいるのが、海面栽培です。

写真の右端がワカメですが、ワカメや昆布、海苔など種苗生産が成功している品種については、栽培適地が埋まっていて新規参入者には場所がないくらいの状況です。

一方、波当たりの関係などでワカメに向いていない場所もありますが、僕らは写真にあるヒジキ(写真中央)やトサカノリ(写真左)など、30種類くらいの選択肢を持っています。

ワカメには向いていない場所で、我々が種苗生産したものを漁師さんに育てるところを任せ、海に浮かべてもらえば太陽の光と海の栄養だけで大きくなる。そして大きくなったものを買い戻します。

それを続ければ、日本中の空いている海に、海藻の畑であり森をどんどん広げていけるのではないかと考えています。

また、海藻を海面で栽培すると生態系が回復していくというエビデンスを取得するために、今調査を行っています。

このエビデンスが取得できれば、陸上でいうところの砂漠に木を植える行為と、海で漁師が海藻を栽培する行為が同じ意味を持つようになります。

砂漠の木は植えたら終わりですが、海藻は消費できるので、みんなが食べることで生業として広げていける、循環モデルを作っていけるのが面白い点だと思っています。

(続)

編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成

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