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9. 詳説! マイクロソフトとOpenAIの深い関係

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ICC KYOTO 2023のセッション「AIの最新ソリューションや技術トレンドを徹底解説(シーズン5)」、全13回の⑨は、日本マイクロソフトの西脇 資哲さんが登場。まずは話題のマイクロソフトとOpenAIのパートナーシップについて紹介します。今までにない速さで導入が進んでいるというChatGPTの現状も合わせて、ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2024は、2024年2月19日〜 2月22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターは STREET HOLDINGSです。


【登壇者情報】
2023年9月4〜7日開催
ICC KYOTO 2023
Session 11C
AIの最新ソリューションや技術トレンドを徹底解説(シーズン5)
Supported by STREET HOLDINGS

「AIの最新ソリューションや技術トレンドを徹底解説(シーズン5)」の配信済み記事一覧


西脇 一番最初に尾原さんが会場の皆さんに、どの立場ですかと尋ねましたね(Part.1参照)。

1つ目がAIモデルやLLMを作ったり、自分自身がAIを作って提供する、2つ目がAIではない自分たちのサービスがあって、そこにAIの機能を付け加えていったり、そこを作っていく、3つ目が利用するということでした。

マイクロソフト的には、多分3つともやっているわけなんです。

尾原 確かに。

西脇 自分たちもOpenAIと一緒にやっているAIの会社でもあるし、それをマイクロソフトの製品、例えばOfficeにくっつけていくということです。

あるいは我々の社内も当然ながらユーザーなので、それを使っているという3つの側面があると思います。

その3つの側面でお話をさせていただこうかなと思っています。

今回のICCサミットは、AIのセッションが多いですよね。

尾原 意外と多いですね。

西脇 多いですよね。昨日のCo-Creation Night、昼間のセッションでも、また今日もあって、結構 AIでの登壇回数が増えて、このICCの会期中でも多いです。

そこで触れさせていただいたこともおさらいしながら、進めたいと思います。

今回小林 雅さんに、このセッションも出てよと言われて、尾原さんと相談してやろうかという話になりました。

OpenAIへの出資を語る、マイクロソフト西脇さん

西脇 マイクロソフトがすご く注目いただいている理由の1つが、OpenAIと非常に仲がいいことです。

要は出資している側になるわけですよね。

左側がサティア・ナデラで、右側がサム・アルトマンですね。

サム・アルトマンはよく日本に来ますね。

尾原 そうですね。

もともと日本が好きというのと、各国の政府調整の先鞭となる国という意味もあります。

西脇 好きなんですよね。

投資してあげればいいのにと思うんですけどね、本当にそう思いますよね。

尾原 もともと、さっき言ったY Combinator(Part.5参照)のトップでもありました。

西脇 実はエンジニアでもあり、起業家でもあります。

マイクロソフトはどうしたかと言うと、2019年、2021年と今年2023年に出資をしているわけです。

今、時価総額4兆円を超えているので、投資案件としてはすごく成功しているわけなんです。

この後スタートアップとしてどういうイグジットを描くのかわからないですが、1つマイクロソフトとOpenAIにとってハッピーだったのは、投資やスタートアップ育成という意味で言うと、買収しなくてよかったなと思うんですよね。

これはよく言われるのですよね。

アメリカでもすごく言われていて、2019年にマイクロソフトからすると買収という選択肢もあったのですよね。

買うお金もあったし、買うという判断も当然ながら我々のステークホルダーは全員まあやってもいいんじゃないのと思ったのですが、結局買いませんでした。

買ったら多分、このブームは起きなかったと思うんですよ。

冷静に、皆さんもOpenAIのエンジニアの気持ちを考えてみてくださいね。

OpenAIの優秀なエンジニアが、俺はOpenAIだ、世界をAIで変えるんだ、サム・アルトマンと一緒にやっていくんだと集まっているところを、マイクロソフトがパクッと食べてしまったら、なんだよ、マイクロソフトかよってなるはずなんですよ。

OpenAIの中はほぼ全てLinuxで動いているので、Windowsでやらなきゃいけないのかよとか絶対出てくるのです。

なんだよ、このロゴはとか言う人が出てくるのですよね。

だから、多分2019年の段階で、そういうふうになってはいけないな、研究者の何かを詰んでしまうなという判断があったと思うんです。

それで結局出資をすることを選択して、複数年にわたって出資をしました。

OpenAIにコンピューティングリソースを提供

西脇 昨日も言ったのですが、お金を出す以外に物も出しています。

これはブログで公開されていますが、CPUはAMDと一緒に作った285,000CPUです。

Microsoft announces new supercomputer, lays out vision for future AI work(Microsoft)

これがクラスターで、InfiniBandでつながっています。

GPUは、NVIDIAと共同開発をしたOpenAI向けのチップセットです。

これが、ベースはV100。

もう1つは、今一番新しいものだと、H100です。

このH100は、1コアあたりメモリを80GB積んでいます。

この80GBを8クラスターにして、これを10,000提供するのです。

このくらいの規模のCPU、GPU、メモリ、ストレージ、ネットワーク、あとはお金ですよね。

ここまで研究者に自由に使わせるようになると成功するのだなという、非常にいい例なんですね。

尾原 ちなみにこの1クラスターだけで500万円で、それが何個あるのかなあみたいな(笑)。

西脇 だから、よく言われていて、アメリカでもブログで書かれているのですが、2020年から2021年ぐらいに、CPU、GPU不足を巻き起こしたのは、これが原因じゃないかと言われているのですよね。

要は、そのぐらいのCPU、GPUをOpenAIに提供したわけです。

これがやはり非常に大きな革新を生んだのではないかという気はします。

ではその代わりにマイクロソフトが何を手に入れたのかというと、今日のこの状況を手に入れたのですが、我々が持っているのは、この右下にある独占的ライセンスです。

この契約事項は公開されていませんが、どういうことが書かれているか、一部は言ってもいいことになっています。

OpenAIが生んだGPT-3、4、今5が始まっていますよね。

DALL·Eがあります、DALL·E 2があって、DALL·E 2の次はもう始まっているのですが、このモデルをソースレベルで動かすことができる、手を加えることができるのは、地球上でOpenAIとマイクロソフトです。

尾原 そうか!

西脇 そう、この2社なんです。これは明記されているのです。

これは公開されています。他の会社は触ることができません。

使うことは、誰もができて、万人が使うことができますが、ソースコードに手を入れたり、それをクラウド上でオリジナルにデプロイをするのはこの2社しかできないので、今マイクロソフトは非常にありがたい恩恵を受けているわけなんです。

サム・アルトマンがOpenAIに正式復帰、マイクロソフトの「オブザーバー」参加で影響力は強まるか(WIRED)

今までにない速さで企業がChatGPTを導入

西脇 もう1つの良い点は、このChatGPTをあらゆる会社が使っていることです。

私はIT業界に30年間いるのですが、30年間で、言葉を選ばずに言うと、勝手に使ってくれるテクノロジーなんてあんまりなかったのですよ。

尾原 こんなに早く使われるなんてないですよね。

西脇 ないです。

尾原 もちろん2カ月で1億ユーザーが使ってくれたのもあるけれど、企業がこんなに早く使うっていうのはないです。

西脇 例えばわかりやすく言うと、私もオラクルとマイクロソフトにいたわけですから、クラウドのビジネスをやっていたわけです。

クラウドを使ってくださいとお客さんにお願いすると、「クラウド?うちにはエンジニアがいるし、そんなの使わないよ。ちょっと他の事例あったらやるけどさ」と結構及び腰というか、そんな率先してやらないですよね。

ところが、このChatGPTは、私の30年のITの歴史の中で逆なんですよ。

お客さんのほうから「すみません、マイクロソフトさん、ちょっと使いたいので教えてください」「売ってください」レベルなんです。

こんなこと、今までないじゃないですか(笑)。

尾原 ないない。というか、やらないで時代に乗り遅れたら、やはりゆくゆく存続に関わる、ないしは、これで人員削減、人がリプレイスされるみたいなところの恐怖感からも、使わなきゃっていうのもありますよね。

西脇 それも一面ありますよね。

尾原 DXが非常に早くなったと思います。生成AI…

西脇 そうですよね。

DXが加速していますよね。もう1点は、さっき尾原さんがY Combinatorでも、スタートアップの企業のAIが48社でしたか、あるという話でしたよね。

だから、AIがやはり会社の武器として標榜できるのですよね。

皆さんもそうですね。AIがやっているから、うちの会社はいいよっていうことなんですね。

これは、やはり経営戦略の中に確実に入っているのです。

尾原 例えば米国の教育系スタートアップのCheggは、オールドモデルでガンガンに作っていたわけですよ。

でもChatGPTにちょっとガワをかぶせただけの英語教育のプラグインみたいなものが2日で作られてしまって、CheggがChatGPTのSpeakを使う人がいるんですよねとポロッとIRで言ってしまったら株価が半分になってしまって、それでもう二度と株価が戻らないみたいな状況になりました。

チャットGPTの脅威に警鐘で株価38%急落、教育サービスの米チェグ(Bloomberg)

要は、生成AIが一番最初に殺すのはオールドAIスタートアップみたいな状況もあるから、先にやらないと食われるみたいなところもありますよね。

大企業以外でもChatGPT導入が広がる

西脇 メガバンクでもそんな感じで、どの銀行も先にやってくるということで、ちょっと驚きで今までにちょっとない感じですね。

それはいわゆるトラディショナルな会社、大きい会社だけではなくて、スタートアップやあらゆる会社に広まっています。

エクサウィザーズさんに先ほどお話いただいた、これが実際の画面です。

尾原 これ、お見せしちゃって大丈夫ですか?

西脇 大丈夫です。

今日はお見せしても大丈夫なものばかりです。

マイクロソフトのAzureを使っていただいています。

マイクロソフトのスタートアップの支援プログラムに入っていただいている会社なんです。

こういう恩恵を受けることができるので、マイクロソフトのスタートアップの支援に入りたいという会社がものすごく増えてきたのです。

尾原 これのすごいのが、ちゃんとその社内データベースと連携して、要は社内のノウハウをChatGPTのような簡単な入力で、みんなが使うことができるということですね。

西脇 そうなんです。

(続)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成/小林 弘美

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