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7. エクサウィザーズの企業向け生成AIサービス、どんなものがあるのか

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ICC KYOTO 2023のセッション「AIの最新ソリューションや技術トレンドを徹底解説(シーズン5)」、全13回の⑦は、エクサウィザーズ石山 洸さんが登場。「AIを用いた社会課題解決を通じて、幸せな社会を実現する」をミッションとするエクサウィザーズは、実に幅広い事業を展開しています。ChatGPT、DX人材育成、福祉用具のリース会社などなど…詳しくはぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2024は、2024年2月19日〜 2月22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターは STREET HOLDINGSです。


【登壇者情報】
2023年9月4〜7日開催
ICC KYOTO 2023
Session 11C
AIの最新ソリューションや技術トレンドを徹底解説(シーズン5)
Supported by STREET HOLDINGS

「AIの最新ソリューションや技術トレンドを徹底解説(シーズン5)」の配信済み記事一覧


石山 もうだいぶ会場がお疲れの感じなので(笑)。

尾原 いやいや、そんなことないですよね(笑)。

石山 ちょっとお疲れだと思うので、アイスブレイクを少しさせていただくと、私は社会人1年目の時、プロパーでリクルートに入社したのですが、その時の一番最初の上司が実は尾原さんでした。

西脇 そこから間違いが始まった。

石山 そこから間違いが(笑)。

非常に鍛えていただいて、尾原さんがいなければ今の自分はないなと思っています。

西脇 おー、言われたい(笑)。

石山 今日も、特に尾原さんが呼んでくださったわけでもないですが、5年に1回ぐらいは、たまにパネルディスカッションの機会があって、大変ありがたいなと思っております。

尾原さんから3つのアジェンダに従ってプレゼンしてくださいと言われたので、真面目にちゃんと1、2、3とタイトルを付けながら作ってきました。

尾原 ありがとうございます。

特許取得多数、AIを用いて社会課題を解決する、エクサウィザーズ石山さん

石山 まず、エクサウィザーズのAIに対する基本姿勢ですが、ミッションは「AIを用いた社会課題解決を通じて、幸せな社会を実現する」です。

エクサウィザーズは、3つの多様性を挙げています。

「解くべき社会課題の多様性」と、それから、それを解く「人材の多様性」と、解いた後に出来上がる 「幸せな社会の多様性」をダイバーシティのアセスメントにしています。

ですから、特定の社会課題に絞っていないので、ビジネスのTAMも当然そうなるのですが、幅広く社会課題に対してアプローチしている形になります。

始まる前にリングサイドの方々からも、いろいろなことをやりすぎないでくださいと話もありました(笑)。

普段あまり言っていませんが、自分も前職がリクルートだったのと、一緒に創業して社長をやってくださっている春田 真さんも元DeNA会長なので、簡単に言うと、どちらも社員を放っておいて、やりたいことを好きにやってもらっていたら成長した会社、と言ったら怒られるかもしれないですが、そういうノリが強いのですよね。

自分がこの課題を解きたいからと、トップダウンで社員にこの課題を解けというよりは、いろいろな課題を解きたい次世代のアントレプレナーみたいな人たちが大勢入ってきて、各々が解きたい社会課題をAIを使って解くということで、幅広くやっている形です。

データセットもマルチモーダルでやっているので、本当にいろいろなタイプのデータセットがあります。

特許の数で言うと、出願ベースで、2023年の3月末でもう196件になっています。

尾原 取得数とペースがヤバいですよね。

石山 そうですね。取得でも3月末で95件ぐらいあって、上場しているAIベンチャーの中では、弊社比較ですけれども、2016年にできた会社ですがトップクラスで、アワードもいろいろ頂戴しています。

AIのいろいろな特許(スライド下部)を社会課題(スライド上部)にぶつけて、プロブレム・ソリューション・フィットするのが、うちの会社のコンセプトとしてやらせていただいている形です。

特に日本の超高齢社会みたいなものは、その中でも積極的に解きたいと思っているので、高齢者の方をサポートする介護系のプロダクト、あるいは労働人口が減っていく中で、それこそ生産性を上げるためのプロダクトみたいなものもかなりたくさん作っています。

ChatGPTを安全活用するための企業向け生成AIサービス

石山 生成系のところで言うと、まず基本機能ということで、いわゆるChatGPTのようなものを企業の中で使おうとする際、ChatGPT Plusだとクレジットカードをいちいち登録するのが面倒だったり、あるいはセキュリティがちょっと不安だったりといろいろありますので、そういったところをクリアしています。

基本料金月額900円です。

尾原 安くないですか!

石山 ChatGPT Plusよりも安い価格でエントリーポイントがスタートできるサービス「exaBase 生成AI powered by GPT-4」を出しています。

特にうちはAIで利用するパーソナルデータをもとから慎重に扱っているので、投稿する時に、例えば個人情報とか、情報のデータ単位ですね、住所、口座番号という抽象度の高いカテゴリーで指定していただいても、いわゆるChatGPTやOpenAIのAPIに投げる手前でブロックしてくれるみたいな形にもなっていて、かなりセキュアに使っていただける機能がいろいろと搭載されています。

そういうようなところから始めていただくのですが、やはり社内で生成AIをいろいろ使いこなそうとするとリテラシーをどうしても上げていかなければいけないということで、リスキリングの話になります。

デジタルスキル評価とラーニングができるDX人材育成サービス

石山 そこで、「exaBase DXアセスメント&ラーニング」も出していて、いわゆるデジタル人材版のSPI(適性検査)みたいなもので、どういうデジタルスキルを持っているかを評価するアセスメントと、あとはラーニングが付いています。

ラーニングは最近Udemyと提携していて、うちのアセスメントの結果をベースに、AIがUdemyのどのコンテンツを見たらいいか、レコメンドしてくれる形になっています。

尾原 Udemyは世界のオンライン教育プラットフォームで、たくさんのレッスン動画があるから、それを上手くレコメンデーションして、あなたはこれを視聴すればいいよと。

石山 おっしゃる通りです。

そうすると、Udemyのeラーニング視聴率も2倍ぐらいになるようなことがわかっていて、向こうにとっても良く、win-winな感じです。

1,200社に利用いただいて、エンタープライズ中心ですので、時価総額トップ1,000ぐらいをターゲットに、かなり使っていただいています。

尾原 しかも、これはマインド醸成にもいいですよね。大事ですよね。

石山 そうですね。実はポテンシャルも出るのです。

日本のデジタルや数学的な教育は、グローバル全体で言うと実は高いほうで、日本人だけが自分が理系じゃないと思っているようなことが結構あるのです。

8万人ぐらいのデータを全部分析したら、5人に1人は必ずポテンシャル人材としてのDX人材がいることがわかりまして、その隠れDX人材を社内の中に見つけていくようなことにも、実はすごくニーズがあります。

ベース機能を入れて、教育してとなってくるとだいぶツールを使えるようになりますので、ホリゾンタルSaaSをさらにいろいろ差し込んでいく形になります。

決算説明会・株主総会の想定問答集を自動作成

石山 これは「exaBase IR アシスタント」で、例えば財務やIRの担当者に、決算や株主総会をやる時の資料を全部入れていただくと、想定Q&Aを自動的に作成してくれます。

こういうアシスタント系のexaBaseシリーズを、生成AI系でたくさん作って展開しています。

尾原 IRの業務は、意外とデータを取りまとめたり、文章を取りまとめたりが大変なので、ここは確かにおいしいホリゾンタルですよね。

石山 そうですね、今までもホリゾンタルSaaSはたくさんありましたが、まだまだこれから、もう1回生成AI系の巻き直しがいろいろ起きるのかなと思っています。

AIソフトウェアの開発環境を提供

石山 もう既存のSaaSプロダクトだと満足できませんというレベルになりますと、名前がちょっと被りますが(笑)、exaBase Studioがあります。

第一生命がエクサウィザーズのAI開発環境 「exaBase Studio」を採用(PR TIMES) 

マシンラーニングを自動化するAutoML(自動機械学習)みたいなものは世の中にたくさんありますが、そうではなくてマシンラーニングが搭載されているソフトウェアの開発全体をサポートするツールになっています。

もともとエクサウィザーズの社内で作った「exaBase Blueprint」というドメイン特化言語がありまして、YAML(ヤムル)ベースの言語になっています。

先ほど、すごくたくさんアルゴリズムの特許があるとお話ししましたが、それを上手く呼び出して、いろいろな同期を取ったりすることをサポートする言語があって、その言語をうちのコンストラクターに投げると、Kubernetes(クバネティス)をジェネレートしてくれるアーキテクチャになっています。

それをさらにexaBase Blueprint自体をノーコードで書けるようなツールとして、exaBase Studioを作っています。

さっきの話で言うと、exaBase Studioでバックエンド側を作って、Kubernetes(クバネティス)を、ジェネレートした後に、まさにSTUDIOさんのツールを使ってフロントエンドを作って、組み合わせるみたいなことなどしても、すごく面白いのかなと思いました。

福祉用具のリース会社とジョイントベンチャーを設立

石山 高齢者のほうは介護系のプロダクトで、ご家庭で介護される時にベッドなどの福祉用具をリースする会社で、トップクラスのシェアを誇るヤマシタとジョイントベンチャーを作っています。

AIサービス開発のエクサウィザーズと福祉用具のヤマシタ、合弁会社設立(PR TIMES) 

尾原 シブいですね。

石山 もともとはいかにもAI屋がやりそうな、高齢者の方が歩いている動画を撮ると 、リハビリをこういうふうにしたほうががいいですよみたいなレポートを自動的に出してくれるサービス「トルト」を、介護施設向けに提供していました。

一方で気づくと、ヤマシタの営業の方がtoC向けに使っていたのですね。

これからベッドを使われる高齢者の方にちょっと歩いてもらって、こっち側にこういう比重がかかっているから、ベッドをこっち側に置いたほうがいいね、トイレがこっちだから、という判断に使っていたのです。

さらに、だったらこのベッドのほうがいいなとか、この杖はどうですか?とか、靴のソールはどうですか?みたいなこともお勧めできるので、LTVがそもそも上がることもわかりまして、今協力させていただいて、一緒にツールの展開をさせていただいています。

尾原 日本の中には隠れた「エクスパティーズ」というのですが、こういう職人的な知識とかを大量に抱えていて、結果的にむちゃくちゃユーザーから選ばれている企業はあるから、そういう企業を探し込んで、全部つないでいくってさすがですね。

石山 ありがとうございます。

尾原 しかも社会貢献になるわけでしょう?

石山 はい。

社名をエクサウィザーズにしたのは、よくAIの達人のことをウィザード(魔法使い)級プログラマーとか言うじゃないですか。

でも介護の達人もウィザードだよねということで、いろいろなウィザードの人たちがそれこそ新結合するので、社名をエクサウィザーズにしています。

西脇 ヤマシタはどこで見つけてきたのですか? なぜこの事業になるのですか? これだけが突拍子もなく出てきたからびっくりしているのですが。

石山 僕の頭の中では、生成AIでさっきいろいろ言ったサービスはこの下側なんですね。

労働人口が減ってくるので自動化されて…

尾原 そうですよね、人口が減っているからロボット、オートメーションに変えていきましょうという。

石山 上側が高齢者の方が増えていくので、社会人1年目の時から尾原さんに、「MECE(ミーシー、互いに重複せず、全体として漏れがない)にやらなきゃいけない」と結構言われていまして。

西脇 リクルートっぽい。

石山 両面やらせていただいている形になっています。

コロナ禍の保育園でAIがベストショットを撮影

石山 次に、介護ができるなら保育もできるだろうみたいな話です。

コロナ前、保育園にはカメラマンが入って写真をたくさん撮られていたのですが、コロナ禍で入れなくなったみたいなニュースもありました。

だったらと、保育園の中にいろいろなカメラをエッジカメラで置かせていただいて、1日20万枚AIがベストショットを撮るようにしました。

その中からディープラーニングのアルゴリズムで20万枚から200枚ぐらいベストショットに絞り込んで、それをデイリーで共有するサービス「とりんく」をやっています。

文部科学省からエクサウィザーズに転職してきた人がいて、新機能を今作っていて、「ぐんぐんタイムラプス」というものを作っています。

毎日定点で撮影しているので、2年間分ぐらいの画像がたまるわけじゃないですか。

それが本人の非認知能力の増加とどういうふうに関係していて、脳の可塑性の話もあるので、今後はそういう部分もつなげていくと、かなり面白いことになっていくのかなと思います。

尾原 非認知能力と言われるのは、一般的にテストでは測れない共感性だったり、感受性、そういった能力のほうが、実は生涯学習時代にはものすごい成長に寄与すると言われています。

ある種、情動的な動きというものを大量に写真というデータが取れる時代になったから、こういう形で表象するみたいな。

リングサイドの皆さん、情報量が多すぎますが、どうですか?(笑)

リングサイドからの質問

都筑 そうですね、逆にサービスとして気になりましたが、20万枚を解析するのは結構大変で、 膨大な写真が毎日くるじゃないですか。

その辺はめちゃくちゃ頑張ってGPUを回してとか、そういう感じなんですか?

石山 そうですね、はい。

武藤 様々なことに取り組まれていて、何でもできますみたいなところが多分強みなんだと思いますが…

尾原 やり過ぎですよねえ。

武藤 その時でもなおある、ゴー、ノー・ゴーのラインというか、やらないことはどういうところにあるのかをお聞きしたいです。

石山 開発担当者が諦めたら終わり、というぐらいですね。

武藤 では、基本的に市場性や収益性のようなものはあまり評価せずというイメージなんですか?

石山 そんなの大人なんだから、普通考えるよねみたいな(笑)。

武藤  そこも任せて、自分でそこも含めて責任を持てみたいな。

石山 もちろんです。

尾原 リクルートっぽいですね。

武藤 確かにリクルートさんもサービスの量が多いですね。ありがとうございます。

土田 同じような質問になってしまうかもしれませんが、本当にいろいろやられている中で、でもAIができることは、先ほどSTUDIOさんも言っていましたけれども、ダイレクト・インディケーションみたいなところしかできていません。

エンジニアリングのちょっと手前ぐらいのところが、ある程度そうじゃない人にもちょっとできるようになってきたというレベルです。

介護とかいろいろなところに課題を抱えているわけですが、その課題を解決できるウィザードの人と、ユーザーには、まだ結構、溝があると思うのですが、そんな溝がある部分をいろいろな領域でしっかり埋めていくには、どういったところに工夫されているのでしょうか?

石山 まず、参入している領域は、各領域のドメインスペシャリストがほぼ全員いる形です。

そうすると、自社の中にユーザーがいる状態になるので、それでPDCAがすごく速くなるというところはありますね。

それでもやはり一般のサービス開発に比べると、社会課題の深さとAIの不確実性が入ってくるので、リーン・スタートアップ的に言うと、不確実性のパラメータがさらに2個増えたみたいな状態にはなるので、難易度自体が低いかというと、そんなことはないかなとは思います。

けれども、もう僕らのビジョンは社会課題と決めているので、そこからぶれずに逃げずにやろうみたいな感じでは頑張っています。

土田 本当にすごいなと思うのですが、僕らは今リテールにかなりフォーカスを絞ってやっていて、それでもお客さんのドラえもん的要求と言いますか、あんなこといいなみたいなところと、AIのリアルみたいなところを埋めていく、その要求仕様からサービスを形にするところってすごく難しいなと思っています。

それを横串でザーッとやられているのは、もう僕からすると本当に魔法使いとしか言いようがないみたいなところがあります。ありがとうございます。

分社化、グループ化、提携によって拡販

石山 ありがとうございます。

でも、おっしゃっていただいた部分は、すごく苦労しているポイントです。

例えば苦労点、工夫しているところで言うと、先ほどの生成AIのプロダクトがだいぶできてきたので、分社化していこうみたいな形で、先ほどの介護向け、保育園向けのサービスも分社化しています。

そういうマネジメント方針でやったほうが、プロダクトの開発が速く進みます。

あとは、どのみち将来起業したいみたいな感覚で入社する人のほうがうちの会社は多いので、だったら早くそういう機会を作っていってあげられるようにすると、ポンポン特定の社会課題を解決するAIの子会社を作っていくみたいな感じに今はなっています。

ただ、それだけではやはりきついので、もう1つ横軸で、今年4月に入って以降ですが、スタジアムという、どちらかというとデジタルプロダクトの営業代行のところですごいシェアを持っている会社をグループ化させていただきました。

作ったプロダクトを販売していく生産のマーケティングのチャネル自体も、自社基盤としてかなり強くしていくことを両輪で回すことによって、プロダクト開発側のバーティカルのチームとセールスマーケティングのホリゾンタルのチームを上手くマリアージュしながら、全体がぐるぐる回っていくようにしています。

介護以外は顧客が結構かぶっているみたいなところがありますし、介護のようにかぶっていない領域は、先ほどのヤマシタとの提携のような形で回していっています。

そういう意味では、もともとすごい大量の特許がある中から、何らかの取引をしているような会社 が140社ぐらいあって、だいたい年間350件ぐらい、何らかのAIの案件をやっているような形でした。

そこに、MLOpsが得意なエクスウェアをグループ化しまして、その後、セールスマーケティングが得意なスタジアムが入ってみたいな形でアセットを積み上げつつ、真ん中の部分で、いろいろなAIプロダクト系の子会社を作っていきながら、拡販していくサイクルを頑張って回そうと取り組んでいます。

(続)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成/小林 弘美

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