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8. OpenAIが一度諦めたロボット領域への挑戦

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ICC KYOTO 2023のセッション「AIの最新ソリューションや技術トレンドを徹底解説(シーズン5)」、全13回の⑧は、エクサウィザーズ石山さんが、MVPの開発スピードの重要性を語ります。開発にもスピード感がさらに求められる今、エクサウィザーズはどのように進めているのか? 加えてロボット領域への挑戦についても紹介します。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2024は、2024年2月19日〜 2月22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターは STREET HOLDINGSです。


【登壇者情報】
2023年9月4〜7日開催
ICC KYOTO 2023
Session 11C
AIの最新ソリューションや技術トレンドを徹底解説(シーズン5)
Supported by STREET HOLDINGS

「AIの最新ソリューションや技術トレンドを徹底解説(シーズン5)」の配信済み記事一覧


尾原 AIや開発系の会社は、どうしてもシングルプロダクトだったり、シーズドリブンで、技術があるからやっていくというところから始めますが、エクサウィザーズは、インパクトドリブンだったり、マーケットとして、そもそも適合性が高いみたいな、マーケットドリブンとシーズドリブンをものすごく重ねられていて、すごくヒントになりますよね。

まず、どのようにして拡張してきたのですか? こんなふうにマトリックス組織というか、形にできる組織って?

選択と集中からマルチセクター、マルチモーダルへ

石山 最初はまさに創業者の春田さんが、ジェフ・ベゾスみたいな、ナプキンではなかったのですが 、紙にループ図みたいなものを描いてくれたから、一応こうした案件とSaaS化、汎用化みたいなものがぐるぐる回るようなモデルを、そもそも目指していました。

尾原 SaaSの汎用化と何を?

石山 個社案件です。

尾原 個社案件があるから、そこの中から共通のファンクションができて、共通のファンクションができると、またちょっとずらした個社案件ができるという、このぐるぐるのループ図を春田さんが戦略として描いて、いいですね、春田さん…みたいなことが。

石山 みたいなことがありました。

あとは、会社の環境の変化に応じてですが、例えば社外取締役の元ベイン・アンド・カンパニーの代表だった火浦(俊彦)さんがご紹介してくださった本に、ハーバードビジネススクールの先生が2人で書いた『Competing in the Age of AI: Strategy and Leadership When Algorithms and Networks Run the World』があります。

その中で、アリババはECのデータをペイメントに使って、レンディングに使ってというように、結局もうマルチセクターでやっているじゃないですか、と。

だから、選択と集中はAIの時代にはもう終わっていて、どちらかというと事業領域の再定義だと。なので、うちの会社もマルチセクター、マルチモーダルで最初からやっています。

たまればたまるほどネットワーク外部性が将来効いてくるので、最初はつらいですが、そっちで勝負するのです。

尾原 いわゆるコンパウンディングと言われる形で、特に例えば今の代表だとTikTokが有名で、TikTokは一時期、毎月プロダクトを出していました。

それはなぜかと言うと、結局アプリを使う時の共通のファンクションが一緒だし、デザインチームがいるしみたいな、そういうソフトウェア開発のところの積層性みたいなところから入って、でもいまやフィジカルな接点というところの積層性まで入ってきていますよね。

石山 そうですね。やはり売上1,000億円以上の日本のインターネット系会社を見ていくと、自社のセールスを絶対持っていますので、その規模感を基本は超えることを前提に始めているので、そうすると、やはりセールスの内製化は一定必要だなと思います。

一方で、先ほどのexaBase Studioとかは、日鉄ソリューションズさんが結構売ってくれていたりするのですよね。

彼らは、例えばデータロボットなどをすごい売っていたりしますが、もうその次の商品としてexaBase Studioを考えて、売っていってもらっていまして、そういうことは進んできている感じです。

個社案件獲得と開発のスピード感

武藤 先ほどのSaaSと個社案件を上手くループしている、その循環はすごく理想的で、我々ALGO ARTISとしても目指したい姿として持っているのですが、最初にそのループに入るまでの入り口の部分は結構いろいろなアプローチがあって、まあまあハードな壁があるのではないかと思って、今そこを必死に取り組んでいるみたいなところがあります。

エクサウィザーズの場合は、最初どこをトリガーにしてループに入った感覚になったのか、お聞きしたいなと思いました。

石山 個社案件は、うちの春田さんが新聞を見て面白そうだと思ったら電話していてすごいなと思ったのですが、自分はアタックリストを作るのが面倒で、音楽が好きなので、ドレミファソと、ドならドコモ、レなら…リクルート(笑)、ミは三菱UFJ、ファはファーストリテイリング、ソはソニーみたいに、適当に知り合いのつてでセールスに行って個社案件を獲得していきました。

逆にプロダクトのほうは瞬発力がすごく重要で、個社案件がすぐ積み上がってしまうとリソースがないみたいな話によくなるのですが、そこはMVP(Minimum Viable Product:実用最小限の製品)を作る瞬発力みたいな形で、一番最初のexaBaseのアナリティクスツールは2週間ぐらいで完成させました。

その後の「exaBase DXアセスメント&ラーニング」の質問表みたいなものも、一番最初のベータ版は2日とかで全部作り上げているので、そういう意味でプロダクト側、MVPの瞬発力が弱いと個社案件にバランスが取れなくなってくるみたいなことはあるかなと思いますね。

武藤 そうすると、今いろいろSaaS的なものと個社案件があると思いますが、結構たくさんのSaaSの死骸があるみたいなイメージでしょうか?

石山 やめていったものも結構いっぱいあります。

ただ死骸も、尾原さんが言ったソフトウェアのレイヤー性(積層性)があるので、結局コードが残るじゃないですか。

そうすると個社案件でやっている時に、死んでいったSaaSのコードがそのまま使えることが結構あったりするので、再利用しながら回しているみたいな感じです。

尾原 しかも生成AIはプログラムのプロトタイピングの開発速度を上げるから、多分より相性が良くなるし、そこにプラスして、石井さんのような、ああいうUXのノーコード、 会話系で作るみたいなプロトタイピングすると、MVPがマッハな速度になっていきますよね。

MVPはもうプロンプトでいい

石山 そうですね。その辺は結構いろいろ頑張っていまして、さっきのSTUDIOさんとの話とも関係してくるかなと思うのですが、まだちょっと答えはないと思いますが、もともとMVPってモックアップを作って、こんなウェブサービスがあったら使いますか?みたいなことを、ずっとやっていったじゃないですか。

この前、たまたま日本の結構有名なCPO(Chief Product Officer)クラスのプロダクトマネージャーが30人ぐらい集まるイベントがあって出席したら、だいたい15%ぐらいのトッププロダクトマネージャーは、MVPはプロンプトでいいみたいな考え方になっているような印象でした。

ChatGPTだったら、ChatGPTのプロンプトがプロブレムで、レスポンスがソリューションで、プロブレム・ソリューション・フィットみたいな話なわけですよね。

ヘボいプロンプトだとヘボいレスポンスしか出てこないのでフィットしないのですが、これを積み上げていくと、少しずつ価値が上がっていって、そのうちちょっと構造化されたプロンプトになっていきます。

最終的には、ここまで仕上げてくれたら、このサービス使いたいなみたいな形になるじゃないですか、と。

そこまで行ってから、aaaとかbbbというのが、例えば特定のデータセットがプロンプトにに入るようなイメージを持っていただければと思いますが、ここのデータベース自体を大量に持っていて自動化してAPIに差し込めるみたいなデータセットを持っていたら、差別化したサービスが作れるわけですよね。

この後初めてバックエンド側に対していわゆる付けていくみたいな開発方法も、これからやはり増えていくんだろうなとは思っています。

尾原 そうですよね。だからバーチャルテスティングみたいなところにも使っていけるし、あと最近の傾向で言うと、ペルソナを作ったりとか、ペルソナというお客様の像を作ることをChatGPTを使って、それを逆に、何でしたっけ、ChatGPTの初期設定に入れるもの…。

要は、プロンプトの中にデフォルトで入れることで、ある種仮想のQ&Aみたいなことをするものも出てきています。

あと中国がすごいのが、AIGC(AI Generated Content)と言って、AI を使ってコンテンツを作ることがものすごく発達していて、結果的に小さいABテストを際限なく繰り返すことができます。

どんどん、どんどんAIにコードやクリエイティブを作らせて、スモールセットでABテストをやって、これはダメ、これはダメ…、みたいに多産多死を加速するところが全部できてきているから、本当にエクサウィザーズはウィザードになって困るんですけど…、すごすぎないですか?

有人宇宙拠点で自律作業するAIロボットを研究

石山 いえいえ、とんでもないです。

でも、もう1個あるのですよ。

尾原 おっ!

石山 OpenAIは、1回ロボットを諦めているのですよね。

今、もう1回やるだろうという噂がありますが、エクサウィザーズでアルゴリズム的に一番差別化されているのはロボット領域なんですよ。

尾原 そうなんですね。

石山 特許もここの領域はすごく多いですし、ロボットなのでもともと生成をかなりやっていた形なんです。

いわゆる画像を生成して、生成した画像のイメージに向かってロボットがアームを伸ばして動くとか、テストをやっています。

JAXAの宇宙の拠点クルーの無人化みたいなところも、今一緒にうちのロボットを使いながら取り組ませていただいているような形になっています。

エクサウィザーズの模倣学習・予想学習技術がJAXAにおける有人宇宙拠点内クルー作業の自動化・自律化に向けた技術検討の対象に採用(PR TIMES)

よく国内版LLMみたいな話も出るのですが、どちらかというと、多分大規模言語モデルに対して大規模動作モデルができて、それが結合したシンボルグラウンディングみたいな話になってくると思っています。

もうちょっと大規模動作モデルに対して少しグローバルに対して差別化した戦略を取ってもいいのかなと思っていて、この辺も取り組んでいます。

さっき尾原さんが言っていたReinforcement learning from human feedback(人間のフィードバックによる強化学習)とロボット側の強化学習はすごく似ています。

例えばアームが2本あって、片方のアームを人が動かすと、ロボットが一定学習していってくれるのですが、その後ピックアンドプレイスの動作を一定覚えたら、あとは強化学習でガーッと最適化していってくれるというのは、イミテーションラーニングという模倣学習と強化学習を組み合わせています。

ほとんどReinforcement learning from human feedbackと似ている感じになってきているので、この2つの世界観が近づいていくというのも、もう本当に2年以内には来てしまうんだろうなと捉えています。

尾原 リアルとの模倣学習みたいなところも取れるし、あとバーチャルツイン系も当然やっているのですよね?

石山 そうです。当然そうなりますね。

尾原 だから、よくあるコンピュータシュミレーション自体をいかに精緻にやるかというところにも、生成AIを活用していくことで、そのバーチャル上のシュミレーションも高速化するし、フィジカルの模倣学習も強化するしで、全方位ですね。

石山 はい。そうすると人がすごく必要なので、500人規模感になってきていて、採用のキャンペーンページは、全部STUDIOで作っています(笑)。

西脇 自動運転ではあるあるですが、宇宙を目指した理由はなんですか?

石山 やはりロボットは2つ領域があると思うんですよね。

人がもう足りなくなっていって、特に日本の製造業だと、熟練工の人がもうそろそろ退職になりますとかなるので、ロボットで継承して作業するというのが1つ。

もう1つは、すごく危険な場所ですとか、人が行きにくいような場所というのは、やはりロボットのすごく得意な領域ですので、そうすると宇宙みたいなものは必然的にターゲットになってくるかなと思います。

石山さんが今AIベンチャーを始めるとしたら

尾原 ここまでループが回り出すとすごいですけれど、リングサイドや会場のヒントになりにくい部分もあるので、もし石山さんが今のタイミングからAIベンチャーを始めるとしたら、どういう入り方をしますか?

石山 まずエクサウィザーズは、競争優位性の1個が大量にエンジニアを採用できることなんですが……。

尾原 そうでしょう?

石山 ChatGPTのCode Interpreter(コードインタープリター)とか、めちゃくちゃ使っているので、今だったら1人で起業できるかもという感じはちょっとありますね。全然違うモデルという意味では。

ChatGPTの「Code Interpreter」のスゴさ ノーコードでデータ分析&画像生成(Impress Watch)

尾原 確かに。いまやもうGPTを使ってプログラミングのところがものすごく省力化されたから、エンジニア側からネットワークエフェクトを回すのではなくて、どこから回すかという話で、もしかしたらデザイナーから回しますという話かもしれません。

石山 あり得るかもしれません。

尾原 ということで参入できるので、エクサウィザーズはまだ潰せるという話ですね(笑)、嘘です、嘘です。

石山 (笑)。

尾原 追いつけて、追い越して、ともに創る、共創という話ですね。

いやあ、情報量が多すぎて、もうあっと言う間に30分経ってしまいましたが、ちなみにスライドに出ていないことで、次に展開を考えていることは何かありますか?

石山 ここに書いていないことですよね…、うーん、何かあったかなあ。

尾原 ここまで来るとハード領域やインフラ領域とかに、もうちょっとビッグディールしてもいいなというのもあれば、もっとフィジカルなところのブランディングで、どんどん個別領域を買収していってみたいなところだったり。

逆にホリゾンタルなセールスフォースを大量に抱える方向に行くと、要はアナログなものを一番効率化してスケールアップするようなSHIFTみたいなモデルも、やろうと思えばいけますよね?

石山 そうですよね。SHIFTは僕の中でもイメージしたことはあったのですが、例えば日本に300個ぐらいAIベンチャーがあると言われていて、今生成AI部分でもっと増えているようです。

例えばこれをSHIFTみたいにロールアップしていくかというと、なんかちょっと違うなって感覚を個人的には持ち始めています。

尾原 SHIFTというのは、要は優秀な人をこういうふうに育成すれば、高級なスペシャリストとしてどんどん輩出できる、だったらどんどんいい人を連れてくれば、スケールアップするよねというモデルです。

石山 そうですね。これをどうするかは、SHIFTのCFOに元リクルートの服部 太一さんがいてくれるのと、じげんの平尾 丈さんもいますので、ロールアップ戦略はどうなんだというのを2人に聞いて学習しようかなと思っています。

尾原 ありがとうございます。

すごい規模感で、ある種技術ベンチャーというものが、1つの部分の執行からどうコーポレートとして経営していくかというところへのステップアップを含めてわかる好事例でした。

では、いよいよその全てを支えて、全てをエンパワーしていくマイクロソフトとして、ぜひお話をいただければと思います。

(続)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成/小林 弘美

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