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「AIやデータの活用が企業経営を変える」【F17-6C】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!9回シリーズ(その2)は、リンクアンドモチベーション麻野さんに、データを活用した組織・人事マネジメントについてお話しいただきました。SAPの「働きがい指数」などの具体的事例にも注目です。是非御覧ください。
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017のプラチナ・スポンサーとして、IBM BlueHub(日本アイ・ビー・エム株式会社)様に本セッションをサポート頂きました。
ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。
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【登壇者情報】
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017
2017年2月21日・22日・23日開催
Session 6C
「AIやデータの活用が企業経営を変える」
Supported by IBM BlueHub
(スピーカー)
麻野 耕司
株式会社リンクアンドモチベーション
執行役員
上野 勇
株式会社セプテーニ・ホールディングス
取締役
北川 拓也
楽天株式会社
執行役員
馬場 渉
SAP バイスプレジデント カスタマーエクスペリエンス担当 兼 SAPジャパン Chief Innovation Officer(当時)
(モデレーター)
山内 宏隆
株式会社HAiK
代表取締役
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【前の記事】
【本編】
山内 まずはリンクアンドモチベーションの麻野さんから、AIやビックデータが経営に及ぼす影響についてお話しいただければと思います。
麻野 耕司 氏 (以下、麻野) 分かりました、よろしくお願い致します。
リンクアンドモチベーションの麻野と申します。
組織人事のコンサルタントをしており、主に成長企業サポートをして参りました。
正直、AIの専門家ではないので、今日この分野のプロフェッショナルの皆さんと並んでドキドキしていますが、私が今やろうとしていることは、組織、人事分野でのより積極的なデータの活用です。
弊社でも、モチベーションクラウドという、組織データを活用するためのプロダクトを開発・展開しています。
スタートアップ投資も行っており、HRテック関連の会社へ投資し、支援をするという形で、ビズリーチ社やネオキャリア社に投資しています。
今後はやはり、データの活用を通じて、組織や人の部分でイノベーションを起こしていかないといけないと思っています。
経営の中でも、組織、人事は最もデータ活用が遅れている領域です。
山内 これらの分野は一般的に、扱っている内容が非常にソフトですよね。
そのためか、データの利用などからは一番遠そうなイメージがあります。
どちらかというと、経営者の長年の勘や人事担当役員の経験など、そういったものの方がデータを圧倒していそうな感じがしますが、そこでもやはりデータが生きてくるものなのでしょうか。
組織や人事は、勘や経験の世界だった
麻野 そうですね、まさに今までの組織や人事マネジメントは経営者や人事部長の勘や経験で行われていました。
採用においても、何となく「こいつは活躍するだろう」という感じで、ほとんど好き嫌いに近い世界だったと思います。
しかし、企業経営の環境が変わってきており、データを活用していかなくてはならない時代になってきているのです。
以前の日本は、ほとんどが第2次産業、つまり製造業中心の社会でしたが、今は第3次産業、サービスが中心になってきています。
以前は商品を生み出すには設備や資金が必要で、そういった分野の管理が大事でしたが、今や商品を生み出すのは人であり、そこをきちんとマネジメントしなくてはなりません。
そのためにはデータが必要だと思っています。
それこそ、ダイエットをするにしても、一番大事なのはデータです。
もちろんいいサプリメントを摂取したり、いいエクササイズをすることは大事ですが、そもそも体重計に乗らないと成功しません。
一度も体重計に乗っていないけれど、ダイエットに成功しましたという人はいないと思います。そのデータがないとPDCAが回りませんから。
勉強も同じです。受験勉強で、一度も模試を受けずに受かったという人は、まずいないと思います。偏差値というデータをもとにPDCAを回す、これが必要になります。
つまり、データが必要です。
アメリカでは、組織や人のマネジメントにデータを活用しようという機運が非常に高まっています。
この20年間、アメリカの成長を支えてきたのは、金融やITであり、これらは人による成果のボラティリティが非常に大きい分野です。
同じ「ヒト」であっても、成果に100倍、1000倍の差が出る世界ですから、そこを緻密にマネジメントするという動きが既に始まっています。
それに対し、日本は製造業中心で、人は定数として扱われるわけです。
例えば、工場の生産ラインでは誰がやっても同じパフォーマンスであるとして、データを見る必要がありませんでした。
しかし、ソフトビジネスは人による成果のボラティリティが高いので、データでマネジメントしなければなりません。
一番進んでいるのはスポーツの分野ですよね。
山内 なるほど。
麻野 イチローは年間200本のヒットを打ちますが、ほとんどの人は1本もヒットを打てないという世界です。
ですので、データでマネジメントしないと適切な対応が取れません。
バレーボールの試合でも、最近は監督がずっとデバイスを見ていますよね。もちろん試合も見ていますが、ずっとデータを見ています。
要は、誰のコンディションが良いかを、いかに早く把握できるかどうかが試合結果を左右するわけです。
山内 あれはリアルタイムでやっているんですか?
麻野 リアルタイムです。選手のコンディション、相手との相性などを見ながらやっています。
そのように、データを使ってマネジメントしていくということを、組織や人の分野でも行わなくてはならなくなっているというのが、現在、企業経営が置かれている環境だと思います。
それをデータでサポートしていこうというのが、モチベーションクラウドの強みでもあります。
データ活用で組織運営のPDCAを回すべき
山内 ICCに参加されている方は、どちらかというと、サービス産業であるとか、ソフト寄りの会社も多いので、その辺りはとても参考になるのではないでしょうか。
麻野 そうですね。
でも正直、皆さん非常に遅れていると思います。
山内 なるほど(笑)!
麻野 事業サイドをデータでマネジメントするというのは、もう当たり前のことだと思うんですね。
例えば、P/Lを作成していない会社は、この会場内にいないと思います。
去年の売り上げは、営業利益はどうですか、今年の売り上げ、営業利益の目標はどうですか、と聞かれて答えられない経営者はいないと思います。
しかし、去年の組織状態について、数値で教えてくださいと問われても、ほとんどの人が答えられないのではないでしょうか。
今年、どのような組織状態にしたいか数値目標で教えてくださいと言われても、ほとんど答えられません。
そういったデータの活用を組織や人事の領域にも取り入れていかないと、今後の企業経営は上手くいかなくなるのではないかと思います。
山内 ありがとうございます。
モチベーションを測るたった1つの質問とは?
北川 麻野さん、一つお伺いしたいのですが、モチベーションなどを測るうえで、これだけ測っておけばよいというものを一つだけ挙げるとしたら、どのような質問になると思いますか?
麻野 難しい質問ですね、そうですね、「会社が好きですか?」というような質問になると思います。
いわゆるエンゲージメントと呼ばれるものですね。
組織や人事の分野では、会社への愛情、仕事への情熱を表すエンゲージメント・スコアという共通指標があり、数あるデータの中でも業績との連動性が高いです。
エンゲージメント指数が高いと、退職率が下がる、または生産性や利益率が上がると言われています。
これまでにも、エンプロイー・サティスファクション(ES)という指標がありましたが、これは業績とあまり連動がありません。
そのような中で、何とか業績と連動する指標をということでできたのがエンゲージメント・スコアなので、その点を尋ねるというのは一つの解になるのではないでしょうか。
山内 ベンチャー企業も含めて、社員紹介による採用が多い企業には業績が伸びている会社も多いと思いますが、それはやはりエンゲージメントとも関係するのでしょうか?
麻野 相互影響関係にあると思います。
それこそモチベーションクラウドを導入いただいているメルカリ社も非常にエンゲージメント・スコアが高く、社員の大多数をリファラルで、つまり社員紹介で採用しています。
言い換えれば、皆会社が好きだから、外部の自分の友人にも紹介できるという点があると思います。
面白いことに、リファラル採用に関しては、友人の紹介で入社した人たちのエンゲージメント・スコアは、他のセグメントより高いんですね。
やはり知り合いに誘われたから頑張らなければ、という気持ちもあるかと思いますし、その辺りは相互に影響関係があると思います。
社員の働きがい指数が上がれば業績も上がる
馬場 渉 氏(以下、馬場) 発言のタイミングを逸してしまったかもしれませんが、テーマだったエンゲージメント・スコアに関する弊社の数字を今調べていました。
弊社では、エンゲージメントやリテンション、カルチャーが持つインパクトを金額換算して公表しているのですが、これ、皆さんチャレンジした方がいいですよ。
▶経済産業省「持続的成長に向けた長期投資(ESG・無形資産投資)研究会(第5回)」にて、SAP社の本取り組みがケーススタディとして調査されています。ぜひ御覧ください。
CSにしろ、ESにしろ、結局のところ「なんぼ儲かるの?」という話になりますよね。
例えば弊社では、大体売り上げが2兆5,000億円くらいで、人件費は広く取ってそのうちの1兆4,000億円くらいです。
そのような規模感の会社で「エンプロイメント・エンゲージメント」が81ポイント(2015年)ですが、1ポイント改善するといくらくらいのインパクトだと思います?
いわゆる働きがいというか、社員のエンゲージメント指数が81ポイントですと。
ざっくりし過ぎていますでしょうか?
それが1ポイント改善すると、いくら儲かるのかという質問ですが、これが大体60~70億円くらいですね。
リテンションはもう少し簡単ですよね。
リテンションの指数は今91.8ポイントなのですが、これが1ポイント改善すると、これも似たような効果で、年間60億円くらいになります。
次の項目はインデックスとしては結構出すのが難しいのですが、女性管理職の比率、ビジネスカルチャーや多様性比率です。
これは直近で75ポイントなのですが、これが1ポイント改善すると、クイズではないので言いますが、これが一番大きくて、110億~120億円くらいのインパクトになります。
これらの数字は、出すのは容易ではありませんが、出すことをお勧めします。
麻野 今のデータ、今度から使わせてもらいます(笑)。
山内 ありがとうございます。
今や、人事もデータの時代だということですね。
続きまして上野さん、いかがでしょうか?
(続)
続きは 「石の上にも3年」は嘘?人事×データ活用で浮かび上がる”不都合な真実” をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/立花 美幸/Froese 祥子
【編集部コメント】
ICC FUKUOKA 2017では、実際に麻野さんが取り組む、モチベーションクラウドを導入した企業との対談も行われました。宜しければそちらもご覧頂けると、より麻野さんの話がシャープに理解できるかと思います!(榎戸)
続編もご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。
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