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1. トップダウンかボトムアップか、来期のシナリオや数字は誰がどう決める?

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ICC KYOTO 2023のセッション「現場が奮い立つ、一流の事業計画(予算策定)とは?」、全5回の①は、SmartHRの倉橋 隆文さん、ラクスルの永見 世央さん、じげんの平尾 丈さんをスピーカーに、モデレーターを務めるログラス布川 友也さんが早速議論を開始。昨今の賃上げの流れをどうにらみつつ、経営計画を作るのか、各社のスタイルが明かされます。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット KYOTO 2024は、2024年9月2日〜 9月5日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。

本セッションのオフィシャルサポーターは ログラスです。


【開催情報】
2023年9月4〜7日開催
ICC KYOTO 2023
Session 4A 
現場が奮い立つ、一流の事業計画(予算策定)とは?
Sponsored by ログラス

(スピーカー)

倉橋 隆文
SmartHR
取締役COO

永見 世央
ラクスル
代表取締役社長 CEO 

平尾 丈
じげん
代表取締役社長執行役員CEO

(モデレーター)

布川 友也
ログラス
代表取締役CEO

「現場が奮い立つ、一流の事業計画(予算策定)とは?」の配信済み記事一覧


布川 友也さん(以下、布川) セッション4A「現場が奮い立つ、一流の事業計画(予算策定)とは?」を、始めていきたいと思います。

スピーカーがドリームチームすぎるので、僕は今日、話さないのが目標です(笑)。

スピーカーの皆さんに、盛り上げていただければと思います。

まずモデレーターは、私、ログラスの布川でございます。


布川 友也
ログラス
代表取締役CEO

慶應義塾大学 経済学部卒。 新卒で投資銀行に勤務。 M&A、IPOアドバイザリー業務に従事。 その後、上場直後のITベンチャー企業に経営戦略担当として参画し、IR・投資・経営管理等を中心に業務を行い、東証一部への市場変更を経験。

ログラスは、経営管理、予算策定、管理会計領域のSaaS「Loglass 経営管理」を提供している会社です。

よろしくお願いいたします。

ドリームチームが事業計画、予算策定について語り尽くす

布川 まず、登壇者の紹介です。

倉橋さんから、今日の意気込みをぜひお願いいたします。

倉橋 隆文さん(以下、倉橋) ありがとうございます。


倉橋 隆文
SmartHR
取締役COO

2008年、外資系コンサルティングファームマッキンゼー&カンパニーに入社し、大手クライアントの経営課題解決に従事。その後、ハーバード・ビジネススクールにてMBAを取得。2012年より楽天株式会社にて社長室や海外子会社社長を務め、事業成長を推進。2017年7月、SmartHRに参画し2018年1月、現職に就任。

予算策定や予実管理がめちゃくちゃ好きなのですが、「現場が奮い立つ」ということが本当に可能かどうかは分かっていないので、今日のディスカッションを楽しみにしています。

よろしくお願いします。

永見 世央さん(以下、永見) ラクスル永見です、よろしくお願いします。


永見 世央
ラクスル
代表取締役社長 CEO 

2004年に慶應義塾大学総合政策学部を卒業後、みずほ証券にてM&Aアドバイザリー業務に従事。2006年から2013年まで米カーライル・グループに所属し、バイアウト投資と投資先の経営及び事業運営に関与。その後DeNAを経て2014年4月にラクスルにCFOとして参画。2023年8月に代表取締役社長CEOに就任。ペンシルバニア大学ウォートンスクールにてMBA取得

こんなマニアックなトピックなのにA会場で良いのかという感じですが、丈さんファンが100人以上集まっていると思います(笑)。

僕もディスカッションを非常に楽しみにしています。よろしくお願いします。

布川 では、ファンがたくさんいると噂の丈さん、お願いします。

平尾 丈さん(以下、平尾) ファンは本当にいるのでしょうか、シーンとなってしまっていますが(笑)。


平尾 丈
じげん
代表取締役社長執行役員CEO

1982年生まれ。2005年慶應義塾大学環境情報学部卒業。  東京都中小企業振興公社主催、学生起業家選手権で優秀賞受賞。  大学在学中に2社を創業し、1社を経営したまま、2005年リクルート入社。新人として参加した新規事業コンテストNew RINGで複数入賞。インターネットマーケティング局にて、New Value Creationを受賞。 2006年じげんの前身となる企業を設立し、23歳で取締役となる。  25歳で代表取締役社長に就任、27歳でMBOを経て独立。 2013年30歳で東証マザーズ上場、2018年には35歳で東証一部へ市場変更、2022年にプライム市場へ移行。2019年 創業以来、12期連続で増収増益を達成。2023年3月期の連結売上収益は187億円、従業員数は800名を超える。 2022年3月に初となるビジネス書『起業家の思考法 「別解力」で圧倒的成果を生む問題発見・解決・実践の技法』を出版。

よろしくお願いいたします。

布川 ありがとうございます。

今日のセッションで会場の皆さんに持ち帰ってほしいことは、とにかく明日から使える情報です。

事業計画を作ったり経営戦略を練ったり、また、どこに投資するかなどについて、経営者や事業責任者の皆さんは悩むと思います。

各社がどう考えているかを深掘りし、それらを皆さんに持ち帰ってもらえたらと思っています。

賃上げの流れをどう考える?

布川 まずイントロダクションですが、これは大和総研が作っている2023年の主な景気のプラス要因とマイナス要因をまとめたものです。

2023 年の日本経済見通し(大和総研)

米国の失業率が上がってリセッション(景気後退局面)に入るのではないかとか、ウクライナ問題とか、国内では賃上げとか、色々な地政学リスクや外部要因があると思います。

永見さん、何か最近気にされている外部要因などはありますか?

永見 外部要因の前にこれは余談ですが、僕らは必ず年2回、大和証券のストラテジストの方に講演をしてもらっています。

外部環境については1時間セミナーをしてもらっていて、経営メンバーや事業責任者にも参加してもらっています。

結果的に当たるかどうかは分かりませんが、ポジティブなシナリオとリスクのあるシナリオを理解した上で予算策定や期中モニタリングをしています。

布川 勉強会をした上で、永見さんが2023年に意識してきたシナリオは何ですか?

永見 足元について言えば、リセッションが起きるかどうかですね。

また、僕らは年々報酬水準を上げていっているのですが、労働市場全体としてもじわじわ賃上げになっています。

オペレーションサイドもプロフェッショナルサイドも、人材採用がかなり難しくなってきていると思います。

ですから、給与や報酬水準をきちんと上げられる会社でなければ、労働市場で勝てないと話していましたね。

布川 ありがとうございます。

賃上げによる影響を、お二人は何か受けているのでしょうか?

平尾 スタートアップの皆さんの攻勢が強いので、そこに負けじと頑張っています。

倉橋 我々はプラスとマイナスの両方があると思っています。

人材不足による賃上げというプレッシャーがありつつも、今まで賃金で負けていた外資企業が賃金を絞っているので差し引きゼロで、あまり変わっていない気がしますね。

布川 ありがとうございます。

じげんはボトムアップで3か年の中期経営計画を作成

布川 各社、政治的なリスクがあり、外部環境や株価にも影響されていると思いますが、1つ目の質問への答えはそれぞれの色が出ると思っています。

成長戦略に基づいた予算を、どのように策定しているかについてご紹介したいと思います。

事前にヒアリングをさせていただいたところ、各社、意識しているポイントが結構違うなと思いました。

平尾さん、特殊な予算、経営計画を立てていると思いますが、どのような状況かお話ししていただけますか?

平尾 私たちは外部に向けて、3~5年ごとに中期経営計画を発表しています。

今は、第2次中期経営計画(ZCORE)を発表しています(2023年9月登壇当時)。

18のSBU(Strategic Business Unit)がありますが、各事業部が毎年ボトムアップで3か年の事業計画を作り、それを毎年更新していきます。

我々の会社は3月決算なので、だいたい年明けから3月末までに、各管掌役員、事業部長、マネージャーたち と 平尾での会議を、事業部ごとに数回行います。

その一連のプロセスを経て、5月の通期決算発表までに、最後はトップダウンでリスクヘッジをしながら決めています。

布川 ありがとうございます。

ラクスルはトップダウンで数字を指示

布川 ラクスルでも、そういうバトルが社内で無限にあるのではないかと思います。

各事業部や各子会社とは、来期計画や予算をどう話し合っているのでしょうか?

永見 後で出すスライドにあるかもしれませんが、基本的には僕がトップダウンで「来期はこういうシナリオで、ここに注力して、この数字を」と作って、渡しています。

トップダウンとボトムアップのせめぎ合いは当然ありますが、トップダウンの数字重視です。

過去、ボトムアップの数字で決めたことも一度ありましたが、むしろ指示してもらった方が分かりやすいという意見が結構あったのです。

ですから、細かい数字まで含めて、全て指示をするガイダンスを出しますね。

布川 経営計画がKPIまで含めて下りてくるので、スライドの右側のPDCA云々というのは期が始まるまで一切ないということでしょうか?

永見 左側の矢印の部門KPIの細かいところまでは指示しませんが、各部の予算策定はガイダンスを出すので、その上で右側のサイクルが始まる感じです。

平尾 松本 恭攝さん(現 ラクスル取締役会長、ジョーシス株式会社 代表取締役社長)がいらっしゃいますが、永見さんがCFOとしてトップダウンで発表していたということですか?

永見 僕が作って発表していました。

平尾 数字だけではなく、経営戦略、事業戦略も併せて発表するのでしょうか?

永見 ハイレベルな話として、ここに注力しようとか、今年はこういう年にしようとかですね。

平尾 なるほど。

では、「この数字を達成する」ではなく、「この数字を、こういう戦略で達成する」というところまで決めて発表するということですね。

永見 どれくらいの利益を出すかの目標も含めて、僕が作って僕が発表します。

倉橋 永見さんは今は正式に社長ですが、もともと社長みたいな役割だったのですね。

永見 役割として誰がそれをするかという話だけなので、松本ではなく僕がしていたというだけのことです。

トップダウンの方針は誰が作るか?

永見 ちなみに丈さんは、その仕事をしているのでしょうか?

平尾 はい、私を中心に役員達で行っています。ラクスルもマニアックな領域が多いと思いますが…。

永見 マニアックです。

平尾 我々の事業でもマニアック領域がめちゃくちゃあるので、

各領域に詳しくなるべくたくさん勉強しています。

現場の方が解像度が高いときもありますし、私が詳しいときもあります。

でもお互い、勉強しないと負けてしまうので、常にキャッチップし続けていますね。

布川 完全に勝負という感じですね。

永見 全く同じ質問を倉橋さんにしたいです。

トップダウンの方針は、CEO、COO、CFOなど、会社によって作る人がバラバラだと思いますが、SmartHRはどうしていますか?

倉橋 COOである私ですね。

2030年くらいまでの中期事業計画を作ります。

今の社長は2代目ですが、1代目も2代目も数字については任せてくれるタイプだったので、私が全て決めていました。

平尾 そうあっさり仰っていますが、結構難しい話ですよね。

数字は出せますが、競合とどう戦うかなど、事業に関する解像度を高めないといけないですよね。

お二人はどのように、それに取り組んでいますか?

倉橋さんはCOOなので、事業をドライブしながら戦っていると思いますが。

倉橋 はい、日々現場の声も上がってくるので、分かりやすく、やりやすかったのです。

逆に、永見さんがCFO時代にそれができていたのはすごいと思います。

平尾 すごいですよね。

永見 ラクスルがスケールし始める2014年というタイミングで入社したので、原型を全て見ています。

競争環境は当時も今もあまり変わらないので、一定の理解があったからかもしれませんね。

平尾 私たちは、順調に成長している事業の拡大再生産ではなく、ライフサイクルが変わっている事業をどうピボットしていくかという状況の事業もあるので、社外取締役の方からも、もっと良いやり方を考えなさいというお言葉を頂きます。

しかし、永見さんはすごいですね、普通は作れないと思います。

永見 僕が作るのはハイレベルな戦略が中心で、詳細なKPIは事業部に任せています。

平尾 数字だけ決めて、後はよろしくねという会社が多いと思うのです。

それで、うーむと言っている現場がどう奮い立つのか(笑)。

布川 まさに今日のセッションテーマですね(笑)。

予算を作る際、ストレッチな予算を作るケースと、コンサバな予算を作るケースがあり、事業部ごとにせめぎ合いがあると思います。

この事業は少しゆるめの予算にしておくか、というような忖度はあるのでしょうか?

倉橋 他の2社と違うのは、我々はクラウド人事労務ソフト「SmartHR」の1事業で全体の99%の売上を作っているということです。

ですので、「この事業部が、あの事業部が」ということはありません。

ただ、チームが連続して未達になった場合は、成功体験を経て自信を回復させる必要があるという心理が少し働きます。それでも感覚的には2、3%ゆるめるくらいですね。

ゆるめすぎても良くないので。

1事業の会社におすすめ、疑似的にプレッシャーを生む方法

布川 なるほど、ありがとうございます。

SmartHRほど急激に成長している場合、前期のそのままを踏襲できないと思いますが、SaaS事業が来年どうなるかの予測はどう立てられているのでしょうか?

倉橋 中長期的になりたい姿があるので、そこから逆算して、来期、その次の期はこれをしないといけないという考えは共通見解として常に共有されています。

そこから外れることはないという共通認識のもとで働きますが、せめぎ合いは当然あります。

私は、その中長期計画が成り立つ目標をお願いして、現場からも意見があって、そこでお互い議論するという流れは避けられないかなと思います。

1事業しか持っていない会社も多いと思いますが、その際は企業規模でティア(層)を分けるのが良いです。

例えば、エンタープライズ領域が40%の成長率を目標としたのに対して、SMB領域(中堅・中小企業)が成長率目標を20%としている理由は何か、という疑問を投げかけると、互いの領域で切磋琢磨する雰囲気が生まれます。

(続)

カタパルトの結果速報、ICCサミットの最新情報は公式Twitterをぜひご覧ください!
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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成

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