究極のプロダクトを目指す企業が明かす、今、モノづくりとブランドに求められるものとは?【ICC KYOTO 2019 CRAFTED NIGHT連動企画】 | 【ICC】INDUSTRY CO-CREATION

究極のプロダクトを目指す企業が明かす、今、モノづくりとブランドに求められるものとは?【ICC KYOTO 2019 CRAFTED NIGHT連動企画】

Pocket

平日 毎朝7時に公式LINE@で新着記事を配信しています。友達申請はこちらから!
ICCの動画コンテンツも充実! Youtubeチャネルの登録はこちらから!

ICC KYOTO 2019 に先立って、7月24日、CRAFTEDカタパルトに参加する企業の方々が集結してCRAFTED NIGHTを開催!各社が誇るモノづくりの体験・紹介や、ヤッホーブルーイング井手さん、Lexus International沖野さん、Minimal山下さん、ファクトリエ山田さん、Takram渡邉さんが白熱したパネルディスカッションを繰り広げました。ぜひご覧ください。

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うためのエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2020は、2020年2月17日〜20日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。


【開催情報】
2019年7月24日
CRAFTED NIGHT powered by LEXUS
“モノづくりとブランド”
(ICC特別企画)

<登壇者>
パネルディスカッション「モノづくりとブランド」

(スピーカー)

井手 直行
株式会社ヤッホーブルーイング
代表取締役社長

沖野 和雄
Lexus International
Jマーケティング室 室長

山下 貴嗣
Minimal -Bean to Bar Chocolate- 代表
(株式会社Bace 代表取締役)

山田 敏夫
ファクトリエ 代表
(ライフスタイルアクセント株式会社 代表取締役)

渡邉 康太郎
Takram コンテクストデザイナー /
慶應大学SFC特別招聘教授


前回のICCサミット FUKUOKA 2019で初開催した、CRAFTEDカタパルトとCRAFTEDラウンドテーブル。ICCサミットに参加しているなかでも、豊かなライフスタイルの実現に向けて、衣食住に関わっているサービスを展開する企業が登壇するピッチコンテストを行いました。

【速報】生産者と共に創る「Bean to Barチョコレート」で“本当の豊かさ”を追求するMinimalが初開催「CRAFTED カタパルト」優勝!!(ICCサミット FUKUOKA 2019)

この試みは、魂を込めてモノづくりを取り組む起業家をサポートしたいというLEXUSの想いから実現したもの。大変好評をいただいたため、ICCサミット KYOTO 2019でも開催し、大変好評をいただきました。

▶前回のCRAFTEDカタパルトとディスカッションの模様のレポート
モノづくりで社会を変え、豊かな世界の実現を目指すCRAFTED カタパルト初開催!【ICC FUKUOKA 2019レポート#8】

その連動企画、前哨戦として7月24日に開催したのが「CRAFTED NIGHT powered by LEXUS」。福岡でCRAFTEDカタパルトとCRAFTEDラウンドテーブルに出席した方々によるパネル・ディスカッションや、次回登壇企業などを含めた各社のCRAFTEDなプロダクトやサービスを体験できる場を設けました。早速そのイベントの模様をお伝えしていきましょう。

この夜は、パネル・ディスカッションから始まりました。まずは各社のモノづくりの取り組みについて、Takram 渡邉 康太郎さんの解説コメントを交えながら紹介が進みました。

語れる価値づくりをモノづくりで目指すファクトリエ

ライフスタイルアクセント株式会社 代表取締役 山田 敏夫さん

ファクトリエの山田です。20歳の時にパリのグッチで働いていたときに、本物のブランドとはモノづくりからしか生まれないと言われて、衝撃を受けました。

当時日本では、どちらかというと表面的なマーケティングやコミュニケーションからブランドを作るというアメリカ型の考え方が強かったので、ヨーロッパに行って衝撃を受けたのです。

そこで僕は、日本のモノづくりが素晴らしい伝統や高い技術を持つにも関わらず、海外生産にシフトしてしまって受注が減ったり、生産コストの低価格化を強いられている現状を変えられたらいいなと思いました。

ファクトリエにとってのミッションは、”語れるもので、日々を豊かに。”です。たとえば今日着ているシャツいいね、と言われたときに『麻に見えるけど、じつは和紙100%なのです』と言うと、驚きますよね。

服を作るのに、海外(途上国)に生産を任せれば価格を下げることは可能です。でも、モノづくりを「語れる価値づくり」にするなら、日本には素晴らしい創意工夫があります。語れる価値づくり、語れる化の究極を僕らは目指しています」

日々の創意工夫から独自のチョコレートを生み出すMinimal

Minimal -Bean to Bar Chocolate- 代表(株式会社Bace 代表取締役)山下 貴嗣さん

「ブランドやモノづくりは2階建て、と僕らは言っています。1階は土台、その領域におけるベーシックな機能だと考えます。食品で言えばそれはおいしさ。食べておいしいという大前提があったうえで、2階は差別化や特徴的な独自ポイント、自分たちの大事にするものです。

チョコレートでいうならば、1階はまろやかさや甘さ。2階は僕らにとっては食感や香りです。テーゼとアンチテーゼを2階建てにして、僕らMinimalではそれぞれのおいしさの根本を追求しています。

美味しくて香り高いチョコレートを追究するために昨年1年間でレシピを3,119回変えました。チョコレートの原材料であるカカオはジャングルでできる南国のフルーツで、同じものは二度とできません。

どんな品種で、誰が作っているのか、現地でどんな人から買うかでも違います。環境変化で毎回変わる味によって、1分1℃で毎回レシピを変えています。

うちはチョコレートが大好きで入ってくる人が多いのですが、最初はチョコレートをひたすら食べまくって、自分の中に”味の地図”みたいなものを叩き込みます。だいたい1ヵ月で、チョコレートを二度と食べたくなくなります(笑)。

でも、そのくらい食べると、このカカオ豆はどういう要素があり、どのくらいの味のグラデーションがあるのかがわかってきます。

多くの人は添加物によるのチョコレートの甘さや油脂によるまろやかさに慣れています。僕らはチョコレートをカカオ豆とお砂糖だけでつくり、甘さと食感の上にカカオ豆の香りを強くひき出すにはどう作ればいいかを計算しつくして作ります。1階のおいしさを担保しながら、2階で独自性が出てくるようにしています。

ちゃんとおいしくて、特徴があるという両方にこだわって、ひたすら美味しさと香り高さを深掘ってプロダクトのクオリティを高めていくということだけをやっています」

ブランドは、五感への刺激と学ぶ体験の二段構え

Takram コンテクストデザイナー /慶應大学SFC特別招聘教授 渡邉 康太郎さん

「おふたりのお話をうかがって、『もののよさ』と『語れること』という2階建て、面白いですね。最近日本でもスタートアップによるD2Cが増えています。いいモノづくりをしているけれども、語れる要素をそこまで用意できていないというところも多いと思います。

前提に、フィロソフィーがあるか、物語があるかという問題もあるのですが、そもそも企業が社会的なミッションを帯びているかどうか。つまり解決したい社会課題があるか、目指している世界の像があるか、です。

我々の住んでいる社会の土壌を把握して課題を定義している、さらに、その先にある目指すべき方向。その両方がないといけません。ブランドはいいモノづくりが前提ですが、その先の理想的な社会の像とを線でつながないといけない。

私がよく用いているフレーズ、”フィールファースト、ラーンレイター(Feel first, learn later)”でいうと、まずは五感でびっと、いいなと感じるものがあるかどうかです。

LEXUSなら、座ってみて『座り心地が違う』『スタートを押した瞬間に違う』と思う、走り始めて『音が違う』と思う。最初に五感で感じるものがある。その後、作っている人に語ってもらうと、よりいろいろと学べることが出てくる。

深澤直人(※)さんでいうところの『First Wow ! / Later Wow !』、最初に『おっ』と思うのと、あとから時間差で『おっ』と思える体験を二段構えで用意できるかということが、今の1階2階に相当するのかなと思います」

▶編集注:デザイナー。代表作には無印良品の壁掛けCDプレーヤー、auのINFOBAR、±0の加湿器、LAMYのnotoなど。人が普段意識せず行う行動「without thought」に着目したデザインを得意とし、国内外で多数の著名なデザイン賞を受賞している。

どうお客様に”WOW”を与えるかが根底にあるLEXUS

Lexus International Jマーケティング室 室長 沖野 和雄さん

LEXUSの工場では、全身全霊でいいものを作ろうという気持ちがあります。

LEXUSは、30年前の1989年に誕生しました。LEXUSというブランドが生まれた背景には、単純にいいものを作りたいという思いがありました。まずはとにかくいいクルマを作りたいという思いがあり、そのうえでLEXUSのお客様に相応しいブランドを築き上げてきたのです。

日本の自動車産業が、日本人の手で欧米に負けない車を作れると自信をもったのが1989年頃でした。ちょうどその時期に、LEXUSはいいもの、それこそお客様に”WOW”を与えるものを作ろうという思いから生まれたのです。

ブランドとなるものには情熱が必要なのだなと、皆様のお話を聞いていて、改めて思います。

いいクルマを目指すうえで、単にきれいな塗装や隙のないパネルを作るのではなく、LEXUSのモノづくりの根底にある、どうお客様に”WOW”を与えるかに情熱を込めたというのが、日本人的な発想だと思います。

お客様の生活の時間のうつろいを考えながら、どのポイントで”WOW”を出すか。欧米だとすべての時間をゴージャスに演出しようとしますが、私たちは間を作って、ふとした瞬間に”WOW”を出します。それが、日本人らしい感性だと言われます。

私たちのモノづくりにはそういう感性を入れ込もうと努力していますし、その感性が込められていることが海外の方々にLEXUSはいいクルマだと感じていただけるポイントのようです」

渡邉さん「日本には、情報と内容を埋めていく日光東照宮みたいな足し算の価値観もあれば、枯山水のような要素をなくしていく引き算の、両方の美意識があります。僕はそういった引き算がとても好きで。

枯山水の石庭には、波紋があって流れがある。水を見せるためのものなのに、肝心の水がない。表現したいもっとも大事な対象なのに、池から水を抜いてしまっています。

それでもこれは池なんだ、というのは引き算の最たるものです。最も大事なものこそを受け手に想像してもらうという方法が、枯山水には込められていると思います。完璧な設えによって、一番大事なところをお客様に描いていただく。

モノづくりやものがたりの相互作用とは、そのあたりにあります。

いいものを作ったときに、お客様が自ら語りたくなっちゃうようなミッシングピースがある。

ルネッサンスの時代、多くの芸術活動が花開きました。そのころまでに、もしニケの翼が欠けていなくて完全だったなら、もしビーナスの腕があったなら、ダヴィンチもミケランジェロもああいうクリエイションをしなかったかもしれない。古代ギリシャの彫像は、欠損があることで人の想像力を引き出している。

サモトラケのニケ(ルーヴル美術館)
アフロディーテ、通称「ミロのヴィーナス」(ルーヴル美術館)

何かが欠けているから、見る人の想像力が働きます。そのへん井手さんどうですか?(笑)」

モノづくり×差別化で真似のできないブランドをひた走るヤッホーブルーイング

「何を言われているか難しすぎて、半分くらいしかわからなかったのですが(笑)。モノづくりとブランドに、僕はちょっと違った感覚をもっています。モノづくりとしては、我々はクラフトビールを作っています。今日のパーティには、よなよなエールと、隣に朝霧さんのCOEDOビールも並んでいますね。

僕らはビールの味のこだわりがあります。うんちくも情熱もあるのですが、23年、常に満足せずに研究開発をしています。技術も上がって、できることも増えているのですが、ずっと香味の改善は続けていて、これでOKと満足したことはありません。

香りの華やかさをどうやって再現するのか、苦味と甘みのバランスを両立するにはどうやったらいいのかというのを常に追求しています。これがモノづくりで大事だと思っています。この深い深い領域があって、今の世の中に選ばれる要素だと思っています。

大手メーカーには主力のブランドがありますが、目隠しして飲むと当てられないのではないでしょうか。ブランドなのだけど、商品名であって、根本の味の差別化ができていないと思っています。僕はそれが大事だと思っていて、よなよなエールは差別化ができていると思います。

モノづくりだけでも大変なのですが、それだけでは生き残れない競争の激しい時代です。ブランドの話になると、差別化されていないといけないし、個性的であることが絶対だと思っています。

大手ビールの並んでいる棚で、明らかに異色を放つよう、デザインも差別化しています。それに加えて、ストーリー的な差別化もしています。

僕らがなぜ日本の市場でクラフトビールを作っているのか、よなよなを一口飲んだらユーモアのあるもうひとりの自分が出てくる、よなよなエールを通して世界を平和にしたい、ノーベル平和賞を獲るんだ!……僕らにはいろいろなストーリーがあります。なかなかそこは、大手にないんじゃないかなと思っています。

モノづくりの味に対する絶対的な探究心は必要で、ブランドでいうと味という機能的な差別化、デザインの差別化、ストーリーの差別化、そこらへんができてくると、誰も真似できないブランドではないかと思います。

僕らはその道をひた走っています。大手がコク、キレ、価格だのと競争している横で、僕らはシチュエーションごと楽しんでもらうためのファンイベントをやっています。

よなよなエールを飲む楽しいシチュエーション、これを飲んだら幸せになれるよという、今までとはまったく違う競争軸を打ち立てて、現在まで競合は誰も入ってこれていません。まだまだですが、そういうところが、唯一無二のブランドを作り上げる大事な要素かなと思って、日々活動しています。

ブランドの観点でも、『インドの青鬼』というビールがあるのですが、パッケージに描かれている鬼が微笑んでいるのか、怒っているのか、何なのかわからない表情です。背景の絵もよくわからなくて、大海原なのか、魔界なのか?みたいなストーリーが勝手に生まれていて、デザインが機能的なものを補完していったりする。

宣伝などできない小さな会社なので、お客様が製品単体から勝手に物語を生み出す要素を製品にもたせるようにしています。発信しなくても、デザインから味の機能的なものやストーリーを補完していってくれたらいいなと思っています」

「余白」があることで、モノは自分のものになる

渡邉さん「僕も井手さんのおっしゃることに興味があって、持論があります。なぜ能面が無表情か、男性の落語家が女役を演じる時も地声なのか。それはやはり聞き手自らの想像力が、ストーリーを完成させることが肝要だからです。

実際のデザイン画の意図よりも、裏に魔界が描いてあるという想像を巡らせてもらうほうが大事なのです。

なぜかというと、自分が考えたもののほうが、手触りのある大事さを帯びるから。お客さんが自ら作ったストーリーはお客さんの所有物になります。そうやってブランドのイメージが成長する。

意味を引き算することでお客さんを招き入れて、その人自身のブランドにしてもらうことができるということだと思うんです。

Minimalのモノづくりの削ぎ落とし方も、それに近いのかもしれないと思います」

山下さん「パッケージもシンプルにしていて、後から差し込むのでコストも手間もかかるのですが、カードを1枚1枚つけています。

そこにどういう情報を乗せるかが大事なのですが、産地の情報がただ、『トリニダード・トバゴ』と英語だけで乗っています。それって何だ?と調べた人が、たとえば青山テルマさんにはトリニダード・トバゴの血が4分の1入っているという全く予期せぬ情報を知るかもしれないです」

登壇者一同 口々に「(笑)へ〜え! ラーンレイターだ!」

山下さん「そうやって知ったことは、自分の物語になる。ここで、皆さんの笑いを取れたことは、僕の物語になります(笑)。

デザインは、流行りすたりもあるし、誰を対象にするかを決めないと、いい悪いが決められません。でも、何を伝えたいかはデザインできる。

僕ら、後でそういうカードを差し込めるようにしたのは、余白を残したかったからです。様々な情報や違う誰かが自由にMinimalのチョコレートの余白に入れるように。変に聞こえるかもしれませんが、僕たちのチョコレートはそういう器やメディアになれたらいいなと思っています。

チョコレートは多くの人に好かれ、割と嫌いな人が少ない食べ物です。だからこそ僕たちのチョコレートに適切な余白が設計されていて、その余白に情報や他の何かが入ってくれたら、その情報が僕らのチョコレートを通して誰かに届けてくれるかもしれない。そういうデザインのあり方ならば、ブランドは業界とかカテゴリーを越えて広がっていくものではないかと思います」

井手さん「実は僕らも、余白を残すという言葉を使っています。デザインを完全に作ったり、ネーミングも一通りの解釈しかできない、というのは、面白くない。味を補完する意味でも、いろいろな想像の隙間をあえて作ることを大事にしています。

余白を残すことで、なんとなくイメージはわくけれどお客様が発展させて広げていくのをとても大事にしています。

水曜日のネコ』というビールも、なぜ水曜日なのか、なぜネコなのか。いろいろ考えて作っているのです。でも、もし聞かれたら答えるけれども、全部は答えない。微妙な余白の残しかたはノウハウかなと思っています」

山田さん「人に想像させるというので思い出したものに、以前エルメスがやっていた『青(ブルー)の特集』があります。エーゲ海、カスピ海、というようなブルーカラーの商品を集めた特集でした。

お客さんは、たとえば、新婚旅行で行ったエーゲ海を思い出して買うわけですが、もはや買うのはブルーではないんですね。誰かと過ごした場所、出会った場所、という思いが喚起されるのです。

そうするとただブルーのアイテムを買っただけでなく、特別な何かを買ったということになります。海の名前にしたというのが、相手に委ねているというか。そういうことができるエルメスってすごいなと思いました」

沖野さん「クルマはいま、シェアリングなど所有しない関わり方が様々あるのですが、愛車のように、”愛”をつけるプロダクトは他にないのではと思います。

お客様が商品に自分を投影できたり、つながれるような余白を作ってあげる。欠点も好きになってしまう。クルマという商品には、そういう入り込めるところを残したほうがいいのではないかと思います。

自動車を作る工程にはたくさんの人が関わっていて、完璧なクルマを目指して議論を重ねれば重ねるほどどんどん余白がなくなっていきます。しかし、今の社長は愛車という考え方のもと、いいクルマづくりを個人に委ねるところがあります。

そうやって個人の好き嫌いも、欠点も反映していくと、余白が自然にできてくるし、人間臭くなってくる。そういうことをしながら、愛車と呼ばれるモノを残そうとしています」

ブランドは憧れから関係を結べる対象に

渡邉さん「子育ての時期を一緒に過ごした自転車を、“戦友”と呼んでいるお母さんがいます。

つまりモノと共にどれだけ濃密な時間を過ごせるか、一緒に何を成しえたか、ということだと思うのです。

ビールやチョコレート、クルマは、一緒にどういうシチュエーションでどんな時間を過ごしたか、服ならばハレかケか、特別な服なのか日々着るものか決めた瞬間に、ブランドと使い手の共犯関係が生まれます」

井手さん「僕ら、熱狂的なファンがたくさんいるんです。ビールは言ってしまえば工業製品ですが、僕らのファンはみんなそうは思っていなくて、擬人化してくれているのです。

一緒に旅してきましたとか、よなよなエールに話しかけていたりするのです。水曜日のネコなら、ネコちゃんと語りかけながら飲んでいたり、ぬいぐるみをファンの人が作ってくれて、僕らにプレゼントしてくれたり、それをファンイベントに持ってきて自慢したり。

先日もファンのためのファンによる自主開催イベント『ファン宴』が80人ぐらいの規模であり、送ってもらった写真を見たのですが、会場の入口などにぬいぐるみやバッジなど、擬人化したものをたくさん並べていて、まさに友だち状態。もう工業製品じゃないんだなと、今の話を聞いて思い出しました。

愛車を、ただのクルマと思っていない人がいる現象に近いんだろうなと思います」

山田さん「今までブランドとは、偶像的なもので、憧れだったと思うのです。

でも今は、井手さんたちのように、親しみがあって、笑えて、ほっとできる人がブランドを作っていて、身近なものに変わっているように思います。最近は、芸能人もSNSとかで親しみがもてるほうが人気じゃないですか。ブランドとの距離感や関係がすごく変わっているのだと思います」

井手さん「お客様はすごく大切ですが、僕たちは、お客様は友人と位置づけています。もちろんメーカーと顧客の関係ではありますが、仲間という認識ができていると思います。

製品から入ってもらい、ひいては会社のファンになってもらっているのですがすごく距離が近い。

『超宴』というファンイベントの中では、僕はAKB48より人気があると思います。会場にいるとファンが集まってきて一緒に写真を撮って、わーっと盛り上がります。僕以外にもいろんなメンバーがいるのですが、みんなフレンドリーでビールおたくで、いかれている。ホームページで顔出しもしていてキャラクターが立っています」

”よなよなエールの超宴”でブランディングの真髄を体験!井手さん、運営スタッフみんなで乾杯してきました【活動レポート】

渡邉さん「僕、ちょっとまとめていいですか?

菅付雅信さんの『中身化する社会』という本に書かれているのですが、一方向的なブロードキャスト型のマスメディアの時代は、ブランドは憧れの対象でした。現代のような双方向のSNSの時代になると、ブランドが憧れの対象から『関係を結べる対象』になっている。

いいか悪いかの問題ではなくて、結局ユーザーは、公式情報ではなく、自分でチェックできる情報に重きを置くようになっている。

いくらブランドがこうですと自分語りをしても、ユーザーは信じない。他の人がどう言っているかを調べられるのがSNSの特徴です。

さっきの余白を作るとか、想像力を惹起するとかいう考え方は、ロマンチックな考え方ではないんです。そうすることで、ブランドの所有権をユーザーに委ねる。その人たちに評価してもらって、語り直してもらう。そうしないと、信頼が作れない。そうしないとブランドが憧れの対象にもなれないのです」

尽きない話の続きは、ICCサミット会場で!

ディスカッションは、激論を交わすというよりはお互いの意見に聞き入りながら、モノは違っても想いは同じ、と深く共感する雰囲気で、穏やかに進んでいきました。とはいえあっという間に時間が来てしまい、今日の感想を求められた5人は……。

井手さん「こだわりはすごくありますが、似ている話もあれば、カラーが出る話もありました。すごく勉強になったので、あと60分ぐらい話したい!もっと僕から質問して学びたいです。

前回のCRAFTEDカタパルトやラウンドテーブルを初めてやって、すごくいいなと思いました。ICCは普通のセッションもいいのですが、CRAFTEDだと自分の事業と親和性があるし、やればやるほど、聞けば聞くほど奥が深いなと思いました」

沖野さん「みなさんモノづくりに対する情熱が深くて、喋りだすと止まらないですよね。こういう話をするたびに、モノづくりって日本人に合っているんだなと思います。みなさんにももっとこういうモノづくりの世界を知っていただきたいですし、僕たちも微力ながら貢献したいなと思います」

山下さん「プロダクトだけを突き詰めていけばいいのではと思うけれども、これだけでは世の中から外れてしまうのではと、Minimalを作りながらも不安だった5年間でした。

ベースはモノづくりへの愛だったり、大事なものを貫くことですが、結果としてコミュニケーションやプロダクトが生まれたり、デザイン、ブランドが生まれる。みなさん先輩なので、そういった話ができて、僕は安心しました。

井手さんもおっしゃっていたのですが、どこかのブランドを深堀りするというセッションがあればいいなと思います。たとえばよなよなエールだけをずっと聞く、みたいな。語り尽くせないほど深いものがあるんだろうなと思います」

ICC小林「5人で5時間やりましょう!」

山下さん「そのぐらい内容ありますよ!」

山田さん「今日もいらっしゃっている九州パンケーキの村岡さんと先日お話したとき、農業はサードウェーブで、作り手の顔が見えるようになったのが、一番変わったことだと言っていました。

モノづくりやブランドについても、顔が見える誰かと一緒にその余白を埋めていく、その体験がブランドを語り直すネタになる。自分ひとりじゃなくて、二人三脚なのだろうと思います。

だから商品名、こと、ものが、あらゆる強力な仲間、もっというと運命共同体を作る重要なピースになる。僕自身、今日はとても勉強になりました」

使い手の思いが宿るモノづくり

渡邉さん「今の山田さんの顔が見える話に関連して。シャンパーニュ地方のシャンパンのように、作り手の顔や土地が見えることは、プロダクトストーリーの非常に重要な柱となっています。

企業が競争するなかで、機能やスペックは模倣可能な領域になりつつありますが、ストーリーは模倣できない。よいものづくりに磨きをかけながら、『模倣できないもの』をしっかり蓄積しておくバランスも大事になってきます。

作り手のこだわりがあるとき、『日本らしさ』という言葉の中で思考停止してしまうのは危険です。思考停止に陥らないように注意することが必要です。こだわりの根源は何なのか、今までより深く言語化するセッションがあってもいいかもしれないですね。

そもそも、モノづくり、モノがたりというときのモノって何なのか。

モノの語源をたどると、「もののけ」のものに行き着きます。もとは“鬼”とか“霊”をモノと呼んでいた。

つまりオブジェクトに宿る霊の方がモノで、オブジェクト自身──宿られる対象の人形や石は、モノじゃなかった。

我々のモノづくりにこれを照らし合わせると、そこに使い手の記憶が宿る、思い出が宿るかどうか。どうすればちゃんとモノがモノになるのかを、よく考えて設計しないといけないと思います。。

ちゃんと使い手の魂や、自分たちの魂が宿ったものになるかどうか。そここそが、今後深堀りが必要なエリアになると思います」

======

もう少しディスカッションの内容をコンパクトにしようと思っていたのですが、あまりに面白い話ばかりで、ほとんど掲載していまいました。このメンバーが参加者の方々とともに繰り広げた、ICCサミット9月4日のCRAFTEDカタパルトとラウンドテーブルは、当然のように盛り上がりました。

会場をさらに深い思考へ誘った渡邉さんの締めで、議論が再び着火しそうな雰囲気がありましたが、残念ながらパネル・ディスカッションは終了。なぜならこの夜は、まだまだイベントが目白押しだったからです!

モノづくりやサービスに触れて、体験してみよう

議論のあとは、会場周囲にスタンバイしていた、さまざまなモノづくりのプレゼンタイムとなりました。写真を中心にご紹介していきましょう。

パンフォーユー

パンフォーユーの矢野 健太さんは、さまざまなベーカリーの10種類のパンを提供。異なる地域から独自の冷凍製法で輸送してきたパンは、温め直すと焼きたてのようなおいしさに。

参加者のみなさんにも試食いただきました

パンで美味しく地方創生!こだわりベーカリーの“焼き立ての味”を独自冷凍技術でオフィスに届ける「パンフォーユー」(ICC FUKUOKA 2019)【文字起こし版】

ファクトリエ

パネルでも活躍いただいた、ファクトリエの山田さんは、3万回の摩耗テストをクリア、穴が開いたら新品に交換できるの永久交換保証ソックスや、蒸れず臭わない和紙ソックス洗濯機で洗えてシワにならないジャケットを紹介。山田さんがこの日着ていた白いシャツも和紙製でした。

ジャケットを試着するマクアケの中山さん

日本の“創意工夫”を世界へ!工場直結ファッションブランド「ファクトリエ」の新たな挑戦(ICC FUKUOKA 2019)【文字起こし版】

Foo Tokyo

次回のCRAFTEDカタパルトに登壇するNext Brandersの桑原 真明さんは、上質なルームウェアブランド「Foo Tokyo」を紹介。上質の素材に、ファッション性とストレスフリーを兼ね備えたオリジナルのデザイン、工場の閑散期に縫製するなどして高品質かつ適正価格を実現。

シルクのパジャマは上下セットで6万円弱

三星グループ

次回CRAFTEDカタパルトに登壇する三星グループの岩田真吾さんは、クラウドファンディングで話題を集めた23時間を快適にするウールTシャツを紹介。この日は試着も実施して、参加者は「ウールとは思えない、着心地がいい!」と大盛り上がり。

objcts.io

ICC参加者にも愛用者が多い、防水レザーのスタイリッシュなPCバックパックをプレゼンしたのは、objcts.ioの沼田 雄二朗さん。白い非売品のバックパックは、なんとLEXUSのシート用レザーで作ったスピンドルグリルのステッチ入り。

LEXUS TAKUMI PROJECT

LEXUS TAKUMI PROJECTに参加している匠の職人の方々にもご参加いただきました。まずは東京銀器 伝統工芸士、銀師(しろがねし)の上川 宗達さん。宗照コレクションのサイトでは、ご家族で伝統工芸に取り組む姿や作品の数々を見ることができます。

純度92.5%の銀を用い、伝統と現代のライフスタイルを融合した銀器「SenzaFine(センツァフィーネ)」を展示

同じくLEXUS TAKUMI PROJECTからは、三代秀石 江戸切子職人の堀口 徹さん(堀口切子)。見た目に美しいうえに、水を注ぐと内側の模様が変化して見えるグラスなどを紹介し、目撃した参加者は大興奮!

注ぐ水の量で、グラスの内側に違う模様が表れます。これぞ職人技!

九州パンケーキ

九州パンケーキの村岡 浩司さんは、パンケーキミックス同様、九州で採れる素材で作った7つの穀物を使ったセブングレインパスタも紹介。そうめんで有名な島原の職人さんたちが繁忙期でない時期に技術を活かして作る、和洋中どんな料理にも合う“もちもち食感”が特徴だそうです。もちろんパンケーキも焼いていただきました。村岡さんは、CRAFTEDカタパルトで優勝に輝きました!

ICCサミット参加者にも続々とファンを拡大中の九州パンケーキ

HiO ICE CREAM

自由が丘にある少量生産のクラフトアイスクリームのお店、HiO ICE CREAMの西尾 修平さんは、お店でも人気のシングルオリジン牛乳によるミルク味のアイスクリームをご提供いただきました。Takram渡邉さんによる「おいしい!」の口コミから人気爆発、ずっとアイスクリーム待ちの列が続いていました。ぜひ機会があればお店や通販でご賞味ください!

Minimal

初代CRAFTEDカタパルトの優勝者であり、パネル・ディスカッションでもお話しいただいたMinimalの山下さんは、3種類のチョコレートの試食を提供。そのうちの1種類は、トランプ大統領来日時に、安倍昭恵夫人経由でメラニア夫人にも提供されたことが明らかに!

Minimalは、生産者と共に創る「Bean to Barチョコレート」で“本当の豊かさ”を追求する(ICC FUKUOKA 2019)【文字起こし版】

ヤッホーブルーイング

パネル・ディスカッションに登壇いただいた井手さんのヤッホーブルーイングからは、ICCサミット運営スタッフとしても活躍する清水さんの紹介で、軽井沢限定発売の2種類の「軽井沢ビール クラフトザウルス」が特別に登場。東京では飲めないペールエールとブラックIPA(黒ビール)の2種類に、ファンはまっしぐら!

コエドブルワリー

コエドブルワリーの朝霧 重治さんは、7月16日に発売になったばかりの堀口珈琲とのコラボレーションビール「澄虎-Sumatera-」と6種類のコエドビールの 飲み比べを提供。ビールがさらにおいしくなる菅原工芸硝子のグラスまで持ってきていただきました。飲んでみた方、いかがでしたか?

みやじ豚

CRAFTEDカタパルトに登壇し、第2位に輝いたみやじ豚の宮治 勇輔さんは「うまみ成分2倍、冷めてから本領発揮する脂」という豚肉を紹介。ケータリング会社とのコラボで素晴らしい一皿となって登場しました。豚肉は冷めるとおいしくないという概念を覆すおいしさに、料理があっという間に消えました!

「みやじ豚、茶豆、塩麹とレモンのソース」、写真で見てもおいしそうです!

各社のプレゼンが終わると、LEXUS沖野さんの音頭で乾杯!展示企業のプロダクトやサービスをそれぞれ体験したり、各ブースで説明を聞いたり、LEXUSから手配いただいたおいしい食事を楽しみました。

ニコニコ笑顔も提供中のヤッホーブルーイングの皆さま

三星のTシャツに、ファクトリエのジャケットを体験中!

LEXUS沖野さんも、三星のTシャツ+ファクトリエのジャケット+objcts.ioのバッグを体験中!

かくして東京で初開催のCRAFTED NIGHTは大盛況のうちに終了。学びの多いディスカッションと展示、体験が満載でしたが、皆さまにお楽しみいただけたのではないかと思っています。この続きは、ICCサミット KYOTO 2019で。以上、現場から浅郷がお送りしました。

(終)

平日 毎朝7時に公式LINE@で新着記事を配信しています。友達申請はこちらから!
ICCの動画コンテンツも充実! ICCのYoutubeチャネルの登録はこちらから!

編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成

更新情報はFacebookページのフォローをお願い致します。

Pocket

ICCパートナーズ

ICCパートナーズ

ICCパートナーズ(ICC Partners Inc.)は産業を共に創る経営者・経営幹部のためのコミュニティ型カンファレンス「Industry Co-Creation サミット/ICCサミット」の企画・運営および新規事業創出・アライアンスなどのアドバイザー業務を行っています。