ICC KYOTO 2024のセッション「大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?(シーズン12)」、全5回の①は、モデレーターの村上 臣さんを中心に過去11回分の「人間を理解する」議論を振り返ります。前回のテーマは「老い」でしたが、今回のテーマは「生きるとは何か?」です。さまざまな議論が行われた過去シーズンの内容が気になる方は、アーカイブ記事をぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2025は、2025年2月17日〜 2月20日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターは エッグフォワード です。
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【登壇者情報】
2024年9月2〜5日開催
ICC KYOTO 2024
Session 2F
大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?(シーズン12)
Supported by エッグフォワード
石川 善樹
公益財団法人Well-being for Planet Earth
代表理事
井上 浄
株式会社リバネス
代表取締役社長 CCO
嶋 浩一郎
博報堂 執行役員/博報堂ケトル クリエイティブディレクター
中村 直史
株式会社五島列島なかむらただし社
代表 / クリエーティブディレクター
(モデレーター)
村上 臣
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▶「大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?(シーズン12)」の配信済み記事一覧
シーズン12に到達した人気シリーズ!
村上 臣さん(以下、村上) 皆さん、ようこそお越しくださいました。
最もフィジカルで、最もプリミティブで、最もフェティッシュなセッションへ、ようこそいらっしゃいました。
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村上 臣
青山学院大学理工学部物理学科卒業。大学在学中に仲間とともに有限会社「電脳隊」を設立。 2000年8月、ピー・アイ・エムとヤフーの合併に伴いヤフー入社。 2011年に一度退職した後、再び2012年4月からヤフーの執行役員兼CMOとして、モバイル事業の企画戦略を担当。 2017年11月に8億人超が利用するビジネス特化型ネットワークのLinkedIn(リンクトイン)日本代表に就任。日本語版のプロダクト改善、利用者の増加や認知度向上に貢献し、2022年4月退任。 ポピンズ 及びランサーズの社外取締役ほか複数のスタートアップの戦略・技術顧問も務める。 主な著書に『転職2.0』(SBクリエイティブ)・『Notionで実現する新クリエイティブ仕事術』(インプレス)がある。
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皆さん、『地面師たち』(※)は観ていますかね?
▶編集注:地面師たち (Netflix)
今日は、ハリソン村上モードでいきたいと思います(笑)。
このセッションは、ICCでは異例のシーズン12です。
6年間かけて、我々は何を理解したのでしょうか。
人間を理解するとは何か、と。
井上 浄さん(以下、井上) やりましたね~、6年!
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井上 浄
株式会社リバネス
代表取締役社長CCO
博士(薬学)、薬剤師。2002年、大学院在学中に理工系大学生・大学院生のみでリバネスを設立。博士課程を修了後、北里大学理学部助教および講師、京都大学大学院医学研究科助教、慶應義塾大学特任准教授を経て、2018 年より熊本大学薬学部先端薬学教授、慶應義塾大学薬学部客員教授に就任・兼務。研究開発を行いながら、大学・研究機関との共同研究事業の立ち上げや研究所設立の支援等に携わる研究者であり経営者。 武蔵野大学アントレプレナーシップ学部客員教授、経産省産業構造審議会委員、文部科学省技術専門審査員、JST START-大学推進型およびスタートアップエコシステム形成支援委員会委員等も務め、多くのベンチャー企業の立ち上げにも携わり顧問を務める。
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村上 6年!
井上 何も分からない(笑)。
村上 分からないですね。
でもまあ、ギリシャ時代からずっと、この「人間とは何か」という話をしているわけなので、我々が6年かけたところで分かるはずがないのです。
もともとこのセッションは、大昔、「明日から役に立つハウツーセッションは、ためになるでしょう。ただ、経営者も多いICC。経営とは人ですから、経営者は本質的に人を理解するような、教養のセッションがあった方がいいのでは?」という、(小林)雅さんとの雑談から始まりました。
それから6年間、多様な登壇者と共に、議論をしております。
先ほど(中村)直史さんから、「みんなアーカイブ記事を読んで満足していないか!? このセッションは、参加することが大事なんだよ!」という個人的な熱い想いを吐露されました。
ライブセッションに参加していただき、ありがとうございます。
実は僕、このセッションを広い部屋では行いたくないのです(笑)。
マニアックなセッションなので、小さい会場で、ぎゅっと凝縮した形でやりたい。
ですから、参加者の皆さんも登壇者の一部ですので、ぜひ、一緒に人間について考えていきましょう。
石川 善樹さん(以下、石川) いつか、一度やってみたいと思っているセッションがあります。
このセッションタイトルもそうですが、「〇〇とは何か?」という質問は、難しいのです。
ですので、「『とは何か?』とは何か?」というセッションをいつかやってみたい(笑)。
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石川 善樹
公益財団法人Well-being for Planet Earth
代表理事
予防医学研究者、博士(医学) 1981年、広島県生まれ。東京大学医学部健康科学科卒業、ハーバード大学公衆衛生大学院修了後、自治医科大学で博士(医学)取得。公益財団法人Well-being for Planet Earth代表理事。 「人と地球が調和して生きるとは何か」をテーマとして、雲孫世代(8世代後)にまたがるような長期構想に取り組む。 近著は、『むかしむかしあるところにウェルビーイングがありました-日本文化から読み解く幸せのカタチ』(KADOKAWA)、『フルライフ』(NewsPicks Publishing)、『考え続ける力』(ちくま新書)など。
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村上 禅問答っぽくなりましたね(笑)。それはKYOTOでやりましょう。
井上 とは何か(笑)。
石川 「とは?」とは(笑)?
村上 いいですね(笑)。
井上 その後は、「とは?、とは?、とは?(笑)」
村上 「とは?」についても理解を深めて…。
石川 まだ色々と、深めるところがあります。
村上 今日は嶋さんも直史さんもいらっしゃって、まさにメッセージングのプロ2人が登壇されていますので、楽しんでまいりましょう。
「人間を理解するとは何か」──6年分をおさらい
村上 さて、恒例ですが、この6年間の振り返りを数分で行いましょう。
色々な話をしてきましたが、実はこのセッションで明らかになったことがたくさんあります。
(井上)浄さんは、未発表の論文のデータをポロリと話してしまうことも(笑)。
このセッションの登壇者5人のうち、2人がPh.D.ホルダーでして、非常にアカデミックかつ多様な経験を持つ方たちに登壇いただいています。
私はただのDJという立場で回しているだけですので、今日も「ただの村上」として無所属で参加させていただいております。
最初の頃は、色々な話をしました。
スペースXに学ぶということでイーロン・マスクの考え方に触れたり、マインドフルネスに触れたり…これは確か、サンスクリット語が語源でしたよね?
石川 マインドフルネスの語源は、「サティ」ですね。
▶2. 言語のグローバル化が「人間の理解」を加速する〜マインドフルネスの概念を例に(ICC KYOTO 2019)
村上 何百年もの歴史に触れました。
石川 このセッションでは、スライドに図が多いですからね(笑)。
村上 図が多いです。
井上 グラフとね(笑)。
村上 そう、図解は大事ですよね。
しめしめとワクワクについても議論しましたし、なぜか参勤交代の話題も。
▶1. 人気シリーズ第5弾!今回の人間の理解は「ワクワク」の探究から!(ICC FUKUOKA 2021)
▶6. 「よく移動する人」がパフォーマンスが高いのはなぜか(ICC KYOTO 2021)
人には移動という本能があると。
あと、「おじさんは酒を飲むと話が長い」。
井上 (笑)。
村上 これ、当たり前だと思うでしょう?
科学的に、このセッションで証明されたのです。
その根拠となるデータも、明らかになりました。
▶3.聴覚情報の可視化で検証!「おじさんは酒を飲むと話が長くなる」は本当か(ICC FUKUOKA 2022)
井上 明らかになりましたね(笑)。
村上 浄さんがデータを取って分析をした結果、証明されてしまったわけです。
井上 そうなんです、ベンチャーのテクノロジーを使うと、これが証明されてしまう。
村上 証明されると。
井上 すごい世界になってきましたよね。
村上 なってきましたね(笑)。
そして、たまに細菌の話題が出ます。
人間は結局、腸内細菌に支配されていると。
▶4. 人類は、お腹の中の“パイセン”腸内細菌に支配されている!?(ICC FUKUOKA 2021)
よく脳や心と言いますが、そうではなく腸だと、ガッツフィーリングという言葉がある通り、腸なのだと。
という主張を、腸内細菌原理主義者である、メタジェンの福田(真嗣)さんが発表されました。
シーズン8~10では、直史さんが参加し、情緒的なコピーライティングの要素も入ってきました。
▶3. 自分に住みついている「他者の言葉」について考えたことはありますか?(ICC KYOTO 2023)
五島列島にお住まいということもあり、島や地方と都会の生活のギャップについてお話を頂きました。
そしてWell-beingについては、being、becoming、doingの違いをもとに、doing、つまり一緒に何かをすることが大事なのではないかと。
そこにHRの要素を入れて、人的資源や未来について議論をし、長い時間を単純に一緒に過ごすだけで、Well-being度が上がるというお話も頂きました。
▶7.Web3時代を生きるヒントは、江戸時代の自立分散的な生き方にあり【終】(ICC FUKUOKA 2022)
前回のシーズン11では「老い」を理解
村上 そして前回シーズン11では、テーマがさらにプリミティブになりまして、「老いを理解する」というテーマで議論をしました。
▶1.「老い」から人間を理解することに迫るシーズン11(ICC FUKUOKA 2024)
この時は私も直史さんも、ちょうど介護問題に直面しておりました。
そこで、人間の老いに具体的に触れました。
老老介護問題、そして皆さんご存知かもしれませんが2025年問題、つまり団塊の世代が後期高齢者になる時代がもう来年やってくるという問題です。
つまり、人口の一番大きいボリュームゾーンが、75歳以上の後期高齢者になるということです。
介護が大爆発する、そんな時代がもう到来します。
そうなると介護のためにUターンするので、リモートワークができないかという相談を、私も受けたことがあります。
ですから老いを理解することも大事です。
老いと聞くと、後ろめたいというか、何か悪いことのように捉えられがちですが、ロシア南部のアブハズという地域では、老いていることが良いこととされています。
「お若いですね」と声をかけようものなら、めちゃくちゃ怒られる。
逆に、「年を取っているように見えますね」と言うとニコニコして、「そう?」と上機嫌になるという、そんな世界もあるのです。
価値観は、国によって違うということですね。
そして浄さんからは、エピクロックのお話を頂きました。
最近のアカデミック世界では、老化とは病気であるという定義がされており、積極的に治療や予防をする対象となっているようです。
WHOでも、そういう扱いになったのですよね?
井上 WHOの国際疾病分類(ICD)に「老化関連の」という新たな分類コードが追加されました。
「何歳という暦年齢ではなく、生物学的な年齢の方がよほど重要である」を前提に、老いというものは、治せる、巻き戻せる、予防できるものだという位置付けになりつつある、ということです。
▶3. 研究が進む生物学的年齢の巻き戻しと、人生100年時代に考える「老い」の価値(ICC FUKUOKA 2024)
村上 そうですね。
このセッションでは、たまに「アムロ」という言葉が出てくるのですが(笑)、皆さんご存知の、ガンダムのパイロットの彼です。
アムロはガンダムの真ん中にいますが、腸内細菌原理主義者からすると、アムロはドライバーなので、アムロこそが本質なのです。
人間で言うと、体は乗り物なのでガンダム、その中にいる腸内細菌こそがアムロだということです。
我々人間は常に腸内細菌にコントロールされているので、人を若返らせたければ腸内細菌を若返らせればいい。
つまり、「アムロを若返らせる」というのが、前回セッションのキラーワードとして残りました(笑)。
それから、老いても高座に上がり続けた、落語家の立川談志師匠の話題も出ました。
直史さんから、「業を肯定する」という言葉も添えて、老いていく自分を積極的に晒すことでしか表現できないものがあるのではないか、というお話を頂きました。
▶5. 生きて 苦しんで 生き恥をさらすことも含めてこそ人間である(ICC FUKUOKA 2024)
これも、老いとは何かを理解するために、非常に役に立ったと思います。
今回のテーマ「生きるとは何か?」
村上 では、今回、どんなテーマにするか。
ちなみに本セッションのテーマは、僕が独断と偏見で勝手に決めています。
登壇メンバーが決まるとメールベースでディスカッションが始まるのですが、そのメンバーとこれまでの流れを見ながら、個人的な興味関心をもとに決めています。
今回は、よりプリミティブな方向にということで、「生きるとは何か?」です。
という、すごく広いテーマを思いついてしまいまして。
井上 1週間くらい前にね。
村上 1週間くらい前に。
井上 1週間くらい前に、急にこれについて話せと。
中村 直史さん(以下、中村) これ、もう最終回のテーマですよね。
村上 いえ、最終回なんてないですから。
中村 ですよね、すみません!
村上 言霊がね。次回も開催したいけど、言うと終わっちゃうので。
個人的な介護問題などもあったので、なぜ生きているのだっけ?と思ったのです。
皆さんもキャリアを重ねる際、うまくいくこと、いかないことがありますよね。
何のために仕事をしているのだっけ?
何のために生きているのだっけ?
仕事をするために生きているのだっけ?
など、色々なことを考えると思います。
それで1週間くらい前に思いついてしまい、メンバーに「じゃあ、次回のテーマは『生きるとは何か?』でお願いしまーす! 1週間後に資料ください☆」という無茶振りをした、ひどいモデレーターなのですが、資料はしっかりと出てきました。
ここからはバトンを回しながら、話していきたいと思います。
トップバッターは、浄さんでございます。
(続)
編集チーム:小林 雅/星野 由香里/浅郷 浩子/小林 弘美/戸田 秀成