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「最高の成果を生み出すリーダーシップとチームマネジメントとは何か?」11回シリーズ(その3)は、リーダーが持つべき「無知の知」について議論しました。「正直に”分からない”と言おう」という登壇者のメッセージは勇気づけられる内容です。ぜひ御覧ください。
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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2018は2018年9月3日〜6日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
ICCサミット FUKUOKA 2018のシルバー・スポンサーとして、株式会社ガイアックス様に本セッションをサポート頂きました。
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【登壇者情報】
2018年2月6日開催@永田町GRID
ICCサミット FUKUOKA 2018 プレ・オープニング セッション
「最高の成果を生み出すリーダーシップとチームマネジメントとは何か?」
Supported by 株式会社ガイアックス
(スピーカー)
麻野 耕司
株式会社リンクアンドモチベーション
取締役
石川 善樹
株式会社Campus for H
共同創業者
岡島 悦子
株式会社プロノバ
代表取締役社長
中竹 竜二
(公財)日本ラグビーフットボール協会 コーチングディレクター /株式会社チームボックス 代表取締役 /一般社団法人スポーツコーチングJapan 代表理事
(モデレーター)
琴坂 将広
慶應義塾大学総合政策学部
准教授
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最初の記事
1.最高の成果を生み出すリーダーシップとチームマネジメントとは何か?
1つ前の記事
2.カリスマ型リーダーの終焉 – 正直に「分からない」と言うリーダーが強い
本編
琴坂 今、リーダーシップのキーワードとして、4つ頂きました。
麻野さんから、「意味を与える」ということ。
石川さんから、Leadの語源が死、Manageの語源が手綱(そして馬)というような言葉。
岡島さんから「信頼」、更に中竹さんから「正直」という言葉が挙がりましたが、皆さんお互いのお話を聞いたうえで、全てを総合していくと、どのようなリーダー像になっていくと思いますか?
どのようにこの4名のキーワード、ないしはコンセプトをまとめていけばいいのでしょうか?
石川 まず馬に乗りながら (笑)。
(会場笑)
でも、それは面白い問いかけだなと思います。
この4人のアイデアを融合していくとどうなるかということですよね。
その前に、中竹さんのお話を深掘りしてもいいですか?
琴坂 もちろんです。
自分と本当に向き合う人が成果を上げる
石川 中竹さんのお話で「I don’t know」と正直に言うコーチが活躍するというのは、少しややこしく言うと、「無知の知」ということですよね。
自分が知らないことを知っているという。
▶参考図書:「知ってるつもり――無知の科学」
中竹 そうそう。
石川 それはどういうことなのでしょうか、我々は往々にして自分の口癖すら気が付かないわけですよね。
株式会社Campus for H 共同創業者 石川 善樹 氏
知らないことを知っているというのは、どういう感覚なのでしょうか。
恥ずかしい、というような話もありましたけれど。
中竹 知らないことを認めるのは、やはり一瞬は恥ずかしいですよね、「コーチなのに、そんなことも知らないんですか」と言われますから。
要するに、虚像と戦うわけです。
コーチは何でも知っていなくてはいけない、皆を引っ張らなくてはいけないという、この虚像と戦うことから解き放たれた、自分に向きあい正直な人が成果を上げるということが分かっています。
これは、まさに岡島さんが言った「信頼」とかなり近いです。
リーダーは「恐くない」と言うべきか?
琴坂 一方で、正直であるということと、リーダーは死に向かわせるということは、少し反するような気がするのですが、どうでしょうか。
やはり、死に向かうというのは恐いはずなんですね。
それでもリーダーは、「恐くない」と言わなくてならないのではないかと思うのですが、その点はどうなのでしょうか。
何か反するものがあるのか、それとも同じような方向性の議論をしているのか。
石川 企業の寿命がどんどん短くなっていますよね。
最近のデータだと、15年とかいう数字をどこかで見ました。
S&P500企業か何かのデータだったと思うのですが。
▶Can a company live forever?(BBC News)
ですから、死というのは実は考えている以上に身近に来ていると思うんですよね。
琴坂 その時に、自分の会社が死ぬかもしれないということを、正直に話してしまっていいのでしょうか?
石川 確かに。
岡島 それは、ビジネスサイクルの死のような話なのではないでしょうか。
ここにいらしている皆さんは、そのビジネスモデルを超えていこうとしているというか、ここで「Co-Creation」と言っているのは、産業領域すらも超えていくというような考えがあるからだと思います。
その点は、琴坂さんがご専門ですよね。
現在の事業自体が死んでしまったとしても、組織体として死んでいくわけではなくて、そこをどう変化させ、昇華させていけるかということの方が大事かなという気がしますけれど。
琴坂 なるほど。
リーダーがすべてを見通す時代ではない
石川 最近読んだ論文ですごく面白いなと思ったのが、死を意識するとクリエイティビティが結構上がるという研究が最近相次いで出ているそうです。
これはスポーツ選手にも当てはまるのではないでしょうか。
死を意識した方が、パフォーマンスが高いとか。
岡島 死生観みたいなもの?
石川 死生観というよりも、自分が死ぬかもしれないという風に思うことが、クリエイティビティの向上につながるという。
琴坂 その死という言葉は、企業経営の文脈にすると、このままでは製品が売れなくなるというような危機なのか、このままでは組織がおかしくなるというような危機の話なのでしょうか、そのように解釈しても大丈夫なのでしょうか?
石川 そうです、そうだと思います。
琴坂 それはリーダーとして、この組織がこのままでは上手くいかないということを、きちんと伝達していくことが必要だと、そういったイメージですか?
(石川氏頷く)
岡島 「無知の知」の話に戻ると、いろいろなことが言われていますが、やはり先ほども申し上げたように、カリスマリーダーが全部のビジョンを見通せているという時代ではたぶんなくなっていると思います。
そういう意味では、現場知のようなこともすごく大事ですし、ユーザーファーストのようなこともすごく大事です。
他方、ユーザーの意向を待つのでは、少し遅すぎるぞという話もあります。
ユーザーの潜在的なニーズを形にしていくという話だったりする時に、いかに無知の知というか、社長なりリーダーなりが、自分が持っている認知バイアスのようなものに気付けているかが重要なのではないかなと思っています。
もしかしたら、お客さんが自分たちのバイアスを外してくれるものを持っているかもしれませんし、現場の人たちが持っているかもしれないのに、それを聞けないと、ビジネスモデルも事業も段々陳腐化していきます。
そのようなことと、少し関係あるかなと思いますけれど。
琴坂 なるほど。
正直というのは、謙虚であるということで、その謙虚な姿勢が、従業員なりステークホルダー、もしくはお客さんの声を積極的に聞いていくことにつながり、ひいては自分たちの組織の成長を促していくとのではないかというイメージですね。
最高の結果を生み出し「続ける」には
石川 今の話を聞いていて思い出したことがあります。
僕は、いろいろ思い出す人なのですけれど……。
岡島 びっくりもするしね (笑)。
琴坂 引き出しが多いですからね。
石川 無知の知の話で、空海と最澄のことを思い出しました。
空海というのは、「ザ・カリスマ」なんですよ。
「我は全てを知れり」というような人で、非常に若い時から、彼は完成しているわけですね。
中国へ行っても、「お前はすごい」というような評価を得て帰ってきています。
一方で、最澄はダメなんですよ、あいつは。
岡島 まるで会ってきたかのように、いつも言うよね。
石川 そうですね(笑)
まあ、最澄という男は、頼りないんですね。
ところがですよ、その後の宗教の発展を見比べると面白くて、カリスマ・全知全能の空海はですね、彼で全て完結してしまったから、その後、発展しなかったんですよ。
でも最澄は弱いところだらけで、知らないことだらけだったから、弟子たちが次々にフォローしたんですね。
開拓の余地がたくさん残されていて、結局は最澄派の方が、今からすると名だたる弟子をたくさん生んでいます。
琴坂 それはリーダーシップの領域では、だいぶ昔からある議論ですよね。
石川 あっ、あるんですか。
琴坂 空海と最澄であり、また項羽と劉邦も同じように例えられます。
我々の時代においては、どちらの方がいいのでしょうか?
今の岡島さんの話を聞いていると、どちらかというと信頼、つまりカリスマ的なリーダーであった空海のようではなくて最澄という話ですし、恐らく今の石川さんのお話も、最終的には最澄の方がよかったのではないかということですよね。
石川 そうそう。
琴坂 これはどちらの方が最適なのでしょうか?
岡島 問い次第かなと思います。
最高の成果を「生み出す」ということではなくて、生み出し「続ける」というような話になると、たぶん最澄の方がいいということではないでしょうか。
いろいろな成長のホライズンを超えていくという時、死のようなものを乗り越えて次のものを作っていくという時には、私たちはバイアスを超えないといけないということのような気がしますが、どうですかね。
麻野 今は環境変化のスピードが激しいので、変化し続けなければなりません。僕たちが組織変革をする時には、「自分は知っている」という感情を「現状維持バイアス」というのですが、これを外すのはすごく大変です。
過去こういうことで成功したとか、上手くいったという感情が、現状維持でいたいという無意識の感情につながり、それで必ずといっていいほど失敗していくことになります。
先ほどの変化し続ける、環境変化に対応し続けるという観点から考えると、知らないということを知っていること、これが組織の中に埋め込まれているというのは、今の時代は特に大事なのだろうと思います。
岡島 後はリーダーも変化し続けられるかどうかですね。
私は、変化し続けられないリーダーは結構入れ替えてしまったりします(笑)。
琴坂 おぉっ、恐いですね、恐い、恐い。
岡島 もちろん、その人が変化し続けられれば一番いいですけれどね。
石川 確かに……。
不完全さをさらけ出す
琴坂 つまりそれは、今の時代背景なり事業環境がどんどん変わっていくからこそ、リーダーシップにおける信頼なり、意味なり、そういった側面の重要性が強くなっているのではないかという理解で正しいですか?
石川 そういえばまた思い出したのですが、今日、カフェで隣に中年の男性が2人座っていて、そのうちの1人が、「俺それ知らねぇな」と言ったんですよ。
中竹さんの定義でいうと、リーダーですよ。
その人が何を知らなかったかというと、アマゾン(Amazon.com)です。
琴坂 本当ですか (笑)?
石川 「お前、アマゾン知っているか?」という話になって、「俺は知らねぇ」と。
「すげえんだぜ、これな」と携帯を見せながら、「これを押すと、家に届くんだよ、押すだけで」、「アマゾン恐るべしだな!」って (笑)。
アマゾン恐るべし!という話になっていたのですが、そういうことですか、中竹さん。
(会場 笑)
麻野 それ、話したかっただけでしょう?(笑)
石川 ただ話したかっただけ (笑)!
(会場笑)
中竹 いや……リアルリーダーですね。
石川 リアルリーダー!
中竹 冗談抜きで、それが本質ですよ。
恥ずかしいじゃないですか、知らないことを知らないと言うのは。
だから言えないんですよ。でも、そうすると情報が入ってこないんですよ。
人間というのは所詮、自分のことは見えていませんから。
人間にはどのくらい盲点があるか知っていますか?、皆さん。
私もそうです。自分のことが見えていません。なにしろ、しゃべっている自分の顔を見ていないわけですから。
それで多くの人が、「怒ってないよ」と、怒った顔をしながら言っているわけです。
結局、自分が一番分かっていない。
これは組織に関しても一緒で、自分たちのことは分からないんですね。
なぜ昨今、「フィードバック」ということが世界中で流行っているかというと、人からフィードバックを受けないと分からないからという、単純な話です。
これは今の時代の変化とは関係なく、昔から根本的にそうで、実は不完全さをさらけ出すことが、チームの一体感を高めることにつながるというのは、昔から言われています。
(公財)日本ラグビーフットボール協会 コーチングディレクター 中竹竜二 氏
これは論理的にそうなんですよ。
けれども、一個人としては、もしくはリーダーとして、不完全さをさらけ出すのは恐いですよね。
今の話のように、アマゾンを知らなかったと言うと、「えーっ?アマゾンも知らなくて社会人として生きていたの?」みたいな反応が予想されますから。
これは恐いですよね。
「完全なるリーダー」は幻想
中竹 けれども、「あ、この人はそんなことも言えるんだ」と思ってもらえたら、「アマゾンについて教えてあげよう」、「ついでにグーグルについても教えてあげよう」となるわけです。
情報が入ってくるようになります。
一見、論理的には、完全なるリーダーがいる組織の方が良さそうな気がしますが、これは幻想です。
人間には、「身代わりニューロン」というのがあります。
組織内で一番皆に見られている人がリーダーですが、そのリーダーが自分の完全さしか見せない組織がどうなるかというと、調子がいい時は、「俺たち皆すごいよね」となるわけです。
しかし、調子が悪くなった瞬間に、全員が人のせいにし始めます。
当たり前ですが、リーダーがいつも、「ごめんね、これ頑張ったんだけどできなかったんだよね」と言えていたら、本当に問題が起こった時に、スタッフも皆「すいません、問題が起こってしまいました」と報告できます。
論理的に、不完全さをさらけ出しているリーダーがいて、不完全さをさらけ出せる心理的安全環境がある方が、パフォーマンスが上がるに決まっています。
失敗というものを科学的に解明することが進んでいますが、それにより多くのことがわかってきました。書籍も発売されていますよね。
例えば、原発事故も、全ての飛行機事故も、皆、内部で事故につながる情報を持っていたことが分かっています。
それなのに、言い出せなかったんですね。
なぜかというと、間違っていた情報であったり、知らなかったということを、お互いに言うのが苦しかったからです。
そういう意味では、私は時代の流れではなく、昔から、不完全さをさらけ出すこと、そして正直でいることが、リーダーのあるべき姿、本質、エッセンシャルだと思っています。
麻野 中竹さんに伺いたいのですが、無知の知でいるためにやるべきことは、フィードバックをもらう以外に何かあるのでしょうか?
現状維持バイアスを経営者から外すのが結構難しいなと思っているのですが。
石川 僕もそれを聞きたいと思っています。
麻野さんは、たとえば、意味を与えることが重要だと言っていましたよね。
でも変化の激しい時代ですから、何が意味なのか、リーダー自身が分かっていない可能性もありますよね。
意味を与えなくてはいけないという話と、俺は本当は知らないのだというように正直であることと、どのようにバランスを取ればいいのでしょうか。
岡島 最近、センスメイキング理論が注目されています。
▶イノベーションに欠かせない「センスメイキング」とは(Forbes Japan)
ここで「意味」と言っているのは、ビジョンには正確性ではなく納得感の醸成こそが必要になってきている、ということだと思うんです。
石川 なるほどね。
岡島 5年後にうちの会社はこうなります、ということを正確に言うことは難しいけれども、納得感のある意味が出せればいいといことですよね。
そしてここには、たぶん不確実な情報がたくさん含まれていてもいいのだと思います。
(続)
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続きはリーダーかどうかは「目」でわかる – 非言語で測られる経営者の資質 をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/浅郷 浩子/本田 隼輝/鈴木ファストアーベント 理恵
【編集部コメント】
石川さんのエピソードトークは、語り口が軽快で歴史上の人物ですら、なんだか親しみが湧いてしまいます。話の技術ですね。。編集していて、「そうかー、最澄はどうしようもないやつだったんだなー」と勝手に思ってしまいました(榎戸)
続編もご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。
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