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「“らしさ”を考え続ける」アカツキ塩田氏が意識する社内の「口癖と雑談」【K16-3E #1】

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ICCカンファレンスの特別会場において株式会社アカツキ 代表取締役CEO 塩田 元規 氏、株式会社メルカリ取締役 小泉 文明 氏、株式会社リンクアンドモチベーション 執行役員麻野 耕司 氏の3名をお迎えし、「強い組織/企業文化の作り方」【K16-3E】をテーマに約60分間のインタビュー対談を行いました。(その1)は主にアカツキの「社会ビジョン」と組織において”らしさ”を保ち続ける方法論について議論しました。是非御覧ください。

ICCサミットは新産業のトップリーダー600名以上が集結する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2018は2018年2月20日〜22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。


【登壇者情報】
2016年9月6日・7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2016「ICC SUMMIT」
Session 3E
強い組織/企業文化の作り方(続)

(出演者)
麻野 耕司
株式会社リンクアンドモチベーション
執行役員

小泉 文明
株式会社メルカリ
取締役(当時)

塩田 元規
株式会社アカツキ
共同創業者 代表取締役CEO

(聞き手)
井上 真吾  ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン プリンシパル
上野 純平
竹内 麻衣

「強い組織/企業文化の作り方(続)」の配信済み記事一覧

井上 よろしくお願い致します。

本日は「強い組織/企業文化の作り方」をテーマに対談を始めさせていただきます。

「強い組織/企業文化の作り方」のセッションは2016年3月24日開催のICCカンファレンス TOKYO 2016でも行いました。そのセッションが大変好評だったため、続編の対談企画を行いました。大好評だったセッションの記事もご覧ください。

▼▼▼
「強い組織/企業文化の作り方」
強い組織をつくるため必要なこととは何か?
企業文化を浸透させるには何をすべきか?
成長企業の福利厚生はどうあるべきか? 社員のミスマッチにどう対応すべきか?
ミドルマネジメントをどのように育成するのか?「副業」をどう考えるべきか?
▲▲▲

上場しても「らしさ」を失わない

小泉文明 氏(以下、小泉) 僕はメルカリの経営だけでなくアカツキの社外監査役を数年やってきていて両社をよく知っていますけど、アカツキやメルカリは結構独自のフィロソフィーというか、考えを持ってやっている会社だと思います。

そういう会社がもっと日本に増えればいいのに、ということは感じます。

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小泉 文明
株式会社メルカリ
取締役

早稲田大学商学部卒業後、大和証券SMBCにてミクシィやDeNAなどのネット企業のIPOを担当。2007年よりミクシィにジョインし、取締役執行役員CFOとしてコーポレート部門全体を統轄する。2012年に退任後はいくつかのスタートアップを支援し、2013年12月株式会社メルカリに参画。2014年3月取締役就任。

アカツキは、ビジョンやバリューがしっかりしている。

それがない会社が多いので、場当たり的なことをやろうとする会社が多いのだけれど、アカツキは結構強烈ですよね。

【参考資料】
アカツキ社「CEOメッセージ」

塩田元規 氏(以下、塩田) 結構強烈にやっています。

(リンクアンドモチベーションの)組織の作り方などを麻野さんにいろいろ教えてもらうのですが、結局それは各社の事例(ケース)です。

あくまでケースなので、絶対的に良い・悪いというやり方ではなくて、「ウチだったらどうなのか」というところまで考え尽くさないと、うわべの「Aという打ち手がうまく行くか行かないか」という話になってしまうと思います。

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塩田 元規
株式会社アカツキ
共同創業者 代表取締役CEO

1983年 島根県出雲市生まれ。
横浜国立大学電子情報工学科を経て、一橋大学大学院MBAコース卒業。在学時に「ハッピーカンパニープロジェクト」という学生団体を作り、“幸せ”と“長期成長”を実現している経営者に経営哲学をインタビュー。そのプロセスで、自分も世界を変える偉大な“幸せ企業”を作ると決心。2008年 株式会社ディー・エヌ・エー新卒入社。アフィリエイト営業マネージャー、 広告事業本部ディレクターを経て、退職後に、アカツキを創業。

重要なことは、本質的なところまで思考を巡らせられるかどうか。
僕たちが考えるあるべき形から考えて、どいうやり方が正しいのかをしっかり判断することだと思います。

僕たちが最近上場して、大事にしていることは、上場する前にあった「らしさ」を失わないということです。「らしさ」は非常に重要な要素だと思っていて、経営に絶対の正解も不正解もない。

全員が正しいって思うことをやってれば伸びるわけでもないと思います。そういうときに大切なのは、哲学とか自分たちらしさだと思います。「らしさ」には自分たちが大切にしている価値観が詰まっているはずですから。

意識しないと、気づかないうちに経営者のマインドが、「マジメ」になりすぎてしまうこともあると思います。

もう少し正確にいえば、マジメ、というか、短期的に、合理的になりすぎてしまう。短期的、合理的は悪いことではないけれども、数字や目に見えやすい指標に囚われてしまって、カルチャーやコミュニケーションなどの一見、短期的、合理には説明しづらいことへの投資が減ってしまう。

でも、本来中長期的に成長したければ、歯を食いしばってでも、説明しづらくても投資しなければいけないことはあると信じています。それが結果的に企業価値も高めていくはずですから。

なにより、自分たちらしいですし。
僕たちは経営チームとして、目に見えにくいもの、自分たちらしいものへは一定投資を投資し続けることをルールにしています。

竹内 あの感情報酬ですか。

小泉 その感情報酬というのは、すごく早い時期に作ったと思うですが、いつ作ったのですか?

塩田 そうですね。その一つが感情報酬です。組織側には別の言葉があるんですが。作ったのはたぶん創業2年目くらいだったと思います。

その前は、「世界中の人にワクワクと熱を届けられるような最高のサービスを作り続ける100年以上続く組織を作る」というのが最初のメッセージでした。

それは創業した時の紙に書いてあるのですが、そのとき目標数字なども書いてあります。これを今見ると面白いですよ。

最初は数名のメンバーだったので、そのメッセージと普段のコミュニケーションでニュアンスや理解はすりあってました。

しかし、2年目に10数人くらいになった時に、もっとクリアに目指すべきところに向き合いたかったんです。

それで色々考えてたんですが、ビジョンとかミッションとか理念とか、世の中には同じようなニュアンスでも色々な言葉があったので、その整理からスタートしたのを覚えています。

感情を報酬に発展する社会は「社会ビジョン」という概念で作っています。
当時は、社会ビジョンっていう言葉を会社の理念として使っている会社がほとんどなかったと思います。

会社には、ビジョンという自分たちの目指すべき姿があって、ミッションという成し遂げる大きな目標がある。じゃぁ、ミッションは何のためにあるかっていうと、○○っていう社会、世界を作りたいからじゃないかなと。なので、僕らはそれを社会ビジョンとして、言葉にしました。
%e3%82%a2%e3%82%ab%e3%83%84%e3%82%ad%e7%a4%beir%e8%b3%87%e6%96%99出所:アカツキ社 IR資料

そもそもヒトの幸せというのは心がどう感じるかで最終的には決まりますよね。
お金や目に見えるものによって外から幸せを受けるだけではなくて、自分の何かワクワクするものとか、そういうものこそが幸せかどうかに影響する。

そして、そういう感情的報酬はリソースの制限はない。

それにワクワクして何かに向かうときは、自分は幸せな上に、他の人の幸せにもつながる活動がすごい力でできたりする。そもそも仕事っていうのも本来最高にワクワクして他の人を幸せにする活動ですよね。

だから、そういう体験や心の報酬をたくさん溢れる社会にして、かつ人々の自発的な力で世界が持続的によくなっていったら最高だなと。そうすればきっと、世界はもっと素晴らしい場所になっている。

よく、ベンチャーだと世界を変えるっていう言葉を使うと思います。僕らも使いますし。でも、一番大事なことはどう世界を変えるかっていうことですよね。それにはどんな世界がいいと思っているかっていうことが大切なんだと思います。

ちなみに、社会ビジョンを考えてる時に見たんですが、パタゴニアのミッションは、どんな世界を作りたいのかがすごくわかってよかったです。

【参考資料】
パタゴニアのミッション・ステートメント

あそこはもう環境が大事で、株主に対してではなく何よりも地球資源に対して責任を持っている会社という立場です。彼らが作りたい世界は、「環境に配慮されて持続可能な世界」なんだなと目指している世界のイメージが湧わきました。

作りたい世界に正解も不正解もないと思います。ただ、そこにウィルがあることが重要かなと。

これは創業2年目の沖縄旅行の時に喋りました。

社内で沖縄旅行へ毎年行っているのですが、その時に喋ったのです。常日頃から言っていることではあったと思うんですが、改めてしっかり言葉とストーリーにしてみんなと共有しました。

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小泉 何か組織において問題意識があったのですか?

塩田 もちろん、全体としての目指すべきところを合わせておきたいっていう意味合いは強かったと思いますが、当時組織課題が強くでていたフェーズではありませんでした。組織拡大のペースもそこまででしたし、自分で全員コミュニケーションとれましたし。

ただ、今振り返ってみると僕はどちらかというと、一番目線を合わせておきたかったのは、もしかすると(共同創業者の)香田君と合わせたかったのかもしれませんね。

彼とは共同経営で創業して、創業した時から「ソニーやホンダを超える会社を作る」というようなことを言っていたのですが、お互いに本気なのか、どういう世界にコミットするのか、という部分を詰めておきたかったのかもしれません。

そして、何より自分自身にも誓いという意味で、覚悟のスイッチを改めていれておきたかったんだと思います。

もちろん、当時は、組織や会社をもっとよくしないといけないと思ってやっていました。

ただ、振り返ってみると、自分自身の覚悟、創業者二人の目線あわせ、そういう部分に寄与したんじゃないでしょうか。

メルカリのビジョンなどはどうでしょうか?

ビジョンとバリューを作って満足するな

小泉 僕が入った時、メルカリのミッション、ビジョンは、まさしくインターネットで世界を変える的なものでした。

僕はやはりそれはすごくファジーだなという思いがあって取締役全員を巻き込んで作り直したのです。

そして、その時はやはりバリューもなかった。

バリューがないと、採用の要件も作れないし、評価基準も作れない。

%e3%83%a1%e3%83%ab%e3%82%ab%e3%83%aa%e7%a4%be出所:メルカリ社 Webサイト

またベンチャーをやっていてミッション・バリューのワーディングにこだわらなければいけないはずなのですが、日本の企業では結構そこにこだわらずにヌルっと行ってしまっている会社が多いなと思っています。

後は、作って終わってしまう会社が圧倒的に多い。

メルカリもアカツキも、社員への刷り込みは相当やっている方だと思います。

僕らもこういうTシャツを作ったりも含めていろいろやっています。

そのあたり弱い会社が多いと思うのですが、麻野さんなぜなのでしょうか?

麻野 浸透という部分ですか。

小泉 はい。浸透に対するコミットメントが弱いという印象を持っているのです。

麻野 組織とか人事施策全般で、設計と運用があれば、設計にすごく比重が置かれて、運用の比重が低くて上手くいかないということは多いです。

それは理念だけではなくて、研修や制度など全般で多いですね。

ほとんどの会社にミッション、ビジョン、バリューなどがありますでしょう。

でも、だいたい額縁に飾られて終わっています。

そこの運用という部分で結構差がありますね。

小泉 リンクアンドモチベーションは、そこの運用という部分はどのようにしているのでしょうか? 気になります!

言語化し、指標化すること

麻野 僕たちも、当然ミッションやスタイルなどはあります。

まず、そういう部分を言語化する。

次に、それを指標化します。

僕たちの考え方で言うと、「ものさし」のない活動というのはあまり発展しません。

たとえば、ダイエットをすることになっても、体重計に乗らないとどんなに良いサプリメントやエクササイズがあっても上手くいかない。

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麻野 耕司
株式会社リンクアンドモチベーション
執行役員

慶應義塾大学法学部卒業後、株式会社リンクアンドモチベーション入社。2010年、中小ベンチャー企業向け組織人事コンサルティング部門の執行役員に当時最年少で着任。同社最大の事業へと成長させる。2013年には成長ベンチャー企業向け投資事業を立ち上げ、アカツキ・ネオキャリア・ラクスル・ビズリーチなど計15社に投資。全く新しいスタイルのベンチャー投資として注目を集める。自らも複数の投資先企業の社外取締役、アドバイザーを務める。2016年、新規事業として国内初の組織開発クラウド「モチベーションクラウド」を立ち上げ。「ビッグデータ×人工知能(AI)」で組織人事領域の改革に挑戦している。著書に「すべての組織は変えられる~好調な企業はなぜ『ヒト』に投資するのか~」(PHPビジネス新書)。

勉強をやるにしても、どんなに良い授業があり、教材があっても、テストを受けないとやはり上手くいかない。

そして、いろいろなビジネスというのは、事業面では結構定量化、指標化されますでしょう。

P/Lを出していない会社はほとんどありませんし、それ以外にも沢山のKPIを用いてマネジメントしています。

でも、組織はそういうのがありません。

ですから、僕たちの部門では、「スタイルをどれだけ実践できているか」を毎月自己採点するのです。

5段階評価で完全に自己申告ですが採点しています。

そして、「この部署は平均でこの項目は何点です」とか「この人はこの項目は何点です」というものを出しています。

それは評価には関係しないですが、自ら採点することで、ちゃんとこういうことを実践しなければならないとメンバーたちに思ってもらえます。

小泉 それはメルカリだとバリューに対して自己評価でやっています。

毎月ではなく3カ月ずつですがやっていますね。

塩田 ただ、僕がそこで思うことがあって。リンクアンドモチベーションではモチベーションサーベイがあると思います。

風通しは良いか、上司との関係性は良いか、という表面的に見えやすいサーベイと、先ほどのバリューというところのサーベイでは違うと思いますし、点数も絶対値的には、なかなか人によって評価がわかれるかなと。

特にバリューについては、それが3点から5点になったとき、どういうことと認識すればいいのかというのが少しわからないのです。

麻野 今の話はどちらかというと毎月の自己採点なので、その数値自体はあまり重視しないです。

塩田 なるほど。

麻野 人によって同じことをやっていても、2点と付ける人もいれば5点と付ける人もいる。

ですから、1カ月に1回自分で点数にすると「もう少しちゃんとやったほうがいいな」とか「今月はちょっと頑張れたかな」というふうにPDSサイクルを回すキッカケになればいい、くらいに思っています。

塩田 なるほど。リンクアンドモチベーションのスタイルというのは、内容はどのようなものなのですか。

麻野 会社全体では結構抽象度の高いものがあるのですが、僕たちのコンサルティング部門でいくと、9個あります。

僕は、企業理念に関するコンサルティングをするときは、運用が大事だということを言います。

ですから、最近は経営者には「スタイル、行動指針は絶対に5個以内に収めろ」と言っているのです。

5個以上あってもなかなか運用に乗りませんから。

でも、みんなそこを広げたがる。

大事なことはいっぱいあります。

ですが、「ほんとうにあなたの会社にとって重要なものを絞れ」「5個以上のスタイルは運用に乗らないから意味がない」と言っています。

メルカリなどは素晴らしくて3個に絞り込んでいます。

しかし、僕はちょっと絞りきれなくて9個になってしまいました。

これを医者の不養生と言います。

(会場 爆笑)

内容は「顧客」「組織」「仕事」それぞれへの向き合い方を3つずつまとめたものです。

普段の「口癖」の言葉が大切

塩田 それはわかります。

僕たちもスタイルというのもあるのですが、この言葉の量が少し多いなと最近も思っていたので、聞きながら納得しました。

メルカリは3つで、しかも英語でグローバルに出て行くことを想定して作っていますよね。

すごくシンプルで良いなと思います。

最近、僕自身は、スタイルという明確に定められるている言葉だけじゃなくて、普段使われてる言葉も大事に、気にかけてます。

普段、社内で使われている言葉です。メンバーの口癖といってもいいかもしれません。そこに「らしさ」が現れてますし、普段、たくさん使われている言葉が結局カルチャーを作ると思います。

それに、明確なスタイルや組織のあるべき姿を作るという拝見の考え方に、そういうスタイルや考え方をもっている人に人の意識をそろえていくっていう要素もあるとは思いますが、我々はこれが正解だからっていうものを与えて、それに沿って考えてもらうっていう考え方はアカツキでは少ないです。

こういう考え方をアカツキは大事にしているけど、君はどう思う?どういうものが大切だと考える?というメッセージを自分の頭で考えていってもらう。メンバーをコントロールしたいわけじゃないんで。自立しているメンバーと仕事がしたいので。

組織の色が多少揺らいでいくことは楽しんで行っていますね。

小泉 そういう意味では多様性がありますよね。

塩田 ええ。職能というものがそもそも結構多様ですし、ビジネス自体もまたゲーム以外の事業もスタートしているので拡大していきますから、そこで色の幅を楽しむということが結構大事なのではないかと思っています。

その時に出てくるのは、意外と表面の口癖の言葉がどういうものなのかということです。

ウチの社内では「このミッションが大事なのだ」というような言い方は全然しなくて、「こういうのがあるが、これに向き合ってどう感じるか」というのをただお互いで喋っていたりする。

小泉 確かに、アカツキはそういうことをみんなで話すという時間を取りますよね。

塩田 もう徹底的に取ります。

たとえば、週1回全社の報告会をやっているのですが、そういうのは普通誰かが報告して、周りが聞いて終わりという構造だと思います。

でも、僕たちは全社報告会の後半20-30分は、プレゼンを聞いていた人たちがただ5、6人に集まってダベる(雑談する)という時間なのです。話したあとに、全体に分かち合いたい人は話した内容を分かち合う。

質問とかじゃなくて、分かち合うっていうのがポイントです。
いいことをいう必要はなくて、感じたこと、きづいたことをみんなとシェアする。

すると、「なんかさっきの発表はアカツキっぽい感じがしますね」などという声が聞こえる。

これに対して「え?そうなの?」「いや、それは俺、違うと思う」などというメンバーもいる。

こうして、「らしさ」をみんなが考え続けている感じはあります。もちろん、全然まじめじゃない分かち合いもあります。それもアカツキらしいなと。

一見 非効率な時間を大切にする

小泉 そのアカツキの時間の使い方の許容はすごいと思うのです。

一見するとすごく非効率なことをやりますでしょう。

非効率を許容していく。

麻野 それは面白いですよね。

でも、アカツキは他のゲームの会社と比べた時に、生産性がすごく高い。

【参考資料】
アカツキ社 業績ハイライト

一人当たりの売上高とか利益というのは抜群に高いのです。

あんなにムダなことをいっぱいやっているのに。

(会場 爆笑)

いや、本当にこれは思うのです。

毎年の周年記念イベントに呼ばれて行くのですが、するともうその準備の仕方が凄いのですよ。

若手社員も、今月はこれしかやっていないのではないかと思うくらいの準備の仕方なのです。

僕も5周年記念イベントで出し物をしたのですが、その際には1カ月前から毎週練習させられました(笑)。

ですから、この若手社員たちはこれしかやっていないのだろうから、これをやめたら絶対に業績あがるだろうと思うし、生産性・効率性に悪いなと思うのですが、そういうことがあって生産性が逆に高くなっていくというのは面白いですよね。

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塩田 たとえばそういう周年パーティとか新卒が入ると、「どういうメッセージを届けるために周年パーティをやるのか」などを自分の頭で考えます。

ですから、ただ遊ぼうというわけではないです(笑)。

周年パーティのお客さんに「アカツキ」をどういうものとして感じてもらうかということを徹底的に考えます。何を大切にしているチームなのかとか、世の中をどうしようとしているのかとか。

すると、彼らの中での「アカツキ」というものができてくる。

そして、彼らの中での「アカツキ」というのが正解なのです。

それは人によって少し違ったりしますが、それはそれで良いと思います。大きく目指しているところがずれることはないと思いますし、上から「アカツキはこうだからこうやれ」というのはあんまりいいたくないですし。

井上 画一的にはあえてしないのですね。

塩田 はい。しないですね。自分で考えないと意味ないですから。

生産性の高さは「愛」から生まれる

麻野 そういう経験を通じて、社員みんなに「アカツキ」への愛が生まれる。

だから生産性が高くなる。

一般的にはゲーム会社などでは、自分はこのディレクターの仕事しかやりませんとか、自分はこのエンジニアの仕事しかやりませんとか、自分はこのタイトルしかやりませんということがあるのですが、アカツキはいつも職種や部署の壁を越えて自由自在に動いているのです。

別の職種のフォローをしたりとか、別のゲームタイトルの開発にヘルプで行かされたりとかする。

それをみんな喜んでいくのです。

ですから、人数を多く抱える必要もない。

アカツキは他のゲーム会社に比べるとスモールチームなのです。

これが成り立つのはチームに愛情があるからでしょう。

竹内 その愛情というのは意図的にやっていたのですか。

塩田 んー、どちらかというと、みんなが考えられるチームにしたいというのが前提にあって、その結果だと思います。自分の頭で考えられたり、スタンス的にプロとして自立している人間がいれば、コントロールや管理する必要はすごくなくなります。

僕は、コントロールするのは嫌だし、メンバーともパートナーでありたいなと。
どちらかがどちらかに依存する関係じゃなく、お互い高め合える関係がいいですね。
コントロールすると依存関係になっちゃうんで。

もちろん、プロは他責しないし、自分がどう変わって、どう影響を与えて周りをかえていくか、っていうスタンスがあって、そういうスタンスがメンバーにないとそうういう関係を作るのは厳しいとは思いますが。

僕はたぶんビジョン型経営者なのですごく喋るのですが、でもそれは自分がこれが好きだから喋っているだけで。100%正しい答えはないし、当たり前だけど僕もたくさん間違えるので、メンバーはこれを聞いた上で、自分で考えて行動してほしいですね。

そして、自分で考えるためにはどうしたら良いかというと、自分で何かを生み出す場があると良い。だからそういう機会を小さなことから増やしています。

あと、もっとシンプルに、朝自分が会社へ行って誰と会っても楽しい会社にしたいじゃあないですか。

すごくシンプルですが。何より、僕自身が入りたいなって思える会社にしたいと思ってます。そして、自分の子供もいれたい会社にしたいなと。

そういえば詳細は忘れたのですが、ザッポスのトニー・シェイが元々いたシステム会社では人間環境が悪く、朝目覚まし時計を6回止めないと行かなかったらしいです。それくらい朝行くのがやだったんです。

でも、自分で起業した広告会社も、自分で起業したのに、気づいたら朝に6回目覚ましを止めないと会社へ行かなくなっていた。

経営者もすごく意識をしないと、すぐ自分が作りたくない会社を作ってしまうことがあるなと。

ですから、もう最初に、自分が行って楽しい会社、自分がみんなと一緒に仲良く作れる会社にすると決めました。

僕も結構だめやつなので、僕のこともかなり許容し、愛して、理解してもらっているかなとは思いますね。

小泉 社内で普通に「愛」という言葉が出ますからね。

塩田 普通に出ますね(笑)宗教っぽくはないと思いますけど、青クサい感じです。

麻野 かなりクサい会社です(笑)。

(続)

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続きは 「性善説でルールを創る」メルカリ小泉氏が語るプロフェッショナル型の組織づくり【K16-3E #2】 をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/石川 翔太/榎戸 貴史/戸田 秀成

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