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ICCサミット FUKUOKA 2020 先進企業のデータ活用経営を徹底解剖(事例研究:SHIFT + お悩み相談会)の全文書き起こし記事を全6回シリーズでお届けします。(その5)は、データ活用経営の次にあるものを、登壇者たちが展望します。AIに欠けているものをいかに補うのか? また重要性が高まっていく人事のポジションについて議論します。ぜひご覧ください。
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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回250名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2020は、2020年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録などは公式ページをご覧ください。
本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2020 プレミアム・スポンサーのビズリーチ様にサポートいただきました。
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【登壇者情報】
2020年2月18〜20日開催
ICCサミット FUKUOKA 2020
Session 7E
先進企業のデータ活用経営を徹底解剖(事例研究:SHIFT + お悩み相談会)
Sponsored by HRMOS(ビズリーチ)
(スピーカー)
佐藤 光紀
株式会社セプテーニ・ホールディングス
代表取締役 グループ社長執行役員
丹下 大
株式会社SHIFT
代表取締役社長
崔 大宇
株式会社ディー・エヌ・エー
執行役員 ヒューマンリソース本部 本部長 兼 コンプライアンス・リスク管理本部 本部長
(モデレーター)
多田 洋祐
株式会社ビズリーチ
代表取締役社長
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※この議論は前・後編2つのSessionで行われました。セプテーニHD / DeNA編をお読みになりたい方はこちらへ
▶【一挙公開】先進企業のデータ活用経営を徹底解剖(事例研究:セプテーニHD / DeNA)(全7回)
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最初の記事
1. 上場から5年で従業員280名→3,600名へ。さらなる人員増を目指すSHIFT
1つ前の記事
4. データをもとに改善する人事の仕組みは、正当な評価と報酬につながる
本編
株式会社セプテーニ・ホールディングス 代表取締役 グループ社長執行役員 佐藤 光紀さん
佐藤 前回から引き続き関心があるテーマなのですが、SHIFT丹下さんが哲学と思想と設計まで与えて、あとは現場でオペレーションという感じだと思うのですが、これ自体をコピーしていくというか、ソフトウエアに覚えさせていくという考えはありませんか?
うち(セプテーニグループ)はどちらかというとその思想なので。
僕は自分がどんどん新規事業をやりたいので、そちらにシフトするために、自分が関与しなくても自分と同じことができるように、人事の業務を大半ソフトウエアに代替させています。
やり方は似ているのですが、それがうちの人事の思想です。
ソフトウエア化されると、丹下さんのスーパーパワーがより拡張して、またものすごいことが起きるのではないかと感じます。
今が仮に100倍能力だとしたら、1万倍とか10万倍という状態に、経営者としてのスーパーパワーが拡張するのではないかと思います。
思想と哲学をAI化しつつ、人間の部分も残したい
丹下 おっしゃる通りで、そこまでいきたいですね。
昨日のセッションで崔さんが職場の「匂い」の話をされていましたが(セッション前半Part.5参照)、「良い匂い」ということはすごく気にしています。
ソフトウエアのテストと聞くと、皆さんは「すごく大変な仕事だね」と思うわけです。
その仕事を、モチベーション高くやってもらうことがすごく重要で、純粋に、この業界の人がいないと成り立たないと思っているので、僕らはやっているわけです。
崔さんの言う「匂い」を感じ取らないといけないので、AIに置き換えることもやった方がよいと思いますが、ただ「匂い」をずっと感じ取りたいので、ずっとこの話に関わりたいのです。
ちなみに、給与は上から順番に、辞めてほしくない順番です。これは皆にはっきり言っています。公開はしないですが、僕の中で、役員も含めて辞めてほしくない順番に給与が並べられています。
それが僕の中ではすごく理解がしやすくて、「給与で辞めるのであればもう仕方がない、愛情は注いだのにな」という感じです。給与の出し惜しみはしたくないのです。
半年に一度、僕が全部給与を決めますが、ある部署では給与が上がらなくて、ある部署ではすごく上がったりします。
給与が上がらない部署は、粗利も低いのです。粗利が低い理由は何なのかと、データを並べて見てみます。
そこでその部署を見てみると、いろいろな施策をやりたかったので、あるレンジの人たちの給与を少しだけ上げていました。
そうすると粗利が悪くなり、その人たちがワークしていなかったので、結果としてその上のレイヤーの仕事が取れなくて、給与が上げづらかったということでした。
そのようなことが、半年に一度、如実に分かってしまいます。これは経営にもすごく生かされます。
この壁を乗り越えるために、このような教育をやったから、次のフェーズに進んで、給与が非常に伸びた、というようなことが如実に分かるのです。
AIに置き換えることは当然やりたいと思いつつも、どこまで行っても人間の部分は残しておきたいというのが、僕が思っていることです。ハイブリッドにしたいという感じでしょうか。
佐藤 それは全く同感ですね。基本的に何をしたいかという意思は、全て人が決めるということは、うちも一緒です。
その残りを、アルゴリズムやソフトウェアが行うということです。
丹下 アルゴリズムは入れたいですね。
多田 その余地はあるということですね。佐藤さんがHaKaSe(はかせ)でやっているように(本セッションの前半参照)。
丹下 HaKaSe miniを入れさせてもらいますか(笑)。
前回の学びで、うちもFFS理論(※)を勉強しようということで、来週か再来週に僕が研修に行きます。
▶編集注:人を5つの因子とストレスへの反応で数値化し、性格や思考行動、潜在的な強みを理解する理論で、教育学博士・経済学博士の小林 惠智氏が開発。FFSはFive Factors & Stressの略。詳しくはFFS理論について(Human Logic Laboratory)
多田 研修を受けに行くのですか?
丹下 3日間、受けに行きます。
人事のトップも経営者に加わる時代
株式会社ディー・エヌ・エー 執行役員 ヒューマンリソース本部 本部長 兼 コンプライアンス・リスク管理本部 本部長 崔 大宇さん
崔 先ほどの佐藤さんからの質問に対する答えを、僕はある意味うらやましいと思いながら聞いていました。
DeNAはいろいろな事業があって複雑化していて、経営と人事を結びつける一本線がすごく引きにくくなっています。
その点、SHIFTさんのこの話は単純明快であると、すごく感銘を受けています。
事業を作るために必要なのはリソースで、ある種の労働集約型という言い方になるかもしれませんが、そのリソースで経営数字の構成をどのように作るかということが、教科書通り、手順通りに、すごくきれいな一本の筋になっています。
ソフトウエアやAIを用いてどんどん新たなデータを拡張させていくこともあるでしょうが、例えば権限委譲のような話になってきた際には、任せるべき人というのはCOOやCEOであり、そのような人がCHRO(最高人事責任者)になる形が必要だなと感じました。
丹下 さすが、頭が良いですね! その通りで、今人事のトップをやっているのは、ウチでほぼナンバー2ではないかという、菅原(要介さん、執行役員 兼 ビジネストランスフォーメーション事業本部 本部長 兼 人材戦略統轄部 統轄部長)という人間です。
もう一人のナンバー2は今、営業に思いっきり寄せているので、ナンバー2が営業と人事を担当し、新しいものを作るのは僕という、三羽烏のような感じです。
佐藤 うちも2018年から共同代表でやっていますが、そのグループCOOはもともと人事担当役員です。
丹下 そうなりますよね。
多田 これは流れを感じますね。
人事というのは、経営者の頭の中でものすごく大きな比重を占めるものなので、GEさんなどもそうですが、COOとCHROとCFOというのは、全員経営者でセットであるということが言われます。
事業側のトップが人事になるという例が、日本でも出てきています。
崔さんもまさに、事業側をやっていらっしゃって2年前に人事に来ています。
ITやスタートアップではそのような流れが数年前から来ている気がしますが、大きな企業様でも、人事畑をずっと歩んできた方ではなく、事業側のトップを人事のトップに据えるということが行われてきています。
電通様も、クリエイティブ局でずっと事業側にいた方を、2年前に人事のトップに据えられました。事業側の視点で「なぜこれをやっていないの?」と素直に言える方です。
あれだけ大きな企業様でも、私がお付き合いしている間にすごく大きな変化をしています。
丹下 良いことですよね。大手の会社さんも、人事畑の人が社長になるということを聞いたことがあります。
ただ、事業をあまり経験していない人が人事に行って、そのまま社長になるケースもあるのかなとは思います。
多田 私の所感では、今まで特に日系大手企業様の人事組織は、採用機能、労務機能、人事制度の企画、研修というように、縦に組織が分かれている傾向があり、全部の体験を一元的に見て経営に生かすということは、歴史的にあまりないのではないでしょうか。
企画や制度を一度経験させて上に行くというルートはありますが、他の職能の方は給与水準が圧倒的に低いと感じています。
今はそれがどんどん一体化して、変わろうとしているという感覚はあります。
少しずつ、人事というものに対する経営者の方の意識は変わりつつあると思います。
人事もBtoCだから毎月アンケート
丹下 あとは本当に仕組み化が必要だと思います。
先ほどの佐藤さんの質問にもありましたが、僕が見ていないところもスケールさせるためには、仕組みが必要です。
その点はすごく気にしているので、どのような人が来ても、この基準で採用して、この基準で評価して、そして辞めるときもこの基準ならば許可してよいと、結構きっちり決まっています。
退職率もずっと見ていて、辞める理由も、少し面白いのですが「あ、そうだな」という感じです。
プログラマーから転職してくる人が多いのですが、結局プログラマーに戻りたいというのが辞める一番の理由なのです。
右側が、世間一般の辞めたい理由で、やりがいを感じない、会社の将来性に疑問を感じる、給与が低い、上司と仲が悪い、などが多いです。
うちは少し違うのです。社風や風土が合わなかったという人もいて、それは体育会系なのであり得ます。
あとは鉄板の、体調を崩したとか、能力不足を感じたというものがあります。給与がガンガン上がれば、仕事に対する要求も高くなるのです。
人間関係が悪かったというのは、正直僕らにもまだ努力が足りない部分があります。これだけは、やはり会社が大きいと問題として残るかなと感じています。
多田 これは、デジタルでアンケートを取っているのですか?
丹下 そうです。アンケートは徹底していて、回答率は100%です。1ヵ月に1回、何でもかんでもアンケートを取っています。
人事もBtoCだと思っています。従業員が一顧客だと思って、本当にこの施策に満足しているのか、評価を得られたのかを考えます。
船が大きいと、僕がどんなに強く「右向け右」と言っても動かないのです。民意を得るような発言をしないと、誰も動いてくれません。
「こっちの方が良いよね」という正しいことを言わないと、皆が動いてくれないのです。
アンケートによって、「これはちゃんと響いているのかな?」と気にしています。
ですからアンケートは非常にたくさん取っています。
データ活用の一方、人間味はどう担保する?
(右)株式会社ディー・エヌ・エー 執行役員 ヒューマンリソース本部 本部長 兼 コンプライアンス・リスク管理本部 本部長 崔 大宇さん
崔 僕もいろいろ聞きたいことがあります。
事業のビジネスモデルがすごく明快だという話を先ほどしましたが、逆に言うと、どれくらいの人数でどのようなリソースを張れば、どのように売り上げが立つかということが、ある意味すごく機械的に判断ができるのだと思います。
その状況で、先ほどの退職の理由にもあった人間関係の悪さということについてですが、人間関係は良ければ良いほど良いのですが、お金をもらってやるべき事をやるということが基本だとすれば、ドライな言い方をすれば、「仲良くしてください」ということはビジネスモデル的には必要ないですね。
当然、退職するとまた採用しないといけないので、コスト面の問題は多少あると思いますが、それも全体からすれば微々たるものだと思います。
丹下さんは、「仲良くしていく」ような「暖かい系」の施策はどのようにしているのでしょうか?
丹下 「ドライ」と「暖かさ」が両立しています。
全ては先ほどの「マズローの5段階欲求」に従っているので、まず生理的欲求を満たさないといけません。
例えば僕は15年間会社をやってきて、給与の遅配をしたことは一度もないです。
これはすごく重要なことで、給料日に給与がきちんと振り込まれていない会社をどう思うかという話です。当たり前のことなのですが、やっていないスタートアップは多いです。
「ちょっとごめん、祝日を挟んじゃったから」とか「忙しいから」というのはアウトです。要するに従業員との約束事なのです。
それから、「給与はこれで」とコミットして入ってもらった人に、後々、「ごめん、君はパフォーマンス出なかったから、やはり給与を下げさせて」というのもアウトです。
約束したのであればきちんと払わなくてはいけないと思っています。
次の給与交渉のときに「君のパフォーマンスはこうだから」と言って交渉すればよいのです。
生理的欲求はすごく重要な部分として積み上がっていくので、その中の一つとして、ホットラインがあります。
社長ホットライン、女性向けホットライン、法律家につながるホットライン、上司を除いたホットライン、人事だけにつながるホットラインと、5個くらいあるのです。
社長ホットラインも月に一度、僕のところに来ます。
「給与を上げてくれ」とか「隣の人が嫌いだから席を移動してくれ」など、さまざまなものが来ますよ。一方で「上司が聞いてくれないから会社が腐っていると思います」というような、真面目なものもあります。
僕はそれを受け取ったら10分以内に返信して、全部対応するように決めています。
他のホットラインも全部対応するように決めていて、多分10%くらいの時間をそこに使っていると思います。その中には、プライベートの相談もあります。
それが「暖かい」のかどうかは分かりませんが、とにかく会社が従業員に関わるということをしています。
多田 従業員にとっての安心・安全を担保するために行っているのですね。
丹下 「会社は僕たちのことを見てくれているんだ」と感じられることを、きちんとやるということです。
多田 それもデータも見ながらやっていらっしゃるわけですね。
丹下 そうです。佐藤さんのところとは全然違いますが、データを見ながらやっています。これもAI化した方がいいのかもしれません。
(続)
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続きは 6. 年齢を問わず「アウトプット評価」になっていくのか?【終】 をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/フローゼ祥子/戸田 秀成
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