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4. Well-beingはいかに産業になっていくのか?

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ICC FUKUOKA 2023のセッション「Well-being産業の今後(シーズン2)」、全5回の④は、楽天グループ 小林 正忠さんがWell-beingに関する自身の仮説を発表。「空を見上げると幸せになる」など幸せに関する仮説と、Well-being産業は自動車産業の発展の歴史から学べるとの仮説に対し、2人のドクター 井上 浄さん、石川 善樹さんの見解はいかに?ご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット KYOTO 2023は、2023年9月4日〜 9月7日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください

本セッションのオフィシャルサポーターは 住友生命保険です。


【登壇者情報】
2023年2月13〜16日開催
ICC FUKUOKA 2023
Session 8F 
Well-being産業の今後(シーズン2)
Sponsored by 住友生命保険

(スピーカー)

石川 善樹
公益財団法人Well-being for Planet Earth
代表理事

井上 浄
株式会社リバネス
代表取締役社長CKO

小林 正忠
楽天グループ株式会社
Co-Founder and Chief Well-being Officer

(モデレーター)

藤本 宏樹
住友生命保険相互会社
上席執行役員兼新規ビジネス企画部長 / SUMISEI INNOVATION FUND事業共創責任者

「Well-being産業の今後(シーズン2)」の配信済み記事一覧


正忠 皆さんを代表して、サイエンティストたちに色々な質問をします。

藤本さんから、「楽天は、Well-being産業についてどんなことを考えていますか」というお題を頂きましたが、「特に、Well-being産業について考えていることはありません」という回答になります。

そもそも、主催者である(小林)雅さんが我々登壇者に何を求めているのかですが、我々にはこのようなメールが来るのです。

「真剣かつインタラクティブな議論をしてください。『ともに学び、ともに産業を創る。』がコンセプトです」ということです。

何より、「聴衆に役立つかどうかよりも、登壇者同士で真剣に議論をして、学びや刺激になるかを基準にセッションを進行してください」というメッセージをもらっています。

ですから、「なるほど、僕が学べばいいんだ」と思ったので、僕がどんどん質問をする、僕自身の学びの場に変えさせてもらえればと思っています。

空を見上げると幸せになる

正忠 私は、「空を見上げると幸せになる」という仮説を持っています。

対外的には、講演の場では、最初にこの左の図をスライドで見せて、「皆さん、今日は空を見上げましたか?」と聞きます。

ちなみに今日、この会場の中で、自分の意思を持って空を見上げた方はどのくらいいらっしゃいますか?(挙手を促す)

井上 おお、結構いますね。

正忠 ありがとうございます。

善樹さん、半分位の方が手を挙げられています。

石川 すごいですね。

正忠 さすが昼の眠くなる時間に、わざわざWell-beingのセッションに参加するだけのことはありますね(笑)。

(一同笑)

石川 とんだ変わり者ですね(笑)。

正忠 本当にとんだ変わり者です(笑)。

僕は毎日空を見上げていまして、Twitterにもたまに投稿しますが、雲が鳥に見えるなど色々幸せな瞬間を発見します。

なぜこの仮説を持っているかというと、空を見上げると、自分は今生きていると思えるからです。

生きていることは、実は、奇跡の掛け算です。

奇跡が掛け合わされた結果、今日も生きていられるはずなのです。

そう思うと、幸せだと思えます。

文系である私の感覚では幸せに感じるわけですが、理系の感覚では、なぜ僕は空を見上げると幸せを感じるのでしょうか、浄さん?

井上 それは分からないですよ(笑)。

でも僕は逆ですね、調子が良いときに空を見上げる傾向があります。

正忠 なるほど。

井上 自分の中のゲージというか…空を見上げているときは、調子が良いときですね。

見上げて整えるというよりも、調子の良いときに上を向いていると思います。

正忠 僕はこれをルーティンにしており、空を見上げて、「今日も生きている、ありがとう」という感謝から何かを始められると良いなと思っています。

褒める・楽しむ・信じると幸せになる

正忠 次の仮説は…昨晩のCo-Creation Nightでも少しお話ししましたが、幸せは目指すものではなく感じるものだと思っています。

「昨日の自分を褒める、今日の自分を楽しむ、明日の自分を信じる、まずはここから」と書いたのです。

そうすると、とある方が、「その通りだ、なぜならそこには幸せの3大ホルモンがあるからです」とレスをくれました。

自分を褒めるとオキシトシンが、自分を楽しむとセロトニンが、自分を信じるとドーパミンが出るらしいです。

「さすが正忠さんですね」と言われましたが、そんなことは全く考えていませんでした(笑)。

井上 さすがですね。

正忠 これは、ホルモンと関係があるのでしょうか?

この解釈は合っていますか?

井上 合っていると思います。

正忠 これが合っているのなら、将来こういったバイタルデータが自分で測れるようになれば、何か産業に活かせるのではないかと思ったのです。

井上 超難しくないですか?

僕は常にデータを取る側なのですが、継続してデータを取っていると、希望のデータを出そうとするようになるのです。

でも、本来あるべき姿は、データは「出てしまった」ものであると思うのです。

正忠 出てしまったデータを取ってもらえれば…。

井上 それなら良いのですが、データを「出そうとする」産業にならないといいな、といつも思っていますね。

正忠 例えば、ガムを噛んでいる時の唾液の色々なデータを取って、センサーによって何かできるテクノロジーがあればどうだろう、なども考えていました。

僕はChief Well-being Officerというタイトルなのですが、自分の中ではWell-beingを、個人のWell-being、組織のWell-being、社会のWell-beingという3つの階層で捉えています。

まず、会社の一員として、仲間である従業員の身体的、精神的健康から個人のWell-beingを実現させるために、ウェルネス部というものをリードしています。

もう一つ、会社はパフォーマンスを出す必要がありますので、個人としてだけではなくチームとして元気でなければいけないです。

そこで、組織のWell-beingを考えるために、エンプロイーエンゲージメント部というところで、従業員同士を、ミッション、ビジョン、バリューというフィロソフィーで心理的につなぐ試みを行っています。

また、楽天だけが元気になっても仕方がないので、サステナビリティ部で、社会と個人のつながりを実現することで社会のWell-beingを実現しようとしています。

そして、例えば楽天市場で売られているTシャツや楽天イーグルスのグッズが、実はパキスタンの工場で児童労働で作っていた、などという状況があってはいけないという考えのもと、サステナビリティ調達を行っています。

持続可能なサプライチェーン(楽天)

仲間・時間・空間、3つの「間」をデザイン

正忠 これは番外編ですが、前野 隆司先生の「幸せの4因子」は、産業を創っていく上で重要だと思っています。

幸福度を上げる「幸せの4つの因子」/前野隆司(マイナビ)

また、善樹さん達とディスカッションして、「三間(さんま)」、つまり仲間、時間、空間をどうデザインしていくかが大事だと私は思っています。

例えば、仲間をつなぐ時、多様な価値観を持つ仲間とつながるという観点で言えば、例えばUnipos (ユニポス) のサービスは可視化やデータ分析ができて、組織をどう作るかが分かると思います。

また、時間を区切る時は、バイタルデータを取得するのも一つのアイデアです。

空間については、我々は、同様にWell-beingを目指す日清食品と連携し、完全栄養食「完全メシ」をカフェテリアで提供しています。

楽天と日清食品、「完全栄養食」を軸に新たなビジネスの創造を図る包括的なパートナーシップ協定を締結(楽天)

それから、社内にサウナがあるのですが、先日初めて入り、なかなか良かったです。

井上 外部の人も入れるのですか?

正忠 いえ、社員向けですね。

そして、5年くらい前に善樹さんと2人で見に行ったのですが…焚き火ですね。

今は、本物の焚き火のように見えるテクノロジーがあります。

善樹さん、あれはアイスランドのメーカーでしたか?

石川 イギリスだったと思います。

正忠 もう本物の焚き火にしか見えませんでした。

僕は、20世紀の日本の高度成長を支えたのはタバコ部屋、喫煙スペースだと思っています。

でもこれからは焚き火だろうと思い、その場を社内に作ろうと考えています。

これも産業になるのではないかと思いますね。

ここまでは会社側から見た「三間」でしたが、個人側から見てみましょう。

コレクティブ・ウェルビーイング(楽天)

例えば、個人が自分に何ができるかを理解しているチームは強いので、楽天の学長と呼ばれる仲山(進也さん)が仲山考材という会社を経営していて、チームビルディングプログラムを提供しています。

そういうサービスも今後、登場するのだろうと思います。

そして、オン・オフの切り替えを個人で管理するための、時間管理アプリや予定管理アプリが生まれるでしょう。

仕事場の演出については、例えば自分がどういう空間にいるとかを理解するために、五感関連の検定サービスが登場すると思います。

色で何を感じているのかを捉える、カラーコーディネーターのような仕事がありますし、アロマ関連の検定もありますので、資格や嗅覚などの五感に関わる産業が生まれてくると思います。

自動車産業の発展に学ぶもの

正忠 最後になりますが、そもそも産業はどう生まれるのか。

自動車産業がこれまで日本を引っ張ってきましたが、まず車の製造は、戦争の時の軍用トラックからスタートしています。

政府がお金を投入して、日本産業、つまり今の日産に車を作らせていたわけです。

そして、車が使える道と、法整備をしてルールを作りました。

利用者を作るためにオートローンのようなサービスが登場し、その後、裾野を広げたり、利用機会を作ったりしたはずです。

例えば、各地にコインパーキングがあるから、どこに行っても車が停められるので、出かけようという気になりますよね。

道路沿いのパーキングは1950年代にはアメリカにありましたが、日本には1971年に導入されました。

しかしコインパーキングは、1991年に日本で生まれたらしいのです。

つい最近のことですよね。

井上 へー!

正忠 このように、政府と連携して関連事業者がサービスを作っていくのだなと思いました。

ですから、同様のことができれば、Well-being産業も発展していくのではないかと思います。

藤本 前回のICC KYOTO 2022で善樹さんがおっしゃっていた、物事が広がっていく時は、概念と道具と…。

正忠 作法!

藤本 作法の3つが必要というのと、少し近いですね。

6. ディープテックがWell-beingに与える可能性とは【終】(シーズン1より)

善樹さん、いかがでしょう?

石川 正忠さんは「自動車産業の発展」と書かれていますが、長く続いている産業や業界は、こんな感じでどんどん広がっているのだと思います。

日本で言えば、茶道や華道などは、この過程で広がっていると思いますね。

茶葉を作って、茶道具を作って、所作を作って、武士だけではなく、貴族や一般庶民にまで利用者を広げて、という感じです。

井上 道を作るのですね。

石川 まさに道ですね、これは。

藤本 Well-being道。

でも、Well-being道というのは気持ち悪いですね。

先ほど浄さんがおっしゃったように、何か無理してWell-beingになれみたいな…。

井上 僕はシーズン1には参加していなかったので分かりませんが、やはりWell-beingは掴みどころがないし、向かう方向も難しいです。

ですから僕の中では、今ある技術と、こうなったらいいなという理想像のグレーゾーンが大好きで、そこに色々なものが隠れているなと感じています。

でもまだ掴めないですし、腑に落ちるにはテクノロジーも十分ではないですし、僕自身の考える概念も不十分だと思っている中で、まさに今、色々インプットしている状態です。

WXなど色々な話を聞いている中で、確かに既存のものを違う角度から見ること、先ほど人を生活者として見るという話(Part.3参照)がありましたが、僕の場合、研究者として見ても面白いと思います。

だって、研究室から帰りたくないのです(笑)。

あそこでずっと寝たいのです。

正忠 (笑)。

井上 次の実験に使う大腸菌が増えるまでの6時間、家に帰るか?

否。

その状況を見たいからです。

そう考えると、ビジネスパーソンも同じかもしれません。

会社が自分の場所だと思っている人は、会社に泊まりたいと思うのです。

藤本 古いですけどね。

正忠 スタートアップだと、そうですよね。

井上 ですから、自分を理解しなければいけないのだろうな、自分なりに腑に落とす必要があるのだなといつも思っています。

「余白」を作る産業がWell-being産業かもしれない

藤本 仕事を頑張るのもWell-beingですが、正忠さんの3つの間のうち、真ん中の余白みたいなところが…。

正忠 余白が大事なのです。

藤本 先ほどの焚き火の例もそうですが、余白を作る産業について考えてみましょう。

以前、ICCのカタパルトで入賞したCuzen Matchaの抹茶マシンが、色々な会社に置かれています。

本格抹茶マシン「Cuzen Matcha」で、和の文化発信と日常飲用へのイノベーションを目指す「World Matcha」(ICC KYOTO 2021)【文字起こし版】

オープンスペースに置いておいても、みんな使い方が分からないですし、抹茶を挽くのにも時間がかかるのです。

それを待っている間に、「こういうレシピで飲んでいるよ」みたいな無駄話が発生し、コミュニケーションが生まれ、昔のタバコ部屋の健康的なバージョンが出来上がるようです。

井上 正忠さんの言っていた、焚き火みたいなものが出来上がるのですね。

正忠 お菓子エリアもそうですよね。

藤本 そういう余白を作る隙間産業が、Well-being産業なのかなとも思います。

正忠 80か100mおきにスナックコーナーを設置しているのは、Googleでしたっけ?

井上 へー!

藤本 日本ならではのスキマビジネスが、どんどん登場すればいいですね。

井上 100mおきにということは、Googleのオフィスは大きいのですね。

正忠 そうですね。

井上 うちの場合、100m行くと、もう壁です(笑)。

正忠 (笑)。

藤本 では浄さん、プレゼンをお願いします。

(続)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成/小林 弘美

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