▶新着記事を公式LINEでお知らせしています。友だち申請はこちらから!
▶ICCの動画コンテンツも充実! YouTubeチャンネルの登録はこちらから!
ICC KYOTO 2022のセッション「大人の教養シリーズ「美食」について語りつくす(シーズン5)」、全7回の⑥は、いよいよ「ハセマコの美食道」最新シーズンの登場です。変態美食家が注目する「食べログ」のある部分とは? みなさんが日常的に使っているある機能から、真の人気店が見えてくるといいます。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット FUKUOKA 2023は、2023年2月13日〜2月16日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションは、ICCサミット KYOTO 2022 ダイヤモンド・スポンサーの ノバセル にサポート頂きました。
▶「大人の教養シリーズ「美食」について語りつくす(シーズン5)」の配信済み記事一覧
榊 ハセマコさん、シーズン5、お願いします。
長谷川 シーズン5はまず、店の分類フレームワークのおさらいです。
▶5.美味い店選びは「個性・スタイル・バランス」を理解しよう(シーズン1より)
個性が「陽」か「陰」かについては、「美味しい」と言ったらめちゃくちゃ喜ぶシェフが「陽」で、「全部美味いと言うんじゃねえ」というシェフが「陰」です。
(会場笑)
スタイルは「伝統と革新」、バランスは「心技体」、そして系譜は「守破離」です。
▶5. 【永久保存版】ハセマコ美食レクチャー第3弾「食の守破離」(シーズン3より)
そのお店がどの店出身か、どこで修行をしたのかという系譜の話がありますが、系譜の中でも守破離のうちのどのステータスかというフレームワークです。
▶5.【永久保存版】ハセマコ美食レクチャー第2弾「和食の系譜」(シーズン2より)
地方の和食の店が盛り上がっている理由
長谷川 今日掘り下げようと思っているのが、バランスの心技体のうち、「体」です。
「体」は仕入れの話で、つまりどういう食材を使うかということです。
このように、「体」を分解してみました。
(会場笑)
長谷川 「体=(食材×状態)×(選別)」という公式になっています。
食材について、まず質が高いか低いか、それをどういう状態で客に出すのか、そしてそれをどう提供するか、選ばれるかが非常に重要です。
グラフが2つ出ていますが、距離や時間が長いほど、質は下がります。
勿論、そうではない食材もありますが、質が下がってしまうところを、輸送技術や冷凍保存技術で下がらないようにしようとしていますが、鮮度が重要なものは現地に行かないと食べられないものもあります。
それらを含め、どの食材を使っているかだけではなく、どういう状態で食べてもらうかがめちゃくちゃ重要です。
それが特に、「体」の店にとっては致命的なので、食材によっては、素晴らしいお店は地方にありがちです。
先ほど山本さんが言っていたように(前Part参照)、地方の和食の店が盛り上がっているという話もここにつながってくると思います。
状態や鮮度が、非常に重要だということです。
食べ手は店にシビアに選別されている
長谷川 もう一つの選別についてですが、まず、質の高さは量と反比例します。
つまり、めちゃくちゃ質の高いものは、ものすごく少量しか手に入らないのに、それを全国で争っているわけですから、各お店に入ってくるのはごく一部ということです。
店の立場からすると、そんな質の高い食材を、今日食べに来た8人のうち、誰に出すかということになるのです。
店が客を選別した時、食べてほしいと思われるかどうかが、「体」のパラメータに関わってくるということで、これがめちゃくちゃ大事です。
ですから、店側の心技体の「体」と、食べ手側がどういう食べ手であるか、店に気に入られているかどうかが関わってくるということですね。
これが今回、「体」の分解ということで話したかったことです。
西井さん、無言で頷くんじゃないよ(笑)。
西井 和食屋ではよく、カウンターの客に料理を出す前に、料理人がカウンター内でお皿を並べて準備しますよね。
それで並べたお皿の端から順番通りに、カウンターの客に出していくのですが、長谷川さんがいる時は、長谷川さんの分だけクロスして出してきて、その隣りの人には、また順番通りに出していくのです。
菅原 あるある。
西井 こういうことですか?
長谷川 はい、選別についてはよく分からないと思ったので、スライドを1枚、作っています。
特別な食材を用意してあげたい、特にいい部分を出してあげたいという、食べ手に対する店の思いが、関わってくるのです。
具体的な例としては、常連にだけ出す特別な食材を用意するパターン、肉や魚の塊を削りに削って良い部位だけ出すパターンなどがあります。
また、鮨屋でネタを切りそろえた時には、形の違いも含め、良い部位と悪い部位が出ますが、そのうちの良い部位を誰に出すかですね。
これらがすごく重要ですので、店とちゃんとコミュニケーションをとり、食べ手として認められていなければ、選別の数値が低くなり、結果的にかけ算で算出される「体」の値が低くなります。
ですから、食べ手としての心技体を磨くという美食道につながります。
まさに西井さんが経験しているのは…。
西井 僕は、端っこなどダメな部位を…。
(一同笑)
長谷川 わざわざダメな部位を選んで出されている、もしくは、並んでいる時に、順番を入れ替えてでも良い部位が僕のところに来る。
西井 寿司などをクロスして出されるのは、まさにそうなんですよね。
「店のハイプサイクル」の理解が深まる実践編
長谷川 次に、前回も話した、店のハイプサイクルについてです。
新店から話題店になり、人気低迷をして人気店に戻っていくという、食べログの点数が変わるサイクルがあります。
▶7. 本邦初公開!ハセマコ提唱「店のハイプサイクル」「食べ手のキャズム理論」【終】(シーズン4より)
前回はかなりウケましたが、聴いていた人はほとんどよく分かっていなかったと思うので、もう少し具体的な話をしようと実践編を作ってきました。
今回はお店の名前つきですが、やはり山本さんはすごいなと思ったのは、具体的な店としてグラフに入れた、「鮨 西崎」や「富味座」、「日本料理 別府 廣門」などに、先ほど触れていたことです。
山本 博多の「枯淡」も美味しいですよね。
長谷川 さすがですね。
このように、新店といわれる店と話題店といわれる店それぞれを見ると、点数が違います。
最近は食べログも更新頻度がかなり多く、僕がこの表を作っていた時、「鮨 西崎」は3.1でしたが、先ほど見ると3.7になっていました。
山本 もうそこまで上がっているんだ。
長谷川 新店から話題店になるまでの時間が短すぎる、という問題が出ています。
ちなみに、このリストをどうやって作ったかと言うと、左の新店群は2022年オープンの店を選んでいます。
今年オープンで、これくらい名が上がっている店たちがあるということです。
右の話題店群には、2021年オープン、つまり1年以内にオープンした店を選びました。
話題店になる過程で、点数が大きく変わっているということです。
それぞれに書いている通り、店の系譜がめちゃくちゃ大事です。
有名店出身というだけで、オープン当初から話題になりやすくなるので、ハイプサイクルの動きを見て改めて、系譜を追うことが大事だと思っています。
スライドの右に書いていますが、アワードなしで4点台の店は、話題店にしています。
食べログアワードは年1回行われますが、年間を通して約4点だと表彰されるのです。
ですから、新しい店で4点台を出しているけれど、1年間それをキープしていない店は、点数がすごく高いにもかかわらずアワードでは表彰されないということになります。
よって、食べログで、4点台だけれど賞など何もついていない店は、新しい店ではないかと思っています。
食べログの「保存件数」は利用価値が高い
長谷川 もう少しテクニカルな話になりますが、食べログの保存件数から人気を理解することができます。
皆さんは見ていないかもしれませんが、食べログには「保存件数」という数字が表示されています。
全国1位の「すぎた」だと、7万件という数字がついています。
この数字は、行った人と行きたい人の合計らしいです。
食べログを使っている人のうち、「すぎた」に行った人と、山本さんのように気になったら保存する人や行きたいと思っている人の合計が7万人いて、7万人で少ない座席を争っているわけですから、そりゃ席は取れないですよね。
(会場笑)
先ほど山本さんも言及していた、大分の「別府 廣門」は既に4点台ですから、もはや人気店なのではないかという話ですが、「保存件数」は1,300件ほどです。
「別府 廣門」がどれだけ話題になろうとも、まだまだ歴史も浅いし、注目しているのは“変態”やグルメイノベーターだけなので、1,300人だけが行った、もしくは注目しているということです。
僕が見ていて、「保存件数」が1万を超えると、人気店や有名店である一つの基準かと思います。
1万を超えていると、その店は間違いなくキャズム超えをしていて、完全に人気店の仲間入りをしていると思います。
▶7. 本邦初公開!ハセマコ提唱「店のハイプサイクル」「食べ手のキャズム理論」【終】(シーズン4より)
そこそこ人気でも、地方のマニアックな店だと6,000や7,000なので、食べログの保存件数が1万件というのを一つのバロメータにすると、食べログの点数が安定した点数かどうかが分かります。
これ、西井さんも知らなかったでしょ?
西井 全然知らなかったです。
前回のセッションでも、同じ4点だったとしても、サイクルのステータスによっては意味が全然違うという話をしていましたが、この保存件数で、予約の取りやすさも分かるということですね。
長谷川 ちなみに、「鳥しき」や「よろにく」はめちゃくちゃ多くて、20万人規模(2022年11月現在)です。
菅原 そんなに多いのですか。
山本 どこが一番多いのでしょうね? 保存件数でソートはできないですもんね。
長谷川 そうなんですよ、ソートできないから分からないのですが、見ている中だと、「鳥しき」や「よろにく」が最も多い部類に入るので、多くて20万人前後なのではないかと思います。
もしかしたら、そんなに美味しくないけど、めちゃくちゃ話題になってテレビに出たような店だと、もっと多い可能性がありますね。
山本 パンカテゴリのお店も、多いかもしれないですね。
長谷川 ですから、食べログの保存件数でお店をチェックできるという点に、注目ですね。
あと、これもマニアックな話ですが、右上に「ニューオープン」かどうかでソートできる機能が、食べログに実装されており、新しい店順に並べ替えができるのです。
▶全国のニューオープンのお店(食べログ)
これによって、ハイプサイクルの中の、新店や、もっと言えばオープン前の店も見つけられるので…。
山本 さすがに今はしていないですが、編集者時代は、食べログの店を「ニューオープン」でソートし、Googleのクロールみたいにずっと、知らない店がないか探していました(笑)。
長谷川 さすが。
ちなみに、「ニューオープン」でソートし、そこに良いコメントがついていれば、それは間違いなくステマです。
そうしてフィルタリングもするという使い方もしています。
西井 ニューオープンの話なんて、もう会場の皆さん、誰も興味ないから。
長谷川 (笑)。
西井 全然ついてきてくれていないから。
もうちょっと…(笑)。
菅原 皆さん、イノベーターではないですからね(笑)。
西井 でもまあ、これは役に立ちますね。
なるほど。
(続)
▶新着記事を公式LINEでお知らせしています。友だち申請はこちらから!
▶ICCの動画コンテンツも充実! YouTubeチャンネルの登録はこちらから!
編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成/大塚 幸