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8. 音の刺激で認知機能に改善も? ネックは「ガンマ波」の不快な音

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ICC FUKUOKA 2025のセッション「最新テクノロジートレンド 徹底解説(シーズン8)」、全11回の⑧は、ピクシーダストテクノロジーズ 村上 泰一郎さんが、マサチューセッツ工科大学で行われたガンマ波と認知機能に関する先行研究を紹介。それを実際に活かす工夫について説明します。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット KYOTO 2025は、2025年9月1日〜9月4日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターは EVeM です。


【登壇者情報】
2025年2月17〜20日開催
ICC FUKUOKA 2025
Session 2E
大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か? (シーズン13)
Supported by EVeM

(スピーカー)

田路 圭輔
エアロネクスト
代表取締役CEO

梅川 忠典
リージョナルフィッシュ
代表取締役社長

村上 泰一郎
ピクシーダストテクノロジーズ
代表取締役社長COO

砂金 信一郎
Gen-AX
代表取締役社長 CEO

(モデレーター)

尾原 和啓
IT批評家

「最新テクノロジートレンド 徹底解説(シーズン8)」の配信済み記事一覧


ガンマ波はアルファ波と同じく脳波の一種

村上 せっかくなので、技術的なところをもうちょっと深掘りさせていただきます。

尾原 ぜひ。全く分かっていないです。

村上 あっ、そうですか?

尾原 好奇心が刺激されます。

村上 そうですよね、ぜひぜひ質問してください。

「ガンマ波」とは何かというところからお話しさせていただくと、これは脳波の一種です。

脳波の中では、アルファ波が一番有名なのかなと思います。

リラックスしたらアルファ波とか。

尾原 瞑想の時とかね。

村上 まさに。そんな脳波の一種にガンマ波がありまして、これが認知機能に関係した脳波だと言われています。

実は、今尾原さんに言っていただいた瞑想の時も、熟練の僧の瞑想だと、ガンマ波が出ることもあるとか、集中した時に出るとか、あとは閃く直前に出るとか、そういう話も聞いたことがあります。

ガンマ波は、若いうちほどたくさん出ていて、年齢が進むほど出方が減っていって、アルツハイマー型認知症になると出にくくなるタイプの脳波です。

まさに、認知機能関係の脳活動に関係している脳波ですね。

40ヘルツ周期の断続音でガンマ波を惹起

村上 これに対して、我々の研究ではないのですが、先行研究として、6年ほど前にアメリカのMIT(マサチューセッツ工科大学)で話題になった研究があります。

Multi-sensory Gamma Stimulation Ameliorates Alzheimer’s-Associated Pathology and Improves Cognition(Cell)

それが何かと言うと、先ほど申し上げた認知機能に関係する脳波であるガンマ波を、音の刺激で出すことができるという研究です。

これはマウス実験ですが、40ヘルツ周期の断続音とはパルス性の音で、つなげて聴くと「ブィー」みたいな、MRIの中にずっと入っているみたいな音で結構不快なのですが、そういう音を聞かせてあげると、ガンマ波が出せるというものです。

しかも、ここから先がすごく面白くて、アルツハイマー型認知症を発症させたマウスで実験したところ、その原因物質であるという一つの仮説ですけれども、そう言われているアミロイドβタンパク質が減少して、空間記憶能力も改善すると発表されて、話題になりました。

これの何が面白いかと言うと、普通に考えると、リラックスしたらアルファ波が出ている、集中したらガンマ波が出ているというように、脳活動の結果、脳波が出ると考えます。

これが逆で、「外部からの五感刺激を与えてガンマ波を出させると、脳に良いことがある」という逆転的なことが起こっているのです。

尾原 ガンマ波を起こさせるのが、外から聞いたら、中から起きてしまったということですね。

村上 はい。そのあたりを色々含めて、とんでもなかったのです。

実は、これまでもガンマ波を出させる研究はあって、要は脳に電気を流していました。

尾原 電気を流したり、超音波を当てたりですね。

村上 超音波も当てるといいかもしれないですね。

そういうことをしていましたが、聞こえる音の刺激でガンマ波を出すことができるというのが、かなり衝撃的でした。

ヒトによる実験で認知症に回復傾向

村上 その後、ヒトでも色々研究が行われて、ここから先は論文データが出てきて小難しいので、すごく簡単に言いますと、アルツハイマー型認知症の方の脳は、だんだん小さくなってしまうのですが、その脳の収縮を抑制していそうだというデータが取れたりしました。

ちなみに僕が、「いそうだ」という言い方をしているのは、薬の治験レベルほど人数が多くないからですね。

ラボレベルの実験としては十分なサンプル数ですが、薬の治験はとんでもない数をやりますので、それほどではないということです。

それ以外にも、左側は小難しいので飛ばしますけれども、要はMMSE(Mini-Mental State Examination)という認知機能を測るスケールがあるのですが、それで認知機能低下の抑制効果があるところが見えてきました。

あとは、日常生活動作という日常生活をこなす能力が、認知症になると当然落ちていってしまいます。

このグラフで言うと、どちらも青いものが認知症になって、そのまま放っておいたパターンです。

そちら側はどんどん落ちていってしまいますが、この刺激を加えてあげると、あまり落ちません。

尾原 先ほどのマウスでは根本物質の阻害物質が減るみたいなところまでは見えているけれど、人間の場合は、行動レベルで見れば明らかに認知症が回復してきている傾向が見えた。

村上 見えていますね。

尾原 そういうことが、論文レベルのサンプル数では分かるということですね。

村上 はい。さらに言うと、飛び道具のようですが、日中に40ヘルツ周期の光や音の刺激を受けて、脳内でガンマ波を出していると、夜によく眠れるとか。

そう言われてみればなんとなくありそうなのですが、そういうような結果も出ていたりして、非常に期待されている分野になっています。

ネックとなるのはブザーのような不快音

村上 ただ、この技術は少し問題がありまして、音を聴いている風景がこの右側の写真ですが、音が「ブィー」みたいな、ブザー音のような結構不快な音なのですね。

しかも、それしか聴けないのです。

それだけを、それなりの音量で1日1時間聴いていなければいけません。

尾原 うへー。それがストレスになるみたいな(笑)。

村上 そうなのです(笑)。

僕はこれを自分もやってみましたが、3分くらいで、逆に頭がおかしくなるのでは?と思いました。

尾原 会場でこのバージョンのガンマ波を流してみるというのは?(笑)

村上 後で流してみましょう(笑)。

MRIの中に毎日1時間入れと言われるのをイメージしていただければと思いますが、そんな感じです。

TVの音を40ヘルツに変調する技術を開発

村上 これは結構しんどいということで、我々と塩野義製薬で色々研究をしました。

その結果、世界で初めて発見したのが、認知機能に関係する脳波のガンマ波を出させる音の刺激を、テレビやラジオ、何なら僕の喋っている声でもいいのですが、ありていに言うと既存の音声の中に混ぜられるということです。

正確に言うと、混ぜて同時に鳴らしているわけではなく、音の波形をいじって、いじった波の形の中に、ガンマ波を出す刺激を入れ込んでいます。

そういうことをやった時に本当にガンマ波が出るかは、動画の中でもありましたが、誰にも分かりませんでしたが、実際にやってみたら出ました。

尾原 おー。

村上 これを「PxDT/塩野義式」ということで、我々の基礎技術として特許を取ったのが、ガンマ波サウンドの技術になっています。

良いことはいくつかあって、不快度がある程度下げられます。

ただ、震えるような音になって、ちょっと違和感は出てしまいます。

違和感が出ないと脳が感じないので、違和感は出てしまうのですが、不快度はある程度下げられます。

尾原 でも、「ガァアアアアア」みたいな感じでは、全くないということですね。

普通に声の中や、音楽の中で聴くことができるということですね。

村上 はい。

もう1つが、MIT方式だと、他の情報は一切乗せられません。

尾原 そうですよね。

村上 要は、(MIT方式は)単音そのもので刺激しているので、他の情報を乗せられませんが、我々のガンマ波サウンドの方式だと、他の情報量に上乗せでガンマ波を出す刺激を加えることができるので、それが面白いところです。

波の形をリアルタイムでどう変えてあげるか。

それによってガンマ波が出せることを証明された変換アルゴリズムが肝なので、まさに音が鳴っている所であれば、どこでも使えます。

(続)

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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/原口 史帆/浅郷 浩子/戸田 秀成

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