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10. 企業のAIトランスフォーメーションを支援するGen-AX

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ICC FUKUOKA 2025のセッション「最新テクノロジートレンド 徹底解説(シーズン8)」、全11回の➉は、ソフトバンクの100%子会社、Gen-AX砂金 信一郎さんが登場、ソフトバンクグループとソフトバンクを解説します。そして話題は、2024年12月、就任前のトランプ大統領とともに会見して世間を驚かせたソフトバンクグループ 孫 正義社長が見据えている未来へ。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット KYOTO 2025は、2025年9月1日〜9月4日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターは EVeM です。


【登壇者情報】
2025年2月17〜20日開催
ICC FUKUOKA 2025
Session 2E
大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か? (シーズン13)
Supported by EVeM

(スピーカー)

田路 圭輔
エアロネクスト
代表取締役CEO

梅川 忠典
リージョナルフィッシュ
代表取締役社長

村上 泰一郎
ピクシーダストテクノロジーズ
代表取締役社長COO

砂金 信一郎
Gen-AX
代表取締役社長 CEO

(モデレーター)

尾原 和啓
IT批評家

「最新テクノロジートレンド 徹底解説(シーズン8)」の配信済み記事一覧


尾原 というわけで、社会課題から社会インフラとして、社会インフラが街を変えるという話をしてきました。

ドローンの制御だろうが、遺伝子の解析だろうが、音波を扱うだろうが、結局全てのテクノロジーの裏側にはAIがあります。

砂金 (笑)

尾原 今、大胆にAIを普及させる会社として…、世界で一番と言っていいですよね?

砂金 まあ、そのレバーは握っていますよね。

尾原 というわけで、ソフトバンクの中で戦略的なAIの子会社Gen-AXをやられている砂金さん、ぜひトリをよろしくお願いします。

AIの本格普及へのステップを展望、Gen-AX 砂金さん

砂金 皆さん、長いセッションをお聴きいただき、おつかれさまです。

ありがとうございます。

尾原 本当にありがとうございます。

砂金 御三方よりは、もう少し近未来というか、1年、2年、3年ぐらいの話に変えていこうと思います。


砂金 信一郎
Gen-AX株式会社
代表取締役社長 CEO

生成AIに特化したB2B SaaSと業務変革コンサルティングを提供するソフトバンクの100%子会社Gen-AX株式会社の代表を務める。業務知識や接遇の高度なチューニングが必要なカスタマーサポートや照会応答業務の効率化・自動化を、自律エージェントやLLM Opsなどの技術で実現する。東京工業大学卒業後、日本オラクル、ローランド・ベルガー、マイクロソフトでのテクニカルエバンジェリスト、LINEでのプラットフォーム推進やAIカンパニーCEOを経て現職。2019年度より政府CIO補佐官、その後発足時よりデジタル庁を兼任し、インダストリアルユニット長を兼任。

皆さんのお話を聴きながら思ったのは、将来こういう社会を実現したいという明確な目標の絵姿があって、バックキャスティングしていくと、今何ができるのか、どこで特許を取ったらいいのかみたいなことを、皆さんお考えだということです。

生成AIはそれを1年、2年ぐらいのスパンで考えられるので、そういったことを皆さんと議論していければと思っています。

先ほどひとしきりの議論の中で、自治体との話があったのですが、私はデジタル庁の仕事も長くやっています。

防災、教育、医療や実際のシステム標準化のあたりを私も色々やっています。

あとは、山口県のCIO補佐官を務めています。

東京都の宮坂(学)副知事が、デジタルのことに詳しいじゃないですか。

山口県は村岡 嗣政知事がCIOを兼任されているのですが、「山口もデジタルを真剣にやりたいんだ」と宮坂さんに相談しに行かれた時に、「そういうのはコード・フォー・ジャパンの関(治之)さんや砂金さんに相談すると、よろしくやってくれるよ」みたいな紹介をされ、私は山口県に縁もゆかりもなかったのですが、それ以来、5年ぐらいずっと務めています。

尾原 (笑)

砂金 色々な地域課題をデジタルで解決みたいな議論を2〜3カ月に1回ぐらい知事としているので、先ほどのテーマ(前Part参照)を入れてみたら面白いなと思って、議論を聴いていました。

一連の規制の話などを含めて、民間やスタートアップのようなところと、行政側の接合点にいる人たち、私はその中の1人だと思いますが、接合点にいる人たちは結構人数的にも増えてきていると思います。

尾原 そうですよね、熱くなっていますよね。

砂金 アメリカはトランプ大統領になってから、イーロンさんの周辺など議論を呼んでいると思うのですが、そういうトレンドは今後増えてくると思います。

規制なのでしょうがないという感じではなくて、どうやって働きかけて変えていくかは、割とfeasibleなこと(=実行)ができるのではないかと思っています。

企業の「AX」を支援

砂金 私はGen-AXという会社の代表をやらせていただいていますが、Gen-AXはソフトバンク株式会社の100%子会社です。

「AX」は、AIでトランスフォーメーション、DXと一緒ですね。

AIを使って仕事をすることが当たり前になった時にどういう業務のあり方、組織のあり方、認識のあり方になるのか、AXをご支援します。

それを実現するためのSaaSのプロダクトを作っていますし、コンサルティングをきちんとできるように、組織として作っているところです。

ソフトバンクグループとソフトバンク株式会社

砂金 皆さん、特にスタートアップエコシステムからすると、ソフトバンク方面はどうなっているのだろうと、外からは様子が窺い知れない状況だと思います。

尾原 異常にロケット進化する集団みたいな。

砂金 ちょっとだけ補助線を引かせていただくと、我々は内部で「SBG」と「SBKK」と言い方をしていますが、孫さんが社長を務めている投資会社は、SBG(ソフトバンクグループ)です。

直近で言うと、いきなりトランプさんの隣に現れて、サム・アルトマンとラリー・エリソンと一緒に、Stargateの78兆円投資について、会見をしました。

ソフトバンクなど3社、78兆円規模のAIインフラ投資 トランプ氏発表 2025.01.22(CNN)

ソフトバンクグループは、非常にグローバルで大掛かりな仕掛けをして、AIや通信、デジタルといった範疇ではなく、投資会社としてやっています。

孫さんがずっと一貫していてすごいなと思うのは、Pepperの頃から、あるいはそのもっと前からコミュニケーション型ロボットや、その周辺のAIの技術に対しては、幼稚な言葉ですが、えこひいきしているというか、儲かるからやるというだけではない、熱烈な愛があることです。

尾原 そうですね、偏愛を感じますよね。

砂金 ソフトバンクグループは投資会社なので、投資したものが最後に何らかの形で返ってくればそれでOKですが、SBKK(ソフトバンク株式会社)は、普通の事業会社です。

ソフトバンク株式会社イコール携帯電話屋というイメージがあるかもしれないですが、通信事業を中心にして、LINEヤフーも今SBKKの子会社になっているので、コミュニケーションやエンタメといったところ、あとはPayPayも入っているので、ファイナンスの事業もしています。

こちらはこちらで国産LLM(大規模言語モデル)の話もあって、私の仲間がSB Intuitionsで国産LLMを作っていて、今、4,600億パラメータの最後の仕上げの強化学習をしているところです。

AIのモデルを作るぞという掛け声は孫さんのところでやればいいのですが、実務、業務に応用するところ、どういう業務で使いどころがあるのかを考えるのは、我々のところでやろうとしています。

すごくビジョナリーな孫さんバーサス堅実に事業会社としてのPLや株価にきちんと責任を持って守っている宮川(潤一)さんという絶妙なバランスにおいて、色々なことが成り立っています。

ですから、すごく大きなことを語っているけれども、やっていることは堅実だみたいなところが、色々なところで垣間見えると思います。

CristalとStargateの展望

砂金 CristalとStargateに関しては、現時点でお話しできることが本当になくて。

尾原 (笑)

砂金 機密情報だから話せないというよりは、決まっていないことが多すぎるから話せないという感じです。

ソフトバンクグループとソフトバンク株式会社の3Qの決算発表の時に、普通の投資会社や携帯電話会社の決算発表なのに、質問の中心は全部「CristalやStargateはどうなるのですか」というような、ほぼAI企業としての質疑応答がありました。

Cristalはごく簡単に言うと、今ある我々が手にできる技術で言うと、ChatGPT o1とかOpenAI o3-miniのような、リーズニングエンジンのようなものを含めた、大きなパラメータサイズのものを、企業の中のデータを使って、ファインチューニングできる環境を、それはGPUから電力データセンターのレベルから、OpenAIと特別な関係の中で、OpenAIのIPを持ち込む形で、実現しようとしています。

▶︎OpenAIとソフトバンクグループが提携。企業向け最先端AI「クリスタル・インテリジェンス」を世界に先駆け日本で提供へ(ソフトバンクニュース)

この後些末な話もしますが、RAGでどうするとか、プロンプティングでどうするみたいなことが、2025年を生きる我々のしていることですが、Cristalのようなものが出てくると、ファインチューニングすればいいじゃないかみたいに、AIへの向き合い方がだいぶ変わってきます。

その道筋を切り開こうとしているプロジェクトなので、期待してください。

Stargateは、もっと大掛かりにアメリカで行う事業なので、とりあえず大きなデータセンターを作ればいいという話ではありません。

そこにどうやって電力供給するのか、そこで使うためのチップセットは、誰がどう作るのか。

アームもソフトバンクグループの傘下にあるので、NVIDIAにあまり依存せずにGPUを作るとしたらどういうものを作るかなども含めて、Stargateとしてはやろうとしていますので、大掛かりで壮大な話です。

▶︎Stargate Projectについて(ソフトバンクグループ)

SoftBank World 2024で超知性に言及

砂金 一方で、これは孫さんの思いつきなのかというと、ずっと過去に色々なオフィシャルな場で話しているのを紐解いていただければ分かると思うのですが、結構一貫しています。

2024年10月のSoftBank World 2024の時に、強化学習は非常に大事だという話をしています。

これはYouTubeで見られるので、見てください。

SoftBank World 2024 孫 正義 特別講演 超知性が10年以内に実現する(ソフトバンク公式ビジネスチャンネル)

私が説明するより、孫さんの講演を直接聞いたほうがいいと思います。

強化学習によってAIが進化する時、その学習の指標となるのが「報酬」です。ざっくり言うと、強化学習では「目的関数」と呼ばれる基準が設定され、それに従ってAIが最適化を目指して学習を続けていきます。

それが、人類の幸せのためになるようなことをちゃんと組み込んだ状態のものであれば、人類に対して反旗を翻すようなことはないだろうというのが、孫さんの楽観的なお話です。

一方で、今日一貫してあるのは、遠い未来のこと、まだ証明されていないものかもしれないけれども、どういうステップを踏んで、世の中の当たり前になっていくのかということです。

自動運転のレベルやドローンの運転のレベルの話がありましたが、AIがちゃんと世の中の役に立つには、必ず技術の進化に制約が伴うので、ステップを踏みます。

左上が進化の段階ですが、6、7、8は孫さんらしいなと思います。

尾原 そうですね。

砂金 6に「長期記憶を持つ」とあります。

今の生成AIは会話が刹那的なので、過去から撮りためた写真や、食べてきたものの履歴なども全部含めて、あなたに最適なものはこれですと分析結果を出すためには、長期記憶を上手くAIのモデルと連携させることが必要です。

ここに関しても、孫さん曰く、自分はこの特許を取っているとのことです。

尾原 はい、読みました。

砂金 攻撃も守りも完璧な状態かどうか分かりませんが、その観点に非常に早い段階から目をつけて特許を取れていたと言われています。

SoftBank Worldの特別講演は宝の山

尾原 よく考えたら、この時に話したことの流れが、結局今みんなが騒いでいるChatGPTのDeep Researchが、なぜあんなにエージェンティックにちゃんと目標を完遂してくれるかだったり、中国のDeepSeekが革命的と言われたところも、強化学習の目標関数の取り方だったり、技術として大黒柱になりそうなところへの孫さんの目利き力はやばくないですか?

砂金 はい、すごいと思います(笑)。

初期の頃は、生成AIはどういう仕組みで動いているのか、私はレクチャーする側でした。

今、孫さんは色々な、特に世界トップレベルの人たちと直接会話ができるし、サム・アルトマンと直接会話できている日本人はそんなに多くないと思うのです。

孫さん曰く、「この間すごいデモを見て、いい話を聞いてきた。お前らそんなことも知らんのか」と。

尾原 世界でやれているのは、孫さんだけですよ。

(会場笑)

砂金 もう少し解像度を高めにダウンロードしてもらわないと、現場は動けないというのはありますが、非常に高い視座というか、広大な人脈をもとに言っていることなので、我々日本人の、AI周辺にいる人からすると非常に貴重です。

孫さんをアンテナとして使いながら、こっちのほうは調子が良さそうだ、こっちはやめておこうと、様子を見ながらやっています。

尾原 補足ですが、2016年、2017年ぐらいのSoftBank Worldを今見ると、今実装できます。

早すぎたのです、孫さんは。マジで宝の山ですよ。

村上 10年近く前の?

尾原 そうです。

砂金 結構執念深いのです(笑)。

尾原 (笑)

携帯電話基地局の新たな活用法

砂金 孫さんの話をしてきましたが、ソフトバンク株式会社がなぜそんなにAIにご執心かと言うと、孫さんがここはアクセル全開だとフォーカスしているのもあるのですが、一方で現業とのシナジーが色々あるはずです。

一番右下に「AI-RAN」とあるのですが、携帯電話の基地局の中には、CPUが入ったサーバーがあり、ラジオ電波を発する装置とネットワーク機器の組み合わせで出来上がっています。

これを、CPU(中央処理装置)ではなくGPU(画像処理装置)でも動く形にして、NVIDIAとずっと研究開発を繰り返し、ある程度、コストも含めて実用的な感じになってきました。

そうすると、携帯電話の基地局は、イベントで人が集まっている所の基地局は非常に忙しいのですが、人が帰るとガラガラになるのですよね。

その空いたGPUリソースを、推論や学習などに使えるじゃないかと。

推論、演算、AIのためだけにGPUを作り続けるのは結構大変ですが、携帯電話事業をやりながら、AIにもきちんと取り組んでいくことは、一定の合理性があります。

皆さんがビジョナリーなことを言うのに対し、現場業務で課題を解決してギャップを埋めることが、我々Gen-AXの役割として期待されているところです。

(続)

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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/原口 史帆/浅郷 浩子/戸田 秀成

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