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4. レコメンドの理由は何? AIの「解釈性」がスタイリストのセンスを言語化する

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ICC FUKUOKA 2023のセッション「AIの最新ソリューションや技術トレンドを徹底解説(シーズン4)」、全12回の④は、DROBEの「企画/製造・買付を効率化するAI技術」の解説からスタート。そのレコメンドがなぜユーザーに刺さるのかという理由を見える化してくれる「解釈性」について解説します。さまざまな指標で感覚的に選ばれるファッションが、より効率的な生産へと向かう驚きのテクノロジーの話を、ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット KYOTO 2023は、2023年9月4日〜 9月7日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターは ファインディ です。


【登壇者情報】
2023年2月13〜16日開催
ICC FUKUOKA 2023
Session 11C
AIの最新ソリューションや技術トレンドを徹底解説(シーズン4)
Supported by ファインディ

「AIの最新ソリューションや技術トレンドを徹底解説(シーズン4)」の配信済み記事一覧


DROBEの企画/製造・買付を効率化するAI技術

都筑 次に、「企画/製造・買付を効率化するAI技術」について、少しお話しさせていただければと思います。

ここですね。

企画と、あとすみません、製造・買付をさっき入れなかったのですが、それは次にお話しされる ALGO ARTIS(アルゴ・アーティス)さんにお任せします。

こちらは、一般的に弊社でもやっていたり、ブランドさんと一緒に商品を作らせていただいて、別注という形で多少やらせていただいたりしていますが、商品を作っていく流れはこんな感じです。

まず企画があります。

商品のサイズや価格、あとは首の形、例えばVネックとかUネックといったデザイン、それと素材など、いろいろな特徴を組み合わせると、いろいろな組み合わせができて巨大なテーブルデータになります。

そこから良いものを抜き出すことを、「企画」と呼んでいます。

これを踏まえて、「絵型」という絵を描いて、それを製造できるようにパターンを作ります。

弊社の場合は、そこでちょっと作ってみて、サンプルチェックして製造しています。

製造も、色のバリエーションなどを考えてやっていく感じです。

我々はこの企画と製造のところで、少しAIを使ってサポートしているのが現状です。

「検索」と「探索」

都筑 こちらも、コンセプトとしては割と単純ではあります。

スタイリストを抽象化したレコメンドのモデルがあります。

それに対して、まだ存在しない商品の組み合わせを作って、我々の今20万人弱いるユーザーに対してレコメンドしてしまいます。

その結果、良いものが残ってくるので、それを良い企画だよねという形でもっていく、そういったことをしています。

尾原 ある程度新しいものをユーザーにぶつけてみると、それが1つのABテストになって、先ほど言った(前Part参照)宝としてのバイアスを育てるために、生成系じゃないですけど、大量の新しいものを作って、その中でフィットするノイズを当ててみようと、やっていらっしゃるわけですね。

都筑 そうです。

すごく概念的な話をすると、「スタイリストに、この商品をこのユーザーに提案したらどうかなって聞いてみた」みたいなことを自動化して大規模にやるような感じです。

尾原 これはリクルートや楽天などですごく大事にしていて、やはり「検索」と「探索」の違いってあるんですよね。

みんなChatGPTが正解を一発でくれることをカッコいいと思うのですが、人間は迷うことが楽しいということがあって、例えば『ゼクシィ』という結婚情報誌の編集方針は、「幸せの迷いの森」なんですよ。

都筑 なるほど(笑)。

尾原 要は、「こんなものもあるんだ!」「こういうふうにしたら友達が喜ぶな」みたいな、自分の想像の幅を超えてくれることによって自分の想像力が広がり、その行為そのものも楽しいみたいなところがあります。

これ(※1つ前のスライド)はパターンからの生成系かもしれないですが、新しい生成系をランダムフィルタリングなどのフィルタリングを使いながら、新しい宝としてのバイアスに変えていくみたいなことは、実はむちゃくちゃ宝かもしれないですよね、こここそが。

都筑 はい。これは今まで人でやっていたところですが、「意外と新しい気づきがあるぞ」とか「ちょっと分からないけれど、これを信じて作ろう」みたいな感じで作ると、意外と当たったりする感じです。

「解釈性」でAIの判断理由が分かる

都筑 さらにAIの若干マニアックな話ですが、「解釈性」という1分野があります。

我々でいうと、「この商品はこのユーザーに提案すべきだ」みたいなことをレコメンドが返してくれるのですが、「解釈性」という分野を使うと、その理由を出すことができます。

例えば、「このユーザーは黄色という特徴に反応しているからだ」とか、逆に「この特徴は嫌いだからだ」とか、なぜこの商品をこのユーザーに提案すべきだとAIが判断したのか、理由を見えるようにしてくれる技術です。

尾原 因果推論みたいな話ですか?

都筑 そんな感じです。あとよくあるものだと、AWLさんも詳しいかもしれませんが、画像の認識モデルで犬が映っていて…

尾原 アテンションですね。

都筑 はい。どこの部分が犬だという判断のベースとなったかを見せてくれたりする技術です。

土田 Grad-CAMとかですよね。

Grad-CAMだけじゃない画像認識におけるCAM手法を徹底解説

都筑 はい。そうです。

尾原 解釈性と言っているのは、製品の好き嫌いに因果や注意があるものをスペシャリストやスタイリストに見せると、「あっ、ここがトレンドの発生になるのね」とか「ここがパーソナライゼーションのフックになるのね」みたいなことが発見できるから、解釈性と呼んでいるということですか?

都筑 おっしゃる通りですね。

スタイリストは、なんだかんだ無意識でやっている部分があります。

それが集合知化されているので、逆にそれを解釈することで言語化してあげるようなことができます。

尾原 これはAWLさんも店舗カメラで何かやれそうな匂いがしますね。

土田 そうですね。

僕らは今本当に、先ほどのなぜ犬なのか、それは鼻と耳があるからだとか、画像分析のほうにかなり寄ってしまっています。

次のステップとしては、このお客さんはこういう購買行動しているとか、店内でこういうことをしているのは背景にこういうことがあったからだみたいなところが出てくると、次のステップに行けるなと思っています。

「解釈性」を生産量の決定に利用

都筑 我々はこの解釈性で、どういう特徴に反応するユーザーなのかを出していくのですが、それを突き詰めていくと、ユーザーをクラスタリングできるようになるんですね。

黄色に反応するユーザーとか、Vネックに反応するユーザーみたいな感じでクラスタリングできるようになります。

我々は今、どの色の商品をどれぐらい作るかを決めるために解釈性を出して、ユーザークラスタリングして、ユーザーのボリュームと全体のユーザーのボリュームの比率から、どの色をどれぐらい作るかという意思決定に使っている感じです。

結構ファッションの難しさがあって、刺さらない商品ってそんなに無いと言いますか、黄色の服でも、僕は着ないけれどあなたは着るよねみたいなことがあります。

そういったところをどう数値化するかという形で、この技術を使っています。

尾原 こういうところも、全体としての「トレンド性」、個人としての「嗜好性」、クラスタリングという「グループ性」の話があります。

もしかしたらクラスタリングとしてのグループ性がライフスタイルだったり、いわゆる雑誌で言う赤文字系や青文字系というものにつながったり…、こういう抽象度の管理はどうされているんですか?

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都筑 おっしゃる通りで、これは実質ペルソナを出すのに近いことをやっているかなと思っています。

将来的には、やはりこれを販売などにもっとつなげたいなと思っていますが、現状はある商品群の中でどこに反応するかというところで、正直そこまでまだ言語化しきれていなくて。

尾原 まずは分類に使って、MD(商品企画)に使っている。

ただ、結局ファッションには、「誰かに背中を押されたい」「仲間と一緒に動きたい」とか、一方で「ちょっと自分は違うことをしたい」とか、いろいろな成分があります。

そういうライフスタイル軸とか、人軸とか、誰かに背中を押されたい軸なのか、機械によってフィットされたものを提供されたい軸なのかは、多分振り子なんでしょうね。

都筑 はい。やはりクラスタリングしてペルソナを作ると、新しい特徴としてまたさらに使えるんじゃないかなとか、スタイリストに見せたらどうだろう?とか、そういうことは考えています。

解約を防ぐ対策とは

都筑 ここから未来の話になっていきます。

レコメンドの改善をするのが一つです。

これは先ほどのエキスパート・イン・ザ・ループという話(前Part参照)ですが、やっていくと、とは言え、飽きてやめてしまうユーザーは残念ながらいらっしゃいます。

「Serendipity」(セレンディピティ)という指標がありまして、これは日本語で言うと「意外性」という指標で、これが高いと解約しないというか、ユーザーがやめないで残ってくれているという、ちょっと相関があるのが見えてきている状況ですね。

Serendipityは、左側の若干難しげな数式です。

尾原 過去傾向を取って、過去傾向からずれたものを選択したときに、「Serendipity」に適しているということですよね。

都筑 はい。おっしゃる通りです。

尾原 LSTM(Long Short-Term Memory:長・短期記憶)を使ったり、アテンションモデルを使えるなと興奮していました。

都筑 ありがとうございます(笑)。

Serendipityを上げていく方法は、おっしゃっていただいた通りいくつかあります。

まずスタイリストに「これやれます?」みたいな、「Serendipityが高い提案をしてほしいです」みたいなことを言ってみてやったのですが、基本的に「無理です」みたいなことを言われてしまったんですね。

これは実際にユーザーに提案したものです。

左側の下段がSerendipityが低いと計算された提案で、上が最初に送って、その後送ったものがSerendipityとしてどうだったかという話です。

右側がSerendipityが高い提案で、スタイリストからしても「もう無理です」「よく分かりません」みたいな感じになっているのですが、数値上はSerendipityが高い提案のほうがユーザーに残っていただけるので、スタイリストにこういう提案をしていただきたいという我々の思いがあったりします。

スタイリストをサポートするAIスタイリスト

都筑 今どういうことを考えているかというと、Factorization Machineベースというよりは強化学習ベースのレコメンドエンジンを開発していきたいなと考えています。

尾原 そうですよね。そうなりますよね。

都筑 はい。YouTubeなどは強化学習ベースのレコメンドをやっていると論文などに出ていて、それなりにやっているんじゃないかなと思います。

それにすることで、特定の指標、ここではSerendipityですが、狙ったモデリングがしやすいんじゃないかなと思っています。

使い方のイメージとしては、「スタイリストをサポートするスタイリスト」みたいな感じになるんじゃないかと思います。

例えば、「本日スタイリング予定の尾原様のボックスを作りました、どうですか?」とAIがスタイリストに提案をする。

それをスタイリストがそのまま発送するとそれが正解になって、巨大なリワードもらえるとか。

スタイリストが「1点変えます」と言ったら、「次、これどうですか?」と提案して、スタイリストが「それにしましょう」と言ったら、そのリワードもらえたりという感じで、スタイリストとインタラクティブに一緒に商品を選んでいくような。

尾原 そうですよね。

今生成系のGPTがすごいとか、Stable Diffusionが作った絵がかっこいいとか言いますが、あれはセンスのある質問ができる人がGPTに質問してすごい回答が返ってきたときにTwitterにシェアしているのです。

7. イメージと手描きでリアルな画像生成、話題の画像生成AI「Stable Diffusion」

Stable DiffusionにしてもMidjourneyにしても、絵のセンスのある人が大量にプロンプトを使った中で良いSerendipityがあるものだけをピックアップしてInstagramにアップしているから、ある種それに近い感覚ですよね。

都筑 そうですね。結構近いと思います。

尾原 なるほどね。武藤さん、Serendipityの辺りで何かありますか?

武藤 そうですね、実際モデルの興味としては、ここよりもやはり人が最後に意思決定するところが重要だと思っています。

AIが人の行動変容を生まない限りは、プロダクトアウトしているだけで価値が低いものだと思っています。

ここで言うと、基本的にAIが多く価値を出す場合は、意思決定するための情報がもともとすぐ手に入らないから想像で意思決定していたところを、例えばすぐに情報をまとめてパッと手元に置いてくれて、それをもとに判断できるみたいな場合です。

ただ、それをもとに判断するときに大事なのが、ただ受け入れるのではなくて、違うところをフィードバックしたら修正してくれることです。

服で言うと、「次の月の服はなんかSerendipityが足りない」みたいなフィードバックを受けて、すぐ次のSerendipity提案ができるような状態までいくと、行動変容がすごく生みやすいなと思っています。

そういうところのインタラクションというか、それをどうやっているんだろうなというのを想起しながら伺っていました。

尾原 ああ、おっしゃっていることがよく分かります。

皆さん、AIはモデルのほうに着目するのですが、一番重要なのはUXなんですよね。

武藤 (頷く)。

尾原 言い方は悪いけれど、マッチングアプリのTinder (ティンダー) はAIにおけるUX発明で、画面に表示される写真を、好みかそうでないかによって、直感的に右左右左とスワイプすることで、マッチングを成立させるようにしました。

要は1発1中にしなくても、1,000個の中で2個SerendipityがあればOKにしました。

それがティンダーのUXなので、そういうところもあるかもしれないですよね。

都筑 確かに。ありがとうございます。

(続)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成/小林 弘美

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