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ICC FUKUOKA 2023のセッション「AIの最新ソリューションや技術トレンドを徹底解説(シーズン4)」、全12回の⑥は、ALGO ARTISの武藤 悠輔さんが登場。「複雑なサプライチェーンの計画策定最適化」って一体何?と思うかもしれませんが、原材料の調達から需要家まで長く多数の関係者が存在する、たとえば電力、化学、自動車などのサプライチェーンにおける、どこかの予定が変更なったときの全体最適化です。これは大変そう!と思った方、ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット KYOTO 2023は、2023年9月4日〜 9月7日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターは ファインディ です。
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【登壇者情報】
2023年2月13〜16日開催
ICC FUKUOKA 2023
Session 11C
AIの最新ソリューションや技術トレンドを徹底解説(シーズン4)
Supported by ファインディ
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▶「AIの最新ソリューションや技術トレンドを徹底解説(シーズン4)」の配信済み記事一覧
1人の仕事のAI化で1社に年間数億円のコスト改善を生むALGO ARTIS武藤さん
武藤 改めまして、ALGO ARTIS(アルゴ・アーティス)の武藤と申します。よろしくお願いいたします。
途中から詳しいところに入るので、もしよければ最初の3枚だけスライドを見て話をしっかり聴いていただけたら嬉しいなと思います。
そこから先は結構細かい話になるので、面白いなと思ったらついてきてください。
こちらはイントロですけれども、1つの会社のたった1人の仕事をAI化するだけで、その会社に対して1年あたり数億円というコスト改善につながる業務が存在しています。
尾原 おお!
武藤 注目していただきたいのは、「1人の仕事」というところです。
よくある数億円のインパクトは、たくさん人が関わっている仕事を機械化して自動化して無人化するようなものですが、1人の仕事をAIに置き換えるだけで数億円のインパクトが出ます。
これだけ聞くと、「もしかするとニッチな仕事なんじゃないの?」「あまり世の中に広く浸透していないような仕事で、これだけのインパクトがあるんじゃないの?」と思われるかもしれません。
でも、実はこの仕事は日本国内だけで1年あたり2兆円規模のコスト改善につながるインパクトがある仕事です。
1社につき1人の仕事ですが、改善するのが日本中に広く浸透している仕事なので、全部のコスト改善がちゃんとできると2兆円規模になると思っています。
この仕事が、ALGO ARTISがターゲットとしている、最適化している業務で、「サプライチェーンの計画策定業務」になっています。
今日の発表の中では、前半でサプライチェーンや、計画策定でどういうことをやっているのかご説明します。
その後、ALGO ARTISがAI企業としてどのようにそれを解決しているか。
最後にその景色から見て、今後AIがどう広がっていきそうか、思うところをディスカッションの叩き台として共有させていただけたら嬉しいなと思っています。
急に学会発表みたいなスライドになってしまうのですが、今の流れで、最初に簡単に会社紹介と自己紹介を改めてさせていただきます。
DeNAからスピンオフ
武藤 ここからは気楽な感じで聴いていただいて、興味あるスライドがあればしっかり見ていただけたら嬉しいです。
会社は株式会社ALGO ARTISといいます。
ALGO ARTISは、「アルゴリズムの職人」、「ALGORITHM ARTISAN」から取っています。
アルゴリズムのプロフェッショナルとして、元々現場で職人的な技術を持っている方々をアルゴリズムの提供によって支えて、社会基盤全体を最適化していきたいという思いで名前をつけています。
設立の経緯ですが、元々DeNAの中で新規事業として取り組んでいたものが、ある程度仮説検証が進んできて、今後、よりスピード感を持ってやろうと、2021年7月に設立しました。
今からまだ1.5年前ぐらいなので、まだ2歳になっていないような会社です。
そのタイミングで資金調達もして、採用も進めていったという流れになっています。
▶ALGO ARTIS、UTECとDeNAより総額4.28億円を調達(PR TIMES)
改めて私の自己紹介です。顔がイラストになっていますが、取締役VPoEの武藤と申します。
略歴を手短かに読み上げますと、もともと大学院の修士までしか出ていないのですが、理論物理でFortranを生で書いていました。
尾原 Fortranをですか! 若いのに。
武藤 はい。研究室にあるのは全てFortranの試算みたいな感じだったので、Fortranでずっと数値計算していました。
その後、急にスマホゲームを開発したくなって、インフラからアプリから、クローズドベータテストから全部開発するみたいなことをやりました。
実はYouTubeに古い動画が残っているので、検索していただければどこかに出ています。
尾原 検索します。
武藤 その後DeNAに入社して、特にAI屋さんでもなくて、最初は「BAYSTARS ID」というベイスターズのチケット購入サイトに紐づく個人のセキュリティを管理するような認証・認可基盤を開発していました。
同時にALGO ARTISの前身事業になるところに関わり始めて、スピンオフするタイミングで一緒に出てきた形になります。
サプライチェーンを解説
武藤 早速、先ほどの数億円や2兆円のコスト削減をどこから出してきたのか、触れていければと思います。
尾原 そのインパクトのある領域を。
武藤 はい。それがこのサプライチェーンです。
サプライチェーンと言っても言葉が広いと思うので、具体的に説明できればと思っています。
サプライチェーンとは、原材料を調達してから製品を例えば工場で作り、そこから需要家に届けて消費するまでの一連のプロセスを指します。
模式図は左から流れていくイメージで、原材料を調達して、それを海外から輸入する場合は船などを使って、国内だとトラックなど、物流の過程を経て、倉庫に運びます。
工場の中で製品を作って、それをまた倉庫に置いた後に需要家に向けてトラックや船で届ける、この一連の流れをサプライチェーンと呼んでいます。
この流れは業界を限定しているものではなくて、さまざまな業界においてものづくりをしていればどこでも持っている流れになっています。
具体例の電力では、石炭を海外から船で輸入して、それを発電所で燃やして石炭火力発電をして、需要家に送電線で届けるサプライチェーンを持っています。
化学も化学プラントでは海外から石油を輸入して、生産ラインで合成繊維を作って需要家に届けます。
自動車も部品を調達して組み立てラインで組み立てて、自動車を作ります。
この全てがサプライチェーンという言葉で表されています。
これらの計画策定ですが、相当大きいものづくりなので、現場にしっかり指示を出さないといけません。
サプライチェーンの計画策定の流れ
武藤 その計画策定をまずどう立てているのかと、そこにどういう課題があるのかをお話しします。
計画策定は、このようにして立てています。
サプライチェーンは非常に複雑で要素が多いので、一気通貫した計画を立てることができません。
そのため、より細かいブロックの計画に分けて、担当者も分担して策定しているのが現状になっています。
立て方の順のイメージで言うと、一番右下の「販売計画」が最初に立つことがだいたい多いです。
需要家にどれだけ売るか、あるいは需要予測をもとにどれだけ作るか計画を立てます。
それをもとに工場側の人が「生産計画」を立てます。
自分たちの持っている工場のキャパシティでそれが達成できるのかを考えて、「在庫計画」などを考えます。
その生産を可能にするための調達ができるのか、「調達計画」を立てます。
さらにその間を埋めるように、物流で物を運ぶという「物流計画」、このようにすごく人の中でコラボレーションしながら計画を作っていきます。
この方たちが週に1回とか月に1回とかミーティングしながら、計画を立てている状態になっています。
尾原 アパレルとかも大変ですものね。
テキスタイルというか、服の素材がなかなか生産が間に合わないとか、いろいろなことで変更がありますものね。
都筑 これは本当にすごいなと思いまして、質問させていただいてもよろしいですか?
リアルタイムで在庫も結構変わっていくと思います。
それも出入りとか、「在庫が余っちゃったから、送らなくていいです」みたいな話もどんどん改訂していくような感じでしょうか?
武藤 終盤のスライドにあったかもしれませんが、イメージで言うと現場に最適化を導入するので、ここで計画を立てても、計画はあくまでも計画で、実行するとずれるんですよね。
そのずれをちゃんと取り込める仕組みを作って、現場の方がそのずれをインプットしやすい状態をどう作るかが結構重要なポイントになると思っています。
都筑 ありがとうございます。
尾原 それを含めて、最適化をこれから説明していただけるということですね。
武藤 はい。
尾原 誘導されましたね。
都筑 (笑)。
制約を満たし安全性、経済性を考慮する複雑な計画
武藤 計画というと抽象的なので、どれだけ計画がそれぞれ複雑なのか、具体的に1つお見せしたいと思います。
「原材料・物流」という、サブに見える場所だけでも、相当大変だというところを見ていただければと思います。
こちらは具体例です。
発電所で石炭を海外から輸入して、国内の工場に運ぶ図です。
海外に複数のサプライヤーがあり、そこから石炭を買います。価格は市場で変動します。
そこから国内にある複数の発電所に向けて、制約を満たす船繰りの計画を立てます。
例えば、1つの船が2個のタスクに同時にアサインする計画を立てると実行できないという基本的なところから、仮に発電所で在庫切れを起こすと地域一体が停電になり得るので、発電を止めないために安全在庫リスクを考慮するところまで当然含まれます。
社会的に非常にインパクトが大きいというか、影響の大きいものなので、絶対に在庫を切らさないようにすることを守りながら、船には用船料など、毎日いろいろな費用が掛かります。
それをなるべく経済的にした上で、安全性も気にしながら、経済性も気にする中で配船計画を立てます。
「この船は明日ここに向かってください」とか「この船は1日遅れてしまったので、こっちに行き先を変更してください」とか、船繰りの計画を立てるのが、「原材料・物流」の計画です。
こちらを見ただけで極めて複雑だとお分かりになるかと思います。
尾原 そうですね。
絶対にやり続けないといけないマスト条件が厳しいのですが、マスト条件に余裕を持たせようとするとコストが掛かってしまって経済性が下がるから、ウォント条件としての利益を上げたいということのトレードオフが、死ぬほど複雑という話ですよね。
武藤 そうですね。
それでどういうことになるかというと、現場の方は絶対に止めないことを責務にするので、経済性を多少損なってでも安全性を重視した計画を立てようというのが、だいたいの意思決定になっているイメージです。
計画のずれは毎日数時間掛けて調整
武藤 では、今この計画をどう立てているのかというと、お客様は皆さんだいたいExcelを使っています。
尾原 (笑)。
武藤 バックグラウンドに細かく書かれたシートがたくさんありますが、本当に笑い事ではなく。
尾原 職人がやっていますねえ、本当に。
武藤 計画を立てる職人であり、Excelを使う職人でもあるような方が、毎日何時間も掛けて必死に組み合わせ問題を解いて計画を立てています。
船は天気が悪くなるだけで1日遅れてしまったりするので、それを全部フィードバックして、毎日本当に数時間Excelで計画を立てる作業をしています。
ここだけでも非常に課題が大きいと思います。
こちらは詳細な計画の更新の順です。
左端から、毎日のようにずれを報告されます。
「生産量がちょっと少なかったです」「機器が故障してしまった」「追加受注が入りました」「先ほどまで在庫が余っていた」みたいな報告が、計画担当者に届きます。
担当者は必死にいろいろな条件を頭の中で考えながら、Excelを駆使して、毎日数時間掛けて問題を解き直します。
さらに良い計画を検討する余力はない
武藤 これをやっていると、正直全部を満たす計画を1つ作るだけで満足してしまい、良い計画を検討する余力はもうありません。
そのまま調整に入って、調整業務も結構大変なのでそのまま使うことになるので、どういう感じになるかというと、計画の作成時間がめちゃくちゃ長く、しかも毎日あります。
代替計画も作れず、1つしか計画が作れないのでトラブル時に対応できません。
経済性もすごく低い状態でコストがすごく掛かる状態になっているし、すごく優秀な方が計画を立てるので経験値で改善はするのですが、やはりリスクは高い状態になっているのが課題です。
課題を箇条書きしたのですが、経済性が低く安全在庫リスクが高くなりがちとか、あとは担当者の負荷が多いなどです。
計画を立てるのは大変なので、ノウハウがめちゃくちゃ属人化していて引継ぎは難しく、実際に、この人にしか立てられないから十数年この人がやっていますみたいなことがある状態です。
尾原 しかもExcelを見ても分からない感じですね。可視化できない。
武藤 そうなんです。それこそアートの世界みたいなExcelになってくるので、結構難しいものになっています。
あとは行き当たりばったりで、計画が良かったかどうかまともに評価されていないケースが多いというのが現状です。
ここに対してALGO ARTISがソリューションを提供しています。
【本セッション記事一覧】
- 日進月歩、AIの最新ソリューションやトレンドを語り尽くす135分!
- ファッションAI「DROBE」が目指す究極のレコメンデーションとは
- AIを育成する「DROBE」スタイリストの集合知が最強である理由
- レコメンドの理由は何? AIの「解釈性」がスタイリストのセンスを言語化する
- AI活用により「作る前に販売、廃棄減」が可能になるファッション産業の未来
- 複雑なサプライチェーンの計画策定最適化を行う「ALGO ARTIS」
- 1年あたり数億円のインパクトも! 計画最適化で削減されるコストの内訳
- 人間の考えるプロセスに近い、ヒューリスティック最適化に挑むエンジニアたち
- 人間の高度な知的活動のAI化には価値がある
- “人間の目を超える目”で、何が可能になるのか
- ここまでできる! 1人の客の行動、商品への接触をデータ化する「エッジAI」
- AIはもう飛び道具ではなく、課題を解決するITの技術となる【終】
(続)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成/小林 弘美