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12. AIはもう飛び道具ではなく、課題を解決するITの技術となる【終】

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ICC FUKUOKA 2023のセッション「AIの最新ソリューションや技術トレンドを徹底解説(シーズン4)」、全12回の最終回は、引き続き「エッジAI」について。技術開発から、いよいよ社会実装フェーズに進む近況が語られます。いかに課題とAIの本質を捉え、使いこなしていくのか? 最後まで熱い議論が続きます。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット KYOTO 2023は、2023年9月4日〜 9月7日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターは ファインディ です。


【登壇者情報】
2023年2月13〜16日開催
ICC FUKUOKA 2023
Session 11C
AIの最新ソリューションや技術トレンドを徹底解説(シーズン4)
Supported by ファインディ

「AIの最新ソリューションや技術トレンドを徹底解説(シーズン4)」の配信済み記事一覧


エッジAIはいよいよビジネス化する

土田 エッジAIソリューションの市場規模はこんな感じだそうです。

2021年くらいまで横ばいなものが、2026年ぐらいに向けて、国内でも430億円という話ですが、グローバルに見ればもっともっとポテンシャルがある領域になっているかと思います。

今まで横ばいというか、それなりにエッジAIとずっと言われてきているのに、全然ビジネスとして今まであまり成立してきませんでした。

端末で人工知能が活躍するエッジAIとは?その活用分野と事例を解説(SE Design)

尾原 いや、これから来ますよ。

土田 はい。「なぜこれから来るの?」という話ですが、いくつかの困難さを解決する目処が立ってきたところがあると思っています。

これまさにお二人がおっしゃっていたところとかなりかぶってきますが、まず1つ目が説明可能性が低いことです。

正直作った人もよく分からなかったものが、だんだん説明可能性をサポートするためのツールなどができてきて、ディープラーニングベースのモデルの中身であっても、ある程度どういうことが中で起きているか、そこが進んできたところが1つあるかと思います。

尾原 ホワイトボックス化ができたということですね。

土田 あともう1つは、先ほどちょっとお話しして、あっ、もう時間がないですね。

尾原 盛り上がろう! 最後までいこう!

土田 マスクしている人がマスクを外しましたみたいなことは、「データセットドリフト」とか「コンセプトドリフト」と私たちは呼ぶのですが、要は機械学習したときと今とで状況が変わってしまうので、機械学習済みモデルが全く使い物にならなくなります。

私たちは「AIのモデルが腐る」とよく言うのですが、腐ってしまうことが非常に問題です。

3カ月PoC(概念実証)では上手くいくけれども……。

尾原 スケールアウトするタイミングでは、もう使えないということですね。

土田 はい、使い物にならなくなるところがあります。

こういったところに、解決法が出てきたこともあるかと思います。

あとはだいぶ落ち着いてきましたが、過去数年間は特に「畳み込みニューラルネットワーク」と呼ばれる、人間の目をするAIのモデルの進化があったりみたいなところとか、機器も非常に安くなってきたみたいなところがだんだん出てきました。

というところで、エッジAIをビジネス化する下地がようやく出てきたなと思っています。

1つ目が、これもちょっと専門用語っぽくなってしまうのですが、「MLOps」と書いています。

「DevOps」という言葉はよく聞かれるんじゃないかと思います。

MLOpsとは?DevOpsとの違いや機械学習プロジェクトに求められる理由(AIsmiley)

要はAIのモデルは1回作ってデプロイしたらお終いということは絶対にありません。

その後にデータセットドリフト等々が起きてモデルが腐っていってしまうことを、しっかり低価格でサポートしていかないと、正直コストに合わないし、使うものになりません。

ここを何とかするところに目処がつけば、エッジAIはグングンいくんじゃないの?という話だと思います。

あとは、ハードウェアの進化に柔軟に対応する仕組みとして、どんどん新しいハードウェアが、NVIDIAQualcommからも出てきました。

データセンターもあり、5G MEC(Multi-access Edge Computing)だとかと言っている中で、それぞれに個別のAIプラットフォームやAIアプリケーションがとなると、実際にシステム開発、システム構築をするときに非常にやりづらいです。

なので、これをちゃんと一気通貫で、どんなシステム構成を取ったとしても一気通貫のAIのアプリケーションがデプロイできる仕組みがやはり必要になってきます。

当たり前ですけれども、過渡期の技術なので、どんどん論文などをリファーしながら技術のアップデートをしていかなければいけません。

この辺が乗り越えられると、エッジAIがどんどんビジネスになるのではないかと思っています。

尾原さんも驚きのAWLの最新技術

都筑 弊社もやっているのでMLOpsのところに興味がありまして、我々の場合、先ほど毎日トレーニングしてデプロイしますとお話しさせていただきましたが(Part.2参照)、デプロイ先はサーバーです。

今回エッジAIとCNN(畳み込みニューラルネットワーク)のトレーニングも、結構時間が掛かるのではないかなと思います。

どういう頻度でとか、あとはエッジにダウンロードさせてしまうとダメなモデルだったときの切り戻しが結構大変そうだなとか、その辺りを差し支えのない範囲でお話しいただけると嬉しいなと思いました。

土田 はい。

尾原 あと残り8分です。

土田 ざっくり説明させていただくと、まず機械学習に必要なデータの選別をエッジデバイス側でやってしまい、必要最低限のデータだけを集めてきます。

集まった先には、先ほどちょっとお話ししました、トランスフォーマーベースのような、ある種神様モデル(Part.3参照)がいて、それがある種自動的にアノテーションをかけます。

自動的にアノテーションされた機械学習用のデータを使って、その後はSupervised Learning(教師あり学習)でちょっとファインチューニングをします。

そうすると、今の設置環境に合ったAIモデルができ上がります。

当然これと既存のモデルをバリデーションデータ(検証データ)で比較をして、精度が出ているものを書き戻すという非常にシンプルなサイクルを、そんなに頻繁にではなく、4半期に1回とか、そのぐらいしています。

尾原 今のお話をちょっと分かりやすく翻訳すると、GPTの何がすごいかというと、Pre-training and Fine-tuning(事前学習-ファインチューニング)といって、GPTは人間とか子どもみたいに言葉というものの常識を思いっきり持っているんですよ。

そうすると、この言葉の常識を持っている人にラップ作らせようとか、川柳を作らせようというと、言葉という常識はたくさん持っているから、それを川柳化するにはこうすればいいんだよねという後ろ工程のところのファインチューニングが非常に少なく済むんですね。

これは画像認識も同じで、AIモデルは多分CNNを使っているのかアテンションを使っているのかみたいな個別はあるのですが、人をトラッキングするみたいな大きい汎用モデルを作るところまでは1回巨大モデルで作ってしまえば、その後チューニングする部分だけは比較的簡単にできます。

それと、トレーニングのチューニングをしやすいところに抽象化するところまでを汎用モデルでやっているから、めちゃめちゃ実ビジネスに合うということですね

土田 はい、その通りです! ありがとうございます。

尾原 AWLヤバいなあ! ごめんなさい、本当に、会場の皆さん。

今回AWLの紹介は2回目なので、前回からそんなに進化していないと思って、時間はそんなに要らないと思っていました。

本当にごめんなさい。

土田 いえ、とんでもないです。

尾原 もう時間がなくなってまとめに入りますが、大事なことって、結局世の中のビジネスは「レディネス」という言い方をするのですが、技術のコストが合いますとか、現場でオペレーションできるレベルになりますってなった途端に広がるんですよ。

特にマーケティングは最適化ができやすくなると、コスト効率や投資効率が良くなるから、どんどん予算がより安くなるんですよね。

テレビがずっと2兆円マーケットなのに対して、インターネットの広告マーケットがずっと20〜30%で伸びるのはなぜかというと、最適化のサイクルが速いからですよね。

これからコネクティッドTV(※インターネットと接続しているTV)がテレビの後に最適化されるのと同じで、リテールメディアはティッピングポイント(転換点)を超えましたね。

土田 そういうふうに思っています。

これから先はもう本当に、あとは伸びていくところになるんじゃないかと。

尾原 そうですよね。

最後に1つだけ聞きたいのですが、全米小売業協会(National Retail Federation)に行ってこられたじゃないですか。

そこでの実感はどうでしたか?

土田 まず1点目に、数年前、おそらく僕はそのときは行っていませんが、Amazonフレッシュが出たよとかいう、テックが新しいリテールのフォーマットを作っている感は、この今の世界の状況とか、いろいろな理由があると思いますが、一旦落ち着いています。

もうちょっとちゃんと使えるものを各社展示していて、それをお客さんも要求されていたところが1つすごく感じたところでした。

尾原 なるほど。

AIの肝はデータビジネスであること

尾原 今日はAIの作り手がめちゃめちゃ興奮する話をしているのですが、残り3分なので一言でまとめると、多分コンセプトから実装にフェーズが入ってきて、実装のためにどうやって経営の中にAIを組み込んでいくかということが、ものすごく深掘りできたと思うんですね。

一方で、今日会場にいらした方たちは、AIをこれから活用する方が多かったと思うので、これから皆さんがやっていることを活用したいと思ったときには何に気をつければいいのか、最後に一言ずつお願いします。

都筑 はい。1つ考えていることとしましては、やはり特にレコメンデーションという話を今日させていただいたのですが、レコメンデーションに関しては、アルゴリズムはもう日々出てきています。

そこだけが差別化ポイントじゃないんだよというところが、非常に大きいかなと思っています。

皆さんの実ビジネスの中でどうやってデータを取って、今世の中にないデータをどう集めて活用するのかというと、やはりデータビジネスであるところの肝は変わりません。

逆にアルゴリズムの閾値はものすごく下がっていると思いますので、そこのデータをポイントにやっていただくのがいいんじゃないかなと考えています。

尾原 そうですね。非常に大事ですね、ありがとうございます。

AIはあくまで技術、課題が何かを忘れずに

武藤 私は2つポイントがあるかなと思っています。

1つ目が、AIを実際使うときに、「ChatGPTってすごい」という言葉に惑わされて、普段だったら例えば部下から、「自分がやりたいから、この新規事業がやりたいです」という提案があったら断る人が、急にChatGPTがで出た瞬間に「ChatGPTで何かできない?」みたいな質問をしているイメージがあるんですね。

それは多分結構おかしい状態で、どんな技術であってもあくまでも技術で、Howなので、課題が何かというところを忘れない。

つまり怖がらずに普段通り扱っていいんだよというところが1つ目だと思います。

2つ目が、AIを活用しようとすると夢が広がって、今までやっていなかったことまで取り組んで、AIプロジェクトに進むケースが結構あると思うんです。

尾原 ああ、ありがち、ありがち。

武藤 これは失敗要因にめちゃくちゃつながるので、今までやっていたことをしっかり置き換えつつ効率的にすることをまず第一ステップにしないと破綻します。

2つ目のポイントは実用的なほうですね。

ここはちょっとぜひ意識していただけたら嬉しいなと思っています。

尾原 ありがとうございます。先ほどの期待値の話(Part.5参照)ですよね。

では最後の締めで、土田さんお願いします。

AIはもう飛び道具ではなく、こなれたITの部品

土田 先ほどの繰り返しになってしまうかもしれませんが、エッジAIも含めてAIが社会実装されるフェーズにもうなってきています。

そこでやはり試されるのは、AIを大規模化、長規模運用するときの課題をどう解決していくかで、これはAIというテクノロジーだけではなく、今日UI/UXですとか、保守運用的な話も出てきましたが(Part.9参照)、多分そことの組み合わせがすごく重要になっていくと思います。

もうAIは飛び道具ではなく、ちゃんとこなれてきたITの部品になってきたと思うので、そういうふうに、やはり扱っていく必要があるのかなとすごく思います。

尾原 本当ですね。

最後にまとめると、先ほど言ったように、AIがコンセプトという空中戦から、実装という地上戦に明らかに移ってきています。

もちろんGPTなど次の空中戦に夢中になるのはいいのですが、AI×DXが明らかに武器になっています。

そのときに、AWLさんのように「目」をどう進化させていくか、ALGO ARTISさんのように足腰という部分をどう最適化していくかもあれば、DROBEさんのように心が揺れるという感性の領域をどう最適化していくかもあり、まだまだAIにポテンシャルを感じた、あっという間の135分でした。

最後にお願いですが、3日目にこんなセッションをやらせてくれるのはICCサミットしかないんですよ。

ですので、これを続けたほうがいいという方は、ぜひアンケートにコメントを入れていただけると、このマニアックなセッションが続きます。

最後に、長時間ご一緒に付き合っていただきました会場の皆さん、ありがとうございました。

スピーカーの皆さん、どうもありがとうございます。

いやあ、楽しかった!

(終)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成/小林 弘美

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