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7. 料理人がただ料理をするだけではいけない時代になってきている

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ICC FUKUOKA 2024のセッション「大人の教養シリーズ「美食」について語りつくす(シーズン8)」、全10回の⑦は、LURRA°宮下さんが国内の旅で出会った郷土料理と、グローバルな「美食」のトレンドを紹介。SDGsの流れを受け、環境に配慮する国内外の美食店の試み、日本の状況などを語ります。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット KYOTO 2024は、2024年9月2日〜9月5日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターは エッグフォワード です。


【登壇者情報】
2024年2月19〜22日開催
ICC FUKUOKA 2024
Session 9F
大人の教養シリーズ「美食」について語りつくす(シーズン8)
Supported by エッグフォワード

(スピーカー)

石坂 秀威
シーベジタブル
料理開発担当/シェフ

西井 敏恭
シンクロ
代表取締役

長谷川 誠        
NTTドコモ      
コンシューママーケティング推進担当部長/シニアプロフェッショナル

宮下 拓己
イラルギア合同会社(LURRA°)      
代表社員

山本 典正        
平和酒造
代表取締役社長

(モデレーター)

榊 淳
一休   
代表取締役社長

大人の教養シリーズ「美食」について語りつくす(シーズン8)


「郷土料理」を求めて旅へ、「LURRA°」宮下さん

 では、せっかくなのでLURRA°宮下さんから、「僕にとっての美食とは?」をお願いします!

宮下 僕はそんな大層なことを話すわけではないですし、西井さんのトップシェフの名言シリーズのお話を聞きたいので、短めにいきます。

(会場笑)

西井 いやいやいや、どんどん喋りづらくなってきているので、ゆっくり話して大丈夫です。

宮下 僕はファインダイニングやイノベーティブレストランをやっていて、これを言うのはなんですが、最近あまりレストランに行かなくなってしまった人間です。

僕も旅行がめちゃくちゃ好きですが、「地方料理」という言葉があまり好きではなくて、「郷土料理」という言葉をよく使います。

郷土料理にすごく興味があって、できる限り汚い、おじいちゃんおばあちゃんがいるようなご飯屋さんに行くようにしています。

食べログなどのサイトに載っていないレベルのお店によく行くのですが、郷土料理を求めていくことが旅をする理由になっていて、どこかで新しい体験がいつもあるので、それがすごく楽しいです。

こちらは、この間、北海道に行った時に食べた馬のホルモンの煮込みで「なんこ」といいます。

「なんこ」名前の由来・歴史(北海道歌志内市)

それまで食べたことがなかったのですが、郷土料理がおもしろいなと思うのは、なぜそれが生まれたかという理由がそこにあるからです。

ここは、もともと炭鉱がすごく盛んな地域で、馬も結構使っていて、馬をどうやって処理するかという時に、内臓まで全部頂くみたいなところで始まった料理だったりとか。

西井 ちなみにこの料理をどうやって発見したのですか?

宮下 地元のおじいちゃんに聞きました。

西井 ここの郷土料理って何ですかと聞いたら?

宮下 はい。 おじいちゃんに聞いたら、「なんこが食べられるから、行ってみて」と言われました。

西井 へえ、すごい。

宮下 こちらのおやつは「こふくまめ」と読むらしいですが、滋賀県で作っているお菓子に近いもので、小豆を煎って、米が昔からあるので、米に練り込んだだけの非常に素朴なお菓子です。

幸福豆 滋賀県 | うちの郷土料理(農林水産省)

知り合いに「へしこ」を作っているおばちゃんがいて、その人のところに行ったら出してくれたのですが、こんなお菓子に絶対出会わないじゃないですか。

へしこ 福井県 | うちの郷土料理(農林水産省)

日本の昔の風景からこういうものが生まれてきたのが、すごくおもしろいなと思って、僕は今できる限りこういうものをどんどん探して、日本の郷土料理マップみたいなものをいつか作りたいなと思っています。

西井 ちなみにこういう郷土料理は、僕は当然知らなかったものですが、未来はどうなるのですか?

ブラックバスが新しい郷土料理に?

宮下 そう、僕はその話をちょうど後でするつもりでしたが、これが僕が今一番やりたいことで、「郷土料理」という言葉を使ったときに、人はそれを勝手に「守るもの」として意識すると思います。

でも、もともとイタリアにはトマトはなかったとか、フランスにジャガイモはなかったみたいな話や、韓国と唐辛子もそうですし、ほかにも多分いっぱいあると思うのですよ。

そうなったときに、郷土料理が実は今後生まれていく可能性はないのかなとずっと思っていました。

今滋賀に新しくオープンするオーベルジュのお手伝いをしているのですが、滋賀で何かものがないかなと思った時に、あれ? 滋賀県にはブラックバスがあるなと思って。

ブラックバスは処理を間違えるとめちゃくちゃ不味いのですが、今から駆除は実際できないじゃないですか。

できないのだったら、ブラックバスを新しい郷土料理として何か生み出していくことができないのかなと思って、知り合いの「へしこ」を作っているおばちゃんに作ってみてとか、なれずしをこれで作ってみてとか、今色々やっています。

ふなずし 滋賀県 | うちの郷土料理(農林水産省)

今はもっとわかりやすいブラックバスの落とし所として始めているプロジェクトがあって、「BBB」、ブラックバスバーガーを作ろうと思っています。

それをバスで売ろうと思って、そのバスを知り合いにもらい受ける手続きを今しているのですが、それでフェスとかに出たいなと思っているのが最近ですね。

西井 美味しくできそうですか?

宮下 調味料である程度隠してあげないと、難しいなという味ではありますね。

綺麗な水域のブラックバスは、全然美味しいのですけどね。

星の数ではないミシュランの基準「グリーンスター」

宮下 次はサクッと、この11軒という数字ですね。

504軒中11軒なのですが、最近出てくるワードで、ミシュランの「グリーンスター」ですね。

ミシュラングリーンスターとは?(MICHELIN Guide)

確か2018年から始まったのですが、やっとに「サステナブル」とか色々な言葉が出てきた中で、食業界にもちょっとずつ広がってきたなと思っています。

1つ星、2つ星、3つ星ではなく、グリーンスターという新しい評価基準ができて、環境配慮された、持続可能なガストロノミーに対して積極的に活動しているお店を評価するものです。

それこそ秀威君(石坂さん)もINUAで働いていた時に思ったと思うけれど、レストランは実際にめちゃくちゃ環境負荷が多いし、ロスがめちゃくちゃ出てしまったりします。

それはファインダイニングの宿命ではあるけれど、その根本からシステムを変えられないかと取り組んでいるお店がたくさん生まれてきています。

宮下さんおすすめの環境への意識が高いお店

宮下 ここに載っていないお店もありますが、そういうところに意識があるお店だなと思っているのが、東京・調布にあるマルタ (Maruta) という友達(石松 一樹さん)のお店です。

ゴミをただ捨てるのは簡単だけれど、本当にきれいに分別して、ちゃんと分別したものを正しい捨て方をするために余計にコストをかけたり、雨水を濾過してトイレの水などは全部その水を使っているのが特徴だったりします。

右上に「十五」という僕のおすすめの蕎麦屋さんがありますが、行かれたことはありますか?

長谷川 僕はないですね。

石坂 行ったほうがいいですよ。

宮下 ここはマジで行ったほうがいいですよ。

石橋 明也さんという武骨なおじさんがやっているのですが、自分で蕎麦畑作りをして蕎麦も全部育てています。

「ミシュランガイド京都・大阪 2022」 ミシュラングリーンスター掲載店(ミシュランガイド)

もみ殻や蕎麦で廃棄するものを畑に使って蕎麦を作っていて、写真のカウンターに座るじゃないですか。

座ったらそこから蕎麦を打ち始めるのですよ。

メニューが蕎麦と蕎麦がきの2つしかなくて、グリーンスターを獲得しているのですが、めちゃくちゃおすすめのお店なので、よかったらぜひ行ってください。

あとは下段にあるのは、海外のレストランですが、「Geranium(ゼラニウム)」は世界のベスト・レストラン50で1位を獲っていますが、今肉の提供を完全にやめて野菜中心のレストランに変わってきています。

肉を提供しないレストラン「Geranium」。2022年、世界のベスト・レストラン50にて1位獲得(table source)

ブルーヒル(Blue Hill)はもう長くずっと環境意識を持ちながら種の研究などを含めてやっています。

ロンドンのSilo(サイロ)では、紛争で使われた銃弾を溶かしてカトラリーを作ったりと、今までと違う動きが始まっているなと思います。

料理人がただ料理をするだけではいけない時代

宮下 次が最後です。

僕たちもやっとLURRA°で最近コンポストみたいなものを始められた程度なので大それたことは言えませんが、大事なのは料理人という職業がただ料理をするだけではいけない時代にやっとなってきたことです。

僕たちは一番最後の出口というか、食材の一次産業から始まった時に、消費者に伝える時の最後の出口で、僕たちがどういう意識で何を使うかによって、結構大きなものが変わっていくと思います。

そのためには僕たちも変わる必要があるけれど、消費者の意識だったり、そこに対してのリスペクトとか、そういうところが変わっていく必要がもっともっとあるなと最近感じますというのが、僕のさっくりとした話です。

西井 1つだけ聞いていいですか?

グリーンスターが増えてきていますが、欧米などでは消費者側が非常によく受け入れているからどんどん増えてきているのか、まだまだそこは受け入れられていないのか、その辺のトレンドはどう思われますか?

宮下 海外のほうが当たり前に、環境意識がもっと根付いている感じはしますね。

日本はどちらかと言うと後発的、気質的な感じかもしれないですが、がそうなっているから獲りに行こうみたいな感じにはなっていると思いますが、海外だと本当にお店を作る段階からそれがベースになってお店ができていることが最近増えていますね。

西井 石坂さんはどう思われますか?

石坂 そうですね。どちらかと言うと、海外のほうが進んでいますね。

今宮下さんが言われたように、当たり前のように、もっと環境のことを考えながら料理をしましょうねというのは、もうみんな取り組んでいます。

西井 僕は海外に行くので、他のビジネスでも同じように感じますが、例えば、イギリスやフランスではゴミの分別をせずに結構ぽいぽい捨てていたり、普通にもっとひどいことをやっていて、ひどすぎるから意識がちょっと高くなっている感があって、日本は結構ナチュラルにやっている部分があるんじゃないかと思ったのですが、どうですか? 

そういうわけではないですか?

石坂 確かに、僕の友達とか、日本に初めて来ると、「なんでこんなに分別しないといけないの?」と言う人も多いです。

西井 日本は面倒くさいと思うぐらいやっていて、実は日本のほうが20年前から意識が高くて、海外の国はひどすぎたのをちょっと良くしている感で、日本はそれをオーガニックにできているのではないかと、僕なりに感じているところがあります。

まさに海外に詳しい人が多いので、どうなのかなと思って。

石坂 多分、ある程度、日本はそこは進んでいたところなんだけれど、今の海外の勢いに負けているようなところが。

西井 そうですね。上がり具合で言うと確かにそうですね。

宮下 お店を作る時に、日本だと、そこはコスト的に切ってしまうところで、仮に500万円プラスでコストをかけたらこの循環ができるかもしれないという時にやりません。

海外だと、その500万円の投資をすることでお店自体の価値が上がるよねという、付加価値の付け方の方向が違うのかなという感じですね。

西井 なるほど、わかりました。ありがとうございます。

榊 ありがとうございます。

今の西井さんの質問で、残りちょうど15分になりました。

西井 予定通りですね。

 西井さんのトップシェフの名言集、これ、本当におもしろいのですよ。

宮下 残したかった。

西井 (笑)。 

 ぜひ喋ってもらいたいのですが、皆さん、やはりMust案件にいって頂いたほうがいいと思いますので。

長谷川 でも、西井さんに数分与えましょうよ。

西井 いやいや、僕の数分より、ハセマコが食べログの話をしたほうがいいですよ。

せっかく聴きにいらしているし。僕はもう今日は譲ります。

その代わり、西井がおもしろかったと、皆さん、アンケートに書いてください(笑)。

▶️編集注:ICCサミットでは終了後に全プログラムに対してアンケートで満足度や感想を回収し、次回の開催に役立てています。

 では、ハセマコさんの「食べログアワード2024を語る」から、「美食道シーズン8」までお願いします。

(続)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/戸田 秀成

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