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ICC KYOTO 2023のセッション「大人の教養シリーズ「美食」について語りつくす(シーズン7)」、全8回の③は、おなじみ変態美食家のハセマコさんこと長谷川 誠さんと、ICCサミットの参加者でもファンの多い京都のレストラン、LURRA°の宮下 拓己さんが登場。作り手と食べ手が相まみえます。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2024は、2024年2月19日〜 2月22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターは ノバセル です。
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【登壇者情報】
2023年9月4〜7日開催
ICC KYOTO 2023
Session 9E
大人の教養シリーズ「美食」について語りつくす(シーズン7)
Supported by ノバセル
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▶「大人の教養シリーズ「美食」について語りつくす(シーズン7)」の配信済み記事一覧
榊 では、ハセマコさん、お願いします。
1年で1,100軒新規開拓した変態美食家、長谷川さん
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長谷川 誠
株式会社NTTドコモコンシューママーケティング部 コンシューママーケティング推進担当部長/シニアプロフェッショナル
入社以来、一貫してモバイルサービスに従事。テレビ電話、iチャネルを経て、2008年に楽天に出向し、オークション事業の黒字化を達成。2011年にドコモ復帰後、スマホ版dマーケットの立ち上げに関わり、音楽配信事業、電子書籍事業を経験。2012年以降、Eコマース経験をいかし、dショッピング、d fashionを立ち上げ、dマーケットのコマース領域進出を果たす。2014年からはdマーケット全体のマーケティングを担当し、ゲーミフィケーション、DMP、CRM、マーケティングオートメーション等を実現。2018年のマネージャー就任後、半年間でMAUを400万成長させ、1000万MAUを達成。現在20サービス以上あるドコモのBtoCサービスのマーケティングリーダーとして成長を促進すると共に、ドコモのシニア・プロフェッショナル制度の認定を受け、デジタルマーケティングのスペシャリストとしてドコモのデジタルシフトを牽引している。
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長谷川 はい、いつもの数字からですね。
これまでトータルで11,000軒に行っていて、年間の新規開拓数は、これまでは1,000軒と言っていましたがペースが上がっていて1,100軒。
西井 1年で、ですよ?
長谷川 そして先ほど西井さんに、200軒到達おめでとうと言っていた食べログアワード店の訪問軒数は357まで来ております。
また、食べログではジャンルごとにトップ100を選ぶ百名店というものがあります。
▶食べログ 百名店 – うまいもの、いま食べるなら、このお店。 (tabelog.com)
ジャンルが増え続けていて今54ジャンルあるので、対象は5,400軒となっていますが、意外と食らいついており、数字は3,630まで来ています。
今日も和菓子の店を8軒くらいやっつけた上で会場入りしていますので…。
(会場笑)
気絶しそうに体調が悪いです(笑)。
山本 このスライドの中では、357が一番普通の数字です。
西井 確かに。
宮下 さっき、203か204で争ってたのに(笑)。
西井 一番普通だ。
長谷川 一番下の数字が、一番狂っています。
榊 一番下の数字は、日本一ですか?
長谷川 ダントツ日本一だと思います。
榊 ダントツ!
西井 多分こんな奴いないよな。
山本 1,100も相当頭おかしいと思うなぁ。
西井 確かにそう思う、新規の数だから。
榊 初めてこのセッションを聞く方もいらっしゃると思うので…1年365日間で、1,100軒の新規開拓ですよね?
長谷川 そうですね、365で割り算していただくと、いかに苦しいKPIかが把握できると思います(笑)。
(会場笑)
山本 次回は、何食食べているかも載せてほしい(笑)。
長谷川 そうですね。
変態美食家とは、どのあたりが変態かというと、色々趣味があるうちの一つが食というわけではなく、食に全てをかけていることです。
「食べるために生きている」というのが、変態美食家たる所以です。
ちなみに今日も、夜行バスで来ています。
ICCサミットの参加者のうち、夜行バスで来て夜行バスで帰るのは僕だけだと思います(笑)。
山本 今回は、青春18きっぷ活用ではないのでしょうか?
長谷川 はい、今回は寄るところがあったので。
青春18きっぷだと登壇に間に合わないので…。
西井 去年は確か、青春18きっぷの旅でしたよね。
長谷川 はい、去年はICCサミット史上初、往復青春18きっぷで参加させていただきました(笑)。
美食道というコーナーを持っておりますが、何言っているか分からないと思うのでどんどん端折ります。
美食セッション シーズン1~6を長谷川さんがおさらい
長谷川 シーズン1以降、店の分類をし、知識と経験を積み重ねて、食べ手としての技を磨きましょうという話をしました。
その結果、ディープラーニングというスキルを身につけました。
例えば、中トロの寿司の画像1枚で、それがどの店の寿司か分かるとか、コース料理の写真を見ると、そのコースの料理のうち、どれが美味しくてどれが美味しくないかが分かるというスキルですね。
次にシーズン2です、今日はこの内容を深掘りします。
シーズン2では、食べ手の「心技体」というフレームワークを持ち出し、心を整えて店に好かれよう、店と客ではなく人と人との対等な付き合いをしようという話をしました。
シーズン3はさらにマニアックになっていき、食べ手のフレームワークということで、陽か陰か、リピーターかコレクターか、心技体のバランス、そして店の守破離(しゅはり)に触れました。
店の守破離というのは、シェフがどの店で修行をして、その後どう成長していくかということでして、日本古来のフレームワーク「守って、破って、離れる」に当てはめて、それぞれの店がどのステージにいるのかを理解しました。
その結果、店の守破離を守りながら共に成長していきましょうという訳の分からない結論になりました(笑)。
(一同笑)
長谷川 シーズン4はもう意味不明なのですが(笑)、食べ手のキャズムについて話しました。
まさに山本さんのような美食のイノベーター…例えば、先ほどの山本さんの話には、誰も知らなかった店がいくつもありましたよね。
つまり山本さんは、この図で言えば、キャズムの左側にいる人なのです。
逆に、西井さんのような、「食べログアワード200軒イェーイ!」と言っているような人はキャズムの「ム」のあたりにいる食べ手であるという解説をしました(笑)。
(会場笑)
長谷川 同時に、テクノロジーハイプサイクルになぞらえた、店のハイプサイクルを提唱しました。
各店の食べログの点数は、3.0台から立ち上がり、4.0台に行ったりきたりするというハイプサイクルを描きますが、これは上にあるキャズムの図の、左側の部分と何となくリンクしているということです。
続いてシーズン5は、またさらに分解され、心技体の「体」の分解ということで、店から見た時の体は、食材と状態と選別であること、そしてハイプサイクルと守破離の関係についてでした。
最初、点数が順調に上がっている際は「守って」いますが、そのうち苦しみながら「破って」、「離れて」いく動きを見せるという話をしました。
そして、そろそろICCっぽい話をしないとまずいということで(笑)、飲食店のマーケティングファネル、ファンマーケティングが大事だという要素をここで取り入れました。
前回シーズン6は、食べログアワードの分析と、注目店が食べログアワードを獲得するまでの時系列をハイプサイクルと絡めて解説しました。
先ほど5,400軒あると紹介した食べログ百名店ですが、それがどう地方に分散しているかについても話しました。
心技体の「心」を分解すると、食べ手も店も同じで、真善美とパーパスです。
真剣に取り組んでいるか、料理愛があるか、美学があるか、という真善美のフレームワークがあり、さらにパーパスとして、何のために料理をしているのか、存在しているのか、そしてなぜそんなに食べているのかということです。
ここまでの話を踏まえて、今回シーズン7の美食道を持ってきていますので、ぜひお楽しみいただければと思います。
西井 シーズン6までの話をきちんと聞きたい方は、今夜のCo-Creation Nightに…。
長谷川 あ、そうですね。
西井 参加すると、シーズン1から6までの話が全部聞けます。
長谷川 夜は内容てんこもりで、3時間くらいしゃべり倒しますので。
西井 ですから、勉強したい人はぜひ。
榊 超おすすめです。
西井 超面白いので。
榊 ありがとうございます。
今日は、美食道シーズン7が行われるということですね。
長谷川 そうですね。
榊 ありがとうございます。
日本の季節と文化をショーケース、「LURRA°」宮下さん
榊 では、今回初めて、食べ手ではなく作り手として参加いただきました、宮下さん。
西井 すごい。
榊 「LURRA°(ルーラ)」の宮下さんです。
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宮下 拓己
イラルギア合同会社(LURRA°)
代表社員
1990年生まれ、東京都出身。高校卒業後「辻調理師専門学校」上級のフランス校へ。首席で卒業し「ミシェル・ブラス」で研修。大阪、東京、オーストラリアのレストランを経て、ニュージーランド「Clooney」ヘッドソムリエを務める。2019年6月LUURA°を開業。Culturepreneur Collectives理事。
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宮下 LURRA°に来たことがある方は、どれくらいいらっしゃいますか?(挙手を促す)
ありがとうございます。
では、知っているという方は?(挙手を促す)
まだ来てない方は、ぜひ、食べに来てください。
簡単に、LURRA°の説明からしていきますね。
単純に、食べる量で言えば、店で働いている人たちよりお客様の方が間違いなく食べています。
LURRA°とは、バスク地方の言葉で「月」を意味します。
なぜバスク語を採用したのか、未だに僕たちもあまり分かっていないのですが、耳なじみが良いことと、地球に対する月だということ、そして僕たちは何料理というジャンルを全く決めていないので、LURRA°という座標から旅をするというか、食を使って旅をするような店を作りたいと考え、2019年にオープンしました。
オープンしたのは、コロナ禍が始まる半年前くらいですね。
メンバーはこんな感じで、真ん中にいるのがジェイコブ・キアーです。
ガラが悪いと、近隣からは評判の良くないメンバーたちです(笑)。
この間もタトゥーを隠しなさいと怒られました。4年目でそれ言う?と思いましたが。
シェフは、コペンハーゲンの「Noma(ノーマ)」で働いており、僕は彼とニュージーランドで出会いました。
彼がヘッドシェフ、僕がヘッドソムリエという形で、一緒に働いていました。
日本で一緒にお店をやろうということで、2018年に帰国してオープンしたのです。
メンバーは10人ほどですが、3~4人は、カナダ人、アメリカ人、ドイツ人などの外国人です。
ゲストも、6~7割が海外からですね。
これだけ英語が通じるレストランは日本ではあまりないのかなと思うので、特殊な存在かなと思っています。
西井 シェフは日本に来て、いきなり住み始めたのでしょうか?
宮下 シェフは、見た目はこうですが半分日本人なのです。
お母さんが日本人で、12歳まで日本で育っているので、意外と礼儀正しいです。
西井 そうなんですね。
宮下 日本語もペラペラです。
都合の良い時にアメリカ人、都合の良い時に日本人を出しています(笑)。
先ほど、何料理とジャンルを決めていないと言いましたが、僕たちがやっているのは、日本の季節と文化のショーケースです。
これが僕たちのビジョンというか、季節感を大事にするということは、日本料理の軸ですし、日本で何かをやる意義だと思っています。
季節を表現するために、どう食材を提供するかを考えた時に、京都が一番やりやすいと思ったので京都を選んだのです。
僕の家系は、300年くらい金蒔絵を作っていたのですが、僕の祖父の代でやめてしまいました。
工芸品は、使わないとなくなってしまいます。
レストランでは実際に工芸品を使うことができるのがめちゃくちゃ良いと思い、これら2つをショーケースとして人に届けたいと思い、お店を運営しています。
メイン料理は薪で焼く京都の旬野菜
宮下 こちらが店内の様子です。
基本的にはガスが通っていないので、薪を使った調理をします。
真ん中にある薪とピザ窯を使い、10名一斉に、17時半と20時半スタートで料理を提供しています。
今日も、ICCの美食体験が17時半から行われているので、僕も走って駆けつけなきゃと思っています。
山本 薪しかないのですか?
宮下 一応、ソースを作るためにIHはありますが、食材に直接当たるのは薪の香りです。
来た人は分かると思いますが、キッチンでシェフがわちゃわちゃしていて、全員が普通に、「明日、何食べたい?」のような会話をしているのが、僕たちの店の特徴です。
スライドの左は、囲炉裏というテーブルです。
デザートの際は移動していただいて、みんなで囲炉裏を囲みます。
火や囲炉裏を囲んでご飯を食べるのが、日本の文化だからです。
料理は、メインが肉ではなく野菜です。
春、夏、冬とこんな感じです。
大原や伏見など、近隣で採れる京都の野菜を色々な形で表現します。
基本的には600℃位の熱源のある、先ほどの薪の釜を使って焼いて、塩だけで味付けします。
ですから、食べることで、季節をショーケースのように感じてもらうメイン料理です。
ここまでが自己紹介です。
京都でLURRA°をオープンした理由
宮下 普段どんなスタイルで「美食」を追求しているかについてですが、聞いている方も含め、皆さんは僕よりも食べていると思うので、あまりたいそうなことは言えないのですが…。
僕にとっての美食は、この3つだと思っています。
「体験性」というのは、そこに行って食べた時に感じられるものがどれくらいあるかです。
2つ目は「驚き」です。
例えばそれは、液体窒素を使っていますなどではなく、食べたことのないくらいの刺激があるとか、知らなかった味わいとか、この食材は何だろうとかですね。
僕はそういう驚きがすごく好きで、それが得られるお店に行くことが多いです。
西井 完全に、マーケッターみたいな話をしていますね。
長谷川 それより、液体窒素をディスっていますが、このセッションは全文書き起こしされるので大丈夫かなと、そっちの方が気になります(笑)。
西井 (笑)。
宮下 僕たちも液体窒素はガンガン使っていますが(笑)。
西井 あ、使っているんですね(笑)。
宮下 はい(笑)。
すごくナチュラルなお店という雰囲気ですが、めちゃくちゃ最新機材で料理しているので(笑)。
前衛的なものとして使うというよりも、1つのパーツとして使っています。
長谷川 その珍しさを売りにはしないということですね。
宮下 そうですね。
最後の「食べた後に人に語りたくなる」という点は、今の時代の食にめちゃくちゃ大事だと思っています。
西井 この機会に、液体窒素をもっとディスってもいいですよ。
長谷川 これは全文書き起こしされるので、それは夜にさせてください(笑)。
宮下 僕は東京出身ですが、京都を選んだのは、季節を感じやすいこともありますが、食べた後にお店を出て歩く5歩目までが気持ちいい場所を選びたかったからです。
京都には修学旅行以来、来たことがなかったのですが、店を出た後に風情があり、それが持続するところです。
食べた後の呼吸が気持ちいい街で店をしたいと思ったのです。
LURRA°もそうなのですが、体験性と驚きは、人に語りたくなる点につながっていると思います。
僕たちがお客様に与えられるのは、美味しさよりも楽しさだと思っています。
美味しいとは極端な話、作れるのです。
味覚だけで言えば、例えば味の素が美味しいのは誰でも知っています。
でもこれからの時代は、お腹を満たすよりも脳や心を満たす以上に、ふと、楽しかったなと思い出してもらえることがいいんじゃないかと思います。
美味しいご飯を食べに行ったとして、そのお店に行ったことは当然覚えているし、料理が美味しかったことも覚えているのですが、何を食べたかは覚えていない、というお店がめちゃくちゃ多いと思います。
でも、めちゃくちゃ楽しかった、良いお店だったと思うお店については、そこで時間をどう過ごしたかを覚えています。
地獄のような修行期間を過ごしたので、自分で店をオープンする時は楽しかったと思い出してもらえる店を作りたいと思っていて、それを軸にしています。
(続)
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編集チーム:小林 雅/星野 由香里/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成